「タケルちゃん……わたしの声を聞いて、タケルちゃんっ!!」






マブラヴ オルタネイティヴ Fun Fiction



God knows... Episode 82 −2000.9 深紅−




2000年 9月29日 11:40 米国合衆国アラスカ州ユーコン陸軍基地 演習地域

タリサはそれがなんなのか解らなかった、もしくは何が自分の身に起きたのか認識出来なかったと言う方が正しい。

「なんだよ……あれはなんなんだよっ……なんだって言うんだよっ!」

地面の上で動かなくなり暗くなったACTVのコクピットで、コンソールパネルを殴りながらタリサは喚くしかできなかった。
そうしていなければ震えている体の理由を思い出しそうで、虚勢を張って声を上げていないとそれに取り込まれそうな気持ちに
なるのを必死に抗っていた。
Su-37の後ろから現れた機体に反応しようとした瞬間、まず片腕を斬り飛ばされた。
次は残っていた腕を肩から切り落とされ両足は一閃で膝から下を失い、それでも回避を試みた時にはバーニアを切り裂かれて更に
地上に向かって蹴り飛ばされて地上に落下した。
幸いな事にそこが林だった為にクッション代わりとなったお陰で、怪我と言えば後頭部をぶつけて首がむち打ちで済んだぐらいである。
そこにトドメとばかりにタリサの視界一杯に映し出された高周波刀が、残っていた頭部を真っ二つに裂いて地面に深々と突き刺さった
瞬間、正直死んだと思っていた。
完全に手も足も出なかった、そう思うと悔しさが沸き上がってきて認めたくない感情を覆い隠してしまい、幸運な事にタリサの
精神は安定していった。
やがて外から強制的にコクピットのハッチが開放されて、中を覗き込んできた男が声を掛ける前にタリサは外に飛び出した。

「お、おいっ……」
「ちっくしょーっ!!」

叫びながら空を睨み上げたタリサは落とした相手の姿をはっきり見ようとしてみたが、それよりも自分が翻弄されたクリスカ達が手も
足も出ない動きを違った視点で見る事で、自分がされた事を忘れて目を奪われていた。

「嘘だろ……あいつらが子供扱いかよ……すげえ……」

呆然と空を見上げるタリサに釣られて救助しにきたユウヤも空を見上げると、自分の知らない銀色に輝く戦術機がSu-37を翻弄している
動きに見とれてしまった。
ACTVより高機動な機体と背中にある大型フライトユニットから、これは空中戦仕様になっているとテストパイロットとしての見識から
理解出来たユウヤだが、それ以上に目を見張ったのは機体の動きその物だった。
それを見て閃きがユウヤの頭の中を突き抜けると、ここに来るまで自分が参考にしてトライしていた戦術機動と一致した。

「もしかして、乗っているのは白銀少佐かっ!?」

グルームレイク基地で見た映像と酷似した戦術機機動を見せるから間違いないと、そして全く違う発想から生まれた動きを直に見て
ユウヤは精神が高揚して拳を握ってしまう。

「あれから何度試しても同じ動きは出来なかったのに……本当に実力の差とでも言うのかよ」

タリサとユウヤは違った意味で空を見上げる視線は武から離れる事はなく、戦いの結末を見たくてその場から動こうとしなかった。
そんな観客がいるとは知らないクリスカはイーニァの悲鳴に顔の表情を歪めながら武御雷・零と対峙していたが、これが決定的な間違い
だと理解できたのは後で自分自身が恐怖を感じた時だった。

「くっ……」

襲い掛かってくる武に対してクリスカは反射的に突撃砲を武御雷・零に向けようとしたが、先に居合い抜きで繰り出された高周波刀が
銃を斜めに切り裂いてしまい役に立たなくなる。

