呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


3000人の莫迦野郎様へ

 クレイジー80s…。
 狂った80年代。
 人間の能力を飛躍的に拡大する新薬の裏社会への流出、拡散に伴い、
犯罪も多様化、凶悪化の一途をたどる。
 80年代後半、既にWHO(世界保険機構)は、
強大化した薬品汚染者に立ち向かう為、
秘密裏にSBOWHO(世界保険機構第七局)を設立していた。
 彼ら無敵の戦士は「ディスインフェクター」と呼ばれ、
その存在を知る者達に、地獄の使者として恐れられた。
 クレイジー80s…。
 狂った時代が、彼らを生んだ!。

 知ってる人は知っている『コマンダーゼロ』(富沢順作)のオープニングへのオマージュである、(パクリではないと思う)『エスパー・ラプソティ』の冒頭だったりする
 たしか、こんなだったと思うのだ。なんせ、今から20年も前に書いていた学園エスパー小説のオープニングである。記憶が定かではないのだが。
 なんで、突然、20年も前の設定を引っ張り出してきたかというと、実はとんでもないものを手に入れてしまったからなのだ。

 タニオ・コバ製VP−70M。
 あの、先進的銃器メーカー。ヘッケラー&コック社(だから、ヘッケラー・ウント・コッホだと言うことは解っているのだ。しかし、脊髄にたたき込まれているのだ。ご寛恕願う)がポリマーフレームにスリーバーストを最初に採用したホルスターストックピストル。
1970年代前半に発売されたごついピストルに当時、中学生だった上杉明は惚れ込んでしまったのだった。
 ポリマーフレームである。軽いのだ。
 スリーバーストである。引き金を引くと三発の銃弾が飛び出すのだ。
 現在ではグロックやM93Rなどが存在するが、当時、これほどの近未来的なピストルはなかった。直線的なごついピストルと物語のヒロインの調和。
 かくて、向こう気の強い、自分以外の女の子は全て幸せになる権利がある。そう信じるディスインフェクター五神明香織(ゆきあお あかり)嬢のメインアームとして物語中(全4話中、2話まで完成、1話が中断。一応、最終話までのシナプスは完成)、そんなに活躍しなかった銃なのだ。
 いや、だって、彼女に巻き込まれちゃった、実は正規のルート(つまり表面上合法)による肉体改造者にして、国益保護団体のエージェントで、実はテレポーター(テレポートとその付随能力しかない)主人公。山岡 承(士郎でなくて良かった。二重に良かったお料理漫画にも、聖杯戦争に関係なくて)の愛銃S&W M459か彼の能力使った方が事件の解決が早いのである。
 この学園エスパー小説。無謀にも八つの物語で最終的に上杉明の八犬伝をやろうという遠大な計画だったのだが、あっさり挫折。(今考えても、無茶苦茶である)
 現実世界のVP−70はあっさり実銃は生産中止。
 しかし、日本での人気は結構あったのか、1982年、私が高校生の時に、当時のMGCから火薬式ブローバックモデルガンとして発売された。確か4,980円。買えない金額ではなかったが、ストックは後で販売されると言うことだったので、ストック付きをなどと思っていたらMGCはあっさり解散。ストックはごく少数が市場に流れたようだが、オークションでも3万を下ることはまずないレア・アイテムと化してしまっていた。
 ひとつの時代が終わったのだ。そう想っていた。
 ところが、つい、先日。何の気なしに、5年以上ぶりに『GUN』誌を本屋の店先で見つけてしまった。表紙はVP−70。手に取った私はその中のニュースに釘付けになってしまったのだ。
 タニオ・コバでVP−70をガスブローバック・エアガンとして発売する。
 物欲が頭をもたげた。タニオ・コバのサイトで発売日も調べた。
 そして、本日、『セントラルホビー』で現物を見てしまった。4丁入荷。既に2丁は売れ、展示品ともう一丁のみ、初回3,000丁は全部小売りに流してしまっているので、今を逃すと2〜3ヶ月は手に入らない。
 要するにこの日本にはこの日を待っていた莫迦野郎様が3,000人いらっしゃると言うことなのだ。
 わかっていた。今を逃せばMGCの二の舞になることが。
 もう、私は明日に幾多の希望をもった中学生ではない。今日と同じ明日を求めるへたれ中年である。
 しかし、その中学生時代の残滓をこの手にしても罰は当たるまい。
 結局、その、最後の一丁は今、私の目の前にある。VP−70M。正確に言うと、明香織ちゃんに持たせていたのは後期型なのだが、そんなのは知ったこっちゃない。沈黙しているVP−70をグリップすると、心地よい重さと共に、なにか、こみ上げてくる物があったりするのだ。

 なんで、沈黙しているかというと、弾とガス、買うの忘れたのである。
 私はある意味、3,000人の莫迦野郎様のなかの莫迦野郎オブ莫迦野郎かもしれない。(04,5,15)


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