NEON GENESISから「CHANGE GENESIS」へ

  −綾波レイと綾波レイの間に


 本来のエヴァと架空のTV版である「NeonGenesisEvangelion」とこの真・エヴァンゲリオン(ChangeGenesisEvangelion)
 最大の違いは背景世界で寒冷化が進んでいることでも、オービタルシャフトやリングが有史以前から存在していることでも
エヴァの機体数でも適格者の数でもない。

 綾波レイと碇シンジの位置付けである。(註:これはパロディです。くれぐれも本気にしないように)

 人物造詣的には、本作が貞本義行氏の漫画版をベースとしているのだが、二人の生い立ちがまるで異なる。

 まず、碇シンジ。
 
彼は捨てられた(と思いこんでいる)子供ではない。
 内省的で涙脆いが自分に正直であること、きちんと生きていこうとする少年として成長していく。
 碇ユイとは死別していない。
 碇ゲンドウに顧みられないとしても、ユイの元を離れていても、周囲とエヴァとの関わりの中で自身を見据えて、
 人を信じ、人を愛し、生けるものを慈しむことを忘れない青年になっていく。
 絶望しても拒絶されてもその先を見失わなかった。傍らに綾波レイが居たから。
 無条件で綾波レイをわかろうとし続けた。レイの身を、こころを、行く末を案じた。
 第壱部で絆が生まれた。第弐部の激しい戦闘と一時的に離れ離れになることで想いを深めた。
                 第参部で一同に会した適格者との交流の中で受け継ぐ意味を知った。
 そして、第四部発動編へ、最終話四部作回天編へと進むにつれ、願いは只一つ。
 綾波レイに生きていて欲しいと願った。そして、一緒に生きていきたいと。

 そして、綾波レイ。

 綾波は最初からそこに居たのだろうか?
 彼女はユイの面影を元に作られた魂の容れ物であるリリスのコピーではない。
 マルデゥクに選ばれた最初の被験者(適格者)でもない。
 TVアニメ版では自己犠牲的な精神と慈愛に満ち溢れた聖母のようなもの、とも描かれた。
「私には他に何もないもの…」
 只、EVAと自身の為だけのパーツとして存在する無数の綾波レイ。
 しかし、本作の綾波レイには、本当に何もない。記憶も、コピーも、自身の存在さえも。
「エヴァに乗るために生まれてきたようなもの」でもない。
 月面基地L3の大惨事の唯一の生存者、初号機を起動させた存在。初めてそこで確認された綾波レイ。
抹消されたのではなく、始めから何も無い、突如キラメイた星のように存在するレイ。
 彼女が居るのはまさに彼女を“綾波レイ”として知覚・認識しているからに他ならない。
 第壱部邂逅編、第六話「涙」で彼女は小さな命の鼓動に涙を流してしまう。
 第弐部接触編では話数を重ねるに従いシンジの身を案じる言動が増えていく。
 第弐拾弐話「夜明け前、闇の奥底」でアスカに「シンジの為になら死ねるの!?」と詰問された時、平然と「ええ」と答えてしまう。
 無に還るのは簡単だった。綾波レイを形作るこころ(魂)とからだ(肉体)を受け止め、抱き締め、共に生きていこうと願う存在を感じたとき、
 人として生きていくを選んだ。
 こころの中に碇シンジがいる限り、そこに希望と信じる想いと明日がある限り。


 ここで一つの物語の結末を振り返ってみよう。(註:再度、本気にしないように)

