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澁澤 龍彦
Tatsuhiko Sibusawa
暗黒のメルヘン
  • 澁澤龍彦コレクション29冊目は澁澤龍彦本人「こだわり」の小説アンソロジーである。題名からもわかるとおり、日本の近代文学における怪奇幻想小説の中から澁澤自身が「好きな作家」の「好きな作品」が収められている
  • メルヘンというドイツ語は、日本語にすると「抒情」と訳すのが一番近いように思われる。誰しもが心に持つ「琴線」に触れる作品、読むとやさしい気持になれる作品というのが「メルへン」と形容される作品ではないだろうか
  • ではなぜそのメルヘンが「暗黒」なのか。それはまず作品が触れる「琴線」が非常に狭い範囲の人のみが持つものに限られるからではないだろうか。人はまず己に理解できない感覚は「非」もしくは「怪しいもの」として分類するのが常である。これらの作品はまず琴線に触れる前にこの感覚を呼び覚ますに違いない
  • 泉鏡花、坂口安吾、江戸川乱歩。何れもどこか日常と一歩違う感覚を内包する作品を得意とする作家ばかりである。個々の作品について考えるより、なぜ澁澤龍彦がこれを選んだかを考えるほうが感慨深いアンソロジーであろう
黒魔術の手帖
  • 河出文庫澁澤龍彦コレクション5冊目で「手帖」シリーズの第1巻。題名はおどろおどろしいが実際に読んでみると、実に広範な資料にあたった博物学的解説書であることに驚くはず
  • ヘブライの密教「カバラ」の解説や「薔薇十字団」、「錬金術」、「占星術」など、黒魔術に関係しそうな分野を怠りなく解説しているため、オカルティズム的な観点ではなく、立体的、相対的に黒魔術というものを捉える事が出来るようになっている
  • 私が興味深かったのは、ホンの2〜3行触れられているだけではあるがタロットに登場する「女教皇」札の由来。これは「女性が男装し、法王位に着いた」という有名な伝説が元であると謂われている(塩野七生氏の作品にも取り上げられている)
  • この本の締めくくりは十五世紀の殺戮者ジル・ド・レエ侯爵に関するエッセイ。中世において黒魔術や錬金術が如何に現実味を帯びていたかがよく分かる。また元帥号まで与えられていたレエ侯が、何故「黒魔術の道に入っていったのか」を順を追って分析し、「ジル・ド・レエ」の人物像を浮き彫りにして行く手法は見事としかいいようがない
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