12月31日〜1月1日 捨てがたき人々 捨てがたき自分
今年が終わって来年が始まって、だからどうした。99、90年代最後の年。俺はもうすぐ41歳、数えで42、本厄。どうでもいいけど、厄払いには行くけど、なんちゃことはない。
あの、どうしようもないベトナム戦争やって、経験だけが造れる凄い反戦映画が生まれて、だけど、また、湾岸戦争やって、そしてまた空爆。ベトナム戦争のころ、俺は「死体洗い」の噂があった立川ベースから遠くない小金井で野球少年だった。空爆の12月、街はクリスマス気分でジョンの「ハッピィ・クリスマス」が流れて。ボケてんじゃねえよ、とイライラしたって、俺の目は眠そうで、補充の引き出しで、こいつのアタマだ、なんて「賭ける」ことでアツくなろうとしてるだけ。
「褒められたくて 気にして欲しくて わかって欲しいことが 見返したくて カッコつけたいことが 全部力をくれる」とシオン。
ナメたやつ、裏切者、タコ、憐れんだやつ、一人独りオトシマエに行かせてもらうぜ。
どうせ議論など渦巻かないだろう。誰も反省などしないだろう。
生まれ生まれ生まれ生まれて、生の始めに暗く、死に死に死に死んで、死の終わりに冥し。弘法大師空海、57歳の時の作らしい。
12月30日 やっぱりな、そりゃないだろう
中団取ってた神山のところに寄せてきたのは児玉。神山ラインでほとんど切り換え考えないと言っていた児玉との併走がなければ神山のアタマだったのでは、なんてのは後の祭なのでしょう。ま、あれは追い上げるよという擁護派はいるだろうけど、コメントの語調がなあ。この選手を「競輪博士」と褒める気は俺はしない。
山口の髪型、なかなかいいじゃん。
あと、ま、どうでもいいけど、宇津井健のバイオリズムなんとか、飯島愛は嫌いじゃないけど、なんであの女の予想聞かなきゃなんないの。どうしようもない。どうにもこうにもダメダ、コリャだ。
そろそろ茶番劇に幕! だろう。
12月28日、深夜 グランプリ結論
神山から山田が本線、加倉の2着が押さえ。その心は。ごめん、酔ってるし風邪だし世を憂えてるし電車じゃバカ女が携帯うるさいし、説明はなし。
12月28日 グランプリ考@
三十一日の仮想見出し。
「神山悲願の――」「神山四度、2着」「吉岡、小倉の悪夢払拭――ほんとのガッツポーズ」「悪夢再び、吉岡痛恨1着失格」「加倉またもや繰り上がりV」等など。むろん、ジョーク。
賛否両論ある寛仁の時の小橋。俺は小橋シンパだけど、あのレースに対しては否定派で、よって小橋は買わない。
小倉準決で吉岡―加倉の三番手からインに入りながら遠慮気味だった本田。もしあれが小橋だったら頭で中割ってるよな。ま、そこが本田の人の良さなんだろうけど。シビアになれない選手は消し。
デキの良さを強調してる木だけど、ここ何ヶ月かの゛「消化不良」を見せられては……。今回はオミット。
神山の三番手で切り換えはほとんど考えない、という児玉。う〜ん、なんなんだ、このコメント。この人、よく「作戦は一晩考えて」とか発してるけど、ま、1着取る最善のものを模索するのでしょうが、競輪は単勝買うギャンブルじゃないからね。2着もセットで考えるものだから、少なくとも前売りは買いづらい。横道逸れちゃったけど、児玉も買わない。
1度獲っている山田が行ってしまって山口、なんていう性格のレースではないグランプリ。山口も軽視。
ということで残りは4人。
逃げるのは誰?
立川バンクで逃げるっていうのは結構「勇気」がいること。神山は去年逃げて食われている。今年は逃げないでしょう。山田は、どうなのかな。俺は、こういう大舞台で「逃げてしまう勇気」があるのは、やっぱり吉岡だと思う。
だから、結論は。
まだ出ません。
12月27日 有馬記念
Iメジロブライトの単勝かウス目へ流すか、でもやっぱりJセイウンスカイは外せぬとIJ一点。結果はAグラスワンダーにIメジロ。これだもんなあ。
浅田次郎の「競馬どんぶり」のなかの“あくまで、競馬新聞に印を付けている人も自分も、同じように馬券を買う人間だと、そういうふうに考えなくてはいけない”は名言。
12月25日 天国までの百マイル/車番連単・枠番連複
車番は全部単式、枠番は複式に。「枠」はより簡単に、「車」はむずかしくと書くと語弊が生じるが、ま、そんなとこ。
これで、車番と枠の配当見比べながらという徒労からは開放されそうだけど、「売り上げ低迷の打開策」にはたしてなるのかしら。車券のシステムじゃなく、ようは競走でしょう。違うか?