「なんだとっ!?」

がらくたになった突撃砲を投げ捨てると、腕に内蔵されているモーターブレードを出して反撃を試みるが、今度は肘から先を切り
落とされてしまいその攻撃に唖然となる。

「そんな、ばかなっ……」
「やだやだぁ……こわいっ……やめてぇ……たすけてぇ……いやいやあぁああぁぁーっ!」
「イ、イーニァっ……」

そう呟きながらもクリスカは反対側の腕を使おうとしたが、同じように肘から斬り飛ばされて反撃する手立てが無くなった。
この時、イーニァに悲鳴を上げさせているのが誰なのか、目の前の圧倒的な強さを見せつけて存在している武御雷・零を相手するには
危険と感じたクリスカは戦闘を止めて撤退する事しか頭に浮かばなかった。
そこで戦意が無いと思わせる為に地上に降りる振りを見せて高度を下げると、地表付近で徐に全力噴射でソビエト軍管轄地まで逃げる。

「もう少しだから、落ち着いてイーニァ……」
「ころさないで……ごめんなさい……うああぁぁぁ……」

目と鼻の先にあった管轄地まで僅かな時間で辿り着いてここまで来ればもう大丈夫だと、ここは国連軍に提供されているとは言えソビエト軍の
管轄場所には手出しは出来なくなる、そう思ってクリスカは敷地内に足を踏み入れた直後気を抜けたのはほんの一瞬だった。
すぐに背後から感じる殺意に反応して振り返った時にクリスカは、いるはずのない武御雷・零の姿を視界に捉えて自分の甘さに気づかされた。

「逃げられると思ったなら大間違いだ……」

戻る途中に自軍から状況説明を求められて緊急通信回線を開いていたSu-37のコクピットに、割り込んで聞こえてきた武の声は沸き上がる
怒りを抑えているように低く重く二人の耳に残った。
その声を聞いてクリスカは思った……もし死に神と言う者がいたとすれば、目の前で大きな刀を振りかざして迫ってくるこれに
間違いないと。
ここでソビエト軍の対応は間違っていなかった、ただし普通ならという言葉が最初に付く場合に限るが今は違った。
警告を無視して進入してきた武御雷・零を取り囲むように十数機のSu-27が包囲したが、武の為にと霞の手によってフルカスタム
されたXM3と夕呼のお陰で現在世界最高の運動性能を持った怒りの化身は、既存のOSと機動概念しか持たない相手に猛然と牙を剥いた。

「オレの……邪魔をするなあぁぁーっ!!」

耳に響く武の怒りの咆吼に怯えていたイーニァはびくっと体を硬直させるが、ますます涙が止まらなくなり錯乱状態が酷くなってしまう。
そんなイーニァの様子を心配しているクリスカの前では、踊るように滑らかな動きと素早さで囲んでいるSu-27は武器やそれを持つ腕と
メインカメラのある頭部を次々と高周波刀で切り裂かれ胴体を蹴り飛ばされて無造作に地面に転がされていく。
ひっくり返った亀の様にまともに起きあがれなくなった仲間達の中をゆっくりと歩いてくる武御雷・零に、クリスカは自分がタリサに与えていた
恐怖が子供だましなような物だと知ってしまった。
目の前の相手は確実に自分達だけを殺す気で迫ってくる事に、つもりではなく本気でそうしようとしている事実に、目を離したら最後手に
持っている高周波刀で貫かれると感じて両手を失ったSu-37はそのまま後退する事しかできない。

「こんなばかな事が……そんなっ……」
「ごめんなさい……ゆるして……ゆるしてぇ……あうあぅぅ……」
「イ、イーニァ……」
「たすけて……ころさないでっ……いや……い、いやああぁぁーっ!!」

ここには米軍だって容易に入ってこられない場所なのに現実は大きく違い、今は極東国連軍から来た一機の戦術機が恐れも
遠慮も無く同僚の機体を戦闘不能にしていく様子に、クリスカの顔は前席で震えているイーニァと同じように青ざめ始めていた。
そしてイーニァの悲鳴がコクピットに響き渡る中、次々と仲間が倒されていく凄惨な光景を見ている間中にガチガチと耳障りな音が
自分の歯が立てているのだとクリスカはやっと気づいた。
この状況はユーコンHQにはソビエト軍から場違いな抗議として通信されてきたが、それよりも武が言葉通りに行動していると知り
遠くない先に自分達も同じ目に合う事を確信して室内のいた者たちの騒ぎは収まらない。

