人工内耳友の会−東海−
字幕のないビデオに、文字をつけて上映

2002.8.
字幕のないビデオに、文字をつけて上映する時

記/☆宮下あけみ☆

 聴者も聴覚障害者も一緒に1つのビデオ、テレビを楽しむには、「手話&文字(字幕)」が必要になります。しかし、現在では、日本語のビデオ&ビデオ・映画で、はじめから「文字(字幕)」が付いている物は少ないのが現実です。ここでは、ボランティアとして行った、パソコンとプロジェクターを使って、「字幕のないビデオ・映画の上映会の時に文字(字幕)を付けて行う方法」を、例をあげて記してみたいと思います。

【1/1枚のスクリーン。映像+文字2行の同時投影】
 
これは、「普通の字幕付き映画」と同じ様な感じである。ただ1つ違うのは、普通の字幕付き映画は、画像の中に文字が入っていて、文字の向こう側(背景)に映像が透けている。しかしこれは、映像はそのままで、文字部分の向こう側(背景)は単色である。

ある聴覚障害者関係のテレビのドキュメント番組(1時間)に字幕がなかった。これについて、テレビ局&制作会社等に連絡を取り、【文字版】(※)の了解を得た。そして「各地方ごとの放送」だったので、全国で聴覚障害者が集まり、営利目的ではない無料の「上映会」を行う事のご了解を得た時の話である。

 映像はそのまま出す。文字は、映像に重ねない、組み込まない。よって、プロジェクターは2台。映像部分と文字2行を別々のプロジェクターを利用、それを1枚のスクリーン上で重ねて投影した。「文字数・文字の投影時間」は、主にNHKの字幕を作っている「字幕制作共同機構」の基準を参考に、「(半角を含む)31文字まで、5−6秒表示」を行った。しかし、「おはようございます。」とか「ありがとうございました。」と言う「よく使う一言」については、表示時間がもっと短くても目にはいる物なので、臨機応変、その時の場面状況にあわせて変えていった。

 私自身もテレビの「一視聴者」であった。この場合は自宅で番組をテレビ録画してから「上映会」まで日にちがあったので、文字数・表示秒数にあわせて文字を要約するための調整作業を、かなり時間をかけて行う事ができた。

また、今では著作権等、聴覚障害者に対する「文字」の規制も多少緩和されてきたが、当時(2年ほど前)は、まだ厳しいままだった。しかし運が良い事に、この番組は、
@ 制作側としても本来は字幕を付けたいという意思があった。しかし、予算と全国での放送時間帯の関係上、つける事ができなかった。
A 番組の制作、監督、脚本等、主たる責任者が一人であった。
B その方と直接お話ができた。
C 番組内で使用している音楽(B.G.M.)はほとんど「音楽著作権フリー」だった。 
…等々いくつもの「運の良い条件」が重なったのである。

 「上映会」を行うには、【文字版】のような「文字だけの掲載(配信)」と違って、映像はそのまま使われる。映像が使われると言う事は、その番組に流れている、「音楽&音声」も会場に流れる。その時、「番組に使用した音楽の音楽著作権」が、文字化の著作権同様、大きな問題となる。番組内で「歌」として歌っていたものではなく、映像の「B.G.M.」としてホンノ少し流れて(使って)いた音楽に対しても、この「音楽著作権」はかかってくる。しかしこの場合はCに記したように、「著作権フリー」の音楽を使用していた。この点の確認、フォローも、この番組制作担当者が行ってくださった事は、本当に嬉しい限りである。

 結果として、普通の「字幕付き映画」と似たような形で、「上映会」として行う事ができた。

聴覚障害者の方からも、「内容が把握できて良かった。」と感想をいただいた。この時は、聴覚障害者の団体での「上映会」だったので、事前にアンケート用紙を配布しておき、終了後、皆様より、「文字・色・数」等、表示についてご意見をいただいた。これらが今後の「字幕上映会」のための勉強・参考になった事は言うまでもない。


【2/2枚のスクリーン。映像スクリーン+文字スクリーン】

この表示方法は、「主催者の意向」である。
 ビデオ自体は、あるグループの自主制作物で約2時間。ドキュメントである。全てそのグループに関係した人々、子供達の声、意見、感想、考え方で作られている。このグループに関係する人々が日本全国各地でこのビデオを使い「上映会」を開き、勉強を行っているものであった。

