せたがやレポート

第1回定例会代表質問

(2002年3月)

2002年3月1日 第1回定例会
代表質問 社会民主党 羽田圭二

(1)区独自の景気・雇用対策の強化について

1:厳しい雇用情勢を受け、雇用就業の確保や創出に努力せよ

社会民主党を代表して質問します。
まず最初に、景気雇用対策の強化について触れます。
昨年12月の失業者数は全国で337万人。完全失業率は、5.6%の最悪の数字を更新しています。
四半期毎に発表される東京都の統計では、昨年7月から9月までの3ヶ月間平均で36万人の失業者数。
完全失業率5.6%という数字がでています。

また、厚生労働省は、昨年11月現在の高校・中学新卒者の就職内定状況を今年1月に報告しています。
この報告によりますと、高校新卒者の就職内定者は全国で13万6千人。
就職内定率は63.4%で、昨年の史上最低だった内定率をさらに5.5ポイント下回る数字がでています。

都内の企業倒産件数は、2001年の統計で3454件.過去最悪だった92年の3513件に次ぐ高水準で、うち8割が不況型の倒産と報告されています。
業種別では、卸売業、サービス業の増加が目立ち、小売業も依然として300件近い件数に達しています。

高まる完全失業率、経営危機や失業によるストレス、将来不安など、今日の経済状況を反映して自殺者が増加しています。
都内の自殺者数は、一昨年の統計で2780名。
区内では162名という数字がでています。
年齢別にみますと20歳代が24名、40歳から69歳までで85名が亡くなっています。
中高年層で52%を占めています。

全国では、98年から3万人台になっており、年間の交通事故死亡者が約1万人ですから、いかに危機的状況にあるかがわかります。
こうした雇用情勢を受け、福祉や環境、教育など需要が期待される分野に重点的に予算配分を行ない、区内に新たな仕事や事業が生まれるよう誘導し雇用を創出していくことが求められています。

昨年9月、和歌山県と三重県の知事が森林保全などの環境事業を通じて雇用を確保する「みどりの雇用事業」を政府予算の重点分野に加えるようア ピールしましたが、区の取り組みでいえば、例えば80万本緑化の推進で屋上緑化やビオトープづくりによって、区内の中小企業等の活性化や雇用の創出へとつ なげることは大切です。

区は、平成14年度予算において緊急雇用対策や各支援対策を謳っていますが、福祉作業所等の仕事が減少しているし、女性や高齢者の就業機会が減少しています。

そこで、国の景気・雇用対策と同時に、地域特性を生かした区独自の景気・緊急雇用対策が求められています。
特に新規高卒者・女性・高齢者・障害者等の雇用就業支援を充実することが必要と考えるが区の見解をお聞きします。

障害者の雇用状況では、求職登録数は増加しているようですが、解雇届出者数は、高水準にあり、昨年度の統計では全国で2517名という数がでています。

今日の雇用危機は、量と質の両面から見ていく必要があると考えます。
一つは、リストラによって家計の中心を担っている世帯主が失業するという中高年層の失業が増大し長期化していることです。

もう一つは、正規雇用が減少しパートやアルバイトなどの非正規雇用が増加し、一人あたりの労働負荷が増大していることです。
パート労働者の比率は全国で21.17%に達しており、
「正規職員並みの仕事をしても賃金格差が大きい。」
「介護休暇や有給休暇などの整備が進んでいない。」
などの問題が投げかけられています。

従って、単に雇用就業の確保や創出にとどまらず、同時に良質な職場環境の確保が求められているといえます。
区が直接こうした問題に関わることができないことはいうまでもありませんが、近年相談件数が増加している労働相談や雇用相談に対して区の対応が求められています。

そこで区内雇用状況の実態を把握し、リストラ・雇用の打ち切りに対して労働相談・雇用相談窓口など本格的な雇用対策の取れる労働行政機能を確立すべきと考えるが区の見解をお聞きします。

(2)循環型社会の確立と街づくりの推進について

1:多摩川の浄化と国分寺崖線の保護について

次に、循環型社会の確立と街づくりの推進について触れさせていただきます。
世田谷区には現在3つの浄水場があります。
喜多見の砧上、鎌田の砧下と玉川田園調布の玉川浄水場の3つです。

砧浄水場は飲み水を供給していますが、玉川浄水場は1970年9月28日の取水停止以来、飲み水は供給していません。
現在は工業用水を供給しています。
玉川浄水場の取水停止は、多摩川の工業廃水や生活廃水など水質汚濁が理由ですが、公害防止や下水道処理の発展などによって多摩川の水もかつて生息していた魚が戻ってくるほどきれいになってきたと地元の漁師さんは言っています。

すでに東京都は、多摩川の水質状況について、飲み水としても可能なB類型を宣言しています。

多摩川の浄化に影響を与える問題として、区内の湧水保全の課題があります。

東京都自然環境保全審議会は、湧水保全を求める答申を発表し、都環境局は年度内指針づくりをめざしています。
都内の湧水はこの5年間で70箇所がなくなり、残っている湧水も水量の減少や水質の悪化が進んでいるとしています。

