No. タイトル システム 登録日 改稿日
0089 贈り物 テラ 01/03/22 01/03/25



はじめに

 このシナリオは、『テラ:ザ・ガンスリンガー』の使用を想定して書かれた。
 しかし、『Bea−Kid’s』などの西部劇物やファンタジーでも使用可能である。

 PCの内の1人にアーキタイプ“ドク”を持たせる事を推奨した方が良いかもしれない。ただし、絶対に必要という訳でも無いので、推奨するか否かは以下のシナリオを読んでマスターが決定して欲しい。



登場NPCおよび重要事項

田舎町 大陸横断鉄道からもその支線からも遠く離れた田舎町。一通りのインフラを備えている。
難民 開拓者崩れのテント生活者たち。安価な労働力として田舎町の外れに住んでいる。
薬屋 闇市の薬屋。店主は医学生程度の知識しか持ち合わせていない。お金の為に、麻薬から専門薬までを扱い、ニッチな分野なのでそこそこ儲けている。
部隊長 砦の長。オウガ差別主義者であり、上官の命令ならば良心も麻痺するタイプの軍人でもある。
マック 砦の軍隊に所属する兵士。田舎町への潜入任務を拝命するが、基本的に「後先を考える」「場の空気を読む」という事をしない性格なので、事態をややこしくしてしまう。
士官 砦の兵士で田舎町への潜入工作任務に当たっている。シナリオ前半での障害となるNPC。
教条主義者 法に従って生き、それなりの社会的地位も持っているが、ヒトとして持っているべき何かが欠けている人物。狂った価値基準故に、軍隊に乗せられて闇市の取締りに動いてしまう。



事前状況

 舞台はテラ中西部の田舎町。大陸横断鉄道からもその支線からも遠く離れ、最寄の駅まで馬車で1週間以上かかる真性のフロンティアである。

 田舎町は、旧ホームステッド法により自分の土地を得た農民たちの交流の場としてそれなりに栄えており、保安官事務所、教会、公証人役場、商工会議所、酒場、雑貨屋といった一通りのインフラを備えている。

 田舎町から徒歩10分程度の所に、難民キャンプがある。難民たちは、開拓者として身を立てるのに失敗したものの野垂れ死ぬには至らなかった者たちで、町から遠からず近からずの場所にテントを張り、内職のような事をして糊口をしのいでいる。

 また、難民キャンプから少し離れた所には闇市が立つ場所がある。何軒かの掘っ立て小屋があり、身分を問われる事も無く誰でも雑貨、食料、薬品などを買う事ができる。町では法律で武器や酒の取引が制限されていたり、商人たちが価格カルテルを組んで安売りができないようにしたりしているのだが、闇市ではそんな法律・約束事には無頓着に売買が行われている。闇市は、町の商店では歓迎されない難民や賞金首などが利用している一方で、小回りが効くところから一般市民も便利に活用している。

 そういう理由で、田舎町の人間や農夫たちは、難民や闇市を「いかがわしいモノ」として蔑視する感情を持ちつつも、積極的に排除しようとはしていない。

 田舎町から馬で2日間ほどの所には、オウガの村がある。今現在は、天候不順などの影響で苦しい生活を強いられており、体力の無い者が倒れたりしている状況にある。もっとも、彼らの長い歴史の中では何度もそういった時期を体験してきたので、余り大げさには考えていない。

 田舎町とオウガの村の中間やや外れの位置に、政府軍の砦がある。つい2年ほど前に派遣されたばかりの部隊で、辺境にも関わらず一個大隊が駐屯している。一般に辺境にも強盗団対策などの為に一定間隔おきに軍の砦が築かれ駐屯するが、それにしても地政学的に考えて明らかに大規模すぎる兵員がこの砦に投入されている。
 実は、オウガの村の近くに良質の赤石鉱脈があるという情報があり、近い将来にその権利を得ようと考えている東部の有力者が、前準備の為に派遣したのである。
 町の人間たちは、軍隊の事をそれほど気にしていない。
 オウガたちは、本能的に不穏な空気を感じて警戒はしているが、過剰な反応はしないように気を付けている。

 さて、そんな中、季節は秋から冬になろうかと言う頃、砦で発疹チフスが発生した。兵員の数に比べて兵站が貧弱だった砦の部隊は、軍医や衛生兵の数も足りず、事態に気付いた頃には兵員の半数が死亡ないし重態になっていて、戦闘力は著しく低下していた。砦の部隊長は、東部の有力者に指示を仰いだ上で、非人道的な作戦を発動する。
 その作戦とは、オウガの村に発疹チフス菌をばら撒こうというものだった。
 将来、この地方に鉄道の支線が引かれ、赤石採掘を行う際、オウガが障害になるようならば難癖を付けてでも実力で排除する心積もりが東部の有力者にはあった。しかし、現段階では強引に事を進める為の法的な口実の準備(ホームステッド法の観点からも、オウガは自分の村の土地を正当に所有している事になっているので)がなされていないし、ここに赤石鉱脈がある事をまだ他の人間に気取られる訳にはいかない。だから、今はまだ、軍隊がオウガを攻撃する事はできない。
 しかし、「自然発生した熱病でオウガが勝手に滅んだ」というのであれば、何の問題も無い。砦の兵員の減少は大損害だったが、これを利用してオウガを滅ぼせるならば、損害の元が取れる……そう東部の有力者は考えた。

