東京物欲見物欲日録 2002.1-4

A Yamagatan in TOKYO


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1月某日 東京に戻る。
1月某日 青山に出かけ買物。その後明治神宮に初詣に行く予定だったが、都合により中止。地下鉄の青山一丁目から大江戸線に乗りかえて月島に出、近どうにてもんじゃ焼を食す。美味し。「どっちの料理ショー」の影響ならん。
月島に金光教の教会あり。銭湯風の佇まいで、一見して周囲の建物から隔絶している。面白し。さても典型的な田舎者似非東京人の行動なりけり。
1月某日 朝の通勤時、一つ手前の千駄木で下車し、根津神社に詣づ。東京での初詣なり。
帰途も千駄木まで歩き、往来堂書店に立ち寄る。
1月某日 両国江戸東京博物館にて開催中の「東京建築展」を見る。いかにも仮設という雰囲気の段ボール箱でつくられたディスプレイに驚く。期待が大きすぎたせいか、本や雑誌でも見ることができる写真が多くて残念。
もっとも興味深かったのは同潤会代官山アパート。このアパート群を実際見てみたかった。届かぬ夢なり。
1月某日 恩師の一周忌を機に催された偲ぶ会に出席するため仙台へ。会では旧知の先生方、先輩・後輩の皆さんと会う。帰途本町にカフェを兼ねた古本屋「火星の庭」を発見。
1月某日 仕事帰り、市谷船河原町にある東京日仏学院に行き、堀江敏幸さんの講演会を聴く。
その前に久しぶりに飯田橋青葉にて中華そば。麺をすする瞬間、口に飛び込む魚介だしの味がたまらない。私と隣のサラリーマンは普通の中華そば(600円)を頼んだのに対し、同時に席についた女子高生二人組みは特製中華そば(800円)を注文。チッ。
さて堀江さんの講演会は大変面白いものであった(読前読後参照)。『パリの廃墟』『ゼラニウム』にサインをいただく。
飯田橋―市谷の外堀通りから牛込の台地に上っていく坂道は、いずれも細くて風情が感ぜられてよし。日仏学院前の坂道は逢坂という。
1月某日 妻が所用で外出のため、息子を連れて都電に乗って荒川遊園地に遊びに行く。堀江敏幸さんの『いつか王子駅で』の名場面の一つがここ。
アトラクションはまさに幼児向け。観覧車に乗ってみる。高所恐怖症なのだが、子供に高いところからの景色を見せるためには仕方がない。すぐ目の前には隅田川。
1月某日 池袋に買物。ジュンク堂書店東急ハンズとまわり、最後にサンシャイン国際水族館に行く。水族館はある意味動物園より楽しいかもしれない。気持ちよさげに泳いでいる魚やアザラシをボーっと眺めることは格好の暇つぶしになりそう。ただ入場料が高いか(大人1600円)。今度葛西の水族園に行ってみよう。
1月某日 地下鉄千代田線代々木公園駅を起点に散策開始。富ヶ谷の商店街を南下。このあたりは“裏渋谷”の風情あり。松涛に入り、河竹登志夫『作者の家』で知った、旧河竹家探索。同書に住所と詳しい地図が入っていたおかげであっさり見つかる。大正末年築というから築75年は過ぎているが、それを感じさせない。蔵も残っている。
そのまま松涛の坂を下り、渋谷区立松涛美術館へ。特別展「瀧口修造の造形的実験」を見る。ストレートな理解を拒否するような作品群だが、デカルコマニーという技法で制作された一連の作品が良かった。
美術館から、かつて百軒店と呼ばれていた、今は妖しい界隈をぶらぶら歩き、渋谷古書センターを見つけて立ち寄り、さらにそこから銀座線で銀座へ出る。
銀座では、昭和通りに最近開店したらしい尾道ラーメンの店柿岡やで昼食。水道橋の尾道ラーメン麺一筋と違って、基本は醤油豚骨。和歌山ラーメンに近い味わいで、美味い。
