ソルジャーズ・アポン・ザ・ルナル 第1話
投稿してくださった方:フルメタル大司教さま

マルム・ディヴィジョン
アメリカ陸軍第三師団自動車化歩兵部隊、第04分隊メンバー

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 ■ジョージ・バクスター軍曹

第04分隊の指揮官。この分隊では珍しくシニアハイスクール卒業後、戦前の内に軍隊に入隊し、数々の激戦を生き延びた生粋の職業軍人。性格はタフで常に星条旗への誇りを忘れない頼りになる男。ルナルという異世界に飛ばされてからも分隊日誌を欠かさず付ける生真面目さを持つ。実家はカンザスの片田舎の街道沿いで自動車修理工兼ガススタンドを経営。愛銃はトンプソン短機関銃。

 

■ジェームス・マッキンレー記者

彼は軍人ではなく「ボストン・タイムズ」紙によって戦地へ派遣された従軍記者。一応は下士官待遇の軍属であるが、周りの評判は「記事を書くよりも銃を撃っている方が明らかに多い」と言う不名誉なもの。もっとも、これは彼が常に最前線で体当たり的取材を敢行してきた結果であり、そのジャーナリスト魂とピュリッツアー賞への情熱は本物である。趣味は天体観測と「ウィアード・テイルズ」の収集、武装はブローニング・ショットガン。

 

■ケイン・ブルースカイ一等兵

インディアンの父と白人の母を持ち、常に冷静沈着で常識に富んだニューヨーカー。戦前は大工をしていたが比較的早い時期に徴兵され、以来ずっとバクスター軍曹と一緒に戦い続けてきた。父親の血のなせる業なのか、その戦闘時における俊敏さと冷静な判断で分隊の参謀役を務める。しかし酒が入ると人格が豹変するのが玉に傷、武装はM1ガーラント。

 

NPC(他の第04分隊隊員たち) >>>>

■フレデリック・フロムベルク軍医少尉

彼は正規の分隊員ではなく、偶々トラックに便乗しただけのはずであった。元はLAで検死局の助手を務めていて、ケガの治療よりも死体の検分のほうが得意な軍医としてはいささか問題のある人物。また生粋のアメリカ人ではなく、高校生の時にユダヤ系の両親と共にドイツから移住してきたという暗い設定を持っている。彼もまた幻想文学(特に『指輪物語』などの本格派)に造詣が深く、マッキンレー記者とは話が良く合うのか一緒にいることが多い。戦線に出るときは、ヘルメットでは無くなるべく制帽を被るスノップでもある。特に装備している銃は無い。

 

■フランク・ガーツ一等兵

「チョット足りない、でもすごい俊足」おまけに腕力も強い。南部はジョージア州出身の好青年、本来のIQの低さゆえか少し柔軟性に欠ける所があるが、何時も与えられた仕事を一生懸命にこなし、悪いことは一切しないある意味で理想の兵士である。暇なときは愛読書の『イソップ童話』を読むか、大好きな母親への手紙をせっせと書いている。武装はBAR(ブローニング・オートマチック・ライフル)。

 

■ジョセッペ・ロゼッティ一等兵

名前こそイタリア系だが、これでも(だからこそか)生粋のニューヨーカー、おそらく分隊の中では一番デタラメな性格の持ち主であり、員数外の物資の確保と現地人(女性限定)と親睦を深める速さは天才的といっても良い、こんな彼だが、かつては「ビッグ・レッド・ワン」(米第一師団の通称)に所属してチュニジアの激戦をくぐり抜けた猛者であり、イタリア語の腕を見込まれて第三師団に転任してきた。ガーツ一等兵とは「ハスキー作戦」(シチリア上陸作戦)以来の戦友である。装備はM1ガーラント。

 

■マイケル・カミンスキー二等兵

シカゴ出身、ポーランド系の19歳、半年前に徴兵されてイタリアに派遣されたばかりのピカピカの新兵で、当然年齢も分隊の中では一番若い。普段はGMCトラックの運転を担当している。実家が自動車修理工というだけあって機械の知識は豊富で、車両の整備も任されてはいるが、彼の運転する車は何故かしばしばエンストを起こすので、軍曹に怒鳴られる毎日を過ごしている。装備はM1カービン。

