No. タイトル システム 登録日 改稿日
0090 それぞれの選択 テラ 01/04/04 01/04/05



はじめに

 このシナリオは、『テラ:ザ・ガンスリンガー』の使用を想定して書かれた。
 しかし、『Bea−Kid’s』などの西部劇物やファンタジーでも使用可能である。

 PCの内の1人にアーキタイプ“ドク”を持たせる事を推奨した方が良いかもしれない。ただし、絶対に必要という訳でも無いので、推奨するか否かは以下のシナリオを読んでマスターが決定して欲しい。



登場NPCおよび重要事項

ダコタ テラ中西部の田舎町。鉄道会社が支線を敷く計画を立てた為に、揉め事が起こる。
スー族 ダコタの近くにある“聖地”を守る事を至上命題とする好戦的なオウガ部族。荒野で狩猟生活を送っている。
ショショーニ族 人間の入植に伴い、争いを避けて共存を選んだオウガ部族。ダコタで牧場を経営しているが、台所は苦しい。
支線敷設部長 マザータウンから伸ばす支線の敷設に関する全権を鉄道会社から与えられている重役。マザータウンにおいては、正に王侯貴族そのものである。
砦の司令官 ダコタ近くの砦に左遷されてやってきた軍人。支線が敷かれてダコタが大きくなれば、自分の地位も上がって東部に帰れると信じている。
ワイルド 荒野でスー族ばりの狩猟生活を送る変わり者の人間。支線が敷かれるとスー族の“聖地”の存続の問題に繋がるので、何とか解決しようと努力している。
姉と弟 死んだ父親は医者でワイルドの親友だった。ダコタの町外れに2人だけで住んでいる。



事前状況

 テラ中西部にダコタという名の田舎町があった。大陸横断鉄道の停車駅の1つであるマザータウンから馬で数日ほどの所にあるが、今はまだ支線が引かれていない。人口もそこそこ多く、インフラも揃っているので、周囲の農場・牧場と合わせて独立した経済圏を形成してている。

 ダコタの周辺地方には2つの部族のオウガがいる。
 1つはショショーニ族という者たちで、元は農耕中心の生活をしていた。人間の入植以降は、土地争いなどが起こる度に譲歩を繰り返して生活圏を狭め、その末に今では部族共同経営の形で牧場1つを所有するのみという状態になっている。人間の貨幣経済に従い、育てた家畜を売って代価を得ている訳だが、やはり差別から買い叩かれたりして生活は辛い。部族の民に働き口を与えて養う為にも、何とか別の現金収入の道を求めている。
 もう1つはスー族という者たちで、この地方にある“聖地”を守る事を至上目的としている。“聖地”とはオウガの古い墓地で、遺跡の類は存在せず他人には唯の平原にしか見えない。スー族は、荒野で狩猟生活を営みつつ、“聖地”をパトロールして人間が勝手に放牧地にしたりするのを防いでいる。“聖地”を守る為には躊躇わずに暴力を振るい、今でもそのスタイルは変えていない。しかしスー族の事情や価値観を人間が理解する事も無く、人間には「荒野の特定地域に巣食う野獣」と見なされている。

 町の近くには、地域を守る軍隊の砦もある。周辺の治安維持を任務としているが、鉄道も通っていない地方なだけに、人員も最小限しかいない。スー族を討伐する力など無いし、たまに出没する無法者集団も「保安官たちと共闘して“追い払う”」のが精一杯という状況だった。

 さてそんな中、鉄道会社が最寄のマザータウンから新たな支線を引く計画を立て、その候補地の1つにダコタの町も選ばれた。鉄道が通れば、この地方は飛躍的に発展する事になる。しかし、誰も彼もが列車が通る事を望んでいる訳では無かった。
 例えば、農場や牧場を経営する地主たちは、鉄道が引かれる事で自分たちの利益が損なわれるのではないかと心配した。「引いた線路の周辺の土地は鉄道会社の物になる」という“新ホームステッド法”は支線にも適用される。新旧2つのホームステッド法を巡る法廷闘争が各地で起こっているのは周知の事実だった。
 また、「鉄道が引かれれば町は急激に変化して、治安が悪化し、風情も失われる」「この地方の中だけで原則的に自給自足が成り立っているのだから、そのバランスを敢えて崩す必要は無い」といった意見もあった。
 この地方の大多数の住人たちは、不安を抱きつつも積極的な反対運動はせず、事態の推移を見守った。

