愛と恍惚の中国
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- 共同通信のカメラマンである著者が、北京駐在の4年間に書きつづったエッセイ集。副題である「ディープにあちこち探訪記」の名の通り、どこかしら斜に構えつつも物事に深く踏み込んでゆくその視点に、著者のジャーナリスト魂を感じるのは私だけだろうか
- 北京の若者文化、天安門事件、戦争問題・・・。著者が選ぶ題材はいわゆる「御用記者」が触れたがらない問題、つまりは日本にいてはほとんど目にすることがない情報である。そして大部分の人間が努めて目を逸らしたがる問題でもあるだろう。特に「北京ディープ・ブルー・ナイト」の章は、「改革開放」の裏でうごめく人々の欲望に自分も巻き込まれた顛末でもあり、印象深いドキュメンタリーとなっている
- またカメラマン仲間同士の微妙な友情や仕事上のライバル意識がリアルに描かれているのを読むと、本当に著者がこの仕事に愛着を感じているのだということがよく分かる。言葉も満足に分からない外国で仕事をするというと大変に心細いものだと思うのだが、そのハンデを跳ね返すように取材に飛び回る行動力にはただただ感心するばかりだ。また蛇足だが、辺見庸氏の『もの食う人びと』の取材に同行したカメラマンが著者だそうである。あの淡々としたそれでいて迫力のある写真を撮ったのが彼であるかと思うと、二つの本を読むのに新たな視点が加わるというものである
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