ブルーフォレスト物語:デザイナーズ・エディション リプレイ キャンペーン第1話
「人竜の欲するもの」

上田洋一

PC及び主要NPC紹介

 リュウイ 貧農 レベル1 男
 普通の農夫よりも貧しい。リュウイはそのような貧しさから脱するために、冒険者になりたいと思ったんでしょうね、たぶん。

 ケフカ・ミーナ 放浪者 レベル1 男
 孤高の男。戦闘力はかなりある。でも、ピープルクラス(駆出しの冒険者のクラス。詳しくはルール・ブック参照)のキャラクターって大した呪文使えねーんだよな。

 ヤシャエル 僧兵 レベル1 男
 パーティー内で最強を誇ったキャラクター。その上、霊呪(治癒・回復系の魔法)まで使える。おお、なんとたのもしいんだ!法王ダーマチャキの僧兵として修業中。

 シン 遊牧 レベル1 女
 パーティー内の紅一転(あれ、何か違うぞ、ま、いっか)。でも、あんまり女してなか った。遊牧だからか?

 ニャム 貧農 レベル3 男 (注・NPC)
 今回のセッションでの依頼人兼探索同行人。貧農なのにやたら金を持っている。何かと 謎の多い人物。

 さて、ここから我らが冒険者の物語をゆるりと始めていこう……

 GM「じゃあ、いいですね。まず君たちは既にパーティーを結成してる。で、ルーベルニー連合国(注・シュリーウェバ地方の南部に位置する)の北部にあるルパートという街の『鳥のガラ亭』という居酒屋で川魚の干物をサカナにして飲んでいる」

 シン「おやじに仕事がないかどうか聞いてみる」

 GM「シンがそう話しかけていると、屈強だがどこか貧乏くさい冒険者らしい男が入ってくる。さて、皆さんここで祈念判定×2分の1でふってみて」

 結局、PCは全員判定に失敗した。

 GM「で、男がワラジをぺタンぺタンとさせながら君たちの方に近づいてくる。で、ドッカと座って、『おい、おやじ。麦酒をくれ。5人分な』って言うね」

 ケフカ「何か仕事を頼む気か……けど、出来たてほやほやの僕らに何を期待しているんだろ」

 ヤシャエル「拙僧はヤシャエルと申す者でござる。お困りならば、拙僧にご相談下され」

 よー分からん男(GM)「オレの名は"ニャム"という。あんたら、冒険者だろ?ちょいとした依頼を受けてくれないか」

 シン「う−ん、わたしたちまだ1レベルなんですけど……」

 ニャム(GM)「いや、探索というかとある調査を受けてほしいだけだ。人竜ヘパロイのことは知ってるよな?」

 リュウイ「おいら、しがない貧農だから分からないよ」

 GM「いや、ルーベルニーやシグニーズ(注・シグニーズはルーベルニー連合国に隣接している国。時折、紛争が起こっている)に住んでいる人なら知っている。先月、ルーベルニーの国境付近で一触即発の事態になった時に突如体長5メートルほどの人間の顔をした人竜ヘパロイ、そいつが対峙した軍隊の上空を旋回しただけで両軍ともふぬけになってしまったんだ。ようするに、戦う意欲を完全に失ってしまったということだ。特に敵軍への強い『憎しみ』を抱いていた兵士などは心身喪失にまで至った、てなウワサまで聞いている」

 ケフカ「で、この兄ちゃんはわしらに何を頼みたいんや。調査ったって知識人は……あ、そうかダーマチャキ僧兵のヤシャエルさんがおったな」

 ニャム(GM)「オレが知りたいのは人竜ヘパロイの弱点だ。それを調べてほしい。報酬はレベル2の細剣と10日分の保存食料を用意している。その細剣を売ると銀貨1200枚になるな。オレは『三月ウサギ馬亭』にいる。依頼を受けるんだったら、そこまで来てくれ」

 シン「何か変な人ですね。ペーペーにそんなごつい怪物の調査を依頼するなんて」

 GM「てなことを言ってるとだね、外で『人竜だ!ヘパロイだ!』と騒いでいる声が聞こえる」

 ヤシャエル「とりあえず警戒しつつ外に出るといたそう」

 GM「そーするとだねえ、全長20メートルはあろうかという怪物が飛び回っているね。顔は人間に似てるけど。体は飛龍(他のゲームでは「ワイバーン」に属するモンスター。ルール・ブック参照のこと)みたいだ」