奥村書店三店をめぐったあと、二丁目の紙百科ギャラリーで開催中の「編集狂松田哲夫展」を見る。松田さんがこれまで携わってきた筑摩書房の本や自著、さらに「我楽多箱」という十の箱に収められた、子供の頃の絵日記やマッチ・引札などのコレクション、企画ノートなどが見もの。すこぶる面白し。
1月某日 東京国立博物館の特別展「時を超えて語るもの―史料と美術の名宝―」を見にいく。最終日にすべり込みセーフで間に合ったなり。来場者多し。
帰途千駄木まで歩き、団子坂下の大島ラーメンにて食事。
1月某日 昼、地下鉄本郷三丁目駅を少しお茶の水方面に進んだ大横丁という通り沿いにある助六なるラーメン屋に行く。佐々木晶氏の著書にお薦めとありしなればなり。豚骨醤油。なるほど美味い。今後も定期的に通う店のリストに入れるべし。
その後昼休みを利用して、程近い文京ふるさと歴史館に行き、学習企画展「暮らしのなかの商店―文京買物事情―」を見る(入館料100円)。近代に入ってからの文京区域にあった商店の看板、引札、ラベル、写真など。明治の頃小石川には牧場があった。明治の西片町界隈を古老の聞取りによって再現した地図が興味深い。寄席鈴本亭を中仙道沿いに確認する。今東光のこのあたりに住んでいたらしい。
2月某日 信濃町にある文学座アトリエで上演中の舞台「大寺学校」を見にいく。久保田万太郎戯曲の代表作。加藤武さん主演で素晴らしいものであった。
終演後の「交流会」では映画監督の新藤兼人さん、女優の丹阿弥谷津子さんのお姿も。昔の文学座の思い出話を聞くことができて、大感激。
2月某日 東京駅地下名店街の「ラーメン激戦区」というラーメン屋ばかりを集めた区画にある和歌山ラーメンの「のりや」でねぎラーメン(730円)。味が薄く感じる。初めてラーメン博物館で井出商店の和歌山ラーメンを食べたときは、その濃厚さに感動したものだったが、それとはちょっと違う。むしろ先日食べた尾道ラーメン「柿岡や」にむしろそうした味を感じる。
2月某日 昼休み、大喜@湯島でもりそば。食後湯島天神へ散歩。「梅まつり」開催中にて、合格祈願の人たちとあわせて境内は大賑わい。梅はかなり咲いてきており、境内はおろか外の切通坂にまで香りが漂う。
2月某日 今年初めての歌舞伎観劇にて木挽町へ。昼の部。「菅原伝授手習鑑」通しの前半。昼は先日訪れた尾道ラーメン柿岡やにて。
はねて後、地下鉄を乗り継いで南砂町たなべ書店へ行く。同書店近くに「砂村新田」の説明板あり。見ると砂村の由来は開発者の「砂村某」の苗字に由来するとか。とすれば砂村の地名を砂町と改称し、しかも北砂・南砂など省略してしまうのは愚の骨頂というべきか。
2月某日 木挽町に行き、「菅原伝授手習鑑」夜の部を観る。素晴らしい舞台なり。
その前に銀ブラ。奥村書店三店をゆっくり回り、また、紙百科ギャラリーにて「編集狂松田哲夫展」を再見。松田さんご本人がいらっしゃることを期待して著書を携えていたが、会えず残念。
夕食はまたも尾道ラーメン柿岡やにて。なぜなら前回食べたとき、十枚綴りの100円割引券を貰ったからなり。
2月某日 鬱々たる気分をすっきりさせるため、朝、谷中墓地を歩いて通勤す。桜の木々の蕾も心なしかふっくらとしていたような感じ。
こういう気分のとき、なぜか色川武大さんのお墓に詣でたくなる。“人生八勝七敗”教の教祖として、色川さんの生き方に学ぶべし。すがるような気持ちで墓前に手を合わせる。墓域の土の表面が乾き割れて浮き上がっている。何かと思ったら霜柱であった。色川家のお墓はちょうど大木の陰で朝日があたらなくなっているのだ。おかげで随分気が晴れた。
2月某日 池袋サンシャインシティで開催中の「サンシャイン大古本市」に行く。旺文社内田百間文庫が全冊揃った。万歳。
その後新大久保に移って家族と合流、にて昼食。妻と息子は竈初体験。息子などは妻から三分の一ほど分けられたものを「おいしい、おいしい」と言いながら完食。美味さがわかるのかと感動す。弱冠三歳にして竈のラーメンを味わうとは。
