乳児期前半の反り返り
「よく反り返ります」 四ヶ月頃までの相談でよくあります。
頭から足先までを伸ばして、全身で後方 (背中側へ) に反り返ります。
横抱きしている時、縦抱きしている時に見られます。
ママからは 「抱っこに困る」 との悩みも聞きます。
ネット検索でも多くの情報が書き込まれています。
多くの情報で 「生後半年から誕生日頃迄に消失する症状であり、ごく一部に病気のサインである可能性が残る」 と解説されています。
誤った説明ではありませんが、誤解を残す解説と考えます。
“生後半年から誕生日頃迄に消失する症状です” を強く受け止めて症状を軽減させる努力をしないと、強まる方向に進む可能性が残ります。 病気ではなくても、育児で困惑する場面になります。
胎児は母親の胎内では丸まった姿勢で発育します。
誕生と同時に体幹は伸ばすことが可能となります。 意識的に伸ばすのでなく、丸まった姿勢から解き放された結果です。 初期には、体幹を伸ばすために作用する筋肉の力は弱いはずです。
生後六ヶ月頃までの、体幹前後の筋力バランスを観察します。 初期には前側が優位ですが、後側の筋力も徐々に増してきます。 この増加は頭の方から下位に進行します。 首のコントロールが先に獲得されるのはこの為です
生後六ヶ月頃に体幹をまっすぐに伸ばすまでに成長します。
何らかの原因で後側の力が優位な時に、反り返りが起こります。
この反り返りが一時的で異常に強くない場合は問題は有りませんが、頻回に起こり強まる場合には消退への努力が必要と考えます。
二〜四ヶ月頃では、横抱きにする時に反り返る、強く泣く時に反り返る状態が観察されます。
四ヶ月〜六ヶ月頃では、反り返りの傾向が強くなると、側臥位で反り返ります。
生後 半年を越えても反り返りのクセが残りますと、写真のように頭と足で支えて弓なりの姿勢を見せることがあります。 ブリッジ姿勢と表現できます。
さらに月齢が進むと、ブリッジ姿勢での移動が始まります。
ブリッジ姿勢での移動に付いて他で説明しています。 詳細な説明へ
ママの訴えにもあるように、育児では少し不便な状況です。
上に書きましたように、大半は病気との関連はありませんが、解消に努力したい状況です。
反り返りが強い乳児、たびたび反り返りを見せる乳児はうつ伏せを嫌い、寝返りが遅れる傾向にあります。
安心を強調した情報を信じて初期に解消の努力を怠ると、強い反り返りを見せる段階に進む可能性があります。
育児法を検討して、反り返りを防止する方法を探したいと考えます。
この HP では、乳児の抱き方によって反り返りを誘発していると考えます。 (反り返りの原因としての因果関係を強く指摘する意見ではありません)
【運動発達】 → [育児のアドバイス] → “乳児の抱き方” のコーナーで ‘ダメな抱き方’ としてし指摘しています。
誤った抱き方では、腕に赤ちゃんの肩をのせて頭が後ろに垂れさがり、反対側の腕で赤ちゃんのお尻を支える為に体にねじれと背中側へのまがり(後屈)の姿勢になっています。 母親の右手がベビーの股に入っています。 (写真の下)
市販のだっこ用具を使用されている時、頭が用具の外に出て、足も垂れ下がっている光景をよく見受けます。
良い抱き方では、軽く曲げた母親の左腕に頭をのせ、両腕で赤ちゃんの身体をかかえています。 外出時には右手で赤ちゃんの太股を握ると安全です。 (写真の上)
良い抱き方では、赤ちゃんの体は全体にねじれがない事、頭から尻にかけてかるくカーブを描いて前屈しています。 アゴはかるく胸に付くぐらいに なっています。
反り返りを見せる乳児の全てが、悪い抱き方によって育児をされたと断定はしませんが、悪い抱き方が反り返りを誘発している可能性はあると考えます。
反り返るクセは、うつ伏せ姿勢をさせるのにも障害となります。 先の発達に支障となり得ます。
この悩みで相談をされる保護者に抱き方を問いますと、多くの保護者が 悪い抱き方 をしていたと話されます。
「よく反り返って、抱っこに困る」 との悩みを持つママに、良き抱き方を勧めて反り返りのクセを少なくする努力を勧めています。
即効性はありませんが、「徐々に抱きやすくなりました」 との感想を聞きます。
三ヶ月ころの乳児の育児では、反り返りの防止を念頭に置き、正しい抱き方の実践を勧めます。
四ヶ月頃までの乳児で反り返りのサインを見せる乳児には、正しい横抱きを強く勧めます。