区内の湧水は現在101箇所確認されていますが、都の答申同様、国分寺崖線周辺の開発行為などによって水量の減少や水質の悪化、枯渇の危機に瀕しています。

つい最近も、国分寺崖線のすぐ脇に住む方から、
「三つの湧水のうち、一つの水量が減っている」
という訴えがありました。
湧水の出でいるすぐ上、崖上に地下室マンションが建てられた後の出来事ですが、湧水枯渇の原因は、なかなか特定できないとされています。

野川や谷沢川、丸子川などに流れる湧水は、河川の自然浄化作用に欠かせない水源となっています。
また、区民の憩いの場であったり、湧水の活用もおこなわれています。

区は、開発行為等で湧水が枯渇しないよう雨水浸透舗装や浸透ますを公共施設や集合住宅等に設置するよう誘導してきましたが、より積極的に湧水保全を指導するなど対策をとるべきだと考えますが、区の見解をお聞きします。

2:環境にふさわしい街づくりの推進について

さて、次に国分寺崖線の保護のあり方とも関連しますが、今後の土地利用のありかたについてお聞きします。

この間の議会でも指摘してまいりましたが、大規模民・公有地の跡地利用については、しばしば問題が発生しています。
公立学校や民間厚生施設の跡地利用では、周辺環境との調和が問題となっています。

国土交通省は、都市計画にNPOなど民間の団体が街づくり計画案を作って自治体に提案可能にするために、都市計画法改正の準備を進めています。
都市計画を住民側から提案できる地区計画制度とあわせ街づくりは住民の手で進められるよう、区が住民とともに地域特性に応じた街づくりを進めることが問われています。

東京都の都市計画審議会が発表した「東京における土地利用に関する基本方針について」では、今後の東京における土地利用の在り方が中間報告のかたちでまとめられています。
都は、今後答申を踏まえ、用途地域等に関する指定基準の策定や都市計画マスタープランへの反映を謳っています。

都立大学深沢校舎跡地利用の問題では、周辺地域が低層住宅が多い地域にも関わらず東京都が第1種高度地区居住地域の用途地域指定のまま事業者に土地を売却したことが指摘されました。

今後、区においても用途地域指定や風致地区の規制の在り方、さらなる容積率の緩和の動きもあり、低層住宅地の環境保全、国分寺崖線のみずとみどりの保全などが課題とならざるを得ないと考えます。

特に、大規模土地利用と周辺環境との調和が問われているだけに、低層住居地における集合住宅の建設や用途地域指定変更など予想される土地の利用の規制緩和に対して区はどのように対応していくかをお聞きします。

3:ごみ減量化と生ごみリサイクルの普及について

次に、ごみ減量化と生ごみリサイクルの普及についてお聞きします。

この間、生ごみリサイクル機の普及や回収システムの拡充が注目されています。
生ごみがリサイクル機によって肥料がつくられ、その肥料を区民農園や農家等の協力を得ながら活用していく方法は、肥料の利用という課題はありつつも、都市における生ごみリサイクルの在り方を提起したといえます。

昨年、会派視察で留萌市のごみ処理施設を見学する機会がありました。
不燃ごみは固形燃料化し全てその清掃工場内で熱利用。固形燃料化は他の自治体で処理に困っているという話もありますが、留萌市の場合は全て利用しているそうです。

家庭からの生ごみは、同じ工場内に設置された生ごみ処理機で処理されているのが印象的でした。
生ごみは堆肥化し肥料として家庭菜園や農家で利用しています。
人口や面積、ごみの量も区とは比較になりませんが、ごみの減量化やリサイクルを市民が協力していく意識啓発につながっていることです。
区が行なっている家庭用の生ごみリサイクルの普及と資源分別によるごみ出しの徹底は、ごみ減量化施策として引き続き展開する必要があると考えます。

発生抑制、再使用、再利用、熱回収、適正処分という処理の優先順位からみても生ごみリサイクル普及の意味は大きいと考えます。
そこでさらに今後の見通しをお聞きします。

生ごみは、家庭ごみ3割を占め、可燃ごみ全体の4割近くを占めているといいます。
家庭から排出される生ごみは、その9割が水分だとされ、水分を取るだけで5分の1から10分の1まで減量できるとされています。

毎日出される生ごみはその出し方によって大きな違いがあるといいます。
最近多く普及している家庭用生ごみリサイクル機は、ごみを乾燥させて堆肥化するタイプですが、生ごみから水分を取ることがごみの減量につながるといいます。

そこで、生ごみの減量化にむけて、27の出張所に設立されたごみ減量・リサイクル推進委員制度を生かし区民の協力の下で進めていくことだと考えますが、今後の区の対応をお聞きします。

さて、資源分別回収も古紙やびん・缶の回収が定着し、回収された資源の売却によって1億100万円もの歳入となっています。
この事業が、住民の皆さんの協力の下で進められているにもかかわらず、区民の大切な資源が、区指定業者が回収する以前に持ち去られることからトラブルが発生しています。