浅田次郎「天国までの百マイル」読む。
やっぱり泣かされた。そして自分の状況にちょっと似ていて身につまされた。
町田康を初めて読む。本屋でどれにしようかと迷って「屈辱ポンチ」を選んだ。
さすがパンクロッカー、不思議にローリングしてた。他のも買わなきゃ。
12月24日 小山卓治ライブ 光のオルガン
下北沢QUEにて1年振り以上の小山のライブ。
スマイリーのサックスが二曲入っただけで、あとは全部ギターかピアノでのワンマン。「人ごみにやられて、言葉に傷つき」とか「悲しみに追い付かれないよう突っ走れ」だとか小山らしい歌言葉が沁みた。東京から大阪までの新幹線車中で想う友人たちの昔と今を綴る歌が早くCDで聴きたい。
12月23日 砂上の楼閣
“生産を続けるために消費を人工的に刺激しなければならないような社会は、屑やむだの上につくられた砂上の楼閣である”22日付けの朝日新聞朝刊、天声人語の一節だ。
次ぎから次ぎへの全国発売の大レース。このS級漬けをファンは心から歓迎しているのだろうか。
平開催が二億しか売れないと嘆く関係者。はたして本当に嘆かわしいことなのだろうか、と俺は思ってしまう。一日二億の買物をしてくれるんだぜ。ま、経費のことは分からないし、余剰している従業員問題等あるのだろうが、二億の売上げがあって、やっていけないのなら、それは経営責任なのでは。お客が減った、購買力が落ちたとかいう問題ではない、という独善的意見。
12月21日 高木が少し変
岐阜記念の準決見る。11レース。梶原亜湖−高木隆弘の先制を山田裕仁がまくったんだけど、ま、行かれちゃうのはいいんだけど、張るでもない番手から出て行くわけでもない木はなんだか変。考えてみると、ここ何ヶ月かの高木は“らしさ”があまりないような気がする。むろん、事故点、間近に迫ったグランプリ、調子の波等、こちらでは判断つかないけど、あの強い高木でないことは確か。残念だし心配。
ストリート・スライダーズのEarly Sliders LIVE
1983-1987を観て聴く。
最高。
サイド−ワンのセカンド「BIG BANG」は期待外れ。俺はファーストのほうが良かったなあ。
「映画芸術」誌の特集、「プライド」と「南京1937」を巡って。自分の歴史に対する知識のなさにショックを受けつつ読んだ。映画「プライド」はとにかく長かった。
「ギャンブル・レーサー」の新刊はいつものように田中誠ワールド。木葉功一の「キリコ」は第2巻が楽しみ。
しかしマイネルラブの単勝はツケたなあ、買ってないけど。
12月19日 ピンの一 教育テレビ「未来潮流」
伊集院静の「ピンの一」読む、あっという間に。これ読んでる間は電車の中でもウォークマン使わなかった。
午後9時から「未来潮流」見る。
崔洋一と馳星周の対談。「個」を描く、見る、探求する。「都市のドラマをほんとに観たいのか観たくないのか」お前は、と言われてる気がした。
コーヒー飲み過ぎて不調。
宇都宮競輪ノーホーラ。
もしかしたらだけど、坂口伸治(群馬・45期)は近い内、穴アケル?
12月16日 一日遅れの取手決勝報告
圧倒的人気の伊勢崎は先まくりを打った諸橋愛に持ってこられて落車。諸橋は失格なんだけど「いい根性」してた。伊勢崎の後ろは切れてるんだし、
普通は伊勢崎を行かせちゃって追ってけば「2」はあるのに、あくまで合わせまくりを敢行。伊勢崎なにするものぞ、の気概が伝わってきた。
結果優勝したのは最終ホームですでに伊勢崎に離れていた笹森克也なのだから、競輪は分からないというかファンキーだ。そうそう、笹森の表彰式での挨拶はよかった。強いS級の人で、マイク向けられると、どうしようもないのがいるけど、こういうのこそ重注とか付けて監視すればいいのに、というのはジョーク。
12月13日 K1グランプリ
ピーター・アーツのすげえ左ハイキック。
それはいいんだけど、フィナーレの「喜びの歌」、まあ、それも許すけど、カットバックのように芸能人を映すのは不快。リングサイドは芸能人のサロンと化して。
K1は斜陽する、というのが俺の一本予想。
12月10日 ザウスが間近の船橋オート
船橋オート、ウインターカップは池田政和の優勝。2着片平で5百幾ら。勝負だよなあ、なんてTV観戦の空予想なら何万円だって買えます。船橋オートのすぐ隣が人工スキー場のザウス。ここで俺はMにスノボーを初めて教わったんだよな。
決勝前に日本選手権のVTRを流していたけど、準決の片平と浜野淳は何度見ても「いいもの見させてもらった」だね。
今日発売創刊の「レースウォーカー」(白夜書房刊)という月刊誌で俺のコラム「PUNK PUNK PUNK」というのが始まりました。よかったら読んでみて下さい。
12月9日 恋愛小説家
日刊スポーツ、競輪欄、評論家鈴木保巳さんの「東西の判定統一は急務」にはほんと同感。今回の「ふるさと」の判定で、競輪に嫌気のさしたファンが少なくとも何人かはいるでしょう、また、いるのでは? と思える関係者が出てこないとヤバイ。でも、どうせ、議論は渦巻かないだろう、いつもの如く。