 しかし、ワイルドという名の人間の男は違った。
 ワイルドは、オウガの生き方に強く共鳴して、荒野でスー族ばりの狩猟生活を送る人間である。人間には変人に見られているが、幾多の事件を通してスー族の信頼を得て“人間で唯独りのスー族の親友”という立場にいる。
 鉄道が引かれればスー族(聖地)が存亡の危機に晒される事を理解しているワイルドは、この地方に支線が引かれないように尽力した。

 ワイルドとは逆に、ただただ鉄道が来る事を望んでいる者もいた。砦の軍隊の司令官である。
 鉄道が引かれれば、この地方の人口は急激に増加し、それに伴って砦の兵員数も増やされる。左遷同然にこの地方の砦に来た司令官だが、兵員が増えれば自らの立場も上がる。大軍でスー族を討伐して実績を残せば、任期満了の折にプラス考査になって返って来る。昇進してもっと良い任地に配属されるのも夢ではない。そう司令官は考えた。

 そうこうする内に、支線を引く最有力候補地として、ダコタがある地方が選ばれた。それを受けて、ワイルドは鉄道会社の支線を引く場所を決める権限を持つ“支線敷設部長”に対してロビー活動を始めた。
 まずワイルドは、地主の不安を煽り、連名で「地元住人の既得権を完全に保障する事を求める」という内容の“地主の陳情書”を書かせた。
 また、以前から自らが書き溜めていた“スー族に関する研究書”をまとめた。
 この“地主の陳述書”と“スー族に関する研究書”を携え、昔のコネを通して、ワイルドはマザータウンにいる“支線敷設部長”との会見を実現させた。
 当初、“支線敷設部長”は単純に「既に開発された地域に鉄道を通した方が効率的だろう」と思って、ダコタのある地方を選んだ。しかし、住民やオウガとの摩擦が大きいならば、わざわざ苦労を背負い込む事は無い。無人の荒野に鉄道を引いても、いずれ人間の方が付いてくるのも確かな訳で、そこで“支線敷設部長”は条件付でワイルドの提案を受け入れた。
 “支線敷設部長”の条件とは、「スー族と協定を結ぶ事」である。「スー族は“聖地”以外の土地に一切の権利を主張しない」「鉄道会社は、“聖地”を通るような線路を作らない」という内容で、“支線敷設部長”としては「相手がオウガと言えども、協定書と言う形で確認しておけるならばワイルドの“研究書”の内容を信じても良い」「協定書締結を拒否するようなら、やはりオウガ(スー族)=野獣と考えざるを得ず、将来の禍根を絶つ為にも東部から軍隊を派遣して滅ぼしておこう」と考えた訳である。

 協定書の調印は、“聖地”の近くで、“支線敷設部長”とワイルドとスー族首脳の3者間で行われる事になった。“支線敷設部長”としては最終的に自らの眼でスー族の面構えを確認したかったし、ワイルドが仲介しなければスー族は人間と協定など結ぶ気は無かったので、互いに代理人を立てず本人同士が進める事になったのである。その結果、スケジュールの都合もあり、協定書の調印は1ヶ月後となった。
 「スー族と協定書の調印を行う」「調印が無事に済めば、この地域に支線は引かない」という取り決めは一般には秘密にされたが、町長、保安官、そして砦の司令官などの重要人物には伝えられた。