 ある地域での「上映会」の時、その主催担当者から連絡が入った。「私たちの地域で上映会を開く事になった。しかし、このビデオには字幕がない。自分としては聴覚障害者の方も気軽に参加してもらえるように、字幕を付けたい。お願いできないか。文字のつけ方や著作権等については、こちらから伝えておくので、直接、ビデオの責任者(本部)と連絡を取って欲しい。」と。勿論、私はこのグループの事もビデオの内容も何も知らなかった。
 早速、「本部」と言う所に連絡。
事前に地域の主催担当者が主旨を話しておいてくれていたので、「文字を付ける事」には快くご了解がいただけた。しかし、問題は、そのための「要約・文字数の表示秒数」の事である。
「宮下」より
  ・文字を入れて投影する方法には、いくつかある。
   A:映像に字幕を入れ、外国映画を見るように、事前に普通の「字幕付きビデオ」
を作ってしまい、それを本番で上映する。この場合、文字の向こう側(背景)は透けて、映像が見える。
B:文字を別に作り、映像と文字は別々に投影。それをスクリーン上で合成し、「映像+文字」にする。「字幕付き映画」のような感じにはなるが、この場合の文字の向こう側(背景)は単色。
C:映像と文字を、別々のスクリーンに投影する。
   

「本部」の意見
  ・映像に文字を入れないで欲しい。
  ・ビデオ自体が少し古い。多少なりとも、お金をいただいて上映するので、文字を入れ、合成のためにダビングし、今よりも映像の質が悪くなるのは避けたい。
・要約しないで欲しい。
=言葉の一言一言に、発言者の「思い」が込められている。外国に出品するた
めに英語の字幕をつけたが、その時にも、どのようにまとめるか、どのように記すか、一人一人に確認し、かなり時間をかけた。それでもやはり、全てが、発言者の納得のいくものにはならなかった。
  ・全文、出して欲しい。
    =上記同様。
  ・映像には文字枠を重ねないで欲しい。
  ・1本のビデオを全国で使い、「上映会」を行っている。
  ・「文字おこし」に時間が必要だろうから、通常は「上映会」の2日前に担当者に送るのだが、今回は特別に、「その2日前」に送っても良い。

 これを受けて、「主催担当者」に報告をし、どうするか、指示を受ける。

「主催者」の意見
  ・本部の意見を尊重したい。
  ・できるだけ多くの言葉通りの文字を表示して欲しい。「早口」とか「早いナレーション」はないが、発言者は淡々と、言葉をつまらせながら話し続けているものもある。話の流れもあるが、スグに発言した文字が消えるのではなく、短い発言でも、1つ前の発言も照らし合わせながら見れるように、表示して欲しい。

 これらを総合して、結果として主催者の意見を尊重し、スクリーン2枚を横に並べ、1枚に映像、もう1枚全面に字幕を表示した。最大、横15文字、縦7行。発言者が変わる時には行をあける。発言が長い時には、必要に応じて改行と空行を入れる。発言が重なっている時は、「読みやすいように」調整。必要に応じた振り仮名(ふりがな)の追加。一人の発言は、綺麗にスクリーン内に収まる様に、文字数の確認。そのための文字数の調整は任せていただいた。

 当日、実際に聴覚障害者の参加があったかどうかはわからないが、「本部」の方も来ていて、実際に、「映像と字幕の2枚スクリーンによる投影」をご覧になり、「確かに聴覚障害者には文字情報が必要ですね。」と、実感としてわかっていただけた。そして、上映会が終わり、機材の片付けをしている私たちの所にわざわざ聴者の方が来てくださり、コメントを下さった。「日本語字幕は、決して目障りな物ではなかった。このビデオの内容の重さから、発言を聞くだけでなく、文字として表示された事により、聞こえながらも、それを再度読む事によって、より深く理解し、考える事ができた。」と。

【3/1枚のスクリーン。映像の中に字幕を入れる。下2行】

20分程度のアニメーション。映像の中に文字を入れた。普通の「字幕付き映画」を想像していただければ良いと思う。下に横書きで2行。文字の向こう側(背景画)は透けて映像が見える。
白文字の黒縁取り。これだと、たいていの場合、背景の画像や色が変わっても、文字をはっきり見ることができる。