紀伊國屋新宿本店の紀伊國屋画廊で開催中のクラフト・エヴィング商會「じつは、わたくしこういうものです」展を見る。
2月某日 湯島天神にて梅見。休日ゆえ大勢の人で境内は立錐の余地なし。梅の香り満つ。
バスで水道橋まで移動して、次に小石川後楽園で梅見。ドームやWINSはよく来るが、隣の小石川後楽園は実は初めて。こんな広いところだとは知らなかった。息子ははしゃいで走り回る。五回ころぶも、無傷。入口から最も奥の地点(ドームに最も近い場所)に梅林がある。紅白鮮やかなり。湯島で買い求めた「花月」のかりんとうをほおばりながら、梅林近くの田園風景(本当に田圃がある)を見て心落ち着く。
3月某日 都営地下鉄大江戸線上野御徒町駅が今日の起点。ここで都バス・都営地下鉄一日乗車券(\700)を購入す。大江戸線にて門前仲町へ。同所のブックオフに立ち寄る。良質な本が多い。
バスにて越中島から豊洲へ。そこから晴海まで歩き、晴海トリトンスクエアに行く。前日オープンしたばかり(と来てから知った)ラーメン屋ぽっぽっ屋にて昼食。相変わらず息子は完食。
トリトンスクエアをさまよったあと、勝どきまで歩いて再び大江戸線に乗り、次の築地市場で下車、浜離宮恩賜公園に行く。ここも梅が満開で、香りに満ちている。今年の梅の香りナンバーワン。勝どきに向かう途中、TBSの「はなまるマーケット」に出ている斎藤アナとすれ違う。
浜離宮から水上バスに乗って浅草まで行き、さらに浅草から都バスに乗って金町まで行き、ようやく帰宅。疲れた。
3月某日 義理の従弟の結婚式に出席するため、永田町キャピトル東急ホテルに行く。ここに入ったのは初めてなり。
3月某日 谷中台東区立朝倉彫塑館を訪れる(入館料400円)。中に展示されている作品以上に、朝倉文夫旧邸をそのまま保存した建物に圧倒される。こんな広大な屋敷だったとは知らなかった。もう少し入館料が安ければ、何度でも通いたいと思える場所なり。
ついで谷中墓地へ。桜はすでに一分〜二分咲き。色川武大さんのお墓に詣づ。墓地から上野桜木町方面へ抜けるところにあるフランス菓子店「パティシェ イナムラ ショウゾウ」にて「上野の山のモンブラン」を購入す(一個450円)。桜木町から感應寺前を通り、根津に出て帰途につく。
3月某日 仕事帰り、木挽町に立ち寄り、三月大歌舞伎夜の部のうち「十六夜清心」を幕見で観る。
3月某日 国立散策。こちらも桜並木は満開近し。山口瞳邸、一橋大学を訪れ、ロージナ茶房で昼食。カレーの量が激辛のうえに多すぎて、遺憾ながら残す。
3月某日 木挽町。三月大歌舞伎昼の部を観劇す。幕間に奥村書店四丁目店・三丁目店に行く。三丁目店では吉田健一『昔話』という大収穫。帰途ブックオフ北千住駅西口店に立ち寄る。
3月某日 西浅草台東区立中央図書館内に設けられている池波正太郎記念文庫に行く。「池波正太郎自筆絵画展『東京の情景』」開催中。同文庫は、池波家から没後寄贈された蔵書・自筆原稿・絵画・資料などを整理・収蔵・公開したもので、自著をはじめ時代小説の名著、遺愛品、自筆原稿などが展示され、また、書斎も細かな道具に至るまでそのまま再現されている。池波さんの著書の装丁のお洒落さに惹かれる。
その後国際通りに出て三ノ輪まで北上す。今回は子供づれのため千束(吉原)・竜泉(一葉記念館)などはパス。かろうじて鷲神社を見るのみ。現代的なつくりの神社であった。“お酉様”という雰囲気せず。
地下鉄三ノ輪駅近くに文庫・漫画主体の古本屋を発見す。ここも今回はパス。記録に留めるのみ。
3月某日 やましたさんにご案内いただき、やっきさんと3人で練馬・吉祥寺の古本屋めぐり。江古田を起点に、江古田・練馬・石神井公園・吉祥寺の古本屋・リサイクルブック店をめぐる。その質の良さに驚く。