 司令官は、このまま協定が結ばれてしまっては鉄道が引かれなくなってしまうと知って、一計を案じた。
 まず、ショショーニ族を通じて、オウガの弓矢や小物などを大量に購入する。そして、子飼いの部下にオウガの扮装をさせて、各地の牧場に潜入して家畜を弓矢で殺す。そうして、「オウガどもは決まった地域の外に出て、人間の牧場に対しても破壊活動を行うようになった」との評判を立てさせる。そしうて伏線を張った上で、調印の行われるXデーに、オウガに変装した兵隊が“支線敷設部長”とワイルドを襲おうというのである。
 ワイルドは殺し、“支線敷設部長”は「誘拐して適当な所で解放してパトロール中の軍隊が保護する」という筋書きだった。

 オウガの評判を落とす計画は上手くいった。見るものが見れば、「家畜襲撃現場に残された矢や小物などはショショーニ族の物だ」とか「鍛えられた射手ならば、こんなにたくさんの矢を使わない。家畜を追い込んでから、わざわざ弓矢で殺そうとしたという感じだ」といった事が分かるのだが、そういった知識を持つワイルドは協定書の調印の準備の仕事でマザータウンにいて事件に関わる事は無かった。
 そうして協定書を結ぶ日になり、ワイルドと“支線敷設部長”はマザータウンからダコタの町を経由して、待ち合わせの場所へ向かった。敵意の無い事を示す為に“支線敷設部長”は護衛を付けずにワイルドと2人だけでいたのだが、それを待ち伏せした兵隊が襲った。兵隊はオウガの扮装をしていたが、ライフルを使っていたし、ワイルドにはすぐに真実が分かった。しかし何を言う余裕も無いまま、“支線敷設部長”を庇って傷つき、近くを通っていた急流の川に落ちた。
 “支線敷設部長”は訳の分からないまま意識を失い、「軍隊に保護」された形になり、そのままマザータウンに移送された。大事を取って入った病院の中で“支線敷設部長”は、今後の方針を決めかね、待機するしかなかった。

 砦の司令官の企みは大筋で成功したが、ただ、ワイルドの死亡が確認されていない事だけが画竜点睛を欠いていた。ワイルドが生きていて、“支線敷設部長”に「偽オウガだ」などと余計な注進をしたら全てが水泡に帰してしまう。そこで、念の為に「オウガと結んで“支線敷設部長”を暗殺しようとした」という容疑でワイルドに賞金を掛けた。



導入1:牧場主の依頼

 アーキタイプ“オウガ”または“ハーフオウガ”を持つPC、<追跡>系の技能が得意なPC向け。1人だけを選ぶ。

 PCはたまたまダコタの町を訪れ、酒場で休んでいると、牧場主たちが近付いてくる。リーダー格の男が代表して「PCはオウガの事に詳しい(または追跡などの技に秀でている)との噂を聞いたので、依頼した事がある」と切り出す。
 話を聞くと、「この近くを根城にする野獣のようなオウガの一族がいるのだが、1ヶ月ほど前から牧場の家畜を襲うようになった。いつも気付くと逃げた後で、このままでは被害が増えてしまう。そこで、跡を探るなどして隠れ家を探し出してもらいたい」との事である。
 PCの仕事は現場検証と追跡だけで、その後の事は犯人の規模の見当が付いてから改めて考えると牧場主たちは言う。
 報酬は後金で150ドルと安いが、拘束時間の短さと「戦闘はしなくても良い」という点を考えれば妥当な額である。

 PCは依頼を受けるものとして以降を進める。適当なストーリーフェイトを与える事。



導入2:賞金稼ぎ

 戦闘系PC向け導入。他の導入に適合しないPCは、こちらに組み入れる事。

 PCはたまたまダコタの町を訪れ、そこで手頃な賞金首の手配書を見掛ける。
 1つはスー族で、近隣の牧場主が賞金を提供している。手配書によると「この近くを根城にする野獣のようなオウガの一族がいるのだが、1ヶ月ほど前から牧場の家畜を襲うようになった」との事で、彼らを痛い目に遭わせて牧場に手出ししなくなるようにすれば依頼達成と見なされる。報酬はそこそこだが、導入2のPCで頭割りにしたら1人150ドルにしかならない。
 もう1つはワイルドで、砦の軍隊が賞金を提供している。手配書によると「1週間前、オウガと協力して、“支線敷設部長”の暗殺未遂事件を起こした」との事で、生死不明で身柄(死体)を差し出せば依頼達成と見なされる。報酬はかなりの高額(全PCが頭割りにしても1000ドル近くになる額)が提示されている。