■ドレイク・ホーガン伍長

04分隊の副官、性格は極めて厳格、部下に容赦の無い鬼伍長であった。何かと癖の多いこの分隊を一生懸命に統率していたが……。

以上が現時点における第04分隊のメンバーです。


第一話「史上最大の遠征」

 1944年秋イタリア、フィレンツェ近郊。ジョージ・バクスター軍曹率いる第04分隊は、最前線へ届ける補給物資と新兵たちを護衛する任務についていた。バクスター他三名の乗るジープ、従軍記者と軍医を便乗させたGMCトラック、新兵たちを満載したM3ハーフトラックというのがその陣容だった。しかし、その途中の林道において彼らは突然銃撃を受ける。ドイツ軍の敗残兵が道沿いの館に立てこもっていたのだ。始めは敗残兵とタカをくくっていた彼らだったが、パンツァーファウストまで所有する敵の圧倒的火力の前に、ジープで先行していたバクスターたちはその場に釘づけになり、隊は分断されてしまう。 バクスターは敵が小隊規模であること、さらに森の奥に敵戦車を確認したことから本部に退却許可を求める。しかし本部からの回答は「増援を送る、退却は許可せず」である。しかも後続のトラック隊が後退を始めたため、彼はケイン・ブルースカイ一等兵にその場を任せこれを引き止めるべく、走り出した。

 しかし、GMCトラックは「戦友を見捨てる気か!」と激怒したジェームズ・マッキンレー記者のために、無理やり停車させられてしまっていた。運転手のカミンスキー二等兵、副官のホーガン伍長は抗議するが、彼は銃を持って飛び出してしまう。ハーフトラックはそのまま退却したため、04分隊は完全に分裂することになってしまった。

その頃ケインたちは、敵が圧倒的多数にもかかわらず防御姿勢を崩さないことに疑念を抱き始めていた。夕刻になり霧が次第に濃くなってきたため、一緒にいたロゼッティ、ガーツ両一等兵は軍曹との合流を提案するが、ケインはこれを拒否する。しかし彼は、この季節はずれの濃霧に不安を感じ始めてもいた。

霧はどんどん濃くなり、ついに視界は完全にさえぎられてしまった。合流したバクスターとマッキンレー、しかし、その時猛烈な悪寒が彼らを襲った。「まさか……毒ガスじゃないだろうな?」不安を胸に彼らはトラックへと急いだ。しかしトラックに異常は無く、乗員の一人、フロムベルク軍医は二人に中毒の症状はないと断言した。

霧は一時間足らずで晴れたが、バクスターは困惑していた。無線は通じず、周りの地形と地図が一致しない、しかもカミンスキーがラジエータの水を切らしていたので、トラックが動かない。結局バクスターとジェームズが水を探すこととなった。

その頃、ケインたちも同じ悪寒に苦しんでいた。慌ててマスクを被ったが、一向に様子は良くならない。そして霧が晴れたとき彼らは驚愕する。先刻まであったはずの館が消えているのだ。三人はパニックになるが、とにかく軍曹たちと合流しようという事に落ち着く。その時、木の上から何かが三人に飛び掛ってきた。ジョセッペが頭部を殴打され昏倒するものの、ケインは冷静な射撃でこの「ムササビのような奴」を撃退し、彼らは道を急いだ。

バクスターたちは泉を探して森の中をさまよっていた。その時、彼らはかすかな悲鳴を聞いた。声の方向へ急ぐ二人、そこは森の中の開けた一角、彼らが見た光景は想像を絶するものであった。一人の女性が2メートルほどの大木に『締め付け』られていたのだ。パニックの一歩手前になりながらも何とかその「歩く木」を退治した二人だったが、近くで怯えていた少女を見たとき、バクスターは本当にパニックになってしまった。インディアンの衣装に、20センチはあろうかと言う長い耳!

「……グ、軍曹!」

「……次は何だ、記者さん?」

「雲が晴れてます、月(Moons)が見えるんです!!」

いつの間にか、月の光が彼らを照らしていた。 七つもの月が……。


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