 砦の部隊長は、非道な命令に対して良心の呵責を覚える事も無く、むしろ「グッド・アイデアだ」とすら思った。
 発疹チフスの発生が確認された時点で、砦は外部との接触を絶ち、箝口令も敷かれた。発病した者を砦内部に残し、元気な者は外で野営させた。部隊長は、主だった者以外には作戦の概要を教え無いまま、以下の作戦を実行した。

@発疹チフスはシラミを媒介にして感染する。「援助物資」と偽って、発疹チフス菌に汚染された毛布や衣料品を含む物資をオウガに渡す。ただし、軍から渡すとなると疑いを持たれる可能性があるので、民間人を仲介に立てる。

A発疹チフスの治療には、キニーネという名の薬が効果がある。闇市の薬屋に在庫があるようなので、念の為にこれを廃棄させる。具体的には、田舎町の“良識派の人間”を焚き付けて、闇市自体を潰させるように持って行く。

 ちなみに、キニーネは本来はマラリアの特効薬だが、宿主には影響を与えずに感染微生物を撲滅する作用がある事から、細菌性の他の病気にも効果が期待できるらしい。この時代に登場した有名な薬だが、実在する病名・薬名を使う事に意義を見出さないマスターは、単に“伝染病とその治療薬”としても良い。

 さて、部隊長の計画通りなら、オウガの村でのみ発疹チフスが流行する筈だった。匿名で闇市から仕入れたキニーネで残った兵士の病を治し、それで全てが終わると考えていたのだが、ここで1つ、イレギュラーが発生した。
 発疹チフスに汚染された物資を民間人に渡す任務を与えられた兵士は、詳細を知らされていなかった事もあり、物資の一部を横流しして小遣い稼ぎをしようと考えてしまったのだ。たまたま、衣服を縫製して安く卸す仕事をしていた難民たちが、布の仕入ができなくて困っているのを知り、物資の一部を売ろうと考えたのだ。

 そうして、発疹チフスは田舎町にも感染する事になる。

 以下に田舎町の周辺の位置関係を示す。


マップ




導入1:物資輸送任務

 戦闘系PC向け導入。以下の文章から考えて最も適当なPCを選ぶ。

 PCは何らかの理由で流れ着いたばかりの余所者で、田舎町で各種の仕事を斡旋する業者から物資の輸送を依頼される。運ぶのは大型の幌馬車(PCの数と同じ台数)に満載された生活物資の輸送で、「町の有志から、オウガへの援助だ」と説明される。
 旅程は片道2日間で、道中の危険は少ない。報酬は全額後金で1人150ドル。先方でオウガに受け取りにサインをしてもらい、それを持って帰れば依頼達成と見なされる。必要な食料その他は、援助物資の中から使って構わないと言われる。
 輸送する物資は換金するのが難しいものばかりなので、横領しても意味は無い。その事はPCもよく分かっている。
 斡旋業者は裏の事情を知らないので、この段階では何も分からない。
 町で聞き込みを行い、適切な質問を行ったならば、以下のような情報を得る。

「田舎町から馬で2日間のところにオウガの村がある。現在では町との交流はほとんど無い。ずっと平野が続くし、ダークもギャングもいないので、旅程は安全と思われる」
「オウガの村は貧しいので、体力の無い者は冬を越せないらしい。特に今年は不作だったし寒気も強くなるそうなので、例年より厳しいと予想される」
「今まで、オウガに援助物資を送った事は無い。援助しない事に対して罪悪感の類は微塵も覚えない。誰が援助を申し出たのかは分からないが、『物好きだな』との感想を抱くのみである」

 依頼を受け、指定された町外れの場所にいると、マックと名乗る1人の男が幌馬車と共に待っている。<話術>に成功すれば、言葉使いから軍人ないし元軍人だと分かる。その上で<エチケット:アーミー>に成功すれば、町から馬で1日の所に軍隊の砦がある事をふと思い出す。
 幌馬車や荷物を調べても、怪しい点は全く無い。

 なお、田舎町から真っ直ぐオウガの村を目指した場合、砦の近辺は通らない。よって、PCが意図せずに軍と邂逅する事はこの段階ではあり得ない。

 ここでPCは<目的:依頼の達成>というストーリーフェイトを得る。オウガの村に物資を届け、受け取りにサインをもらい、町に戻って斡旋業者の店へ顔を出せば、フェイトの達成が認められる事になる。



