人魚姫:後編

 半年が経ちましたが道具は見つかりません。悪いことには3つの道具を聞きつけた、
悪人達が巨大な鋼鉄の空の城で、先に見つけようとしていることが分かりました。

 そして3つの海を渡り、5つの山嶺を越え、谷の向こう、海の近くの里で、やっと 勾玉を
持つ純粋な心の自然を愛する少女を捜し出したときに悪人は道具を奪おうと二人の人魚を
罠にかけてしまいました。悪人が里に火を放ち紅蓮と灼熱が使者を攻めたてます。
 天空から幾億もの光の水の矢を降り注がせて使者は里の炎熱を沈めました。

 辺りを見回せば二人の人魚と勾玉を持つ少女が居ません。
 山を越えた平原の上に威圧するかのごとく空の城が居るのです。
 そしてそこに3人がいたのです。
 使者は光輝き空へと、鋼鉄の城へと飛び上がりました。巨大な鋼鉄の空の城の中で、
悪人達が道具を奪おうと襲いかかってきます。互いを思い庇い、少女を守ろうとしますが、
碧色の髪の人魚は捕らえられ、助けようとした紺色の髪の人魚は悪人に矢で体を射抜
かれ、短刀で胸を刺されそうになります。
「ユラナ 」
碧色の長い髪の人魚は紺色の髪の人魚を助けようとして、鎖を断ち切って走り寄ります。
「来ないで、ネピチア」
と叫んでも、悪人たちがネピチアに無数の矢を放っても、止まりません。
そして、碧色の長い髪の人魚、ネピチアは傷だらけになり死んでしまいます。

 するとどうでしょう、人魚の体から魂の輝きと共に鏡が出てきたではありませんか。

 悪人達は二人が思う自然への心にこそ、道具があると罠をかけたのです。
 紺色の髪の人魚も魂を奪われそうになりますが、使者が助けに来てくれて悪人は打
ち払われます。紺色の髪の人魚は鏡を使者に渡しました。そして自分の胸を短刀で刺
そうとしましたので使者は制止しました。
「自然のためとはいえ、あなたを犠牲にしてまでいいわけない。人々が自然を愛して、
 回復させればいい。」
「ありがとう、でも」
 と紺色の髪の人魚は使者を突き飛ばし、自分の胸を力強く刺しました。
「願いとは代償あってのもの。この星の自然のために生命をも懸けることは私たち、
 後悔、していません。頼みま…す....」
 紺色の髪の人魚の体が輝き剣が出てきました。
 二人の人魚はまるで元通りに回復した海で泳いでいるかのように微笑みながら死んで
いきました。勾玉を持つ少女が流した涙が輝き勾玉が現れ出ました。
 使者も大粒の涙を流しました。道具が3つ揃うと鋼鉄の巨大な城は砂に変わり灰となり
ついえ去ってしまいました。

 使者が3つの道具を使うことで、空は雷鳴が轟き、大海原は咆哮をあげ、山は震えて、
平原は逆立ち、この星が光に包まれて一昼夜の後、海や山、川や森や空は美しさを
取り戻しました。悪人達は炎に包まれ、灰となり消え去ってしまいました。波涛がおさまり、
日差しが水平線の向こうから洩れ出す頃に使者は、二人の人魚がいる勾玉を持つ少女の
里に帰ってきて、鏡と剣を二人の人魚の体に戻そうとしますが、戻りませんでした。
 空の彼方から星の守り人の声が響きました。
「使者により二人を生き返らせることも出来よう。
 しかしそれでは代償とはいえぬ。新たな命として生まれるのが良かろう 」
−と。
 使者と少女は、二人の人魚の亡骸を海に戻しました。
 澄み渡った大海原の彼方から、
 潮騒が、人魚の歌声のように、
 いつまでも、いつまでも聞こえていたそうです。

 使者が天空に戻るとき、勾玉を持つ少女に返し、剣と鏡を月明かりに捧げて、使者の魂は
少女の体から出て夜空へと昇っていきました。

 数年後、結婚した二人の少女は、可愛い女の子を生みました。

 紺色の髪の女の子と、碧色の髪の女の子でした。そして、二人には、あの二人の人魚の
名前が付けられたのです。自然を愛する、大切にする心を忘れずにと。

…to be continued

 

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98/10/09
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