 ヤシャエル「はて、先月の紛争時には全長5メートルだったというに……うーむ」

 GM「で、その怪物、人竜なんだけど、人間の言葉で『我が名はヘパロイ。我、「探求の獣」を欲す』と叫んでいる。で、1分ほど飛び回るとフッと姿を消した。さて、皆さん知覚判定!」

 PCら「成功!」

 GM「人竜は『三月ウサギ馬亭』の上空で消えた」

 リュウイ「なるほど。あのニャムが人竜か」

 ケフカ「でも、何で自分の弱点を『調べてくれ』なんて言うんだ?」

 ヤシャエル「とりあえず、我らはウワサ程度のことしか知らぬ。情報を集め、それから断を決するべきであるぞ」

 GM「居酒屋のおやじが君らにめくばせして、『これは独り言なんだがよお、武具屋の主人は闇市の親分なんだ』とか言ってる」

 シン「よおし、事は決せり!武具屋に行きましょう!」

 かくして一行は武具屋の主人にしてその正体は闇市の親分のもとに行き、情報収集を行うことにした。

 闇市の親分(GM)「ふむ、おめーらは多少有望そうだな。適切な情報料さえ払ってくれりゃあ、惜しみなく情報を提供するぜ」

 リュウイ「最近、ニャムとかいう男がこのルパートにやって来て、僕らに人竜の弱点を調べてほしい、って頼まれたんだ。ニャムって何者?」

 闇市の親分(GM)「てめーら、学がねえなあ。『ニャム』ってのは『偽名』って意味の言葉だぜ」

 ケフカ「うーん、だんだん読めてきたぞ」

 闇市の親分(GM)「そいでよ、そのニャムってえヤツが大湿原(シグニーズの北、プラーニ新王領の南端に位置する。トカゲ族が棲んでいる)の地図がねえかって来たんだ。そんなものは俺は持ってない。あるとすりゃ、寺院か地理学者の研究室だろな」

 ヤシャエル「これは困ったものぞ」

 シン「あんた、法王ダーマチャキの僧兵でしょ!神殿に図書館か何かあるんじゃないの」

 リュウイ「それでいこーぜ」

 かくして、一行はダーマチャキ神殿に向かう。そして「精神修養には掃除が基本(?)ぢゃ」という訳で掃除をさせられ、くたびれきったところで図書館に入ることができた。

 ヤシャエル「まずは人竜関連の資料がないかどうか探すのが先決であろうの」

 ケフカ「あった、あった。『人竜と憎悪』てのがあるよ」

 リュウイ「僕に任せろ、とは言えねえな。寺子屋卒(んなものあるのか?)じゃないから、文章を読むのは大の苦手なんだ」

 シン 「ヤシャエルさんがいるじゃない」

 ヤシャエル「拙僧は知識人ではないのでござるが……まあ、トライするといたそう」

 GM「そーするとだねー、その『人竜と憎悪』という本に次のようなくだりがあるね。『「憎悪」という負の精神は「探求」という精神によって良き方向に修正され、世界の安定につながる……』ってのがね」

 ヤシャエル「う−む、拙僧には何のことやらさっぱり分からぬでござる」

 シン「あんた、インテリでしょ!」

 ヤシャエル「ペーペーの僧兵じゃ!」

 ケフカ「いやー、ここらでGMの手助けがあるんじゃないの」

 GM(ち、読まれていたか)「そーするとだねー、君らの方に中年の神官らしい男性が近づいてくるよ」

 シン「ナイスミドル?」

 GM「いや、太鼓腹。でも、人は良さそうだね。彼はパクと名乗る。教義に則ったあいさつをヤシャエルと交わしてから、パク神官は次のように語る。『その「人竜と憎悪」という論文は亡くなったヘパス神官の手によるものです。人竜について調べたいとあなた方が言っていると知ってここに来た次第です』と」