導入2:闇市取締任務

 USマーシャル、プライベートアイ、プリーチャーPC向け導入。いなければ、戦闘系PCでも可。以下の文章から考えて最も適当なPCを選ぶ。
 この導入のPCには、アーキタイプ“ドク”を推奨した方が良いかもしれない。ただし、絶対に必要という訳でも無いので、推奨するか否かは本シナリオを読んでマスターが決定して欲しい。

 田舎町には、極端に教条主義的な性格のとある保安官or役人or牧師がいた。
 この教条主義者NPCは、以前から闇市や難民を「秩序を乱す存在」として毛嫌いしていた。そんな中、“たまたま訪れた”砦の士官が「闇市が無法者どもの補給に使われていて手を焼いている。最近は、酒や麻薬を闇市の薬売りから仕入れて良家の子弟に売りつけるなどという真似までしているらしい。軍としては町の自治に関わる問題なので干渉する事ができない。町の“良識者”に、自発的に取り締まりを行ってもらえないか」という話を持ち掛ける。
 教条主義者NPCにとっては、この申し出は自らの正義感を刺激される話だったし、士官から「取り締まりに必要な経費は負担させて欲しい」と言われているので、喜び勇んで協力した。ちなみに話を持ちかけた際に士官は「薬売りが性悪」という点を強調しており、それを鵜呑みにしてPCにも強調して伝える事になる。

 PCは、教条主義者NPCの臨時の部下として雇われ、闇市取締の任に付く事になる。給金として150ドルが支払われる。
 PCが任務の内容の説明を受ける為に教条主義者の事務所(保安官事務所、教会など)に行くと、入れ違いに陸軍の士官が出て行く。これは伏線であり、この段階では跡を付けるなどしても意味は無い。
 教条主義者NPCは、「匿名の有志から援助を受けた事で、かねてからの懸案だった闇市取締を行う運びとなった」と宣言した上で、PCに対して以下の説明をする。

「闇市は無許可で商行為を行っていて、存在自体が法律違反だ」
「町のまともな商人は、闇市のせいで迷惑を被っている。具体的な内容は商人に聞いて欲しい」
「無法者が物資の補給に闇市を利用しているせいで、付近の治安が悪化している」
「特に薬売りが性悪だとの情報を得ている」

 教条主義者NPCは「闇市で売買している者全員を逮捕して、物資を焼き払え」と命令する。教条主義者NPCは、本質的な悪人では無いものの、狭量かつ愚かなので、PCが何の意見も差し挟まないならば、これで依頼終了である。
 ただし、PCが「そこまでする必要は無いのではないか」と意見するならば、ちょっと考えた後で「いかがわしい物以外は、接取して町議会に預け、貧しい人々に再配分しよう」と命令を修正する。
 また、「闇市の人間が抵抗した場合はどうすれば良いか?」との質問には、「ケース・バイ・ケース」と答える。無闇に人を傷つける行為は当然ながら許されないが、相手が武器を抜いて襲い掛かってくるようならば応戦も止むを得ない。PCでは敵わないようなら、助手の数を増やしてから再挑戦しても良い。

 町で闇市の評判を聞く場合、適正な質問を行ったならば、以下のような情報を得る。

●闇市のマイナス面
「無許可で店を出す事は法律で禁じられているので、確かに闇市は違法な存在である。建前上は取引していた者は逮捕され、商品を没収される」
「町の法律では、未成年者やオウガに対して酒・麻薬・武器を売ってはいけない事になっている。しかし、闇市では構わず売っているようだ」
「町の法律では、無法者や賞金首と思しき怪しい余所者が商品を買いに来たら、取引内容を帳簿に付けて後日報告できるようしなければならない。店主の判断で、売るのを拒否する事もできる。しかし、闇市では誰にでも不問で売ってしまうようだ」

●闇市のプラス面
「闇市では煩い詮索をされずに物を買えるので、色々と小回りも効いて便利だ」
「町の商店では価格カルテルが組まれていたりするので、物によっては闇市の方が安く手に入る」

 町の人間の大半は「闇市が無法者の温床になっている」などという話を信じておらず、些かやましい物でも気軽に買える闇市の存在を黙認している。
 取締を行うと聞けば、誰もが「馬鹿な事をするな」と思うが、武器を手に取って反抗しようなどとまで思う者はいない。

 ここでPCは<目的:任務の達成>というストーリーフェイトを得る。闇市の取締を行い、商品を廃棄するか、町議会に届ければフェイトの達成が認められる事になる。



導入3:物資横流し

 交渉系PC、ギャンブラー、アウトロー的なPC向け導入。以下の文章から考えて最も適当なPCを選ぶ。

 PCはギャンブルに勝ったが、清算の段になって賭けの相手だったマックと名乗る男が、「簡単にすぐ金が入る仕事がある。それを回すから、チャラにしてくれ」と頼んでくる。話が本当ならば、PC1人当たり150ドルの収入になり、勝ち分より多くなる。
 マックは、PCに以下のような説明をする。