「大佐……」
「このままでは何もかも終わってしまう。中尉、何か手はないか?」
「無駄かもしれませんが、同乗していた帝国軍の篁中尉に話をしてみます」
「頼むっ、出来る限りの手を尽くしてみてくれ」
「はっ」

敬礼をして出て行くドーゥルにハルトウィックは一部の望みを掛けたが、無理だと思う考えが拭えず椅子に深く腰掛けたまま何も
映していないモニターに少し前に映し出された武の顔を思い浮かべて眉間に深い皺が寄っていた。
数日前から考えていた事が全て裏目になった事で協力を得る前に敵にしてしまった現実に頭を痛め、情けないと言われようがハルト
ウィックは神に祈るように目を閉じていた。
そしてその話に出ていた唯依は手術室の外で椅子に座り、霞が手にしていた鞄を膝の上に乗せて目を閉じて手術が終わるのを静かに
待っていた。
自分の服も鞄も霞の血が染み付いていたが着替える事もせず、待つ時間を使って今回起きた事の状況を整理していた。
何故今日が広報撮影なのか、その時間も場所も自分達のフライトプラント重なる部分が多く、これを偶然の一致で済ませる程には
唯依は愚か者ではない。
なにより実弾が装填されていた事が広報撮影事態が仕組まれていた事を裏付けいて、来る前に聞いた月詠の話が誇張された物では
無かったとため息を付きながら痛感していた。

「不意打ちと思うには十分すぎる事だったわ、でも仕組んだ者はこんな展開は想像していなかったでしょうね……」

これを画策した者に取って直接的な行動は脅しとかになれば良かったのかもしれないが、仕掛けた相手が悪すぎたと理解していた
のかそれとも今更理解しているのか……どっちにしろ後の祭りであろうと唯依は思った。
もう事故で済ませるなんてあからさまな事は出来ないだろうし、武が怒りを抑える理由はどこにもない。
ここで霞が命を落とす事になればユーコン陸軍基地の明日は無くなるだろう、そんな容易な未来を想像してしまいその時自分はどう
なっているのかと唯依は想像が出来なかった。
そんな時、廊下に響く足音から誰かが近づいてくると気づいて顔を上げて視線を動かすと、早足に来た一人の男が唯依の前に立つ
と簡単な自己紹介から話を始めた。

「私はイブラヒム・ドーゥル中尉だ、君は帝国軍の篁中尉だな?」
「はい」
「突然こんな事になって混乱していると思うがユーコン基地全体の為にお願いしたい事がある。現在ソビエト軍管轄地で戦闘行為
をしている白銀少佐の説得をして欲しい」
「何故それを私に?」
「我々の説得交渉は全て失敗に終わった、彼の直属の上司である国連横浜基地の香月副司令にも打診したが状況は好転しなかった」
「それで私に説得をしろと?」
「今の中尉の心境を思えば憤りを感じるのはもっともだが、それでもお願いしたい。このままでは……」
「何もかも露と消えますね、少佐の力を知っていれば」
「そうだ」

ドーゥルの話を聞きながら、唯依は自分の服と手に着いた血を見て言う事は決まっていると場違いにも穏やかな表情で答える。

「はっきり言って私には無理でしょう、だって白銀少佐は軍人として戦っている訳では無いのですから……」
「どうしてそう言える?」
「彼は一人の人間として、理不尽な行為で愛する者を傷つけられた怒りと悲しみで戦っているのです」

そう言い手術室の方に視線を向けると唯依の言葉を理解したドーゥルは、振り向いてその中にいる者の事を考えた。
そのまま背中を向けて黙り込んでしまったドーゥルに、武の事を伝えようと唯依は言葉を続ける。

