半生・反省・繁盛記

(1号)

誕生

「嫁入りした当時、隣家の縁側に元気そうな大きな赤ちゃんがマックリ・マックリ(※)して日向ぼっこをしていた。」と、近所の老婆が私の幼児期を話した。

 

大怪我

物心つく頃、赤や緑色の鮮やかなニッキ水をひょうたん型の小さなガラス瓶に詰めた飲料菓子があった。生家が2メートル余ある石崖の段々上にあり、この石崖からニッキ水の空き瓶を握ったまま転げ落ち、瓶の破片で顎先を5針余縫う大怪我をした。

当時「ヤミ籠」とよんだ竹籠を自転車の荷台に縛り付け、これに入れられ父親と医者通いをした。帰りのヤミ籠のなかで食べたアンパンの味が忘れられない。アンパンは私の好物になった。

あるときのバスの待ち時間に、地面でいろはを教えてくれた父親がなぜか印象深い。

傷はトレードマークとなり、近所の大人は、「ちょっと見せてみ!」と顎を確認してよく似た兄と判別するようになった。

学芸会

腕白一年生は、美人の担任先生によく耳を引っ張られ折檻を受けた。

学芸会は「ねずみの嫁入り」の演劇だ。ねずみが嫁入り先を選ぶのだが「ビュービュー吹く風は強いから風に嫁入りしようか・・・いや風はどっしりとした壁には勝てない・・・いやいや壁はねずみにかじられる・・・と物語が進み、やっぱりねずみの嫁入り先はねずみが良いとめでたくまとまる楽しい物語である。

私は「壁」役。イメージどおりと先生は私を壁役にされたのだろう。茶色の壁紙を胸に掛け皆と一緒に「〜いえいえそれは違いますどんなに壁さんが強くてもちゅ‐ちゅ‐ねずみさんにゃかないません〜」と歌った。

娯楽の少ない村中が学校の講堂に集まり観劇した。昼食は講堂にそれぞれの家族兄弟が車座になって食べる。重箱に母親の造った巻き寿し、ちくわ・かまぼこ・高野豆腐の煮しめの弁当は家風の味で私の味覚形成に大きく影響している。

 

(※)のどかなのんびりした形容擬態語

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