「町外れに難民のキャンプがあるのだが、そこの難民が衣服を縫製して安く卸す内職をしている。余りに安いので、町の縫製工場主が怒り、材料の仕入を邪魔しているらしい」
「そんな理由で、難民たちは材料となる布切れを欲しがっている。自分はたまたま某所から布切れを横流しして持っているのだが、通常ならば幾らにもならない。しかし難民たちに売れば、小遣い程度にはなるだろう」

 布切れは町の外に隠してあると言い、マックの案内で行ってみると確かに裁断前の反物が相当量ある。これらを徒歩10分程の所にある難民キャンプまで運べば150ドル(1人当たり)になる訳である。馬で運んでも2〜3往復で済むので、実労働時間は30分にも満たない。
 <話術>に成功すれば、言葉使いからマックが軍人ないし元軍人だと分かる。その上で<エチケット:アーミー>に成功すれば、町から馬で1日の所に軍隊の砦がある事をふと思い出す。「横流し元は軍隊か?」と聞くと、一瞬びっくりした様子を見せるが、肯定も否定もしない。

 反物を持って難民キャンプへ行くと、交渉らしい交渉をしなくても、現金で買い取ってくれる。全部売れば、マックが言った通りの値段になる。
 町や難民キャンプでマックの話の裏を取ろうとする場合、質問が適正ならば追認できる。
 PCが幾ら調べても反物に怪しい所は無い。警戒して難民に売り渡さない場合は、発疹チフスの感染経路が変わるだけでイベントの推移に大差は生じない。

 なお、ここで登場するマックとは、“導入1”で登場するNPCと同一人物である。横領した物資を横流しする段になって、たまたま賭けの負け分を背負ってしまったので、良い機会だから売却相手と顔を合わせないで済まそうと考えたのである。
 部隊長の作戦も何も知らず、それどころか「物資は何か危険な物かもしれない」という発想自体が無い。

 ここでPCは<目的:仕事の完遂>というストーリーフェイトを得る。これは反物全てを売れば果たされるので、通常は即時フェイトの達成が認められる事になる。この次に続くストーリーフェイトに関しては、決めずにおく。



本編:タイムテーブル

 3つの導入は、できるだけそれぞれが同じ人数になるようにする。

 原則的に最初の依頼は受けるものとして、プレイヤーに不満があるようならば内容を調整しても良い。揉めるようなら、カラミティ・ルージュを使って「依頼を受けないと、すぐに返さないといけない借金を返せない」とか「軽犯罪を犯してしまい、刑罰代わりに依頼を受けなくてはならなくなった」などとする事。

 情報は全てオープンで行う。シーンに関しては、区切りが付いた時点で適当に変える。

 導入毎にセッションに参加するタイミングが異なるので、以下のタイムテーブルで説明する。プレイヤー次第では日程に変更があったり、想定外の行動を取る場合もあるだろうが、矛盾が出ないように調整する事。また、PCによっては距離的に登場が不可能なシーンもあるので留意する事。

時期  導入1  導入2  導入3
1日目  物資輸送の依頼を受け、準備や聞き込みの後、昼過ぎになってオーガの村に向けて出発する。  教条主義者NPCが、士官に炊き付けられて闇市取締に乗り出すことを決意する。
3日目  オーガの村に到着。物資を渡してサインをもらい、町に引き返す。
 下記“本編:オウガの村にて”を参照の事。
 教条主義者NPCより、闇市の取締の任に付くように言われる。
 下記“本編:闇市にて1”を参照の事。
 賭けの負け分の払い代わりの仕事を受ける。難民に反物が渡る。
4日目  闇市の取締を実行またはサボタージュする。
 下記“本編:闇市にて2”を参照の事。
5日目  田舎町に帰還する。発疹チフスに感染・発病する可能性がある。同時刻にオウガの村でも発疹チフスの発病が始まる。
 下記“本編:田舎町にて”を参照の事。
 状況によっては、士官が行動(PCを襲うとか、薬屋を襲うとか)を起こす。士官を倒したならば、ストーリーフェイト<仇敵:士官>が達成される。  難民キャンプで発疹チフスの発病が始まる。まだ深刻に受け止めている者はいない。
6日目  難民キャンプで“奇病”が発生していると、田舎町で噂が立つ。それに呼応するように田舎町でも発病する者が出始め、「難民のせいだ」という集団ヒステリーが起こり始める。
7日目  PCが特に干渉しなかった場合、田舎町の人間による難民の虐殺が始まる。田舎町側も相応な被害を出すが、難民を皆殺しにしてしまう。
 砦の部隊長の元へ「発疹チフスが田舎町にも感染した」とのニュースが入る。流石に罪悪感を覚えるものの、見捨てる事を決意する。
12日目  PCが特に干渉しなかった場合、オウガの村の住人がほぼ死に絶える。辛うじて生き残った者がいたとしても、冬を越せずに野垂れ死ぬ事になる。
15日目  PCが特に干渉しなかった場合、軍隊は撤退する。町はゴーストタウン化して、周囲の農民も生活が不便になってしまう。

