呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


戦艦ヒンデンブルグの最後

 なんだか、久しぶりの佐藤大輔氏の新刊である。しかも僅かとはいえ新作付きである・・・。ああ。たった60枚とはいえ、貴重な、貴重な新作なのだ。この喜びをいかんせん。えらいこっちゃえらいこっちゃよいよいよいよい。
 しかし、真面目に私の人間、壊れてきているような気もしないのだが・・・。これで人間いいのだろうか。ま、誰も困らないわけであるし。このまま、ゆるゆると朽ちていくのもいいかもしれない。
 それはともかく! 新作である。新作。さすがは佐藤大輔御大。見事の一言である。ただ、短い。うーむ。短すぎる。せめてなあもう少し長くてもいいのではないだろうか? そう思ってしまうのである。というわけで、今回も、この辺で・・・。
 「たわけ!」
 おお、朱雀。直腸からの出血はどうなったのだ?
 「うむ、直腸潰瘍で偉いことになっている。が、まあ、そんなことはどうでもよろしい。今回、たったこれっぽっちで終わらせてしまうつもりなのか?」
 うむ、実はだ、過去の『呆冗記』を読み直していたらだな、初期の回はそんなに長くはないことを発見したのだ。これは由々しき事態だとは思わないか。
 「なんでだ?」
 長いだけならば、『じゅげむ』でもとなえておればいいのだ。だから初心に返ろうと思うのだ。
 「ほう、貴様、『じゅげむ』を唱えられるというのか?」
 おお、よーっく聴け。
 『じゅげむじゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょのすいぎょうまつうんらいまつふうらいまつくうねるところにすむところやぶらこうじのぶらこうじぱいぽぱいぽぱいぽのしゅーりんがんしゅーりんがんのぐーりんだいぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーのちょうきゅうめいのちょうすけ』
 はあはあ。どうだ。
 「それじゃあ、外郎売り」
 やってやろうじゃないか!。
 『拙者親方と申すは、お立ち会いのなかに、ご存じのお方もござりましょうが、お江戸を発って二十里上方、相州小田原一式町をお過ぎなされて、青物町をのぼりへおいでなさるれば、欄干橋虎屋籐衛門只今は剃髪致して、円斉となのりまする。元朝より大晦日までお手に入れまするこの薬は、昔ちんの国の唐人、外郎という人、我が朝にきたり、帝へ参内の折から、この薬を深くこめおき、用いるときは一粒づつ、冠の透き間より取り出す。依ってその名を帝より、とうちんこうと賜る。即ち文字には「頂き、透く、香り」と書いて「とうちんこう」と申す。只今はこの薬、殊の外世上に弘まり、方々に似せ看板を出し、イヤ、小田原の、灰俵の、さん俵のと、いろいろに申せども、ひらがなをもって「ういろう」と記せしは親方円斉ばかり。もしやお立ち会いのなかに、熱海か塔ノ沢へ湯治にお出になさるか、または伊勢参宮の折からは、必ずお門違いなされまするな。お登りならば右の方、お下りならば左側、八方が八棟、表が三棟玉堂造り、破風には菊の桐のとうの御紋を御赦免あって、系図正しき薬でござる。イヤ最前より家名の自慢ばかりもうしても、御存じない方には、正真の胡椒の丸呑、白川夜舟、さらば一粒食べかけて 、その気味合いをお目にかけましょう。先ずこの薬をかやうに一粒舌の上に載せまして、腹内へ納めますると、イヤどうも言えぬは、胃、心、肺、肝が健やかになって、薫風喉寄り来り、口中微涼を生ずるが如し、魚鳥、茸、麺類の食い合わせ、その外、万病速攻あること神の如し。さてこの薬、第一の奇妙には、舌の回ることが、銭独楽が裸足で逃げる。ひょっと舌が回り出すと、矢も楯もたまらぬじゃ。そりゃそりゃ、そりゃそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ。アワや喉、サタラナ舌に、カゲサ歯音、ハマの二つは唇の軽重、開口さわやかに、アカサタナハマヤラワ、オコソトノホモヨロヲ、一つぺぎへぎに、へぎほしはじかみ、盆豆、盆米、盆ごぼう、摘蓼、つみ豆、つみ山椒、書写山の社僧正、粉米のなまがみ、こん粉米の小生がみ、繻子、ひしゅす、繻子、繻珍、親も嘉兵衛、子も嘉兵衛、親かへい子かへい、子かへい親かへい、古栗の木の古切り口、雨合羽か、番瓦合羽か、貴様の脚絆も皮脚絆、我らが脚絆も皮脚絆、しつかは袴のしつぽころびを、三針はりながにちよと縫うて、ぬうてちよとふんだせ、かわら撫子、野石竹。野良如来、野良如来、三野良如来に六野良如来。一寸先のお小仏におけつまづきやるな、細溝にどぢよによろり。京の生鱈奈良なままな鰹、ちょっと四五貫目、お茶たちよ、茶たちよ、ちやつと立ちよ茶立ちよ、青竹茶筅でお茶ちゃとたちや。来るわ来るわ何が来る、高野の山のおこけら小僧。狸百匹、箸百膳、天木百杯、棒八百本。武具、馬具、ぶぐ、ばぐ、三ぶぐばぐ、合わせて武具馬具、六武具馬具、菊、栗、きく、くり、三菊栗、合わせて菊栗、六菊栗、麦、ごみ、むぎ、ごみ、三むぎごみ、合わせてむぎ、ごみ、六むぎごみ。あの長押の長薙刀は、誰が長薙刀ぞ。向かふの胡麻殻は、荏の胡麻殻か、真ごまがらか、あれこそほんの真胡麻殻。がらぴいがらぴい風車、おきやがれこぼし、おきやがれ小法師、ゆんべもこぼして又こぼした。たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つつたつぽ、たつぽたつぽ一丁だこ、落ちたら煮て喰を、煮ても焼いても喰われぬ物は、五徳、鉄きう、かな熊童子に、石熊、石持、虎熊、虎きす、中にも、東寺の羅生門には、茨城童子がうで栗五合つかんでおむしゃる。かの頼光のひざ元去らず。鮒、金柑、椎茸、定めて五段な、そば切り、そうめん、うどんか、愚鈍な小新発知、小棚の小下の、小桶に、こ味噌が、こあるぞ、小杓子、こもって、こすくって、こよこせ、おっと合点だ、心得たんぼの川崎、神奈川、保土ヶ谷、戸塚は、走って行けば、やいとを摺りむく、三里ばかりか、藤沢、平塚、大磯がしや、小磯の宿を七つ起きして、早天早々、相州小田原とうちん香、隠れござらぬ貴賤群衆の、花のお江戸の花ういろう、あれあの花を見てお心を、おやはらぎやという。産子、言う子に至るまで、此の外郎のご評判、御存じないとは申されまい。まいつぶり、角出せ、棒出せ、ぼうぼうまゆに、臼、きぬ、すり鉢、ばちばちぐわらぐわらと、羽目をはずして今日お出のいずれも様に、上げねばならぬ、売らねばならぬと、息せい引っぱり、東方世界の薬の元締め、薬師如来も照覧あれと、ホホ敬つて、ういろうは、いらつしやりませぬかぁ』
 はあはあ。しっかし・・・。二度とはしないぞ。
 「二度とさせるか!」
 しかし、今回、どこが『戦艦ヒンデンブルグの最後』だったのだろう・・・。(01,7,4)

 追伸 しかし、どういう訳かこの回派手に文字化けしていたのだが・・・。誰から何も言ってこなかったのは、きっと、このサイトにほとんど人が来ていないに違いないのである。(02,7,10)


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