抱き方の改良を勧めましたが、加えてうつ伏せで遊ばせる時間を長くする育児を勧めます。
六ヶ月頃までの乳児で反り返りをよく見せる乳児には、横抱きの時間を設け、縦位置で遊ばせる時にも身体全体を前方 (腹側) に屈曲させる姿勢を長く保つ努力をしてください。 育児用品として “バウンサー” と呼ばれるベビーラックが市販されています。 この器具機能を保護者が代行してください。 保護者が床に座り、足を投げ出すか丸く組みます。 ここにベビーを座らせる姿勢です。
注 この HP では六ヶ月以前に保護者がお座りをさせる行為に反対をしています。 保護者が全身を保持してお座り姿勢を保つ行為には反対していません。 “保護者が乳児に支えなしでお座りをさせる” は乳児にとっては受動的です。 後者は保護者が全身を保持していますから、受動的に不安定な体位を強制されません。
バウンサーも上に勧めた体位保持姿勢と類似の姿勢になりますが、乳児には腰より上部の体幹保持が乳児本人に強制されます。 上の勧めでは保護者が体幹の保持をしています。 この違いを重視してください。
バウンサーの基本形式を検討しますと腰部で保持用のベルトが用意された腰掛けです。
傾斜は保たれ、臀部を沈み込ませる設計にはなっていますが、腰掛けの変形に過ぎません。 改良の努力は評価します。
六ヶ月以前の乳児に必要な胸部での保持が用意されていません。 以前のラックの改良型に過ぎません。
使用に際しては、このようなデメリットを承知してください。 ごく短時間の使用に限ってください。 四ヶ月以前での使用には賛成できません。
ネット・マスコミ・育児雑誌では、反り返りは異常でないとの解説も見受けます。
ブリッジ姿勢・ブリッジ姿勢での移動についても、異常でないとの解説を見受けます。
しかし、この解説には専門医の受診が必要な場合があると付記されています。
良性と問題のあるケースの区分は保護者には難題です。
反り返りが強い乳児・ブリッジ姿勢を見せる乳児では、運動発達が遅れる・上肢の支持機能が弱い・うつ伏せ姿勢が出来ない 等の状況が伴うとも書かれています。
保護者に不安を感じさせる状況です。
生後六ヶ月頃まで、時々弱い反り返りを見せる場合には家庭での育児配慮で反り返りは軽減できるでしょう。
この HP では、この様な姿勢を防ぐために正しい抱き方をして欲しい、四ヶ月頃までに気づいて解消する努力をして欲しいと説明しています。
六ヶ月を過ぎると反り返りは強まり、ブリッジ姿勢・ブリッジ姿勢での移動も観察出来るようになります。 この状況になれば、運動発達を検診する医療機関での受診を勧めます。
受診を待つまでの期間、自宅では上に説明した育児を実行されるように勧めます。
著明で経験豊富な小児科医が良性の反り返りと注意が必要な反り返りを判断するポイントをネットで説明されています。
そり返りやすかったり、そり返りが強くても、次のような状態であれば、心配のいらない「良性のそり返り」であることがほとんどです。
そり返りに左右へのねじれが伴わない。
リラックスした状態では、仰向けでねている姿勢で頭をまっすぐ(正中位)に保つことができる。
両腕、両手が後ろに引かれっぱなしではなく、リラックスした状態では、手を前に出したり、左右の手を同時に口へ運ぶことができる。
首の左右への立ち直り機能はよく育っている。
眼の動きや表情の発達は良い。
手の動きの発達は良い。
下肢(脚)の動きが良い。
一方で、そり返りがあって、後に問題を残すことも稀にあります。
そり返りに首や肩のねじれが伴う。
仰向けの姿勢で頭をまっすぐに(正中位)に保つことが3〜4ヵ月以降も安定してできない。
リラックスした状態でも、腕を前に出したり、両手を前で合わせることが5〜6ヵ月を過ぎてもできない。
首の左右への立ち直りが4〜5ヵ月を過ぎても充分でない。
そり返りがあって、このような状態も見られる時には、専門医に相談するのが良いでしょう。
注 引用しました説明に関して、医師名と掲載URI は省きました。 ネットでのトラブルを防ぐ目的です。
子供の健康からの加筆
チェックポイントを詳しく説明されています。 皆さんは正確に理解して区分は出来ますか。
子供の健康からは、
○ うつ伏せ姿勢を嫌わない
○ 四ヶ月頃までに肘支持が可能
○ 七ヶ月頃までに手支持が可能
月齢によって、この条件が判断の根拠に出来ると考えます。
管理データー UNDOU_kyotsuu KAISETSU_sorikaeri