「はー、まりもも行っちゃって静かになったわね〜」
「香月せんせい」
「どうしたの、鑑?」
「PXの新しい女の子って、やっぱりタケルちゃんが連れてきたんですか?」
「違うわ、あれは鳴海の方よ」
「ほっ」
「何それ?」
「だってー、タケルちゃんて小さい子が好きなのかなぁって」
「別に小さい子だけ好きな訳じゃないでしょ?」
「そうですよねー、年上なら神宮司せんせいとか香月せんせいもいるし」
「…鑑、物事は的確に言いなさい」
「ひうっ!?」
「あんた、今頭の中でお子様から熟女までとか思ったでしょ?」
「お、思ってません、思ってませんっ」
「そんなに00ユニットになりたい?」
「香月せんせいっ、それ、洒落になってないー」
「冗談よ」
「目が笑っていなかったよぅ〜」
「そうそう、まりもがアラスカから帰ってくる時に霞を連れてくるから」
「あ、はい」
「外傷の方は安定しているし、状況がこちらに有利な今の内にそうするわ」
「タケルちゃん…」
「大丈夫よ、まりもに体を使って慰めて上げればって言ったから」
「な、なななんてこと言うんですかっ!?」
「はー、妊娠でもしてくれたらいろんな意味で一石二鳥なんだけどねぇ」






マブラヴ オルタネイティヴ Fun Fiction



God knows... Episode 105 −2000.10 EAGLE DRIVER U−




2000年 10月6日 11:27 アラスカ州ユーコン陸軍基地 テストサイト18

ユウヤ達と武のシミュレーション戦が始まってすでに一時間以上が経っていた。
その間、イーニァに囮にされていたタリサの撃墜数は片手の指では足りなくなる回数になっていたが、それでもユウヤに
指示を出さずにいた。

「ちっくしょーっ、またかっ」

コンソールを殴りつけて叫ぶタリサだが、再び戦いに復帰すると猛然と武へ向かっていく。
その様子を見つめていたクリスカは、それを見ないでユウヤと楽しそうに話しているイーニァに話しかける。

「イ、イーニァ」
「なに、クリスカ?」
「もう残り時間も少なくなってきたけど、このままで良いの?」
「うん、残り五分も有れば十分だよ」
「えっ?」
「タケルもかなりちょーしに乗ってきてるみたいだし、もうちょっと遊んでて欲しいの」
「そ、そう…」

イーニァに笑顔でそう返されてクリスカは何も言えなくなってしまう。
そして再びユウヤと会話を始める姿にどうして良いのか解らなかったが、話の内容が自分の事だと気づいて慌てて意識を向ける。

「でね、クリスカの胸って柔らかいんだよ。だから抱きしめられている時は気持ちいいの」
「そ、そうか」
「な、何の話をしてるのっ!?」
「クリスカの胸」
「ブリッジス、貴様っ…」
「ま、まてっ、話を振ってきたのはイーニァだぞ」
「そ、そうなの?」
「うん、クリスカの良いところユウヤにアピールしたの。ユウヤと仲良くなって欲しいから」
「なっ…」

すでに純夏とプロジェクションを使った内緒の話で、かなりの一般的な知識を覚えてしまったイーニァは、純夏と武の思い出を
自分達とユウヤに置き換えて妄想を大きくしていた。
だからこそ、知る必要が無かったとされる知識を覚えてしまい、喜怒哀楽をイメージによる疑似体験した事で感情が育ちつつあった。

「わたしは小さいけど、クリスカぐらいだったらユウヤも気に入ると思うから…ね、ユウヤ?」
「そこで俺に降るのかよ?」
「スミカも教えてくれたけど、男の子は大きな胸が大好きだって…タケルはなんでも大好きだけど」
「ま、まてイーニァっ」
「わたしもクリスカみたいに大きくなりたいから、ユウヤも協力してくれる?」
「お、おいっ、クリスカっ、お前も黙ってないでイーニァを止めろよ」