 タイムテーブルにある“5日目”までは、多少のバリエーションはあるものの、ほぼこの通りにイベントが起こる事になる。
 “6日目”以降の記述は、PCが干渉しなかった場合に起こるイベントである。
 PCがきちんと事件に向き合う場合は、下記“本編:6日目以降”を参照の事。



本編:オウガの村にて

 導入1のPCが援助物資を持ってオウガの村に入ると、英語を話す酋長に出迎えられる。
 酋長は、今回の援助がなされる旨を先触れによって知らされてはいたが、こうして現物を見るまで本当に来るとは思わなかったと言う。「今まで援助などされた事は無かった」と打ち明けた上で、「遠い遠い昔から、冬になれば体力と運の無い者が死ぬのは当たり前の事だった。今年は特に不作で寒さもきつくなると思われるので、例年以上の数の者が冬を越せなかっただろう」「物乞いのような真似をするほど誇りを失ってはいないが、ここは意固地を張らず、ありがたく援助物資を戴く」と話す。
 オウガの村人一同はPCに礼を言った上で、せめてもの気持ちだと小さな木彫り細工をくれる。金銭価値や特別な御利益は無いが、村人の気持ちがこもった品である。



本編:闇市にて1

 本シナリオ作成に当たって、「導入2のPCが依頼を受けた後、何の事前調査もせず、いきなり闇市を焼き討ちにする」という行動は取らないという前提で書かれている。この辺りで齟齬が生じるようならば、プレイヤーと相談して欲しい。
 町での聞き込みに関しては、“導入2:闇市取締任務”を参照の事。

 闇市は、食料雑貨衣料品といったまともな物から、武器、酒、麻薬、大人のオモチャの類、そして薬品といった物まで扱われている。
 食料雑貨衣料品に関しては「安かろ悪かろ」といった傾向が強いが、お買い得品もある。
 武器、酒、麻薬の類は国の法律では売買に何の制限も無いのだが、町の法律では未成年とオウガへの販売が禁止されている。値段は相場並だが、そういった物の入手を隣人に知られたくない人や、思春期の年頃の子供なども買いにくる。
 大人のオモチャの類はここでしか手に入らないので、それなりに需要がある。
 薬品に関しては、町ではいわゆる一般薬しか売っていない。しかし闇市では“医師の処方が必要”とされるような薬も取り扱っている。ただし薬屋の主は正式に医学・薬学を学んだ事は無いので、そういう者に「毒になるかもしれない薬品」を扱わせるのは危険だという意見も正論である。

 薬屋では、一般薬、“医師の処方が必要な薬”、麻薬の類を取り扱っている。店主は正式に医学・薬学を修めていない事を隠そうともせず、医療的な相談を受けると面倒臭そうに数冊の医学書を取り出してきて「ここで読むなら無料で見せてやるから、自分で調べな」と無愛想に言う。
 <話術>に成功すれば、以下の話を聞く事ができる。

「欲しがる者には麻薬だろうと一般薬だろうと“医師の処方が必要な薬”だろうと在庫があれば何でも売る。注文も受け付ける」
「一般薬は薄利多売の方針で売っている」
「一般薬ではどうしても治らない病人に対して、家族が“医師の処方が必要な薬”を買って行く事がままある。どのくらいの人がそれで助かり、どれくらいの人が副作用で命を縮めたかは分からない。こちらも売れれば何でも良いので、いちいち副作用の警告などしない」
「1年に1〜2回くらいは、医学の心得のある者が“医師の処方が必要な薬”を購入して行く。わざわざ『ここに薬品があったお陰で患者を救えた』などと礼を言いに来る者もいるが、こっちは商売だから売っただけだ」
「無法者相手の闇医者が“医師の処方が必要な薬”を仕入に来る事もある。金さえ払えば相手の素性など気にしない。敢えて顔などを見ないようにしているので、買いに来た者については全く記憶に無い」
「“医師の処方が必要な薬”と言えば、つい最近も大量の“ある薬”を受注したが、注文数を大きく上回る数を仕入れなければならなくなり、結果的に在庫を抱えてしまった。そういったふうにして、意図せずに結構な数の“医師の処方が必要な薬”を店頭に置く事になったりしている」

 最後の話でされる“ある薬”とはキニーネの事である。砦の軍医が匿名で仕入れた事が切っ掛けで薬屋はキニーネの在庫を持つ事になり、これが原因で作戦が失敗しないか心配だった為に、導入2のような事を軍は仕組んだのである。ここでの話は伏線に過ぎないので、さりげなく行う事。

 PCが訪れた日は、無法者と思しき怪しい人物が利用している様子は無い。
 市場の者は護身用のショットガンくらいはカウンターの下に隠しているにしても、基本的に武装はしていない。全員がエキストラ扱いなので、PCが実力行使に及べば逆らえる者がいるとは思えない。
 こうした様子を調査するので1日が終わり、店も畳まれる。闇市の店の者は、それぞれ別に家を持っているので、夜や休日はそちらに帰るのである。
 基本的に、町が闇市を黙認してきた理由がPCにも分かるという形で誘導する事。