「白銀少佐の行動理念、それは軍人としてでは無く自分の大切な者達の為に戦う事が全てに置いて優先されています。それを邪魔
する者や奪おうとする者は全て敵になります。それが強力な軍隊だろうが大きな国家だろうが関係ないのです、だから今の行動は
彼に取って当たり前な結果でしかありません」
「そう言う事だったのか……」

ここでドーゥルは武の気持ちを漸く理解出来た、それは人として確かに当たり前な行為なのだと……。
武が戦っている相手はBETAではなく同じ軍人だが、今はBETAと同じく敵として扱われているから軍人として言った言葉が
通じる訳がない。
自分が同じ立場と安易に入れ替えるまでもなく、武の行動は唯依が言った通り人として当たり前であり正しい行動でしかない。
しかしこのままでは被害は大きくなり、いずれは自分達もソビエト軍と同じ運命を辿る事になる絶望を実感してしまったのが表情に
でてしまったらしく、今度は唯依の方から話しかける。

「ドーゥル中尉、一つ確認したいのですが……」
「なんだ?」
「現在の死傷者の数は解りますか?」
「状況報告を聞いた限りでは負傷者は出ているようだが死亡者は出ていないようだ」

それを聞いて唯依は考え込む仕草をした後、もう一回質問をしてくる。

「白銀少佐に倒された戦術機はどのような感じですか?」
「そうだな、真っ先に撃墜されたこちらのACTVはコクピット以外破壊されただけで衛士の命に別状は無い、ソビエト軍の方でも武器や腕を
破壊されて戦闘不能になって地面に転がされているらしい。でもそれが……」
「……なんとかなるかもしれない」
「篁中尉?」
「まだ、最後の一線を越えてない今なら間に合うかもしれません」
「どういう事だ、中尉?」

確信に似たものを感じながら立ち上がった唯依は、霞の鞄を手にしたまま向かい合ったドーゥルに進言する。

「ドーゥル中尉、白銀少佐と話をする為に部下をお借りしたい」
「ああ、それでは私の指揮下にある者を準備させるので、自由に使ってくれ」
「それと私は自分の機体を使います、よろしいですね?」
「すべて君に任せる、なんとか事を収めてくれ」
「全力を尽くしましょう」

自分の意見を通して貰った事に敬礼で返した唯依は、手術室を見つめてから先に到着した輸送機の元へ向かう為に走り出した。
外に出て探すとすでにドーゥルから連絡が行ってたのか、ハンガー前で待機していたミグラント2は輸送コンテナ代わりだった
再突入殻を開放して唯依の機体の搬出作業を始めていた。
そして開いた輸送機のカーゴルームのハッチから中に入り、強化服の入ったケースを見つけて大きなコンテナの影に移動すると、
ロッカールームまで行く時間を惜しんで身につけていた血まみれの制服を脱いで強化服に着替えていく。
しなやかな白い肌が自分の機体と同じ色の帝国軍の強化服が覆い隠していく中、唯依は刃を交える事になった場合の時を考えて
XM3の事で月詠と話していた内容を思い出して呟く。

「XM3のリミッターを解除して何処まで受け流せるか腕次第だけど、やらなければ私の夢も消えてしまう……」

月詠程の実力が有れば拮抗出来るだろうと思うが唯依はそこまでの力はないと自覚している、だから攻撃は受けに徹するしか出来ない
だろうと決めて着替えが終わった姿で外に出て行く。
そこには唯依の事を待っていたのか国連軍の強化服姿の二人の衛士が敬礼で出迎えたので、そちらに近づくとこれからの事を話始める。

「帝国軍の篁中尉だ」
「ヴァレリオ・ジアコーザ少尉です」
「ステラ・ブレーメル少尉です」
「ドーゥル中尉から話は聞いていると思うが、今より二人には私の指揮に従ってもらう」
「「はっ」」
「戦術機に搭乗後、私と共にソビエト軍管轄地に赴いて現在戦闘行為をしている人物と話をする間、二人にはソビエト軍が介入しない
ように牽制してほしい」