 ケフカ「で、人竜って何なの?」

 パク(GM)「ヘパス様によれば、ある種の魔法生物のようです。記録によれば20年前にも現在のプラーニ新王領に当たる地域で人竜が大爆発したそうです」

 シン「被害は?」

 パク(GM)「都市が3つふきとびました」

 一同「げっ」

 リュウイ「ちなみにその時の人竜の全長は?」

 パク(GM)「25メートルぐらいだったとか……」

 ヤシャエル「やばいでござるなあ。既にヘパロイは20メートルにまで成長しておりますからの」

 ケフカ「話変わるけど、『探求の獣』って何?」

 GM「ケフカ君はよく質問するねえ。まあ、当然だけど。パク神官が言うには、これも魔法生物の一種らしくて、ヘパスが論文をほぼ完成させていたけど火事で失われたそうだ。ただ、彼はタイトルは覚えている。『探求の獣の心臓と人竜』てなものだったらしい」

 シン「ふ〜ん。大体分かったわ。人竜が求めているのは探求の獣の心臓な訳ね」

 リュウイ「早くせんとヘパロイが爆発するということだな」

 シン「よく考えると、あたしたち正式に依頼を受諾した訳でもないのに調べ回ってるわね」

 ケフカ「いいんじゃないの?それから、とりあえずこのルパートの人にも聞きこみをやっておこう」

 シン「本来なら、聞きこみを先にすましとくべきだったわねえ」

 ヤシャエル「では、裏切り御免!」

 GM 「あんたは黒澤明の『隠し砦の三悪人』(注・1959年制作。「スターウォーズ」のモトネタであることはよく知られている)の田所兵衛(藤田進)か?」

 かくして冒険者たちは街にくりだす。

 GM「じゃあ、皆さん、1D10振って下さい」

 リュウイ「どゆこと?」

 GM 「神殿や闇市の親分と違って、街での聞きこみは重複した情報をつかまされる可能性もあるからね」

 一同気合を入れてダイスを振る。

 GM「ふむふむ、その出目だと次のような情報が得られますね。人竜ヘパロイは人間にとりつくことができる。人竜が人を殺したという話は聞いたことがない。人竜は『感情』のこもった料理には手を出さない。人竜ヘパロイはその本来の姿では大湿原には入れない。人竜は『憎悪』の念にストレスを覚えるらしい。てなことだね」

 ヤシャエル「それでは、いざ『三月ウサギ馬亭』へ行くことにいたそう!」

 他のPCら「さんせーい」

 かくして、一行はニャムに会い正式に依頼を受けた。

 ニャム(GM)「なるほど、大湿原か。だからあんなに強力な結界が張られていたという訳だな。湿原の地図は『ヘンクツ』で知られる地理学者が持っているそうだ。頼めば、複写させてもらえるだろう。さて、明日の昼にここまで来てくれ。準備することが色々とあるのでね」

 冒険者たちは夜間に『鳥のガラ亭』側の長屋に戻る。この長屋は「ウナギの寝床」とも呼ばれるが、そのことはこの際セッションには関係ない。

 GM「さあて、長屋に戻る途中だねえ。祈念判定!」

 ヤシャエル「拙僧の成功にござる」

 シン「それってシャレ?」

 GM(無視して)「ええとねえ、君らの目の前に3つの目があってウロコのない飛龍みたいな身長2メートルばかりのモンスターが飛び降りてくる。で、『お〜ま〜え〜ら、テ〜スト〜する〜』と言って襲いかかってくる」

 リュウイ「げ、だまされたか」

 かくして戦闘は始まった。「ブルフォレ」のデザイナーズ・エディションはTRPGに珍しく「戦闘結果表」を用いる。そして、反射の能力値が高い者から行動することになる。反射は襲ってきた謎のモンスターが最も高かったのだが……

 GM「げ、相討ち。え一と、攻撃命中箇所は……腕か。あ、いきなり0になった」

 ケフカ「俺もダメージ結構受けたよ」

 GM「そのモンスターは『合格〜』と叫びながら霧に消えていったよ」

 シン「人竜のニャムがあたしたちの戦闘能力を試したんでしょうね」

 翌日、PCらはニャムのもとに赴く。ニャムはケロリとした表情で彼らに朝飯をおごる。その間、ニャムは去年のブドウ酒をグイグイと飲んでいる(注・中世ヨーロッパでは現在のような醸造技術がなく、1年前のブドウ酒を飲むことはまずなかった。もっとも、『ブルフォレ』の舞台は東南アジア的であるため、こだわる必要はないかもしれない)。
 そして、食後すぐ地理学者のヘンクツ学者のもとに足を運んだ。むろん、ニャムもつい て来ている。