本編:闇市にて2

 導入2のPCの行動選択によって、展開が変わる。以下にそれぞれの場合について列記する。

行動選択  展開
闇市を取締る

薬品を廃棄する
 闇市の人間は逆らわないので、取締は簡単に済む。法律を厳格に適用して最大限の量刑を課したとしても、私財の没収と事情聴取が済むまでの拘禁が精一杯なので、逆らうのは損と考えているのである。
 PCが任務を終え、教条主義者NPCのいる所に戻ると、その場に士官がいる。教条主義者NPCは悪びれる様子も無く、「実は今回の取締りのアイデアと資金を出してくれたのは、砦に任官しているこの士官だ。軍による内政干渉と取られるとマズいので、この事は内緒にしてくれ」と言われる。
 士官は、薬品を廃棄した事を確認すると、去る。跡を付ける場合は、<隠身>対<追跡>の対決に勝たなければならない。士官は砦横の野営地に帰る。
 ストーリーフェイトが達成された事になる。1人当たり150ドルの給金をもらい、この次に続くストーリーフェイトに関しては、決めずにおく。
闇市を取締る

薬品を議会に渡す
 教条主義者NPCの所でPCと士官と出くわした後、士官は町議会へ赴く。そして町議会の協力者に依頼して薬品を廃棄させる。
 1人当たり150ドルの給金をもらい、ストーリーフェイトが達成された事になる。この次に続くストーリーフェイトに関しては、決めずにおく。
 なお、士官の跡を付けて町議会堂まで行き、何らかの手段で薬品を奪う場合は、下段の「闇市を取締る&薬品を隠す」に準じるものとして扱う。
闇市を取締る

薬品を隠す
 PCが「薬品は廃棄した」と嘘を吐く場合、士官を騙し通すために対決判定を行わなければならない。PCが<パルプ・フィクション>を使用するならば、単に<話術>対決に勝てば良い。さもなくば、予め「薬の中味を抜いて別の容器に移し、色や臭いを付けた水を入れた薬瓶を壊しておく」などといった相応の下準備をした上でなければ信用してもらえない。
 信用されなかった場合、士官はPCの跡を付け、目撃者のいない所で実力行使で口を割らせようとする。
 給金はもらえるが、ストーリーフェイトの達成不可能が確定する。新たなストーリーフェイト<仇敵:士官>を得る。これは士官と決着を付ける事で達成される。
任務を拒否する  PCが任務の拒否を申し出た場合、幾ら言葉を並べても教条主義者NPCは耳を傾けない。PCにこの場から出て行くように命じて、給金も貰えない。
 士官は、話を聞き終わると黙って出て行く。彼は民間人を利用する作戦を諦め、自分で薬屋を襲うつもりでいる。
 ストーリーフェイトの達成不可能が確定する。
 PCが闇市を守る方向に行動するならば、新たなストーリーフェイト<仇敵:士官>を得る。これは士官と決着を付ける事で達成される。
 特に行動を取らないならば、この次に続くストーリーフェイトに関しては、決めずにおく。

 士官のデータはルールブックP85のアーキタイプのものを流用する。パワーチップを6枚持っているとする。戦闘に際して、他のPCが登場する事もできる。



本編:田舎町にて

 発疹チフス菌を媒介する毛布等に触れた後で2日間経ったら、感染しているかどうかの判定を行う。
 PCの場合、<意思力>の判定をさせ、発病するかどうか決める。プレイヤーには、重要な判定である事と、達成値次第で効果が変わる事を伝えておいた方が良い。

達成値  効果
失敗  発病して即時死亡。
1〜4  発病。全ての行動にマイナス5のペナルティ。放っておけば7日後に死亡。
5〜9  発病。全ての行動にマイナス3のペナルティ。放っておけば7日後に死亡。
10〜14  発病。全ての行動にマイナス1のペナルティ。放っておけば7日後に死亡。
15〜19  発病したが、鼻風邪程度でペナルティは無し。放っておけば7日後に死亡。
20以上  感染しなかった。

 基本的に導入1のPCにしか感染の可能性は無いので、いささか不公平感もあろうから、この判定に先立ってカラミティ・ルージュを渡してパワーチップを与えるようにすると良いだろう。

 斡旋業者の元へ戻ると、彼は殺されていて、導入1のPCも何者かに襲われる。襲撃者の正体は軍の工作員の1人で、念の為にオウガの村へ物資を輸送した関係者の口を封じに来たのである。
 工作員のデータはルールブックP85のアーキタイプのものを流用する。パワーチップを6枚持っているとする。戦闘に際して、他のPCが登場する事もできる。
 工作員を倒して持ち物を調べると、基本的に変わった物は持っていないが、ただシャツの下に隠れるようにして軍の認識票を首にかけている事が分かる。



