「冒険」への動機付け

 ユーリ「こんなの、プレイヤーがマスターに協力的になればいいだけのことじゃないですか」

 バレリア「……。それを誰が保証できるんや?」

 ユーリ「ううむ。それは鋭い指摘ですなあ」

 バレリア「仲間内なら大した問題は起こらんけどのう.。マスターがあれこれせんでもプレイヤーが『今日のマスターはAやんけ。となると、「モンテクリスト伯」みてえな陰気な復讐ものやな』とか察してくれる場合が多いけん」

 「モンテクリスト伯」:19世紀フランスの文豪デュマの代表作。日本では「厳窟王」という訳題でも知られている。内容は、無実の罪で投獄された男が自分を罠にかけた男達を精神的に破滅させる形で復讐していくというもの。ヨーロッパにおける「名誉」という概念を把握していないと分かりにくい小説である。

 ユーリ「じゃあ、金欠でピーピーいわせるのは?」

 バレリア「こないだうちらの偽物も似た寝言喚きよったな。その手は貨幣経済が発展していないと、使えん。まあ、秋田みやびさんのSWリプレイでネズミ講ネタがあったけんどあれはギャグやし」

 ネズミ講ネタ:新SWリプレイの第2巻第1リプレイ「金ダイジ少女の事件簿」参照のこと。清松みゆきさんが監修されているだけあって、なかなかいい感じのリプレイです。

 ユーリ「じゃあ、乙女の涙とか」

 バレリア「言っててはずかしくないんか、あんたは?『大魔神』じゃあるまいし」

 「大魔神」:1966年制作・公開の超傑作特撮時代劇。続編(というより姉妹編?)として「大魔神怒る」(大魔神が湖を割って登場する)、「大魔神の逆襲」(大魔神が剣を振るう)がある。「大魔神」では下克上で父を家臣に殺された乙女の涙(だけじゃないけど)で大魔神が覚醒する。

 バレリア「結局、PCに上手く『引き』と『押し』をぶつけるのが無難やな。ま、『無難』とはいえ、『安易』とはちゃうことを忘れたらあかんけど」

 ユーリ「『安易』とは?」

 バレリア「『君達は初めからダンジョンの中にいる。入り口は崩れてる』という『押し』とか、『報酬は破格、魔剣もセットで』という『引き』とかの」

 ユーリ「筆者も昔よくやってましたよね」

 バレリア「確かに。今は多少ましになったけどのう。そこの所は今回、これ以上ぐだぐだ言よるときりないけん、次いくで」

 ユーリ「ううむ、奥が深い」

 バレリア「数年前のことやけど、『RQ』でキャラクター・メイキングの段階でタロット・カード使うマスターがおったの」

 ユーリ「それって、総人口の1割を大学生が占める(1995年現在)東広島市でのことでしょ?市立図書館で毎週1回無料で『フランケンシュタイン』とか『母』とか『市民ケーン』とか『上海特急』とか『巴里の女』とか上映してた(これまた1995年現在)んですよね?で、何でまたタロットなんです?」

 バレリア「あんたは東広島市市立図書館の回し者か!まあ怒っても意味ないの……。カードをプレイヤーに何枚か引かせての、その暗示するものからキャラクターの冒険に対する態度や旅立つことになった背景やらキャラクター同士の関係まで設定してセッションに臨んだんや。楽しかったなあ、と筆者は今でも覚えとるそうや」

 ユーリ「『BoA』なんかで応用できそうな……」

 バレリア「いや、この方法には欠点がある。キャラメイクに時間がかかり過ぎる!内輪向けかもしれん。マスターが時間配分能力に長けとって、プレイヤーがマスター・フレンドリーでない限り破綻する」

 ユーリ「他には何かあるのですか」

 バレリア「プレイヤーの好みを事前に把握しとくこっちゃの。冒頭の方法とは逆やけど」

 ユーリ「コンベンション向けじゃないですよ、それも」

 バレリア「説明をまず聞かんかい。セッション開始前にプレイヤーと雑談する。ことにTRPGに何を求めてるかを雑談の中に盛り込むんや」

 ユーリ「……難しい……」

 バレリア「アニメとか映画の話すりゃええがな。昨今のTRPGは『勝利=ミッション成功』より『ストーリー』を楽しむことの方が重視されとるけん」

 ユーリ「つまり、『ロード・オブ・ザ・リング』の話をしろと」

 バレリア「その前に元ネタの『ニーベルンクの指環』も把握しておいた方がええかもしれへんけどな」

 ユーリ「今回はこの辺で」

(四川省の映画「桃源鎮」は良かったので続く)
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