朝、カーラジオから岡村ヤスユキだかなんだかのクリスマスの歌。「メーリークリスマスのない青春なんて青春なんかじゃない」とかワケの分からぬ歌詞が流れてきて、吐き気。俺の娘とか恋人がこいつのCD買ってたら泣くよな、多分。
ビデオで『恋愛小説家』。
『イージー・ライダー』の『カッコーの巣の上で』のニコルスンだ。朝の四時に「散歩に出よう」と女を誘うニコルスンは白いTシャツに黒のカーディガン。格好良かった。「いい人間になりたいんだ」のセリフは浮くけれど、ニコルスンの「皮肉」と「褒め言葉」は、ちょと自分の過去ともダブって、そう、身につまされた。ニコルスンのはかなり粋だけど。
「ジャスコ」でアルメリアを一輪買った。南国っぽいなと思って買ったのに家で生けたら山百合みたいだった。♪これこそはと信じれるものがこの世にあるだろうか 信じれるものがあったとしても信じないそぶりとなぜか吉田拓郎の古い歌が浮かぶ。
12月8日 観音寺最終日
まず一言。
2レースは追込み型の浜口健二が逃げて武智真が番手捲りで、3着になっちゃったけど三番手山根泰道を勝たせる会? 浜口と武智はともに補充。
3レース。補充の川崎洋が切って同じく補充で追込みの米崎賢治が叩いて先行捲りの林栄司−泉和男(二人は正規配分)で番手から。因みにこの並び、県別で記せば岡山−徳島−愛媛−岡山。
俺はこういうのを非難しているわけではない。むしろ競輪らしいと認めてもいる。3レースなんかその補充作戦が人気になってたしね。ただ俺が言いたいのは、全国発売の「ふるさと」で公になった「補充が正規の犠牲になる」形態が、平開催になるとなんだか半端なんだよな。同じようなレースを見せられたかと思えば、マーク選手の「引き出し」を暗に認めないような雰囲気の競輪場もあるみたいだし。ま、長くなってしまったけど、ともかく、全国発売の競輪で、マーク屋が逃げて先行屋が番手捲りを打つレースが何回もあったわけだから、当然これが補充の入った競争の主流、と見ていた客も選手も考えるでしょうということ。
7レース。インをずーと抜けてきた尾崎和人の1着。よーくビデオを見てみると、逃げてた手島靖瞬間外帯線オンラインという感じになって、ま、ルール上はセーフなんだろうけど。もう何回も書いているから、もうウンザリだから止めとくけど、あれは見苦しいレースだよなあ、尾崎はすきだし、どうしようもない、っていう気持も分かるんだけど厭なレースでした。
優勝は小倉竜二。
この人はいつでも「野生の自在」とでも言うのか、左耳のリングのピアスがなかなか似合ってました。
12月8日 ジョンの命日
「HAPPY XMAS」や「IMAGINE」もいいけど、「MOTHER」、「INSTANT KARMA!」も流せよFM、って毎年思う。
朝からレノン聞いてます。
12月7日 もの悲しい風 観音寺三日目
どこへ行っても準決はシビア過ぎるほどシビアな児玉が地元でどうしたのか凡走(言い過ぎではないでしょう、児玉なんだから)。
最終の池尻は、まあ、ピッチも上がっちゃったから無理なんだろうけど、もう一度追い上げて欲しかった。
まあ、明日のレース全部がすげえ競走ということも万が一なくはないから、この時点で総括するのはフェアじゃないけど、「もの悲しい風」の漂う「ふるさと観音寺」でした。観音寺がそうなのか、ふるさとダービーそのものなのかは断じられないけれど。
12月5日 ふるさとダービー観音寺開幕
10レース、人気の児玉広志は慌てず騒がずの一着。児玉シンパは俺の周りにも多いけど、俺はどうもなあ。むろん、いまの児玉は車券買ってても信頼できるし、そのシビアさも魅力なんだけど…。多分俺は、何年か前の特別で、番手をやるやるって言ってやれずの児玉を根に持っているんだと思う、きっと。
マンガばっかり読んでいる。
弘兼憲司って食わず嫌いだったけど、「黄昏流星群」はよかった。6巻まで読んで3回泣いた。池上遼一の「今日子」。いつものような池上ふう男と女の絵なんだけどやっぱりいい。原作は家田荘子。
福本伸行「無頼な風、鉄」で、鉄雄がバカで無知なTVレポーターの女に、ギャンブルだ競馬は、夢なんてぬかすなと興奮するシーンには感情移入した。タイトルだけで買い衝動を起こした土田世紀の「同じ月を見ている」。傑作。ヘタな映画超えちゃってるもんな。
12月3日 シオン、渋谷公会堂ライブ
「2番目の夢で食ってる」〜2度目のアンコールに応えた松田文の生ギター一本での「このままが」まで、会場は「シオンお帰り」の声。同時代にシオンという歌い手がいることを、大仰だけど「救い」に感じた。
さらに速い「通報されるくらいに」、藤井一彦ばりの高木のギター、格好良かったです。ストラトでの超絶カッテイングは最高。
気分が良くて新宿のバー。
♪あとここで俺は たかが何10年か生きて ああうれしいだの つらいだのくりかえすのかい きれかかった感情は いつか思いやりに変わるさ なんとか立ってるあいつらと俺の為に乾杯
乾杯!