本編:6日目以降

 5日目〜6日目には、PCは合流またはそれに準じる状態でいる筈である。PCは互いにコネを持ち合っている事などから、情報交換をするように誘導する。適当な頃合で、全PCにストーリーフェイト<目的:真相の究明>を与える。
 導入1のPCや難民などの内、発病した者を診察して、<医学>で達成値15または<応急手当>で達成値20を出す事ができれば、発疹チフスだと分かる。具体的な達成値などをプレイヤーに伝えて、絶対に判定成功するように強い誘導をかける事。
 <医学>を持つPCは、発疹チフスの治療にキニーネが効くと確信する。<応急手当>しか無い場合は、薬屋が持っていた医学書を調べる事で、「恐らくキニーネが効くのではないかと思う」という結論に達する。発疹チフスだと分かれば、媒介となるシラミを駆除する事で感染拡大を防ぐ事ができる。
 キニーネを処方すれば、判定無しで1本につき患者1人を救える。
 <医学>に達成値20で成功すれば、キニーネ1本につき患者2人を救える。詳細は下の表を参照の事。
 或いは、<ヨハネによる福音書、第11章25節から26節>(以降、単に<奇跡>と記述)に達成値20で成功する事でも患者を治す事ができる。これも詳細は下の表を参照の事。

 軍の砦を見に行くと、何十人かの兵が敢えて砦の外にテントを張って野営しているのが分かる。もっと詳しく見ようとする場合は、一般兵士の<観察>とPCの<隠身>の対決に勝たなければならない。砦の中を覗けば、中には発疹チフスに罹った兵士が隔離治療されているのが分かる。兵士たちの様子からして、導入1のPCや難民よりも前に発病した事は明らかである。
 一般兵士のデータは、ルールブックP176のスネークアイズのものを流用する事。パワーチップは一般兵士全員合わせて20枚持っている。
 PCが具体的な証拠を求めるならば、野営地に潜入して重要人物(部隊長、副官、軍医など)の日誌を盗むなどをするしか無い。「変装する」などPCの作戦に応じて適当な判定を要求する事。

 田舎町の暴動に関しては、PCがきちんと真相を説明したり、治療の目処が立っていると保障するなどすれば、抑える事ができる。<話術>などの判定をさせても良い。
 冷静になれば、適正な隔離などが行われ、感染者の数は比較的少なくて済む。

 真相をPC(プレイヤー)が言い当てる事ができたならば、ストーリーフェイト<目的:真相の究明>は達成された事になる。
 その後はプレイヤーの希望に応じて、<目的:発疹チフス患者を救う>や<仇敵:砦の幹部>などを与える事。

 キニーネの数が足りるかどうかについては、以下の表から判断する。

田舎町の患者を救う ×
難民の患者を救う ×
暴動の発生を止められなかった ×
軍隊の患者を救う ×
オウガの患者を救う ×
薬屋のキニーネを得た ○○
軍隊からキニーネを得た ○○○
<奇跡>判定に10回連続成功する毎に
<医学>判定に10回連続成功する毎に

 上表において、“×”1つにつき“○”1つを打ち消す事ができる。
 例えば、「田舎町の人も、難民も、軍隊も、オウガも全員を救う。暴動も発生した」という場合は、“×”5つに相当する。この5つの“×”を消す為には、「軍隊が所有するキニーネを奪った。薬屋のキニーネも確保している」となって“○”が5つあれば良い。
 逆に考えれば、「軍隊が所有するキニーネは奪ったが、薬屋のキニーネは廃棄してしまった」という場合は“○”が3つしかないので、患者の一部を見捨てるか、または<奇跡>や<医学>を20回連続成功させるしか無い。
 「オウガの半数を救う」といった行動については、原則的にできないものとする。どうしてもという場合はマスター判断で認めても良いが、例えば「僅かな数のオウガが生き残ったが、生きる為に他の地へ脱出する事になる。去り際にオウガは『PCたちは偽善者だ』と非難の言葉を口にする」といったふうに展開して、真の意味で救ったというオチにはならない。

 交渉次第では、軍は田舎町の住人の為にならばキニーネを分けてくれる。ただし、オウガを見殺しにする事が絶対条件であり、PCに出し抜かれてオウガにキニーネが渡る事が無いような方法が提案されないと同意しない。この条件は、いかなるマニューバを使用しても覆らない。
 例えば、荒野で陣取る軍の所に白旗を抱えたPCが1人で近付き、「真実をテラ中に触れ回る用意がある」「軍医の日記を入手している」と脅迫して、「同じ人間が自分のせいで死ぬのは心苦しいだろう」などと良心を揺さぶり、「投薬はそちらの衛生兵がやってくれれば良いし、万一を疑うならばオウガの村を見張っていれば良いではないか」などと道理を交え、最後に「投薬が終われば軍医の日記は引き渡す」などと言って交渉すれば良い。



結末

 PCがオウガを救おうとするならば、軍隊との対決は避けられないだろう。セッションの過程にも拠るが、最終局面では、軍はキニーネを持って砦の側を離れ、オウガの村を包囲するというように展開する。
 軍隊は発病している者を砦に残して来るので、偵察を行うなどすれば、思ったよりも兵員が少ないと分かる。対決は、無理無謀な試みという訳でも無い。