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 私自身の「上映会」の経験は、はじめの2種類。3つめは、仲間との「ビデオ作成」。
 専門の機材を持っているわけではなく、いわゆる「普通のパソコン、普通のビデオデッキ、普通のスキャンコンバータ(←これを持っている人は少ないかもしれないが…。)」で、自宅でカタカタ…行うだけである。よって、【3】のように「映像に字幕を入れる」と言う時には、映像のみのビデオに文字をつけて録画しなおすわけで、専門的に言えば、画質は元の物より落ちるのは確かである。あくまでも「趣味」の範囲である。

 本来であれば、はじめから、「日本語字幕」を入れて、映画やビデオ、番組を作っていれば問題はないのであるが、「字幕付きビデオの上映会」となると、作品の種類が限られてしまうのが現実である。

 「字幕がなくても、ボランティアがやってくれるだろう。」と思われては本末転倒である。また、「営利目的ではない。金銭は一切動かない。」と言うことが条件なので、今まで、「ビデオ・テレビ番組に字幕をつけて投影」するための作業に関して、何日かかっても、一切お金をいただいた事はない。

しかし、「どこにでも文字が付く事が当たり前」になるように、そして、制作側の制作過程の中に、「字幕」が付加的な作業ではなく、工程の1つとしてはじめから組み込まれていくように、今後も、全難聴や全日本聾唖連盟の運動とともに、微力ながら応援していきたいと思う。

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 今、私の、素人の趣味の範囲でできるのはここまでです。

上記の「体験談」のような「上映会」ではなくても、結婚披露宴で上映する「ふたりの生い立ちビデオor写真」を事前にお借りしてパソコンに取り込み、コメントや説明を文字にして入れ、当日、投影する…。新郎新婦と打合せをし、話を聞きながら、パソコンで作っている作業(時間)は、私にとって、とても楽しいひとときでもあります。

 【2】の時には、ビデオが届いたのが本番4日前。作り物ではなく「ドキュメント」ですから、シナリオも台本もありません。ただただ、ビデオを見、聞きながら、まず、「文字おこし」です。日中、仕事をして、帰宅してからの作業。「文字おこし」をして、それから表示に関する調整。一口に「文字おこし」と言いますが、私の場合、素人ですから、そのビデオの何倍もの時間がかかります。しかし、運の良い事に、4日間のうち、休日が1日、間に入ったので集中して作れ、「字幕」としての制作後も、自宅で何回か確認ができました。(文字表示の秒数も計るので、1回の確認に、ビデオと同じだけ時間がかかります。ですから、2時間ビデオの確認は、最低、1回2時間かかるんです…。)

 以前、手話通訳に関する勉強会の場で、「字幕のないビデオ上映会の手話通訳の難しさ」があがりました。もう、何年も前、ある方が、「何でも手話で対応しようとするには限界がある場合がある。手書き要約筆記では、映画を手書きで文字におこして、それを投影すると言う方法を取った事がある。」と話をして下さいました。私はこの「手書き要約筆記者による字幕の上映会」を見た事はありませんが、手話通訳士協会会報「翼」2002年8月号に、全国要約筆記問題研究会理事長の太田晴康氏が、1974-5年に、手書き要約筆記の方が、「シナリオ」をロールに書き写し、それを上映した時の様子、書く時の工夫等を書かれていますので、きっと、その事かなぁ…と、今、思いました。

 当時は、ロール&OHP。今は、パソコン&プロジェクターと機材は変わりましたが、「どこにでも文字が付く事が当たり前」な世の中には、まだ、なっていない事は確かです。文字があり、手話がある。テレビであれば、「文字」でも「手話」でも、利用者が自由に選べる…。そして、【文字版】や「字幕付けのボランティア」が、発展的解消(消滅)を迎える事ができたら、それはステキだなぁ…と思います。

※【文字版】
字幕のないテレビ番組で、聴覚障害者の方からリクエストをいただいたものを、テレビ局・制作会社の方々と連絡を取りながら、「音声等」を「文字化したもの」です。
以下のURLに今までの【文字版】がありますので、宜しければお目を通してみて下さいね。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~momo1/sub1/akemizo.htm

☆宮下あけみ☆【E-mail】akemizo@beige.ocn.ne.jp



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