 架空のTV版最終4部作回天編で宇宙使徒に侵食されたアスカが使徒と共に第3東京市を襲撃する。
「最終部第壱話:世界の彼方へ」
 迎え撃つ中、宇宙使徒に包囲されたシンジ達を庇い、使途と接触し、光の中に消えていく参号機とトウジ。
 哀しみの中で弐号機を打ち砕き、アスカを殺してしまうシンジ。それがアスカの願いとしても。
「最終部第弐話:希望に続く病、そして」
 大破する零号機は第107使徒:タヌタラ・アルミサエルの融合に晒され、初号機も融合の危険により、使徒を取り込み自爆を決意するレイ。
 その時、発現し12枚の光の羽を初号機が世界を震わせた。
「最終部第参話:人のかたち、こころのかたち」
 閃光の彼方、闇に包まれていく零号機と初号機。肉体と精神の境界が崩れ、LCRに還元していくシンジとレイ。
 そこで対面する使徒とレイ、使徒とシンジ。無数の綾波レイ。無数の碇シンジ。
 曝される心と心の痛み、苦しみ、哀しみ、そして慈しみと希望と生きる願い。
 人として生きようとすることを願うシンジとレイ。永遠と虚無のLCRの海から戻ってくる二人。
 人のかたちとなるシンジ。上半身のみの綾波レイ。
 意識の向こうで互いを呼び合い、手を携えた時、レイの下半身が再生し、抱き合う二人。
 オリジナルのロンギヌスの槍が闇を貫き、闇を吸収していく。翼を展張し咆哮する初号機。
 初めて翼を広げる零号機。両体が金色を放った時、周辺の命の息吹きが戻っていく。
 排出される両体のエントリープラグ。中身は空だ。片膝を着く2体。
 見守られるようにシンジとレイが大地に横たわっていた。
「最終部第四話:まごころ」
 残る最後の使徒を目指し、宇宙に初号機で昇る二人。月面の戦闘で明かされる渚カヲルの正体。
 沈み始める第3東京市、遺跡宇宙船。最終宇宙使徒:ファブリオ・タブリスを拘束した拾参号機と
 第108使徒:ウリエルこと渚カヲルを虚数空間へ打ち払う。
 しかし、その代償として初号機の虚無基幹(ZDF)は停止してしまい、地球の引力に掴まり自由落下を始めてしまう。
 為す術も無い二人。地球の夜明けを見ながら意識が薄れていく。
「さあ、帰ろうか」〈シンジ〉
「みんなが待っているわ」(レイ)
 流れ星となる初号機。(ここからエンディング開始)
 ラストシーンは、海辺を歩く小さな女の子。足許を波が洗う。振り返り、
「おとうさん、おかあさん」と呼び走り寄っていくと、両親の後姿。
 果たして逆光の中のその姿は碇シンジと綾波レイだったのであろうか。


 人の形とは何かなにか?

 人の生物学上での分類上の位置は、
 動物界
  ├─脊椎動物門─┬─哺乳網─┬原獣亜綱
  │       ├─鳥 綱 └真獣亜綱─┬─後獣下綱──有袋類
  │       ├─爬虫類        └─正獣下綱─┬食虫目
                               ├翼手目
        :                    ├霊長目──┐
        :                    :     │
  ┌──────────────────────────────── ┘
  ├原猿亜目
  └真猿亜目─┬─オマキザル上科(広鼻猿類)
         ├─オナガザル上科(狭鼻猿類)
        └─ヒト上科┬─ヒト科─┬──オランウータン亜科
              │      ├──ドリオピテクス亜科
              │      └──ヒト亜科─┬─パン属─┬─ゴリラ
              └─テナガザル科       │     └─チンパンジー
                            └─ヒト属────ヒト
                             (ホモ)   (サピエンス)
        江原昭善著『人類の起源と進化』(裳華房)参照


  と位置している。
  そして分子時計法の世界的権威アラン・ウィルソンとヴィンセント・ザリッチが精密な免疫学的測定法を用いてDNAの
 変異から霊長類の系統進化を割り出したことからすると、ミトコンドリアDNAを調査することで特定の個人の遺伝子情報を
 解析することで、”いつの時代の人間なのか”が特定可能になる。
  その上、人工的なDNA増幅法「PCR法」による遺伝子の回収から例え何万年前の人間であろうが理論上は複製する
 (クローニング)ことが可能になる。
  他にも生態的地位に適応すれば収斂進化により同属、同種でなくとも外見上の特徴が近似する事は実証されている。
 これは第17使徒と第18使徒〔ヒト〕との差分の違いとしては行き着く果てが同じになる理由の一つである。
 勿論、DNAシークエンサーの分析でヒトゲノムからスプライシングされたイントロンの欠損情報を解析・データベース化
 出きれば、そこにダミーシステムとしてのパーツ、つまりガフの部屋が空っぽの「魂の無い」肉体が生産されるのか?

  この分岐を司る母なる拠り代がリリスならば、互いのイブ達は「インファント・サイド」を繰り返すのだろう。
  TV版においてヒトが全ての使徒を屠り、黒き月へと帰り、LCLに戻っていくのは当然の経緯なのか?