 軍隊には、ゲストとエキストラがいる。ゲストの数はPCの2/3程度で、その中には部隊長も含む。能力はPCと同等とする。必ずスナイパーのアーキタイプを1つ持っていて、<狙撃>が使用できる。
 エキストラは原則的に演出のみで戦闘力を持たないが、<観察>などの行動のフォローはしているものとする。
 NPCのパワーチップに関しては、「PC人数×5+20」枚あるとする。
 オウガの村の周辺は荒野なので、視界が200mほどある。PCが近付いてくるのを発見すると、120m程度の所から射撃を始める。以降はカット進行で進める事。
 夜中にこっそり近付くならば、<隠身>と<観察>の対決になる。地形や頭数を考慮して、軍隊側は暗闇による[ハンディキャップ]を無視した上で、ゲストの中の1人が<観察>判定を行うものとする。PCが勝利すれば、近距離まで気付かれずに近付く事ができる。
 その他、「<権力行使>で大量のバッファローを手に入れ暴走させて、その隙に近付く」とか「独りで丸腰のまま白旗を揚げて近付く。その後に<集合>を使う」など、妥当な内容の作戦ならば採用して良い。ただし、何れにしろ近距離まで近付けばカット進行に移行する事になる。
 ゲスト全員を倒せば、エキストラは散り散りになって逃亡する。

 救われたNPCは、PCに感謝の言葉を述べる。田舎町の人間は、礼金として1人当たり350ドルを支払う。プレイヤーが望むならば、適当な相手の<コネ>を得ても良い。

 今回の事件について報道しようとする場合、最大限に適切な振る舞いを行ったとしても、「三流紙に、疑問符つきのゴシップ記事を載せる」というのが精一杯である。



さいごに

 元ネタはNHKで放映していた海外ドラマ『ドクター・クイン〜大西部の女医物語』の第2シーズン第13話『死を招く贈り物(原題:The Offering)』である。
 発疹チフスが広まる前に元ネタに気付かれ、PCがそれに対応した行動を取るとセッションが成り立たない。その場合は「他にも援助物資を輸送していたNPCがいた」としたり、カラミティ・ルージュを使用したりせざるを得ないだろう。なるべく、そうはならないように誘導して欲しい。
 発疹チフスが広まった後ならば、元ネタに気付かれても何の問題も無い。むしろ想い入れたっぷりのロールプレイが期待できるのではないかと思う。
 基本的なストーリーラインは、「PCは知らぬ間にジェノサイドの手伝いをさせられていた」「それに気付いて、ジェノサイドを止める為に尽力する」というものである。マスタリングに迷ったら、この基本ラインに沿うようにして欲しい。

 『ドクター・クイン〜大西部の女医物語』に関しては、いわお氏のファンサイトKDI PAGE(海外ドラマ情報ページ)などを参照して欲しい。本放送は1993年10月から何回かの休止を挟んで1998年3月まで放映されていた。再放送も1999年まで行っていたが、ビデオも発売されておらず現在では観る手段は無い。
 シナリオの元ネタにした第2シーズン第13話『死を招く贈り物(原題:The Offering)』に関しては、海外ドラマのファンサイトI LOVE LUCILLE BALLドクタークイン日記に粗筋と感想が載っている。
 興味のある方は、検索エンジンなどで関連サイトを探すと良いだろう。

 『ドクター・クイン〜大西部の女医物語』と、同じくNHK海外ドラマ『ヤングライダーズ』は、RPGのシナリオにし易い元ネタの宝庫であり、そういう意味ではかなりお世話になった。元から西部劇(ただし、インディアン虐殺や黒人差別などの負の歴史と向き合った、いわゆる“『ソルジャー・ブルー』以降”の西部劇)が好きだった私だが、この2作でその方面の劇作手法を大補強させてもらった。
 上段で紹介したドクタークイン日記にて西村氏が「もはや、何も言う気になれないほど“むごい”話で、神をも冒涜する米政府……多分これに近い話はあったに違いないと思われるが……」と書いているが、全く同感である。史実はともかく、エンターテイメントという観点に限った上で話をすれば、こういったリアルな感覚で怒りと痛みを覚えるストーリーは受け手(プレイヤー)への訴求効果が高く、良いRPGシナリオになると思う。

 西部劇的な元ネタは、たいていはファンタジーRPG用に加工する事も可能だが、私は1996年頃までは『OUTLAW』(『ロールマスター』の西部劇未訳サプリメント)を、1997年以降は『Bea−Kid’s』を使っていた。
 このシナリオは、1995年に2回プレイしたが、そのときは『OUTLAW』を使用した。2001年に『テラ:ザ・ガンスリンガー』を使用して3回目のプレイを行い、本シナリオは3回目のセッション内容に準拠している。




シナリオ書庫に戻る

TOPページに戻る