呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


また、でたまか

 なんか、『でたまか』ばっかり追っかけている気がする。
 まあ、こういったアンチヒーローものはまず、金字塔として、素晴らしかった頃の。もしくは昔の(と、言わねばならないのが哀しい)、田中芳樹氏の『銀河英雄伝説』。その脇役としてのヤン・ウェンリー氏が揚げられる。(むろん、私個人にとっては彼は立派な主役なのだが、物語の構成上、やっぱり脇役なのだろうななどと思うのだ)
 で、この可能ならば日の当たる縁側で紅茶入りブランデーなど傾けながら、歴史書を読んでいられれば幸せ。ついでに朝寝。昼寝。夜寝ができればもっと幸せという若者の後継者として、やっぱり素晴らしかったころの。もしくは昔の(と、言わねばならないのが哀しい)、吉岡平氏の『無責任艦長タイラー』。その主人公ジャスティ・ウエキ・タイラーであった。このすちゃらか木琴玉すだれなタイラーこそ、ヤンの遺沢を継ぐべきものとして存在したのだ。
 彼がもっとも幸せだったのがおそらくは妻と子と3人暮らしでの惑星ゴロンボでの数年であったであろうことを考えるならば、この二人の精神は得てして近いのではないか。そう思うようになった。
 むろん、私とつきあいの古い読者の方々は、
 「こいつ、過去においては、この二人。おそらく両極端であったであろうといってたじゃねえか」
 と、言われる方がいるかもしれない。
 確かに過去にはそういう認識があったのだが。どうも、馬齢を重ねるうち、そうではないような気がしてきたのである。この二人。精神の根元は非常に近いのでは。などと言うとおそらく、ヤン・ウェンリーファンから嫌な顔をされるのだろうなと思ったりするのだが。
 まあ、それはともかく、現在、この二人を継ぐべき存在が、佐藤大介氏の『皇国の守護者』の新城直衛であり。『A君(17)の戦争』の小野寺業士であり、『でたまか』のマイド・ガーナッシュであろう。そう思うのだ。
 私は、個人的には某乳兄弟の忠臣を殺しちゃった王様や、破滅をもたらすと疎まれて、敬愛する兄さんと戦わねばならない弟や、もう、凄まじく久しぶりに来年の春に新作が出るのだが、しかし、ナツ・コバなどという巨漢の常識外れな女戦士などが飛び出してきて舞台を無茶苦茶にするんじゃなかろうななどと恐れている某作品の王様よりも、彼らの方が好きなのである。しかし、残念ながら残り2作は音沙汰がない。故に『でたまか』ばかり目立つのだ。
 しかし、話は少し脱線するが、新城直衛が田舎の庵で猫(といえるのであろうか)などなでながら、美しき両性具有者と妖艶な美姫にかしずかれているのも、マイド・ガーナッシュが四畳半で牛丼をかっ込んでいるところに可憐なお姫様がお茶のような液体など(お茶といえないだろうなあ。しかし、飲めるものになるのか?)淹れてくれるのも許せるのに、何故私はゴーシ君が自分のために作られた美少女や、吸血鬼のお姉さん。性格もスタイルもイイお姫さんと6畳間の大きなちゃぶ台で飯食っているのが許せないのであろうか。何故であろう。
 ま、それはともかく、今回、話は急転直下ジェットコースター化する。いやあ。すこしばっか急ぎすぎたのではないのであろうか。そう思ってしまうほどである。
 まず、アウトニアのマイドの元に駆けつける旧友たち。マイドの戦略を売り出すフランチャイズ。ときて、姫様の兄貴の死? コットン・先帝連合軍の敗北。アウトニア軍の参戦。皇帝の国に対する裏切り行為。終戦。銀河外からの侵略者の存在。
 もう、おなかいっぱいである。少しカドカワでのランクが上がったのなら、もう一冊くらいほしかった気もするのだが。贅沢というものだろうか。
 しかし、まさか牛丼が出てくる小説だからといって、フランチャイズはなかろうよ。そう思ったりするのだ。まったく、そんなホログラム程度で騙されるかなあと素朴な疑問である。しかし、このフランチャイズの結果である少数の敵の存在にフリーハンドを与えてしまうという奴。結構効くのだ。
 過去の歴史においても、戦艦ビスマルクを沈めるために、ロイヤル・ネービーはどれほどの軍艦を動かさねばならなかったか。それを考えるならば十分納得できる動きなのである。しかし、姉御。まったく良く頭の回るお人だ。補給がしっかり描かれているというのは何か読んで手安心できる。
 あと、兄貴の生死不明はキャラとしてもったいないなあと思ったり。『第七艦隊』であそこまで優しかった目が少し厳しすぎないかなと思ったりしてしまうほどである。
 最後に、皇帝陛下の処遇だが、これは甘すぎる。あそこまで極悪非道に描いてきたのだ。もう、これ以上はないくらいの目にあわせて(まあ一応非道いめにあってはいるが。自分が引き立てた庶民の親衛隊の大半にすら裏切られるのだ。彼にとってこれ以上の屈辱はあるまい)。まあ、死ぬって言うのは一瞬のことなので生きて塗炭の苦しみというのもありではある。
 まさか、臥薪嘗胆してこないだろうな。あのボンボン。(03,8,4)


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