 PCはこの手配書に興味を示すものとして以降を進める。適当なストーリーフェイトを与える事。



導入3:医者

 アーキタイプ“ドク”を持つPC用の導入。
 “ドク”がいない場合は、下記のPCが医者では無い場合を参照の事。

 PCはたまたまダコタの町を訪れ、雑貨屋で医薬品の補充をする。雑貨屋には小さな男の子が居合わせて、PCと店主のやりとりを聞いていたのだが、突然、「さっきは麻酔薬も消毒薬も無いって言ったじゃないか!」と食ってかかる。
 店主は、「タダでやれる薬は無いと言ったんだ」と応じて、少年を邪険に扱い店から追い出す。PCが訳を尋ねるならば、「あの少年は、十代半ばの姉と2人で町外れに住んでいる。父親は医者だったが、1年ほど前に事故で死んだ」「何に使うつもりなのか知らないが、数日前に急に医薬品が欲しいなどと言ってきた。しかしPCが予約した分しか在庫が無かったし、何より金を持っていなかったので売らなかった」と教えてくれる。店主としては、別に意地悪をしているつもりは無く、当然の対応と思っている。
 PCが雑貨屋から出ると、少年が待ち受けていて、「訳は言えないが、医薬品を譲って欲しい」とダダをこねるような調子で言う。

 PCはこの少年に興味を示して何らかのアクションを起こすものとして以降を進める。

 実はワイルドは、姉弟の父親と親友同士で、父親の死後は2人と親子同然の親しい間柄を築いている。
 ワイルドは兵隊から逃れて急流に落ちた後、何とか助かり、町の近くの洞窟に潜んでいる。幸いにも他の人間に気付かれる前に姉妹と接触を取る事ができたが、重傷で手当てが必要な状況である。姉は見よう見まねで手当てをするが、銃弾を体から抜く為にどうしても医薬品が必要で、それで弟が雑貨屋から無心しようとしていたのである。
「医薬品を譲る/譲らない」
「PCが自分は医者だと明かして『患者がいるなら案内しなさい。医者には守秘義務というものがあるから、見聞きした事を他所で言いふらしたりはしない』と約束する」
「少年の跡を付けて姉弟の家を見つけ、そこから姉が洞窟に向かう跡をつけてワイルドを発見する」
など、展開に差異はあろうが、最終的にPCがワイルドと穏便な状況で接触できる方向で誘導する。対決判定をするときは、姉妹側は常に失敗のカードを使用する事。

 ワイルドは、詳しい話ができるほど意識がハッキリしていない。<医術>判定に適当な達成度で成功したならば、ワイルドの体から銃弾を取り出して小康状態になる。ワイルドから話を聞けるのは、丸一日は経った後となる。
 ここでPCに適当なストーリーフェイトを与える事。


PCが医者では無い場合

 PCに“ドク”がいない場合は、非戦闘系でできるだけ金に余裕のあるPCから1人を選んで、この導入に割り振る事。
 この場合、NPCの姉は「一通りの<医術>を修めているが、金が無いので技能判定を試みる事ができない」という設定になる。
 PCが雑貨屋で羽振り良く振舞っていた事から、少年(弟)はPCに対して「これこれこういう医薬品を買って譲ってくれ」と無心する。買い与えるにしろ断るにしろ、その後もPCが関心を持つように誘導する。
 最終的にワイルドが潜む洞窟に辿り着き、姉が執り行う手術を見守るというように展開させる事。