詳しい事を聞かされていない上に唯依の口から聞かされた話に驚きながらも、ヴァレリオは牽制の度合いについて聞いてみる。

「牽制はどの程度まで?」
「話している間に行動する者がいれば、全力で排除して構わない。ただし、それに伴う責任は全て私が取る事を最初に言っておく」

あっさり答える唯依に難しい表情をするヴァレリオの隣にいたステラは、自分からも問いかける。

「中尉、警告も無しですか?」
「一度だけだ、あとソビエト軍以外でも介入しようとすれば同じように排除しろ」
「了解」
「他に質問がなければ二人とも戦術機に搭乗して待機、私の機体の用意が整い次第発進する」
「「はっ」」

話が終わり唯依に敬礼をしてハンガーの中に移動しようと二人が歩き出した時、近づいてくるジープが側まで来て停車すると乗っていた
中に救助されていたタリサが飛び降りるとヴァレリオに話しかけてくる。

「おいっ、二人して何処行くんだ?」
「任務だよ、ソビエト軍の所で暴れている奴の所までな」
「あいつらの所か、ならアタシもっ……」
「ACTVに乗っていたのは貴様だな、ならドーゥル中尉の所へ出頭しろ」
「誰だアンタ?」
「貴様らに撃墜された輸送機に乗っていた帝国軍の篁中尉だ」
「えっ……」

タリサは自分の言葉を遮った唯依を敵意剥き出しで睨むが、その答えに勢いが無くなり逆に狼狽えて表情が強張る。
それを唯依は冷静に見つめながら、タリサに霞の状態を教えて自分の置かれている状況を再認識させる。

「現在、一人が意識不明の重体で手術中だ。もし彼女に何か在ればお前には明日が無いと断言しておく。白銀少佐にする言い訳でも
考えておくんだな」

抑揚も無く静かな口調で話す唯依にタリサは事の重大さに黙り込むが、その後ろで聞いていたユウヤが唯依に話しかける。

「中尉、今の白銀少佐って言うのは?」
「お前は?」
「ユウヤ・ブリッジス少尉です、それで……」
「ここに来るぐらいなら名前を聞いた事があるだろう少尉、新OS【XM3】の発案と戦術機の新しい機動概念を構築した国連横浜基地
所属の白銀武少佐だ」
「やっぱりそうか……」

唯依の答えに納得して肯くユウヤと別に、ソビエト軍相手に暴れているのが極東国連軍のエースだと知ってヴァレリオとステラは
驚いた表情を見せるが、タリサだけはより深刻な顔になっていた。
そんなタリサへ向かって更に追い打ちを掛ける言葉が唯依の口から語られる。

「先程言った手術を受けているのはその少佐の恋人だ、この意味が解るなら貴様はドーゥル中尉の元へ出頭して大人しくしていろ」

青ざめるタリサにもう言うべき事はないと、背を向けて自分の機体に向かって歩き出した唯依の背中をユウヤは無言で見つめていた。
そうしていたのは唯依達より一日早くここに来ていて、これから始まるはずだった新型戦術機開発どころの話でなくなっていた状況に、
唯依がどう対処するのか気になっていたからであった。
だから、ついユウヤはその背中に向かってつい叫んでしまった。

「中尉、俺も一緒に行かせてくれっ」

その声に振り返った唯依は一瞬考える素振りを見せて、すぐにユウヤへ視線を合わせると口を開く。

「良いだろう、ただし私の指揮に従って貰うぞ」
「ああ、解ってる」
「なら急げ、遅れたら置いていく」
「了解っ」

敬礼をして踵を返すとユウヤは走り出しが、タリサの横をすり抜ける時に目でヴィンセントに後を任せると合図をしてロッカー
ルームへ向かった。
奇しくも唯依のこの選択がこの先共に戦術機技術開発を進めていく上で重要なターニングポイントになった事だけは、この状況の中で
得る事が出来た唯一の幸運だったのかもしれない。






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