3日目(バタワース〜ペナン島)
朝6時ごろ目が覚めた。相変わらず列車は淡々とマレー半島を南下している。トイレに 行くために寝台の上段から通路におりると、下段に寝ているはずの昨日のおじさんがいない。相当朝早くに降りたらしい。そういえば、昨晩9時にはもうすでにいびきをかいていた。トイレをすませて帰ってくると昨日たのんでいた朝食が用意してあった。これは、タイとは無縁のごく普通の朝食だった。だだ、Mのカットフルーツには虫が乗っかっていたが…。
8時ごろタイ・マレーシア国境の町パダンブサルに着いた。ここでいったん乗客全員荷 物を持ってホームに降り、タイ出国・マレーシア入国手続きをしなければならない。少し並んで時間がかかったが無事通過できた。タイ・マレーシア間は1時間の時差があるので 時計を合わしておくように駅員が教えてくれた。この時差を忘れていて列車やバスに乗り遅れる人もいるらしい。陸続きで国境を越え、時差もあるというのは日本で育ったものと しては不思議な気分だった。再び列車に戻り、バタワースまであと2時間半ぐらいある。さすがにMも疲れた様子だ。
バタワースに着いた。今日の目的地はペナン島だ。ペナン島はここバタワースからフェリーで20分程のところにある。フェリー乗り場に向かった。ここにはかなりの日本人がいた。2人組の日本人が「日本の方ですか?」と話かけてきた。その2人はガイドブックにはペナンの安宿は載っているがバタワースの安宿は載っていないので、ガイドブックがあれば見せてほしいということだった。リュックから取り出してみせると彼らも取り出した。それはどちらも『マ レー半島モンスーン・エクスプレス』だった。彼らと別れフェリーに乗った。今回の旅で はじめてマレー半島を離れ、唯一の寄り道をするペナン島が目の前に見える。フェリーを 降りるとすぐにKTM(マレーシア国鉄)のチケット売り場に向かった。状況によっては、今日中に シンガポールに向けて出発しないといけないかもしれなかったからだ。だが、聞いてみると明日の朝8時にシンガポール直行列車があるという。シンガポール到着は21時05分 ということだったので、23時55分の飛行機には間に合うと判断して今日はペナンに泊 まることにした。そして、また宿探しに町にでた。ペナンのフェリー乗り場を出るとすぐにトライショーという自転車タクシーみたいのが寄ってきた。ペナン島の中心街であるジョージタウンはフェリー乗り場からすぐだったので乗る気もなく「No thank you!」を連発 して振り切り、暑い街中に歩き出した。旅に出る前にインターネットでペナン島の安宿を 1件チェックしていていた所があったので、まずはそこを目指すことにした。20分ほど歩いていたら目指していた「現代旅社」という看板が目に入った。安宿にしてはけっこう きれいではないかと思いつつ「twin room.one night」と言うと、相手は「???」。よくみると、宿ではなく店だった。あわてて外に出ると、横っちょに暗くてボロい「現代旅社」の入り口がちゃんとあった。暗い階段をのぼっていくとフロントがあった。経営者は中国人で愛想のよいおじさんだった。横におじいさんがいて手伝っていたが、おつりの計算がメチャクチャで、おじさん におこられていた。この安宿はツインで33R(1180円)、1人590円になる。カオサン通りで泊まった所より安い。エアコン、シャワー、しかも温水がでた。ただしトイレ は共同だった。トイレは洋式のと、うわさで聞いていた、水で洗い流すいわゆる手動ウォ シュレットのがあった。部屋は薄暗くかなり広くて、天井には大きなファンがゆっくりと回っていた。百年ぐらい前の中国の雰囲気を漂わせていた。
まだ、夕方にもなっていなかったので、外に出ることにした。この町の一番高い建物のコムタとい うビルの展望台にのぼり、しばらくの間ペナン島といままで旅してきたマレー半島をながめていた。このコムタというビルはなんでも揃っていて、あまり日本とかわらなかった。 コムタを出てブラブラ歩いた。教会、モスク、中国の寺院、屋台、近代的なビル、そして マレー人、インド人、中国人などが混在し、異様な雰囲気をかもしだしていた。そして、この雰囲気がなんとも言えず気に入った。お腹がすいてきたので、食べる所を探していたらMが カレー屋のインド人に腕をつかまれて引きずり込まれた。客が他に誰もいなくて少し不安 だったが、やたらと陽気なインド人だったので、そこで食べることにした。一番わかりやすかったチキンカレーをたのみ、1口食べてみると、これはいける。半分ぐらいまでは ガツガツ食べていたが後半だんだんと辛くなってきて、最後には口から火を噴いていた。 汗だくになって店を出て、宿に戻った。
明日の朝は8時に対岸のバタワース発の列車なので宿は6時ごろに出なくてはいけない。 はやくシャワーでも浴びて寝ようと思いシャワー室に行くと真っ暗だ。電球が切れているらしい。フロントのおじさんにいうと、新しいのを持ってくるのではなく、ベッドの電球 をはずしてそれをシャワー室に取り付けた。ちゃんと、電気はついて、おじさんは笑顔で出ていった。ベッドの電球ははずれたままだ。はやく寝るからまあいいか・・・。寝る前にミネラルウォーターがあまりなかったのに気づきフロントで「water」といって買うとかなり安かった。値段は外で買った3分の1なのに量は2倍ある。得したと喜んで一口飲むと変な味がした。よく見るとペットボトルのふたが1度開けた跡がある。どうやらミネラルウォ ーターではなく、ただの水だったようだ。また、コレラの恐怖が頭をよぎったが、腹薬を飲んで寝ることにした。