12月2日 カルラの歌 取手S級シリーズ初日
8レース。金子貴志の番手を佐藤嘉修と丸島真改で競りなんだけど、佐藤はジャンで競るのやめちゃいました。金子と佐藤は愛知−愛知だよ。そりゃ、ないぜ、だ。この佐藤の「だらしなさ」は覚えておいたほうがいいでしょう。
『カルラの歌』観る。
声を奪われてしまった恋人で闘士のアントニオのギターを伴奏に歌うカルラ。♪あなたに20年の歳月を返してあげよう 戦いに明け暮れたその長い歳月を だから希望の花を咲かせてほしい あなたは夜明け 山を駆ける鹿 愛の戦士 竜巻の息子 密林で生まれたあなたこそ 最後に勝利をつかむ人には泣けた。
12月1日 「12月」
♪12月 街はクリスマス気分 あちこちから想い出したようにジョンの声 そして俺ときたらいつもこのごろになると なにかやり残したようなやわらかな後悔をするとシオン。
ジョンは死んだとき40だったし、松田優作も40歳で逝った。俺はといえば四十代最初の12月をなんの「展望」もないまま迎えている。
明日から取手はS級シリーズ。予選で、群馬の小林大介と愛知の金子が一緒のレースがあるんだけど、これは見物。
3日のシオン渋公までもうすぐ。「12月」は歌ってくれるのかなあ。
11月30日 大地と自由
新宿で服でも見て神田で古本、と家を出たけど体調悪し。武蔵浦和で引き返して帰ってきてしまいました。ヒマなんでケン・ローチの『大地と自由』をビデオで再見。「誰も敗者とならぬ戦いに参加しよう 例え死が訪れても その行いは永遠なり」ウィリアム・モリスの詩の一節を孫娘が朗読するラストシーンは何度観てもいい。
11月29日 2番目の夢で食ってる 日曜日
ジャパンカップはエルコンドルパサー。平和島の競艇王チャレンジカップは江口晃男。今村豊は第2ターンマークで「持って」こられて2着。ボートとボートが当たるあの瞬間は心臓に軽い電気ショックを受けるが如くで、競艇の「ツボ」はあそこだな、俺は昔から。
混んでるスーパーのレジ。日曜日だ。
『幸福の黄色いハンカチ』で高倉健は夕張のマーケットのレジの倍賞千恵子を見初める。『探偵物語』最終回の松田優作は、スーパーのレジでなじった店員にプールバーから出てきたところを刺される。白装束のスーツ姿で死んだ優作は確か黒装束になって原宿の街をさ迷った筈だ。
『キュア』『ファーゴ』『トレイン・スポッティング』『県警対組織暴力』。ビデオ観てるか散歩するかギター弾くか。テレキャスター買いました、フェンダー・ジャパンだけど。
♪金のためには俺は動かない 行ったあいつは大金持ちだった 時間を無駄にするな 好きなことだけやれ 言ったあいつは働かなくても食えたはシオンの「2番目の夢で食ってる」だ。
11月27日 手を使ってもいいサッカー
“それはスポーツでもそうで、サッカーは手を使っちゃいけない。手を使っていいのはゴール・キーパーだけであるっていう理屈は最後まで通さないと、新しいサッカーにはならないだろうというかね。それを外したらサッカーじゃないわけだから。そうすると守らなきゃいけないものを、一個くらいは作っとかないと駄目ですね”とは「ユリイカ」誌上での北野武の発言だ。「キーパーしか手を使えない」ほどの「大前提」が競輪からケイリンで崩れたとは証明できないけれど、「何か」をないがしろにしたために「斜陽」したと言えなくもないのでは。
小倉ドームはたしかにキレイだし、金網はなくとも、暗っぽいバンクを疾走する選手を眼前で見れる快感はありました。だけど、やはり、スポーツ・ケイリン! などと女のこにほざかれてしまうと、違うんだと答えるかわりにビールのグラスを口に運ぶしかない。
競輪が「守らなければならない大事なもの」とはいったいなんなんだろう。
「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」は吉田拓郎のデビュー前の自主盤のタイトルだ。
11月26日 少々インチキでかまわないから 小倉報告
行きの飛行機からもう大変。空席目立つのにドアの横の予備席のような席で、コンピーター発券でしょう、だいたい普通はこういう席になりますがぐらい説明するよと俺。おっしゃる通りですと座席券をチェックしたまではいいけれど、福岡着陸間際になっても何も返答なし。どうなってるの? の俺に、電話番号も判っておりますので後ほどということでいいのかと、解釈していたらしいスチュワーデス。そうじゃないでしょう、だいたいあなたたちのサービスはサービスじゃない、本来日本人は内気な民族だから、毛布だ新聞くれと云えない性質なんだ、それがあんたらのサービィスは図々しやつ偏重の偏頗な気配りだ。言い方悪いけど家の近所のコンビニの高校生の心配りに劣るよと半分キレた俺。勉強になりました、と云ってくれた田上さんに、いいスチュワーデスさんになって下さいねはちょっとキザだったな。
