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野阿 梓
Azusa Noa
花狩人
  • 第5回ハヤカワ・SFコンテストに入選した表題作のほか、2作を収める野阿梓のデビュー作。表題作は『銀河赤道祭』、「目狩都市」は『武装音楽祭』へと引き継がれてゆき、その後の作品の基となっています
  • 「花狩人」でも他の2作でも「知っている人は知っている」ネタが随所に出きます。私は幸運というか残念というか、熱心なSF読みでないのでかなりの部分を氏のオリジナルとして読んでしまいました。ですが、「目狩都市」だけは私が初めて読んだSFである、C・L・ムーアのキャラクターが下敷になっているので、その点では「ネタバレの面白さ」を堪能できました
  • そしてこの「目狩都市」に出てくる『百頭の女』と『鳥類の王ロプロプ』の名前は、10年近くもたってマックス・エルンストの『百頭女』に出会うまで、私の頭にクエスチョンマークを描きつづけることになります
  • 作家の栗本薫は解説の中で、この作品群の基本を「夢の言葉、言葉の夢」と評しています。つまり表現様式として存在する活字=言葉が、読み手に対して具象的なイメージ=絵画のように作用する、ということです
  • ここで「知っている人は知っている」情報=キャラクターが、初めて活きてくるのではないでしょうか。書き手と読み手の間に共通の情報として示されるキャラクターは、それ自体が具象化されたイメージとして存在し、活字=言葉に捕われない観念世界を構築するのでしょう
  • エルンストの名前が出てきたからといって、こういうことを考えるのは少々早計かもしれませんが、私には野阿梓の作品の根底をなす概念が「活字によるコラージュ」のように思えてなりません
武装音楽祭
  • 「花狩人」収録の『目狩都市』に登場したテロリスト、レモン・トロツキーが主人公の話。如何にしてレモンが革命結社<狂茶党>の中で重要な地位に上ってゆくかを描いた巻です
  • 真の革命とは何か、革命を成功させるためのプロセスとは、などと野阿梓氏の観念世界が満ち満ちています。狂気に関する定義などは読み応えあり
  • 星間ギルドを壊滅させるという<狂茶党>執行部の思惑が、奇しくも政府側の陰謀と目的を同じくしたが故に張り巡らされた、二重三重の罠をレモンはどう掻い潜るのか。そして数世代前に失われたチャイルドハロルド家の家宝『赤の楯』の謎とは?というのが話の大筋です
  • サスペンスにしてもSFとしても、登場人物の性格描写や独白がかなり多いので、その意味では読み手を選ぶ小説かもしれません。また、このところ野阿氏の作品は「やおい」がかっているともっぱらの評判ですが、この作品もそちらの世界に片足を突っ込んでいますので、念の為ご注意下さい
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