どんどん暴走していくイーニァに驚いて何も言ってこないクリスカを見ると、イーニァからの自分とユウヤに置き換えられた純夏の
記憶をプロジェクションされて、知らなかった感情を覚えさせられている真っ最中だった。
数日前以上に強力なイメージとそれに込められて気持ちを知っていく事で、クリスカの思考は完全にシミュレーション戦から離れていた。
その様子に満足なのか、イーニァは嬉しそうに笑う。

「今ね、わたしとクリスカは勉強中なの」
「勉強って?」
「女の子の」
「何で今なんだよ…」
「だってユウヤに好きになって欲しいから」
「って言われてもなぁ」
「んーっと、コレが終わったらクリスカをぎゅーっと抱きしめて上げて」
「いきなりそれかよっ!?」
「いや?」
「そうじゃなくてだな、なんでそうなるんだ?」
「じゃあ、キス」
「もっと難しいじゃねえかっ」
「んーっと、じゃあじゃあ、手を握って上げて」
「そ、それぐらいならまあ握手と変わらないから…」
「こう指と指を絡めて」
「恋人同士がするやつかよ」
「そう、それ」
「…白銀少佐、あんたの彼女はイーニァに何を教えてたんだよ…」

確か真面目に武との戦いに挑んだはずなのに、始まってみればイーニァと話してばっかりで、その彼女から指示も出ていない状態にユウヤは
脱力してしまう。
なにより必死にクリスカをアピールして、ついでに自分も押してくるイーニァに戸惑うしか出来なかった。
そんな中、割り込むようにタリサからの通信が入る。

「お前らっ、いつまで遊んでるんだよっ?」
「むー、うるさいチョビ」
「なんだとっ、誰がチョビだっ」
「身長と胸が小さいからチョビだってユウヤが思っていた」
「ユ〜ウ〜ヤぁ…」
「まてタリサ、確かにそう思ったけど俺は何も…」
「思ったのかよっ!」
「いいからチョビはタケルと遊んで」
「てめー、後で覚えてっ…うわあっ!?」

話の内容に意識が戦いから完全にはずれた所為で、イーニァに叫び掛けている途中で武に撃墜されたタリサの顔がモニターから消える。
静かになったと呟いて話し始めるイーニァは、タリサは眼中に無いらしい。
そんなタリサの扱いがあまりにも哀れで、ユウヤは終わった後の事を考えて少し憂鬱になった。

「…うん、そろそろかなぁ」
「イーニァ?」

タリサが撃墜された直後、今までの笑顔を消して俯きながら一人呟くイーニァは、顔を上げてユウヤを見つめる。

「ユウヤ」
「ん?」
「今から全通信をカット、わたしの機体が手を挙げたらタケルに集中砲火して」
「え、そんなんでいいのか?」
「うん、でもチャンスは一度だけ、外さないよね?」
「ああ、任せろ」
「信じてる」

と、最後に微笑んでからイーニァは通信を切ると、ユウヤも習って全通信も遮断する。
網膜スクリーンのカウントダウンもすでに残り5分を切っていた。

「おそらく少佐の動揺を狙うんだろうけど、一体何をする気なんだ…」

普通にやっても当たらないのは理解しているユウヤは、イーニァの作戦を朧気に理解していた。
だがそれはどうでもよく、イーニァの作るチャンスを物にする事だけど考え、意識を武の機体に向ける。
そして視界の片隅にイーニァとクリスカの乗るチェルミナートルの動きを見逃さないようにもする。
指示を待ち武を狙い緊張感が高まるユウヤだったが、反対にイーニァはクリスカに話しかけていた。

