ギラン・バレー症候群とは ?
筋肉を動かす運動神経が傷害されて、両手両足に力が入らなくなる病気です。約3分の2の患者さんが、発病の1-2週前に風邪をひいたり下痢をしたりしています。手足のマヒの程度は発病してから1-2週以内にもっともひどくなり、重症の場合には呼吸もできなくなります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのか?
ポリオが発生しなくなった先進国においては、脳卒中を除けば、急に手足が動かなくなる病気の原因としてもっとも多いことが知られています。人口10万人あたり年間約2人発症し、日本では少なくとも年間2,000人以上発症していることが推定されており、難病(特定疾患)の中ではそれほど稀な病気ではありません。

3. この病気はどのような人に多いのか?
慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど多くの自己免疫疾患は女性の方が多いのですが、ギラン・バレー症候群は男性の方がかかりやすいようです。赤ちゃんからお年寄りまで、どの年齢層の方も発病しうることが知られています。

4. この病気の原因はわかっているのか?
ウイルスや細菌が、わたしたち人間の運動神経と似た構造を持っていることが最近、明らかにされました。風邪をひいたり下痢をしたりしたときに、そのもととなったウイルスや細菌を排除しようとして、わたしたちの血液中には「抗体」という物質ができます(例えば、「はしか(麻疹)」にかかったら、2度とかからないのは「抗体」のおかげです)。その際誤って自分の運動神経を攻撃するような「自己抗体」ができ、その「自己抗体」が運動神経の機能を障害して手足の筋肉が動かなくなる、という機序が明らかにされつつあります。

5. この病気は遺伝するのか?
この病気は遺伝しません。

6. この病気ではどのような症状がおきるのか?
手足が動かなくなります。ただし、片側の手足が動かなくなる脳卒中と異なり、両手両足が動かなくなります。半数の患者さんで、顔面もマヒし、目を閉じられなくなったり、呂律がまわらなくなったりします。ものが二重に見えたり、食事がむせたり、呼吸ができなくなって息苦しくなることもあります。

4分の3以上の患者さんが、運動神経だけでなく感覚神経も傷害されて、手袋をはめたり靴下を履いたりする部分にしびれを感じます。


7. この病気にはどのような治療法があるのか?
多くの患者さんが参加した欧米の研究により、単純血漿交換療法と免疫グロブリン大量静注療法の有効性が確立されています。この二つの治療法のうち、日本の健康保険の範囲内で治療を受けられるのは現在のところ単純血漿交換療法だけなので、ここでは単純血漿交換療法について簡単に説明します。

単純血漿交換療法では、人工透析のような体外循環の回路に血液を通して、血液を血球(赤血球、白血球など)と血漿成分(血球以外の成分)に分けます。自己抗体を含む血漿成分を捨てて、ウイルスが混入していない代用血漿と自分の血球を体内に戻します。5 m以上歩ける軽症の患者さんは1日おきに2回、5 m以上歩けない状態の患者さんは1日おきに4回、血漿交換を受けることにより早く治ることがフランスでの研究により最近わかりました。


8. この病気はどういう経過をたどるのか?
日本でのきちんとした統計がないので、免疫グロブリン大量静注療法と単純血漿交換療法が行われているイギリスでの数字をあげながら説明します。手足のマヒが進行するばかりでなく、4分の1の患者さん(日本ではそれほど多くないようです)が呼吸ができなくなり、人工呼吸器につながれます。手足のマヒの程度は遅くとも1カ月以内にピークに達します。数カ月以内に半数くらいの患者さんは徐々に回復していきます。発病してから1年後の時点では、6割の患者さんがほぼ完全に治っています。障害を残す方が3割、不幸にも急性期やその後の経過中に亡くなられる方が1割(日本ではそれほど多くないようです)います。

再発は?
A: 再発率は1-10%と報告されていますが、多くても5%未満のようです。したがって、特に中高年の方は余命も考慮すると「ほとんどの方は再発しない」といってよいでしょう。

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