石神井公園より吉祥寺へ向かうバスに乗り、練馬立野町で下車。立野町に住んだ二人の文人木山捷平・辰野隆の家を訪ねる。閑静な住宅地のなかにそれぞれのお家があった。ごく普通のたたずまいで、無関係の人間がまわりをウロウロするのが憚られるほど。
散策後は駅前の飲み屋で飲む。ほどよい疲れと満足のいく収穫を得たあとのビールはうまい。
4月某日 仕事帰り、神田まで歩く。Yさんご夫妻、Kさんと私ども夫婦で飲み会。世界は狭く、そして広い。神田須田町にはまだまだ看板建築風の古い家屋が残っている。
4月某日 湯島まで地下鉄、そこからバスを乗り継いで茗荷谷まで。駅近くにある同潤会大塚女子アパートを訪ねる。いま取り壊しか保存かで激論が戦わされている物件なり。見てすぐこれだとわかる佇まい、しかし外壁は保護のためか薄い網で覆われて見栄えは悪い。写真を撮っていると、中から高齢のおばあさんが出てくる。ずっと住んでいらっしゃる方だろうか。同アパートの隣にある文京区立窪町小学校のピンク色の校舎もすこぶるモダン。同潤会アパートより古いとのこと。
その後再びバスに乗って池袋に出、子供の誕生日のための買物をして帰宅。
4月某日 三番町の先輩宅に弔問。その後靖国神社境内を散策。政治的な話は抜きにして、この空間にいると、この国に戦争があったということを実感させられる。第○○大隊という幟を前に、おじいさんたちが記念撮影をしている。
遊就館は改装工事中でピカピカの銅葺き屋根が眩しい。何年経てば重々しい緑青屋根になるのか。また、初めて境内にある相撲場を見る。坪内さんの『靖国』でお馴染みの場所。何か強烈な磁場を感じさせる空間なり。
白百合学園角川書店本社社屋を通り、飯田橋まで歩いて帰途につく。
4月某日 せっかくの魁春襲名ということもあって、妻を誘って昼の部を観劇するため木挽町へ。昼は、女性一人では行きにくく、でも食べてみたいというので吉野家へ。はねてのち、銀座をぶらつき日比谷から帰途につく。
4月某日 息子と二人で電車を乗り継ぎ、京王線芦花公園にて下車、世田谷文学館に行く。「追悼山田風太郎展」開催中。同文学館のある世田谷区南烏山あたりのマンションの雰囲気すこぶる佳し。何よりも緑がいい。
帰途、根津にて下車、つつじ祭り開催中の根津神社へ。ここで妻と合流。混雑甚だし。去年もこの時期に来たので、去年と同じポイントで子供の写真を撮ろうとしたが、失敗。去年と同じく屋台の焼きそばとお好み焼きを買い込み、缶ビールで疲れた喉を潤す。この瞬間がたまらない。心地いい酔いで子供と一緒に猿回し見物。
4月某日 妻の買物の付き合いでへ。昼食は高島屋内の熊本ラーメン桂花にて。また、せっかく行くんだからと古本屋を調べ、西口の太平書林・あいあい書房・古書森羅三軒を回る。
4月某日 妻の実家がある岩手県金ヶ崎町へ帰省。義理の祖父の七回忌法事。見わたすかぎり広がる田植え前の田圃、果てにはまだ雪をかぶる奥羽山脈の山並み。犬の散歩であぜ道に咲く野生の花々を見、凧揚げ(失敗したが)などで子供の相手をしてのんびりと過ごす。子供にとってもこういう田舎の暮らしはいいだろうし、自分にとっても本当にいい気分転換になった。
4月某日 水沢江刺から仙台まで東北新幹線。仙台のジュンク堂書店にちょっと立ち寄り、仙山線にて山形へ。実家に荷物を置いて休む間もなく米沢へ行き、米沢市立上杉博物館で開催中の特別展「上杉家の至宝2」を見る。同館に勤務する後輩にお世話になりました。感謝。「洛中洛外図屏風」の本物を見る。十数年ぶりか。米沢は上杉祭りを翌日に控えて、お祭り気分で盛り上がりつつあった。
快晴の山形。雪を抱く月山と葉山、そして蔵王。まわりには緑の山々。盆地で生まれ育った人間は、まわりに山がないと不安なのである。山形ではもちろん渓流ラーメン
4月某日 山形から東京に戻る。妻と息子二人が風邪気味で体調不良。珍しく私だけ無事なり。