「もうすぐユウヤが勝つよ、そしたらクリスカはユウヤといっぱいお話できるよ」
「イ、イーニァ、どうしてそうなるの?」
「クリスカにも知って欲しい、解って欲しいの。そうしたら、スミカみたいに幸せな気持ちになれるの」
「そんなのは必要ない、BETAを排除し祖国を取り戻す事がわたし達に与えられた使命だから…」
「違うよっ」
「イ、イーニァ?」

今までに無い大きな声ではっきりと否定の声を上げるイーニァに驚き、クリスカは言葉を出せない。
自分の知らない何かを理解して、任務に忠実だった軍人の彼女ではなく、一人の少女がそこに存在していた。

「そうじゃないの、それは確かに大切だけど…じゃあ、それが終わったらどうするの?」
「終わったら…」
「そう、終わったらクリスカは何をするの?」
「何を…」
「戦いが終わって、戦う必要が無くなったら、クリスカは何をするの?」
「それは…解らない」
「それじゃだめ、その先の為にわたし達は戦わないといけないんだよ」
「わたしは…わたしはそこまで考えられない」
「じゃあ考えて」
「イーニァ…」
「ね♪」

イーニァと笑顔と自然と伝わってきた暖かい気持ちに、クリスカはかすかに頷く。
そんな先の事まで考える事すら思わない様にされてきたイーニァとクリスカは、純夏の影響を多大に受けてかなりの早さで
女の子としての成長を始めていた。
また、それを理解していた武は、本命がユウヤだと最初から思っていたので、タリサと戦いながら意識の一部だけはそちらへ向けていた。

「そろそろかな、このまま何もしないで終わる訳が無いよな…」

タリサのACTVを袈裟懸けに斬りつけて撃墜スコアを増やしてそう呟いた時、イーニァから通信が入る。

「いくよ、タケル」
「待ってたぜ」
「約束、守ってね」
「男に二言はないぜ」
「うん」

イーニァの言葉に反応して武は機体を加速させて、一気にユウヤとの距離を詰めていく。
しかし、Su−37UBもF−15Eも射撃体勢を取ろうとせず、動き気配すら見せない。

「なるほど、罠を張って…ないなぁ、何する気だ?」

そこで再びイーニァから秘匿回線で通信が入る。

「タケル」
「なんだ、降参か?」
「あのね…」

言葉を区切り一呼吸して、イーニァは口を開く。

「スミカがね、初めての時タケルの○○○○○は大きくて裂けちゃうかと思ったんだって。だってあんなに大きくなるなんて想像
出来なかったし、○○○○○が自分の中に入った時は自分でも驚いたって。それでねタケルに聞きたいんだけど、ユウヤの○○○○○って
どうなのかなぁ…タケルぐらい大きかったらわたしじゃ無理かなって思うんだけど、でもクリスカなら大丈夫だと思うの。あとね、○○○○○
を胸で挟むと男の子って嬉しいみたいだけど、ユウヤも喜んでくれるかな? タケルはろりこんでとしうえお姉さんも大好きな節操無し
だけど、ユウヤは解らないから一度聞いた方が良いよってスミカは教えてくれたんだけど、どう聞けばいいのか解らないから教えてくれる?」

瞬間、匍匐飛行で飛んできた武の吹雪は激しく地面にぶつかりころがり続け、ちょうどユウヤ達の手前10Mぐらいの所で停止した。
何故か人間のように、機体がけいれんしてるみたいにびくびくと動く理由は解らなかったが、通信内容が解らないユウヤはどうやって武を動揺
させたのか驚きを隠せない。

「なにやったんだ…」

ただ、今の武は実に良い的で、今すぐ撃ってと言ってきてるような気がしたユウヤは、チェルミナートルの腕が上がった時は反射的に突撃砲の
引き金を引いていた。

「勝った」
「イーニァ、今何をあいつに話し…」
「クリスカも撃って」
「え、ああ」

続けてクリスカも言われるままに引き金を引いて、とどめを刺された武の吹雪は完全に沈黙した。
それを持ってタイムアウトとなり、この戦いは終わりを告げた。
ちなみに、イーニァの使った秘匿回線は何故かCPの唯依には聞こえており、話の内容を理解したその顔は真っ赤に染まって体は硬直していた。
更にその後ろで月詠が唯依以上に真っ赤な顔でいたが、その体はくねくねと悶えていたが誰にも見られなかったのは不幸中の幸いだった。