決勝戦は吉岡1着失格。S氏のメールに「結果はムチャクチャでしたがカッコイイレースだった」とあったが集約するとまさにそれ。
あそこまで「持って行って」でも神山を止めたい吉岡。逆に云うと、あそこまで持って行かないと止まらない神山の凄さ。今回の神山は強かったもん。車券の悲喜こもごもを超越する「いいもん見さしてもらったなあ」という感慨はあったんじゃないだろうか。あんな神山や吉岡なら三億でも四億でも貰って文句はないけどね、俺は。
加倉は複雑でしょう。でも繰り上がりでも特別覇者は特別覇者。ただ2日目の特選で吉岡マークを外したレースがあったけど、井上茂徳や昭彦だったら自分が「9」でももう一度追い上げてたでしょう、間違いなく。あのレースは不満。
高木と東出は神山の後ろで競り。オッズをずっと見ていたけど、神山−東出が16、7で神山−高木が18、3。客は東出のほうを支持していた。まあ、びっしり競ったわけじゃないけど、現実にマーク取りきったのは東出。マーカーとしての東出を再認識したのは俺だけじゃないだろう。
小倉番外編。
気がついたら「番手」をやってしまって? いる渡辺秀明はなんだかいい。脳内に、カブッたら番手のコマンドがインプットされているみたいでヒイキしてしまいたくなる。帰りの飛行機一緒だったけど、礼儀正しく挨拶して帰って行きました。
決勝に次ぐベストバウトはと聞かれたら5日目の7レースと即答。小嶋敬−鰐淵−郡山−伊藤浩の強力本線に対するは出口−滝沢−高橋光のライン。カブれば「番手」が見えてるからか郡山のイン切り、だけど出口も「切られたら終わり」なもんだから先行争いのようなとんでもないイン切り合戦。二人で後ろを千切るような勢いでやっと出口が突っ張ったんだけど、後ろを見るとなぜだか滝沢はちゃっかり? 中団のインで小嶋の後ろの鰐淵をドカしにかかっている。結局、逃げる形になった出口を小嶋−滝沢で捲って行きました。選手たちには失礼だけど俺は笑っちゃって笑っちゃって。でもいいレースでした。ということで出口と滝沢両氏が助演男優賞。
小倉市内の「Ghetto」という酒場でオーティスを久々に聴いた。いい音、デカい音でのオーティスは最高で、さっそく浦和の山野楽器で「オーティス・アンソロジー」という二枚組を買ってきてデカい音で聴いてます。
♪楽しい話まで触りすぎるから ほんとのことまで紙切れに見えて 嘘つきは 街中に すぐ隣に そして俺の中にもいる 少々インチキでかまわないから 誰か最後まで信じさせてくれ、と歌うシオンの新譜が出た。
11月18日 しし座流星群は見なかった
誰かが三十三年周期とか言ってたけど本当だろうか。早起き、もしくは寝ないで見た人が再度見たいのなら三十三年後ということになる。
俺だったら七十三歳、二十歳の女のこでも次は五十三だ。別に臆病風にやられているわけではないけど。
川口オート、グラチャン準決。藤本剛が「出過ぎ」で福田茂は2着。上野俊秀はF切っちゃって再走は全然行けず。池田政和は強い、とアタマから買ったら牛沢和彦にやられてしまった。ヒイキにしてる浜野淳を見ずに帰ってきた。
「みつかった」「何が」「永遠が」「海が」「太陽にとけこむ」。再見した『気狂いピエロ』のラストのセリフだ。なんだか今年はスノボーやる気しないなあ。
明日朝7時50分の飛行機で小倉だ。
11月12日 淀川長治さん逝く
朝刊に「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」の映画評論家、淀川さんの訃報。淀川さんの著書「私は嫌いな人に会ったことがない」(題名が正確でないかも)を学生時分、繰り返し読んでいた記憶がある。こういう人になりたい、宮沢賢治みたいだな、なんて、思ったりもした。四十になってもガキの俺は嫌いな人だらけだけど。
合掌。
11月9日 草野球の神様 明日の取手優勝戦
ビートたけしの「草野球の神様」は“三年前に結成した時には、みんなもう少しやる気があったんだが。まったく、所沢朝野球連盟Cリ−グの万年最下位にふさわしいダレきったムードが漂っている。”チームを近所のホームレスが再生する話だ。
スライダーズのみんな、これは必読。
ツキ、打撃部門4位オメデトウ。
明日の取手優勝戦は、大宮でワンツースリーの長塚−広瀬−大久保の地元が本線。大宮は広瀬の差しだったけど、今度は長塚の番? スプリンターの長塚だから単純な逃げでは苦しそうだけど、ダッシュはS級クラス。
ぼくは長塚の“A級初V”を買うつもり。
11月8日 210円の車券
取手の7レース。
地元の新人長塚智広の逃げ一車で、「別線だけど脚なら2車立て」の思惑どおり尾形雅史(静岡)がバックで番手に追い上げて210円の車券成立。KPK以前の競走みたいで、なんだか逆に新鮮だった。中穴のオンパレードには辟易だし、高額の配当車券を「夢」の言葉で表現する風潮も嫌いだ。たかだか車券だぜ。
