「肩が凝ってしょうがないから、肩をもんでくれないか」などといって家族の誰かに肩をもんでもらったりすることは、どこの家庭でもよくあります。また、誰でも神経痛などで急に手足が痛んだりすると、思わずその部を手で押さえて、なでたり、さすったりします。寒い冬の朝、思わず冷たい手をこすったりします。
このようなことは、古今東西を問わず、人間が自然に行う行為です。この自然に行う行為を、どのようなときに、どのような手技がよいかを生活の中で経験的に生み出し、それを科学的に体系化したのが私たち(あん摩・マッサージ・指圧師)が行っているマッサージです。
マッサージ(あん摩、マッサージ、指圧を含む)の治療効果は、全身の組織・器官の機能異常を調整し、生理的状態に回復させることで、次の作用があります。
病的に機能の減退している神経、筋肉に対してマッサージを行って、興奮性を高め、機能の回復をはかります。例えば、運動神経麻痺、知覚減退などに対して効果的です。
1.とは逆に、病的に機能の昂進している神経や筋肉に対してマッサージを行い、興奮性を減退させ、鎮静をはかる作用です。例えば、神経痛、けいれん、筋肉の凝り、知覚過敏などに対して効果的です。
病巣から遠く離れた場所にマッサージを行い、整体の反射機能を利用して、神経や筋肉、内臓などに刺激を与え、その機能の調整をはかる作用です。
内臓に異常があると、神経を介して、その反応が特定の部位(皮膚や筋肉など)にしばしば異常な変化(知覚過敏、筋肉の凝り、圧痛など)を表します。この異常な変化を、西洋医学では「連関痛」という言葉で、東洋医学では「ツボ」という言葉で言い表します。これらの反応部位にマッサージを行って、凝りや痛みなどが緩解または、除去されるのに伴って、神経を介して、内臓の異常、病的症状も軽減されていくのです。
例えば、喘息の時には肩甲骨の間のマッサージが効果的です。神経性胃痛の時には、背中のマッサージが効果的です。また、便秘の時の腰のマッサージも非常に効果的です。
病巣に、発赤(炎症などで、局部が充血し赤くなること)や腫張が激しく、直接患部の治療ができない場合に、その部より体の中心部にマッサージを行って、血液やリンパの流れを促進して、患部の出血や病的滲出物を誘導し、排出します。例えば、膝(ひざ)の関節の腫れには、太股(ふともも)にマッサージを行います。また、足関節の腫れに対しては、すねやふくらはぎ、太股のマッサージを行います。
関節の拘縮などで、正常な関節の運動範囲が制限された場合に、身体の形態的な異常を、正常な形態に戻し、それによって機能の回復をはかります。捻挫(ねんざ)、脱臼、骨折の後などに残る関節の拘縮などに応用します。