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タイトル |
登録日 |
改稿日 |
コラム004 |
GMの役割
| 01/07/08 |
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GM(ゲームマスター)の役割とは何だろう?
“初期の『D&D』”(コラム001『RPGとは何か?』を参照)においてのGMの役割は非常に限定的だったので、GMの役割をコンピュータで代用する事もできた。「多人数で膝をつき合わせて行うゲーム」に限っても、一部のボードゲーム(『アーカムホラー』とか『アステロイド』とか)などは“GM不要なRPG”であるかのように見えるし、“初期の『D&D』的なゲーム”ならばGM抜きで行うルールを作る事も可能だろう。実際、『セブン=フォートレスad』などはそれに似た展開をしている。
だが、そういうゲームは、私が定義する所のRPGとは別物である。
私が言う“極めて広義なゲーム性”を判定するには人間(ないし人間並みに発達した人工知能)を必要とするし、“物語性”を持たせる事に関しても同様にGMという人間が欠かせない。
では、GMは、どんな事を考えながら務めなければならないだろうか?
GMとプレイヤーの最大の違いは、シナリオを予め知っているか否かにある。GMは物語の全てを知っているからこそ、プレイヤーからのインプットに対して適切なアウトプットを返す事ができる。その為にアドリブも行えば、ルール判定も行うのである。
“プレイヤーからの入力”と“GMが返す出力”の間には、いわば“関数”が存在する。その“関数”は複雑で、時にはGMの頭の中しか存在しないブラックボックスと化すこともある。しかし、とにもかくにも“関数”自体は不変で、セッションの最中に「あるときはX=2Y、またあるときはX=3Y+2」などと変えてしまってはいけない。
RPGにおける“関数”は複雑で、数学的に解く事はできないし、暗号と同じで入力→出力の一方通行でしか変換が行われない。だからプレイヤーは、“正しい出力”を得られそうな“入力”を推理して、少しずつ“正解”に近付くというアプローチを取る事になる。もしGMが「セッション最中に関数を変える」などという不公正な事をやってしまっては、セッションは「仮想世界において、プレイヤーが状況を判断し、行動を選択している内に、自然と“面白い物語”が紡がれている」という形にならない。プレイヤーは考える事が馬鹿らしくなり、RPGはただのGMの独り善がりと化してしまう。
上記は何か難しい事を言っているように聞こえるかもしれないが、GMにとっては簡単な話である。GMは“関数”を知っているのだ。だから、プレイヤーから入力があったら、従順に“関数”に放り込んで、出力をそのまま伝えれば良いのである。
例えば、「真犯人はAで、事件のあった日は現場から酒場に直行した」とシナリオにあり、PCが酒場で聞き込みをするというならば「Aは犯行時刻の1時間後に酒場にやって来た」と伝えれば良い。
「“関数”は複雑で、時にはブラックボックスと化すこともある」と書いたが、実際のところ他人に説明できない程にブラックボックス化する事は望ましくない。だから、ルールブックに明記してあるレベルの“関数(=判定基準)”は変更しない方が良い。「剣のダメージは2D6」というような低位のレベルでの“関数”までブラックボックス化してしまう(=「心掛けの良いPCが死にそうになったら、救済処置を出してやる」という曖昧な“関数”を導入する)ようでは、プレイヤーの信頼は得難いだろう。
まとめると、
「明瞭で複雑過ぎない判定基準を持ち、それに基づいて広義の意味であらゆる判断を下す」
というのが、GMの役割と言えるだろう。それでこそ、「最終判断はGMが下す」という強権も得ているのである。
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