♪うわべだけの 愛や人生を ふりかざすけれど ついていけないぜ 世界を変えるなんて できない 相談だぜ いつも とびきり Rock'n
Roll オレたちゃ これだけ 鼻歌で EASY ACTION 横目で Bye Bye
悪いけど EASY ACTION かまわず やらせてもらうぜ
と、スライダースのロッケンロールが心地よい。
11月7日 タナちゃんカッコいい! IN 江古田BUDDY
タナマチさんのライブ。場所は西武池袋線江古田駅前の「BUDDY」。少し早く着いたので商店街をうろうろする。昔、「江古田文化」なる名画座にきたことがあって“名残”を探したけど、ある筈もなかった。ロックっぽいお店が多いせいなのか、髪の毛の長い男女が通りに溢れていた。すれ違うとロックのスメールがした、微かだけど。
茶のスーツにサングラスのタナちゃんはカッコよかった。ムーミンをカラオケで歌ってもオーティスみたいなタナちゃんだから、当然ライブもソウルフルだった。最後の「ブラウン・シュガー」でぼくは脚を踏み鳴らしていた、自然にだ。バンドやりてえ、と思わせてくれるライブだった。生田敬太郎や早川岳晴に詳しい女性、リトル・フィートがすっと出てくるタナちゃんの昔のバンド仲間や煙草の吸い方が様になってるタナマチ夫人。本当はもう少し飲んでいたかった。
外は右上が四分の一欠けた月。
ストーンズの「ラブ・ユー・ライブ」でも流しながら車を転がしたい夜だ。
11月5日 風の強い朝
キャット・スティーブンスの「雨にぬれた朝」を聴きながら宮沢賢治を読む。「……あなたの方から見たらずゐぶんさんたんたるけしきでせうが わたくしから見えるのは やっぱりきれいな青ぞらと すきとほった風ばかりです」と結ぶ「眼にて云ふ」の、死を眼前にした“乾きよう”はいったいなんなんだろう。「眼にて云ふ」を誉めている坂口安吾の文章を探したけど、見つけられなかった。
晴れてるけど風の強い朝だ。
11月3日 FIND THE WAY HOME 自信喪失
灰谷健次郎「遅れてきたランナー」を読んでも走ろうとはしない。電車に乗れば座りたがって、TVを見てればいつのまにか、うとうと。
♪おいぼれた訳じゃない そう終わった訳じゃない ただ季節が過ぎただけ ひとつ流れただけ
と、コレクターズは歌っているけど。
11月3日 花月園記念前節決勝
小嶋敬−山口幸の三番手から吉岡稔に合わせて捲ろうとした松本整もすごかったけど、このメンバーで一周かまわず逃げてしまえる小嶋の“心”っていうのもなんだかすげえ。いいもん見させてもらいました、という感じ。
10月31日 Thunder And Rain 北方領土記念館
福島の三瓶君と二人で北海道を一周したのは二十三、四のころだったか。平から仙台〜苫小牧、ぼくの愛車で行った。車種は“コスモ”だった。
ほとんどの記憶は抜け落ちているんだけど、旭川の「蜂屋」に2日続けてかよって醤油ラーメンを食べたのは確かだ。
そうだ、標津だったか、ともかく「北方領土記念館」なるものの最寄駅なんだけど、そこに“駅員募集”の案内が張り出してあって、行こうかどうか半日悩んだことを憶えている。むろん、本気だったかどうかは怪しいもんだけど。
倉本聰に「昨日、悲別から」というドラマがあった。天宮良もよかったけど、“駅長”役の布施博は最高だった。
JR鶴見の駅から“花月園”まで、てくてくと歩いている。
10月30日 フラ フラ フラ 西新宿淀橋〜中央公園〜都庁〜歌舞伎町
都営12号線西新宿5丁目駅A2出口を昇ると左手から都庁の奇妙なビルが覗いていた。間には中央公園。シオンの「フラ フラ フラ」のジャケット写真をなぞって歩いてみる。“淀橋第3地区”の案内板、駐車場のマンホール。案外簡単に辿り着けた。
新宿中央公園を突っ切る。昼食後の談笑のサラリーマンと時間を忘れたカップルとダンボール小屋の住人。まさに「ストレンジ・バット・トゥルー」。
都庁の45階展望室へ直通のエレベータ。所要時間55秒の嫌な沈黙。鼓膜への違和感に呼応したのか、激しく泣き出した赤ちゃんに室内は和んだ。
線路を挟んで歌舞伎町の反対側、「東京調理師専門学校」の建ってるあたりは“貴重盤”ストゥリートの様相。ディランの海賊盤、ストーンズの海賊盤、ニール・ヤング……。ビートルズのライブ盤を買い漁っていた昔を思い出した。
やたら多い“クィック・マッサージ”の看板。歩き過ぎの脚を圧してもらおうかとも思ったけど、しなかった。ふらふら、ふらふら。まったく、どうにも。
曇天のなか、不規則リズムで薄日が射す金曜日の新宿から。
10月27日 う〜ん 寛仁親王牌決勝
