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コラム008 有利さの追求 02/01/28



 RPGでは、しばしば「ルール的に有利な行動」を取る事が非難される。私は、これが不思議でならない。

 大昔のRPGルールでは、キャラクター・メイキングでPCの強さに差がつくことはほとんど無かった。差をつける為には滅茶苦茶な事を行うしかなく、例えば「マスターが『好きなマジックアイテムを1つ渡す』と言ったのを盾に取り、神話級の超強力アイテムを求める。マスターが『低レベルのアイテムに限定する』と言い直しても、『さっきと言ってる事が違う』と譲らない」とか「能力値決定のダイス振りであからさまなイカサマをする」とかそういった訳の分からない事を行う人がけっこういたらしい。
 そういう人を指して“マンチキン”なんてRPG用語まで作られもした。“マンチキン”な人は弁解の余地無く迷惑プレイヤーであり、この件に関する話題は既に“ゲームの問題に関する議論”では無い(コラム003『人間性の問題は切り捨てよう』を参照の事)。

 しかし時代が下り、様々なRPGが発表されるようになると、話はそう単純でもなくなる。「ルールに従ってキャラクター・メイキングをしていても、作り方によって“有利なPC”“不利なPC”の差が大きく出てしまう」とか「特定の行動オプションを取ると有利になる」といったようなルールシステムがたくさん出現したからである。今現在は、そういうRPGの方が多数派だろう。
 そしてそういう時代になった今でも、「“ルール的に有利な行動”を取る事を非難する人」はいなくならず、“有利な行動を取る人”を十把一絡げに貶める。
 さらに一部のゲームデザイナーは、こういった“非難する人”の尻馬に乗って、自作のルールの欠点を弁護する材料に使ったりする事まである。



 バランスの悪いルールを発見したら、まずは仲間内で修正ハウスルールを作って対応すれば良い。修正ハウスルールがそれなりに形になれば、オフィシャルに報告するのも良いだろう。
 インターネットが一般化された現在、ユーザーから報告を受けたオフィシャルが素早くデバックを行って周知を図る事も可能だろうから、ぜひそうして欲しいと思う。そこまで行かなくても、セッション前に修正ハウスルールの適用をマスターが宣言すれば問題は無い。

 もっとも、例えば野球のルールは、デバックを進めて問題が無いレベルに達している訳だけど、それでも「敬遠やバントを非難する」なんて人がいる。だから幾らデバックをやっても、“RPGで有利さを追求する事”を非難する人はいなくならないとは思う。
 でも、ちょっと考えて欲しい。デバックを突き詰めた以上、既に有利追求を是とするか否とするかは、正に「敬遠やバントをどう思うか」と同程度の問題に過ぎなくなっているのである。自分が敬遠策を取らないからと言って、敬遠した相手チームを非難するのはおかしいだろう。
 逆に、「絶対に敬遠策を取らない行為」とは「試合に勝つ事を第一目的にしていない行為」な訳で、これをRPGに置き換えて言えば「シナリオのミッションの成功を第一目的にしていない行為」という事になる。RPGの場合、必ずしも「シナリオ・ミッションの成功」と「セッションの成功」がイコールとは限らないが、“イコールに近い”とは言えるだろう。

 そうすると、むしろ迷惑なのは、「有利さの追求に無頓着なプレイヤー」なのではないか?
 そんな事も考えてしまう。




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