  本作において、ヒトの位置付けは敢えて曖昧にしている。但し、種と種の交わりこそ生き物の求める選択ならば母なる
  象徴となる綾波レイと碇シンジが新たな世界を、命を、作り、育み、生きていこうとするのは賛歌に他ならない。


  リリスは何故出てこないのか?

  天使の階級について

上級三隊天使

・熾天使(Seraphim)
 神に最も近く、6枚の羽を持ち、2枚で顔を、2枚で脚を隠し、残り2枚で飛ぶ。
「燃える」と「蛇」が語源。純粋な光と思考の存在。

・智天使(Cherubim)
 4枚の羽と4つの顔、4つの腕を持ち、光輝く足元には車輪。
「仲裁者」と「知識」が語源。

・座天使(Ofanim)
 緑に輝き燃える車輪で、多数の目を持つ。神の玉座を運ぶ存在とも、戦車と
もいわれる。Thrones,Galgalimの異名在り。

 もちろん、この分類には諸説在り、宗派によっても異なるものであるので参考として頂きたい。

中級三隊天使

主天使(Dominions)
 神による世界統治の為に働く天使。英語の統治、支配と同じ単語。
 別名としてLoadship(主権)ともある。

・力天使(Virtueas)
「高潔」という意味の天使。勇気を人々に授けるのが役目。
 地上での奇跡はこの天使による演出。

・能天使(Powers)
 神によって最初に作られた天使。悪魔との戦闘の最前線に陣を敷く戦いの
天使。死者の魂を導くのもこの天使。

 御分かりのように実際に作品上での天使の位置付けが如何に低く曖昧化が明瞭になる。

下級三隊天使

・権天使(Principalities)
 地上の国や都市を守護する天使。信仰の擁護や、人々の指導者の監視と
 正義への導きも行う。

・大天使(Archangels)
 第八位と低い階級だが、職務権限や待遇は非常に高い天使。膨大な天使の人口のなかでメンバーは7人いる。別の諸説も在り。

・天使(Powers)
 ヒトに近い存在の天使。いわば天使の中の戦闘員的役割。

  天の宰相〔最高位の大臣〕ことメタトロン

  本作品の世界ではオービタルシャフト全体の呼称である。(地球の四本はそれぞれ愛称を持つ)

   本作の舞台は地球・月・火星と広範囲にわたっている。勿論、架空のTV版でも火星は重要な位置を占めている。
  意外かもしれないが、渚カヲルの使徒としての位置付けが
タブリス:自由意志を司る天使 ではなく、「神の炎」の
  意味を持つ天使である事。
  懺悔と9月と詩、そして「最後の審判」を司るのは彼である。そして、地獄の長官でもある。
  真・エヴァンゲリオンの最後の舞台が火星から「
カマエル:神の前に立つ七第天使の一人で地獄の公爵でもあり、
  王権伯ケムエルとして破壊の天使を引きつれて来る邪悪な星である火星の支配者。
  そう、もう御分かりであろう、『大人のナディア』が”カマエル”なのである。
  本来のTV版綾波レイが地母神[ 無限の慈悲と壮絶な残虐を併せ持つ、全ての母 ]的役割のリリスのコピーであった。
  真・EVAではその側面を零号機が負っている事が暗示されている。
  勿論、初号機も同様の演出が為されているので、どちらもコピーである可能性が高い。
  ただ、オリジナルのナディアは”使徒”ではありません。
  ここまでで再考察すれば、本作、真・エヴァでの綾波レイがヒトとして生きていくのは当然に思われる。
  猛烈なまでの代謝機能を持つ展開抗体と共鳴情報素、L.C.R.の中での形成と還元。オリジナルナディアの干渉が
  あったとしても驚異的な生命力:増殖能力と活動性;を自身の意志で制御はしていないようだ。
  更に重要なことに"彼女"には生殖能力がある。
  碇シンジと綾波レイ自身の子供を育める肉体なのである。
  誤解して欲しくないのは、量産機のダミープラグはカヲルだし、弐号機軍団はアスカのエルトラム形態である。
  (あの悪虐の施設でシンジ君と綾波が人間だと再確認されたのだろうか? しかし、)

   最後に、本来のエヴァと同様、本作でも綾波レイの位置付けは、”全ての根源であり、物語の基幹をなすもの”である。

   ”永遠の処女にして、母”、そして月の象徴、大地の恵みと共に歩む、それが綾波レイである。


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