やっぱり小橋はあれ(番手)だよな。9人がそろって、まず考えたのは、小橋が“どこ”をやるのかな、だったし。でもコメントと顔見せが(推理の)邪魔をしたなア。本当に小橋らしいレースなんだけど複雑な気持です。まア、どっちにしろFHは取れないけれど、だ。
10月26日A 前橋三日目 ウイニングランにはなじめない
下品な野次や怒声は排除されるらしい、前橋ドームでは。ガンバレといいぞ、て゛、スタンドを埋め尽くしたいのだろう。その傲慢さが見え隠れしているなかでの強制的? なウイニングランにもなんかなじめない。むろん、“拒否”してしまう因は此方にあるのだろうが。
準決勝。
10レース。凄い脚でゴールした児玉に歓声が飛んでる最中に、友人Hは「小嶋−内林−児玉でラインなんだから、加倉に番手追い上げられて下げてもう一回の内林を児玉が出してやらないのはマズいんじゃないの」「児玉としては内林の後ろからというより小嶋ラインの三番手、という意味のコメントだったんじゃないか」とぼく。「だって中部近畿の後ろからって書いてあるもん。一回ぐらいは内林を出してやって加倉とやらせてあげなきゃ」「特別の準決だからなア」
ぼくにはHの言っている意味がよく解かる。
11レース。もう皆でインの使いっこ。33だし、しょうがないんだろうけど。山口幸二に臆しなかった北川智博が収穫。
12レースは神山相手に別線がS取ってしまってはその時点で神山でしょう。でも結果的に神山七番手になったじゃない、という人もいるかもしれないけれど、正攻法から七番手にされた展開と、中団から七番手にならされた展開では別線勢の脚と気の使い方がまるで違う筈、というのがぼくの考え。
10月26日@ 東京スライダース 最終戦飾れず
7対8のスコアの試合が一番興奮する野球になる、と誰かが書いていた気がするけど、その7−8で惜敗。負けっぱなしのシーズンで、楽しみといえばツキの首位打者ぐらいか。
♪人殺し 銀行強盗 チンピラたち 手を合わせる刑務所の中 耳を澄ませば 幽かだが 聴こえてくる誰の胸にも 少年の詩が 何か変りそうで眠れない夜 君の胸は張り裂けるだろう
は「ブルー・ハーツのテーマ」だ。これを少しいただいて「スライダースのテーマ」を。
♪貧乏人 破産者たち 耳を澄ませば 聞こえてくる 督促の声が たかが草野球に眠れない夜…
スライダースのみんな、大好きです!
ノジマ、早くケガ治して練習しようぜ。
10月25日 CROSS ROAD BLUES グット゛・ウイル・ハンティング
ビデオで映画「グッド・ウィル・ハンティング」。
「君は悪くない、君は悪くない」を繰り返すショーン。ウィルの涙。抱き合った後のショーンの「皆、クソ食らえだ」はよかったけど、別れた彼女のいるカリフォルニアに独り車を走らせるラストはなんだか感情移入できない。彼女はウィルを歓迎するというのが万人の解釈なのかな。彼女がもう他の男とデキていて…というんじゃなきゃドラマははじまらない、などと書いてしまうのは俺の歪みか。
“寛仁”2日目。
加倉正義の外競りは、やるじゃん、の一言。2着権利のいいところがモロに出たレースでした。
ローズカップの児玉広志はインから地元をドカしにいったけど、それを許さなかった金子真也は“怒り”が伝わってくるようでカッコよかったです。
10月24日 全身競輪選手 晴智VS金健
前橋の10レース。馬渕紀明の後ろを最後まで競り抜いた金田健一郎と渡辺晴智の二人。原一男監督の「全身小説家」っていう映画があったけど、両人とも“全身競輪選手”という感じで、ただただ見てました。
10月23日 君の瞳に恋してる フィリピン・パブと映画「ディア・ハンター」
川口駅近くの太陽サパール・ビルで遅い昼食。昔よく来た、同じビルのなかにあった“インターナショナル・クラブ”の看板は外されていた。
先輩E さんとフィリッピーナが踊る見事な“ジルバ”を忘れないでいる。気管支の弱いフィリピーナが存外に多くて、ぼくもそのころ服んでいた気管支拡張剤「アストフィリン」という薬を、何人かが使っていた。
ショー・タイムの真ん中で「イン・マイ・ライフ」を歌ってくれたシンガー、サラはいまごろどうしているのだろう。サラの「イン・マイ・ライフ」は映画「フォー・ザ・ボーイズ」のなかで歌うベッド・ミドラー並みに悲しかった。その店の、ショー・タイムのラストに「君の瞳に恋してる」を流しながら“タレント”一人一人を紹介する“演出”を、ぼくはえらく気に入っていた。
そういえば映画「ディア・ハンター」の最初の方で、ベトナム出征直前の“鹿狩り”の夜、酒場でジョン・カザールがジューク・ボックスに合わせて“熱唱”するシーンがあるんだけど、これも「君の瞳に恋してる」だった、確か。
まだ「寛仁親王牌」なんて存在しないころの話だ。
10月22日 ま、いいじゃないか
