呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。
雨の日は・・・
朝から、降り出した雨はやがて激しさを増した。
職場の窓から傘をさす歩行者や雨の中、水滴をはね散らす車の流れが見て取れる。私はふと目の前のパソコンから目を離すと過去の記憶を探し出す。
雨の日には過去を想い出す。
そう、あの少女はどこに行ったのだろうか。
学生時代のあの日も土砂降りだった。白いTシャツにGパンの少女と私は、あの日も激しい雨に降られて車に逃げ戻ってきた。大粒のあめに塗れた彼女のTシャツが素肌を透かし。差し出した白いタオルで水滴を拭われた背中の中程まで伸ばしたつややかな黒髪からかすかに石鹸の匂いがした。思わず見とれてしまった私に、
「もう、じろじろ見て、すけべ」。
そう、少女が口を尖らせて言った。しかしその目は怒ってはいない。
「とんでもない旅行になっちゃったね」
走り出した車の中で少女が歌うように言う。
「ま、こんな旅行(たび)も悪くはないさ」
信号で車を停めた私は少女の方を向いて微笑んだ。
少なくとも、あのときは互いの中にはお互いしかいなかったはずなのに。時は流れた。今は想いの中にしかいない少女のことを、激しい雨が私に想い出させるのだ。
すくなくとも、あのとき、違う道を選んでいれば、違う私がここにいたかもしれない・・・。
雨の日はそんなことを考えさせるのだった。