導入のまとめ

 以下に導入までのタイムテーブルを示す。

時期  出来事
1ヶ月前  砦の軍隊が、オウガの扮装をして家畜を襲い始める。
1週間前  スー族と“支線敷設部長”が協定書の調印式を行う筈だったが、その前にワイルドと“支線敷設部長”は兵隊に襲われる。
数日前  姉妹が傷ついたワイルドを発見する。

 この後、導入別に少しずつ話を進めながらシーンを回して行く。導入1と導入2のシーンに関しては原則的に他のPCが登場しても構わない。しかし、導入3のシーンに関しては、担当PCが呼ばない限り、他のPCは登場できない。



本編:導入1&導入2のPC用シーン

 導入1と導入2のPCは、早期での合流を計る事。

 牧場主や町の人に聞き込みを行った場合に得られる情報を以下に列記する。PCが適切なロールプレイを行い、適当な技能判定に成功したならば、これらを教える事。

質問内容  回答
オウガについて  よく分からないが、過激派(=スー族)と穏健派(=ショショーニ族)がいる。賞金が懸かっているのは過激派の方で、以前は特定地域内から出てこなかった。1ヶ月ほど前から牧場の家畜を襲うようになったが、深夜に隙を見てやってくるので現場に出くわした者はいない。
 穏健派の方はこの地方でも最大規模の牧場を共同で経営している。皆、何となくそこで育てられた家畜を口にするのは気味が悪いと思っているが、安いのでそれなりに繁盛している(現実は、差別から買い叩かれて、売上の割に収益が上がらないという状態)。
ワイルドについて  荒野で狩猟をして暮らし、オウガの過激派(=スー族)とも親交があると噂される変人。東部出身で学もあるらしいが、口を開くと“大自然”だの“精霊”だの“先住民族(オウガの事)”だのと煩い。そういった奇癖を除けば悪い奴ではない。
 ダコタに鉄道の支線が通る計画があるのだが、新旧ホームステッド法の解釈問題から地主たちは計画に反対していた。ワイルドは、その反対運動の先頭に立ち、マザータウンまで行って鉄道会社の“支線敷設部長”と会見したと聞いている。噂ではその努力が実ってダコタに支線は敷かれないと聞いていたのだが、何時の間にか「“支線敷設部長”暗殺未遂犯」としてワイルドに賞金が懸かっていた。事情はよく分からない。


 牧場主に案内されて、「オウガによる家畜襲撃現場」に行ってみると、牧草地の片隅で数頭の牛が殺されているのを目にする。
 現場検証に必要な技能と、成功したときに分かる情報を以下に列記する。

使用技能 目標値  情報
追跡 15  矢の使用量が多過ぎる。下手な射手が、家畜を追い込んでから、わざわざ弓矢で殺したという感じに見える。牛も殺されただけで持っていかれた跡は無い。
 全ての足を革袋で包んだ馬の足跡が残っている。20頭ほどいたと思われるが、全て同じように革袋で包まれた足跡である。
エチケット:オウガ 10  使われている矢や、その他の小物などの遺留品は、全てショショーニ族製である。“聖地”を守る為に武力を振るっているのはスー族で、彼らは自分の武器は自分で作る。ショショーニ族は、牧場を経営して人間のような暮らしをしている筈だ。
エチケット:カウボーイ
または
エチケット:オウガ
15  <追跡>判定で革袋で包まれた馬の足跡に気付いた場合、以下の事柄を思い出す。
 人間の馬には蹄鉄が打ってある。オウガの馬に蹄鉄はついていない。馬の足に革袋を括り付ければ、その馬に蹄鉄が打ってあったかどうか、足跡からは分からなくなる。


 足に革袋を付けた馬の足跡を辿ると、軍隊の砦に着く。
 隠れて外から砦を見張るなどすると、夜半に民間の荷馬車がやってきて、荷物を降ろしていく。<観察>に成功すれば、荷物は弓矢やオウガの民芸品(小物)である事が分かる。
 荷馬車の御者はショショーニ族の男で、砦の帰りにダコタの町で買い物をして、自分たちの牧場に帰って行く。その途中で接触して話を聞く場合、当初は白を切るが、「オウガを裏切っているだろう」と指摘すると動揺して「砦の司令官が高く買ってくれると言うから、秘密裏に弓矢や民芸品を売っているだけだ。部族の為に金が必要なんだ」と口走る。司令官が弓矢を何に使っているかについては、蒼白な顔で「知らない」と繰り返す。



