4日目(ペナン島〜シンガポール)
夜中の3時ごろ、なにか人の気配を感じて目を覚ますとイスにぼんやり人影がみえる。 一瞬ギヨッとしたが、Mだった。ダニか、なにかが寝床にいるらしく、かゆくて眠れない と言ってぼやいている。こっちは全然かゆくないのだが。すぐにまた寝て、5時すぎ頃に起きた。 結局Mは朝までおきていた。早速、出発準備にとりかかることにした。闇の外からはコーランが聞こえてくる。雨が降り、雷までもが鳴り響き、異様なペナンの雰囲気に妙にマッチしていた。6時前にフロントに行くと、 昨日言っておいたからか、宿のおじさんがイスに寝て待ってくれていた。カギを開けてもらい、 まだ真っ暗の街に出て、フェリー乗り場に向かった。ペナンの朝は早く、もう屋台らしき ものが出て独特な音楽を流しながら、ここジョジータウンの風景の一部になっていた。フェリ ー乗り場に着くと朝早くにかかわらず、けっこう人がいた。このペナン島とバタワースを結ぶフェリーは24時間中あり、かなり便利だ。おまけに、帰りのペナン島からバタワー スにいくときは無料になっていて得した気分だ。
8時ちょうどにバタワースを出発したKTM(マレーシア国鉄)の2等列車はいよいよ最終目的地のシンガポールに向かった。これで、あとは自動的にシンガポールに着くので安心したいところだが、列車が遅れるということもけっこうあるらしい。順調にいっても21時すぎ到着予定だから、あまり遅れると飛行機に乗れない。今、2時間走ってもうすでに20分ほどの遅れがでている。少し心配になってきたがどうしようもない。Mは昨晩寝れなかったためか、横でぐっすり寝ている。車内は冷房が効いて寒いぐらいだ。1つの車両の前と後ろにテレビがあり、アニメのビデオがながれていて子供たちが真剣にみていた。タイでは停車駅ごとに食べ物売りが車内に乗り込んできたが、マレーシアは日本と同じでワゴンでの車内販売があった。昼食はこれを利用してヤキメシのようなもの(これがナシ・ゴレンか?)を食べた。窓のそとに目を移すと変な山ばかりだ。しばらく見ていたが、少し眠くなってきた。眠気を覚ますために、停車する駅ごとにガイドブックを調べ、ふと、そこに下車したつもりになって想像にふけることにした。実際に降りてみたいところもたくさんあったが、今回は降りている場合ではない。乗っていても間に合うかどうか心配な状況である。
出発して6時間ほどでクアラルンプールに着いた。さすがに大都会だった。もちろん降りずに通過しただけだ。車内も降りた人や乗ってきた人でけっこう入れ替わった。後ろの席にイラン人らしき夫婦とその子供が座った。父親はバカ程大きかったが子供にはやさしかった。そのおかげで子供は車内を自由に遊んでいた。もちろん僕の横にもきて、さっきからしゃぶりまくっている唾液まみれの指で僕の肩を触って微笑んでいる。少し顔をひきつらせながら笑顔でこたえてやった。また、後ろの席から弁当についていたスプーンが寝ているMの頭の上に降ってきたりした。そのときはさすがに両親が謝りにきたが、子供は懲りずに車内探検をしている。
列車はいつのまにか予定よりはやくなっている。予定時刻よりもはやく出発していいのか。その時間に待っている人はどうなるのか。という心配も一瞬浮かんだが、はやく着くことにはこしたことはないので少し安心する。しかし、マレーシアの南端の街ジョホールバルに着いたときには結局30分遅れていた。そろそろ、マレーシア出国、シンガポール入国の手続きがあるはずだ。でも、どこでするのだろう。にわかに車内が騒がしくなってきた。先程のイラン人もなにやら聞いてくるが、こちらもよくわからない。近くにいた日本人の青年に聞いてみたがやっぱりわからない。彼が車内から出てホームに降りてみるとすぐに車内に戻された。どうやら、マレーシア出国手続きは車内で行うらしい。待っていると係員がまわってきた。無事マレーシアを後にし、シンガポールに入った。シンガポール入国手続きは、シンガポール駅に着く途中で全員降ろされて行われた。ここでは、麻薬犬の横を1人づつ通された。シンガポールでは麻薬所持だけでも死刑になるので、持っていなくてもなんだか緊張する。 シンガポール駅に着くと両替所までダッシュし、タクシー乗り場までこれまたダッシュ。このおかげで5番目ぐらいに並べた。少したつと、タクシー乗り場には長い列ができていた。駅から空港に向かう途中のタクシーから見た夜のシンガポールの街はきれいすぎた。