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エリック・リュッカー・エディソン
Eric Rucker Eddison
ウロボロス

訳:山崎 淳
  • 場所は水星、修羅国と魔女国の覇権争いを描く、重厚なファンタジィ。ウロボロスとは自らの尾を食らう大蛇のことで、永続性を表すもの。数学記号の無限大∞はこのウロボロスの意匠が元になっています。ほかにはタロットの魔術師のカードに描かれてもいるように、ウロボロスには多分に呪術的な意味も込められています。なぜこの意匠が選ばれたかはネタバレになるので、言うのを控えますが、趣向的にはグリパリのピポ王子に通じるものがありました。過ぎた過去に固執すればするほど、先へと広がる未来をその手で摘むことになるのだと・・・
  • 日本語の文体が擬古文なので、原文はと解説にあたったら、原文自体が17世紀の英語を模した『擬古文体』であるそうです。イメージは中世騎士道文化に則ったかのような世界ですが、著者曰く、決して中世ではなく、あくまで著者の理想とする観念世界だそう。その観念を表すのにもっとも適しているのがこの『擬古文体』ということだというのです。ちなみに原題は"The Worm Ouroboros"で、昔の英語の字義通り訳すと「大蛇ウロボロス」となります
  • とにかく全編を通じて「壮麗」というのがぴったりな記述が続きます。ストーリー的にいえば、「この結果はどうなるの?」と感じる中途半端な部分もありますし、擬古文体に慣れない方には読みにくいかも知れません。が、それでもこの作品に始まる著者の作品がC・S・ルイスなど後世の幻想文学作家に与えた影響は少なからぬものがあることを考えれば、一読に値する本だと思います。また帯キャプションのなりゆきにも載せましたが、田中芳樹の奨める創元推理文庫ベスト2に入る作品でもあります
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