 ヤシャエル「コンコン(扉を叩いているらしい)。地理学者のご老人はご在宅でありましょうや?」

 GM「そーするとだねー、奥から『何じゃ!研究の邪魔じゃ!帰れ!』とか言ってる」

 シン「どうしよう?」

 ニャム(GM)「とりあえず、交渉してみることだな」

 ニャムは交渉判定にあっさり成功し、大湿原の地図の複写を獲得した。かくして、ようやく問題の地に向かうことになった。ニャムの話によると、湿原にはトカゲ族ばかりでなく沼毒蛇(「シャーロック・ホームズの冒険」に収録の「まだらの紐」を参照のこと)やら、武者の怨念のこもった呪いの刀がさまよっているらしいとのことであった。

 GM「さあて、これが大湿原のマップだよーん」

 マスターはうれしそうに広げていく。マップを自作するのは面倒なため、ボード・シミュレーション・ゲームのそれを流用している。

 冒険者たちは「燃える水」の悪臭に悩まされながら、重要拠点に向かう。マスターはワンダリング表を準備していたのだが、ダイス目の関係で大したアクシデントはなかった。

 リュウイ「このPRUMってとこは何があるの」

 GM「崩れかかった塔だね。ただし、古いからそうなったというより、湿原の環境に適さないやり方で建築したのでこうなったようだ」

 ヤシャエル「警戒しつつ入っていくでござる」

 GM「じゃ、先頭のヤシャエルさんは運動判定×2分の1やってみて」

 ヤシャエル「おりゃ、おりゃ。う〜む、失敗。やな感じがするですのう」

 GM「思い切り頭から鯨油かぶったよ」

 ケフカ「うわー、くっさあー」

 シン「火には気をつけないと」

 次に彼らはS t.VITと記された場所に行き、そこで奇妙な装置を見つける。

 GM「知覚判定×2」

 リュウイ「へ、ちょろいぜ」

 ニャム(GM)「オレにも分かるな。これこそが求めていたものだ」

 シン「ツンツン。ニャムさん、何か隠してるじゃないの」

 GM「ニャムはシンを無視する。で、リュウイには分かったんだけど、これは『探求の獣』を創り出す、魔法科学の粋を集めた装置だ。ただし、使用法がどこにも記されていない。ただ、『S PAへ向かえ』と彫りこんである」

 ヤシャエル「指示通り動くしかないでござろう」

 かくして、PCらは最も気になるS PAへ……で、GMのワンダリング表は結局何の役にも立たなかった。

 GM「君たちは目標地点に到着したよ」

 ヤシャエル「先頭は拙僧とケフカ殿の担当でござるな。ニャム殿は依頼人ゆえ、真ん中を進んでもらいたい所存にござる」

 ニャム(GM「いいのか?オレの方がこう見えても腕がたつぜ」

 ヤシャエル「ダーマチャキ神殿では『NPCにはおいしい場面を持っていかれるな』とのありがたき御神託が……」

 シン「勝手に作らないでよ。『ロードス』のリプレイにも出てくるグリーバスみたい」

 GM「君たちがそんなこと話しているうちに、塔の最上階に到着する」

 リュウイ「わ〜い、ラスボス戦闘だあい」

 GM「正面奥に石板らしきものが見える。でも、それだけじゃない。全身から炎を噴き出した石像が動き始める!」

 かくして激しい戦闘が始まった。石像はラスボス的モンスターのため、その戦闘力は並みではない。PCの内、シンが気絶してしまうという状況であった。こうなってはNPCのニャムも見物しているどころではない。おっとり刀で参戦した(シンのプレイヤーにニャムのキャラクター・シートを渡した)。そして、遂に石像を倒したのである。
 一行は石板の文字を写し取り、例の装置で「探求の獣」の心臓を創り出した。それをニャムが食ったのだが、PCらは予想通りの展開と受けとめた。そして、とりついていた人竜ヘパロイは自爆を防いでくれたPCに懇願する。「首を落とせ」と。人竜はもう憎悪を吸収することにくたびれはてていたのだ。かくして、「休戦の使い」ヘパロイは死んだ。

 ケフカ「もっといい解決策はなかったのかねえ……かわいそうだよ、人竜さんが」

 後日談

 冒険者たちはたんまりと報酬を獲得し、ベテランヘの道を歩み始めた。それから、ニャムなる人物はアウルという男であることが分かり、彼はプラーニ新王領へと旅立っていった。


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