「おい、一体何やったんだよ?」

シミュレーターから降りてきたタリサが開口一番に問いただしたのは当然だった。
なにしろ、いきなり武の機体が墜落して地面を転がったのだから、その理由が気になるのはタリサだけじゃないらしく、ステラやVGもその答えを
聞きたくて視線をユウヤに向ける。
だが、ユウヤもイーニァの指示通りに撃ったので、何をしたのかまでは知らない。

「いや、俺はイーニァの指示通りにしただけだ。なあ、イーニァ、なにやったんだ?」
「んーっとね」
「ま、待てシェスチナ少尉っ」
「うん?」
「うっ」

管制室から出てた所で聞こえてきた会話に慌てて声を上げた唯依だったが、きょとんとした顔で見つめ返されて何故か言葉に詰まってしまう。
こんなにも邪気がない顔であんな事を話したのかと思ってしまうと、確かに何も言えなくなってしまうかもしれない。
しかし、内容が内容だけに気軽にみんなに話すのはどうかと思う唯依の行動を、当の本人が現れてイーニァの両肩を掴む。
その表情は落ち着きが無く、だらだらと汗を流しながら武は問いかける。

「イ、イーニァ、怒らないから正直に話しなさい。アレはほんとーに、純夏に聞いたのか?」
「うん」
「全部?」
「うん、あのねタケル…あんまり激しいと壊れちゃうから、次は優しくして欲しいってスミカが言ってたよ?」
「ぎゃお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

コレが本当のトドメなのか、頭を抱えたタケルは床を転げ回りそのまま壁に激突して意識を失った。
いわゆる、人それを現実逃避と言うが、イーニァが話した内容がなんとなく解ってしまい、女の子達は武から視線を反らした。
あえて言うが、ハーレムだ男の浪漫だとかいろいろあるが、武の本質は純情へたれ一直線な男の子なのである。
そんな微妙な空気が漂う中、先ほどまでの自分を隠し澄ました表情で武に近寄った月詠が片足だけを掴むと、一礼をした後そのままシミュレーター
ルームから武を引きずりながら出て言った。
その場に残ったみんなはそれを見送った後、見なかった事にしようとする意識の一致を垣間見た後、なんとなくそれぞれが話し始める。

「おめでとうユウヤ、タケルに勝ったよ」
「まあ、釈然としないけど勝ちは勝ちか…」
「すっきりしなさすぎだよ、なんなんだよこれ?」
「いやいや、ここは素直に勝利を喜ばないと」
「ここまで微妙な勝利だと、どうかしら…」
「あーっ、そうだユウヤっ、チョビってなんだよ?」
「いや、あれは…」
「チョビうるさい」
「お前に言われたくねーよっ、大体…」

チョビと言ったイーニァに突っかかったタリサのお陰で騒がしくなる会話の輪から離れて、真面目な顔をしたクリスカは唯依に問いかけていた。

「篁中尉」
「なんだ?」
「先程、イーニァを止めようとしたが、もしかして戦闘中の話が聞こえていたのか?」
「え、ああ、シェスチナ少尉はCPにも秘匿回線を開いていたからな…」
「それでは教えて欲しい、会話の意味を」
「え、なっ!?」
「○○○○○とはなんだ? それが大きいと何か不都合があるのか? それと胸に挟んで何をするんだ?」
「☆△◇×▼■〜〜〜〜〜〜っ!?」

クリスカの言葉に唯依は声にならない悲鳴を上げ、またそれが聞こえたアルゴス小隊の面々も驚嘆の声が室内に響き渡った。



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