指定以外業者の理解を得るなど具体的対策を取るよう要望しておきます。

(3)子どものいのちと安全について

1:保育待機児ゼロ対策と認証保育制度について

次に子どものいのちと安全の問題について質問します。

区は、保育の待機児ゼロ作戦の具体として、区立保育園の定員緩和や認証保育制度の導入によって待機児の解消を図るとしています。

女性の就労形態の変化や保育ニーズの多様化のなかで、多様な保育サービスを提供していくことが区の仕事として求められているだけに、その期待 にこたえる事は必要ですが、それだけに、認可保育園や検討委員会等でだされた懸念される課題に対しても極め細やかな対応が求められます。

特に認証保育制度は、現行の園児数に対する正規職員定数が緩和されることや保育時間が大幅に延長されることなどから、子どもたちや保育士職員の負担が予想されます。

正規職員の占める割合は、区立・私立の認可保育園の場合、基準は8割ですが、認証保育では6割とされています。
また、園児年齢別の保育士配置数では、例えば、2歳児の場合、5人に1名の都基準は採らず、6人に1名の国基準が採用されています。

今回開設された保育園の場合のように、保育時間は、朝7時から夜9時までの間の最高14時間まで預かるとなれば、職員配置数や正規職員の配置が重要です。

そこで、サービスの質の確保をいかに保って行くのか。
また、認証保育制度の誕生によってこれまでの保育制度が後退しないよう、認可保育園や保育室・保育ママさんなど既存の保育システムの改善について引き続き努力すべきだと考えますが、区の対応をおききします。

2:都立病院改革と安全・安心な小児科医療体制について

さて、次に都立病院の再編計画と安心・安全な小児医療体制の維持について質問します。

昨年、都立病院の統廃合計画が発表されました。
区内にある母子保健院の廃止および梅丘病院の移転統合は、小児科医療の後退をもたらそうとしています。

昨年12月発表された「都立病院改革マスタープラン」によりますと、梅丘病院を平成19年度に小児総合医療センターに移転統合し、母子保健院については今年10月をもって閉鎖し、12月には廃止するとしています。

梅丘病院については小児総合医療センターが開設されるまで、現行どおり既存施設での診療を継続するとしていますが、母子保健院については、
「国立成育医療センターを始とする周辺医療機関の協力をもとめていく。」
というもので、一般産科機能や小児医療等、母子保健院がこれまで担ってきた医療機能が担保されているわけではありません。

特に、小児緊急医療体制については、今日から開設される国立成育医療センターが対応するかの懸念は拭い去れないままにあります。

そこで区は、引き続き国や都に対して、今後も小児緊急医療体制の存続を求めるべきだと考えますが区の見解をお聞きします。

(4)学校完全週5日制と教育政策について

1:数値目標の導入について

次に学校完全週5日制と教育政策についてお聞きします。
区は、数値目標の導入について各校が掲げる教育目標を実現するための一つの施策としています。
区立の小中学校が掲げている教育目標とその達成度を保護者や地域の方々に伝えることを通じて、学校の教育内容や教育活動などに関心を高めてもらい外部からの評価を活性化するとしています。

しかし、数値目標の設定によって、子どもたちへの自主性が損なわれる危険はないのか。
数値目標をめざすあまり数値が、子どもたちへの押し付けにならないのかという疑問が残ります。

区は、数値目標と合わせて、来年度からこれまで各小中学校にあった学校協議会に学校評議員をおくとしていますが、学校の外部評価の導入については、慎重に対応してきた経緯があるのではないでしょうか。

それは、特に、各学校の自主性を重んじた独色を生かした学校づくりや子どもたちの自己決定権の保障を重視してきたからだと思います。

学校の外部評価の導入や数値目標の設定が、画一的な評価方法とならないのか、学校間の過度な競争を煽ることにならないかという不安がありますが、区の考えをお聞きします。

学校評価では、これまで生徒や教職員の表面的な態度や姿勢などが評価の対象とされた傾向があります。
数値目標の設置によって学校の格付けにつながらないのか、公平・公正な評価が保障されるのかをお聞きしておきます。

2:既存施設の有効活用について

さて、4月からいよいよ学校完全週5日制がスタートします。
いうまでもなく学校完全週5日制の趣旨は、こどもたちが自然体験や社会体験などを行う場や機会を増やし、豊かな心を育てようとするものです。

今回、子ども条例の具体化として文化施設等の土日料金無料が提案されていますが、今後、子どもたちが積極的に利用するようPRが欠かせないと思います。

子どもの自主性や自発性を尊重しつつ、同時に地域の協力を得ながら、現在の事業や施設を生かし様々な体験活動の場や機会を増やして行くことが必要です。

その一つに青年の家があります。
区の組織改正によると施設維持管理及び受付業務を委託し、今後の運営については社会教育に移行するとしています。
学校完全週5日制の導入を機会に、有効活用が求められています。

青年の家は、国分寺崖線、多摩川、等々力渓谷、古墳群に立地に位置しています。
遺跡文化や周辺環境など地域の特性や活力を生かし、青年の家の活用を図るべきだと考えますが区の見解をおききします。

2002年3月1日第1回定例会
代表質問社会民主党 羽田圭二

 

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