本編:導入3のPC用シーン

 手術から一昼夜経つと、ワイルドは目を覚ます。暫くは記憶が混乱しているが、PCが話し相手になる事で全てを思い出す。
 ワイルドは、自分と“支線敷設部長”を襲ったのは、下手な変装をした砦の兵隊たちであると分かっている。“支線敷設部長”の安否を気遣っているが、PCが町で情報を仕入れて「マザータウンの病院にいるらしい」と教えれば安心する。

 ワイルドは全てを話した上で、「このまま放っておけば“支線敷設部長”はスー族に襲われたと信じてしまい、遠からず強力な軍隊が派遣されるかもしれない」と訴え、PCに助力を依頼する。
 ワイルドは、「マザータウンにいる“支線敷設部長”に会って真実を伝えれば、間違い無くもう一度ダコタまでやって来てくれる。そうして本物のスー族に会ってもらい、無事に協定を交わせば、『襲ったのは兵隊だ』と証言してくれるに違いない。鉄道会社の部長の証言ともなれば判事も無視できないから、きっと司令官を有罪にできる」と自信を持って言う。
 ただ、まだワイルドは起き上がれるほどに体力が回復しておらず、そこで「ワイルドの手紙を持ってPCに代わりにマザータウンに行って欲しい」とお願いされる。



結末1:ワイルドに協力する

 PC全員がワイルドに協力する方向でまとまるならば、PC同士のコネなどを利用して集合するように誘導する。
 PCの一部は、マザータウンに行く事になる。“支線敷設部長”は大事を取って休んでいるものの怪我を負っている訳では無い。鉄道会社でワイルドの紹介状を見せると、拍子抜けするくらい簡単に“支線敷設部長”と会える。“支線敷設部長”と言えば、マザータウンにおける王侯貴族のような地位なのに、非常にフランクな人物で、蒸気自動車を仕立ててPCと共に大急ぎでダコタへ行ってくれる。

 残ったPCは、ワイルドからスー族への連絡を依頼され、彼らの慣習なども教えられる。
 スー族は、
「銃器を準備している者は警告無しに攻撃する」
「銃器をすぐに取り出せる所に置いている者(<ゲットレディ>などですぐに準備できる武器を持っている者)は、まず武装解除するように警告して、従わなければ攻撃する」
「取り出しにくい場所などに仕舞っておけば、銃器を持っていても問題にしない。剣などの銃器以外の武器は全く問題にしない」
という方針を取っている。警戒されない状態で、特定の時刻に特定の場所に赴き、ある合図を出すと向こうからやって来る。
 スー族は、「以前の協定調印が、兵隊によって邪魔されていた事は現場の様子から分かっていた。しかし、人間の問題に干渉するつもりは無いので黙っていた。兵隊が妨害すると言うならば、その妨害を自力で撥ね退けるような者でなければ、協定を結ぶ気は無い」と言う。日を改めて協定を結ぶ件については了承する。

 PCが“支線敷設部長”を連れて来れば、ワイルドの立会いの下にスー族と協定を結ぶ事ができる。
 しかし、その帰りに、事態を察知した兵隊たちに襲われる。待ち伏せの為に兵隊は散開しているし、一部は“支線敷設部長”の護衛が引き受けてくれるので、PCには適当な数の敵の相手をすれば良いという状態になっている。クライマックス戦闘を演出する事。
 兵隊の待ち伏せをPCが警戒して作戦を立てていた場合は、マスター判断で敵戦力を減らしても構わない。

 無事に兵隊を倒して、“支線敷設部長”を安全な所まで送り届けると、PCに1人当たり350ドルの礼金が支払われる。
 導入3のPCには、ワイルドから治療代として150ドル相当の砂金が渡される。結局、PC1人につき合計500ドルの収入になる。
 司令官を生け捕りにしたならば、やがて裁判が開かれ、死刑判決が下る。
 町の人はワイルドやPCを褒め称え、特に姉弟は導入3のPCに大きな尊敬と感謝の念を向ける。



結末2:ワイルドを売る

 ワイルドの賞金に目が眩んだ場合、導入3のPCがその気になれば、簡単に捕らえる事ができる。ただし、賞金を手に入れるのは容易で無い。
 賞金提供者の司令官は、PCに対して首実検の為に砦までワイルドを連れて来いと言う。行くと、ワイルドが生きているならまず殺して、その後で「似ているが別人だ」と言い張って賞金を払わない。PCが煩く言うようなら、戦闘を仕掛けてくる。“結末1”の戦闘と違って分散もしていないしPCの味方もいないので、かなり大きな戦力を相手にしなければならない。
 賞金を得る為には、こういった事を想定した上で、保安官を巻き込んだり、衆人環視の中で首実検が行われるように手配しなければならない。どうしても「別人だ」と言い張る事ができそうになければ、司令官は渋々と賞金を支払う。

 ワイルドが殺され、支線がダコタを通る事が決まると、「オウガが家畜を襲う」という事件は起こらなくなる。よって、こちらの賞金はPCのものとなる。

 ワイルドが死ぬ結末を迎えた場合、途中の展開にもよるが、姉弟やスー族はPCを仇と思う。

 姉弟は、PCに犯罪の濡れ衣を着せる事で復讐を果たそうとする。
 例えば、「人目につかない場所で話がある」と言ってPCを路地裏に誘い込み、それから小型拳銃で自分自身を撃ち、銃声を聞いてやって来た町民に「PCが自分たちを撃った」と主張する。姉弟は<イノセント・アイズ>や<童顔>などを駆使して、この強引な訴えを信じさせようとする。
 全PCを罠にはめる事ができそうにない場合は、導入3のPCを優先する。
 PCが裁判を受けるにしろ、逃亡するにしろ、緊張感あるクライマックスを用意する事。

 スー族は、精霊や弓矢を使ったオリジナルのマニューバ(<シュート・ザ・ムーン>や<フォーリングスター>に相当する弓矢用のマニューバ)を使う上に数も多く、砦の兵隊を上回る戦闘力を有する。PCが“聖地”の中に入るような事があれば、問答無用で波状攻撃を仕掛けてくる。
 PCがダコタから逃亡した場合、適当な難易度で<サバイバル>の判定を行わせて、失敗すると“聖地”に迷い込んでしまった事になり、スー族の襲撃を受ける。



さいごに

 No.0089に引き続き、NHK海外ドラマ『ドクター・クイン〜大西部の女医物語』を元ネタにしたシナリオである。今回は第2シーズン第10話『お尋ね者(原題:Sully's Choice)』からインスパイアされた。
 「蹄鉄の跡を隠す為に馬の足に革袋を括り付け、インディアンの振りをした白人が、強盗を働く」という仕掛けに関しては、NHK海外ドラマ『ヤングライダーズ』第1シーズン第9話『蛇の入れ墨(原題:A Good Day to Die)』を参考にした。

 『ドクター・クイン〜大西部の女医物語』に関しては、No.0089の“さいごに”を参照の事。
 『ヤングライダーズ』に関しては、海外ドラマ総合データベースヤングライダーズのページSLIT OF HAZEThe Young Riders Fan PageGreen Thumb第1シーズン・エピソードガイドなどを参照して欲しい。
 興味のある方は、検索エンジンなどで関連サイトを探すと良いだろう。

 このシナリオもNo.0089と同じく、1回目のセッションでは『OUTLAW』を使用した。2001年に『テラ:ザ・ガンスリンガー』を使用して2回目のプレイを行い、本シナリオは2回目のセッション内容に準拠している。




シナリオ書庫に戻る

TOPページに戻る