「ま、いいじゃないか」というのは藤田敏八の口癖だったらしい。藤田敏八とは、あの故ビンパチ敏八監督のことだ。
ま、いいじゃないか。口の中で呟いてみる。
膨れっ面のコンビニの店員に、卑しいカップル。ま、いいじゃないか。
センター・アワノの後逸。ちょっと速い球投げたら挙がらなくなった俺の肩。ま、いいじゃないか。
野人・ホリエの超美技。あからさまに“若さ”を実感させられると、嫉妬めいたものが湧いてしまう。
いつだかの西武園A級準決。コメントも地乗りも◎の番手で競り。だけど本番は一度も“いかなかった”スタンドからも声の掛かるような往年のスター選手。
こりゃよくない。
いったい幾ら稼いだのよ、いままで。いまさら流れ込みの456(着)を取りに行くのは悲しいじゃないか。
捨てちまった携帯電話。ま、いいじゃないか。
オートバイが嫌いで吠え向かってくる犬。荒川大橋の渋滞。ま、いいじゃないか。
シカトされたからシカトし返す。どっちが先だか怪しいもんだ。
煙草をやめてもう何年だろう。
ま、いいじゃないか。
棲みついてる煩悩と女々しさ。
ま、いいじゃないか。
一年近く振りに髪をパーマネント・ウェーブ。
「いいんじゃない」
うちの奴が言った。
10月21日(躁編) 通報されるくらいに もう一回
四万温泉から伊香保を覗いて、グリーン牧場で牛乳を飲んで国道17号に戻った。渋川市内。右側に“TSUTAYA”が見えたけど、どしゃ降りだし右折しづらいしでパス。少し走ったらもう“関越”。
“高速”のサービス・エリアにCDが売ってるはずもなく、関越〜外環。“川口西”で降りて、映画「タクシー・ドライバー」のデ・ニーロのように飛ばして川口市街へ。駅前の“そごう”の7F・山野楽器。
あった!
シングルCDの上の方の棚に。本屋でいえば“平積み”の状態だ。
「通報されるくらいに」
カップリングは「もう一回」
どうだった? って。
恋人と映画を観るとする。すごくいい映画だった。その“余韻”が大切で、どんな恋人とでもすぐには口をききたくない。あまりしゃべりたくない。
これも多分シオンの受け売りだな。
だから、いまは記さない。
10月21日(鬱編) これでも食らえ! ただただ悪態
群馬はどしゃ降り。
車のカセットから小山卓治の「これでも食らえ!」
♪ジュンイチがロックンローラー目指して今年で5年目だ 今夜もたった一人吉祥寺“曼荼羅”ギターをかき鳴らす アキラはすごいバッターだったのさ4割2分5厘 今日も6時に起きて多摩川ジャイアンツ2軍で球拾い
青春の森にさまよい込んで かん違いの泉で喉をうるおし 後悔の泥沼を進んだ先に 何だかすげえものがあるはずなんだ
正しいことばかり やってきたわけじゃないが でかいツラでこう言ってやるんだ これでも食らえ!
客のことなんかちっとも考えてない全国区のS1某、認めてねえよ!
大人の選択、思いやりと忍耐。自分はどうなの!
誰にでもやさしく笑顔でって、外面だけじゃない。
嫌いかすきか、すきか嫌いか。
いかん、いかん。こんなもの誰も読みゃしないな。
10月19日 月が一番近づいた夜 ブラボー池沢
池沢義文は“番手”だった、取手の決勝の話だ。
阿部俊二がまくりにまわった途端、その三番手を放棄。インをするすると追い上げて番手まで。田村博一をドカして萩原孝之のハコ確保。やっぱり池沢は“番手勝負”が似合う。だってそれで“池沢義文”の名前を売ったんだから。
バックまくりの阿部に合わせようとしたけど行かれてしまって、内に詰まり気味に追っかけてゆくツラい展開になったが、それでも外の石井孝をこらえて2着。
“いいもの”見させてもらった、という2着でした。
ブラボー! 池沢。
♪髭なんかはやして大人ぶって 世の中わかった様な口を利きやがる 偉そうに何もないくせに だからこんな俺が嫌いだ なんでもかんでもふざけて笑って その蔭でみっともなくシクシク震えてる そしてまた話は自分の事ばかり だからこんな俺が嫌いだ
と、シオンは歌っている。
伸びていた無精髭は剃った。いささか疲れているけど、明日の夜は四万温泉だ。
10月18日A 花〜すべての人の心に花を〜 取手決勝の池沢義文
阿部俊二(岩手)−杉浦康一(北海道)の後ろから池沢−宮本秀人の地元二人。別線は80期の萩原孝之に田村博一と北村明久で静岡トリオ。もう一つは千葉の石井孝に長野の市村和昭の混成? ライン。
いかにも萩原の逃げが早そうだし、石井は静岡3人拾って中団でしょう。本線は六番手。いまのデキなら、そこからでも阿部はまくれそうだけど、その展開では阿部の優勝はあっても池沢の地元Vはない。その時に池沢が何を考えるか、どういうアクションを起こすのか。こりゃ楽しみ。
♪涙ながれて どこどこ行くの 愛もながれて どこどこ行くの
泣きなさい 笑いなさい いつの日か いつの日か 花を咲かそうよ
喜納昌吉の「花」を聴きながら、安眠の訪れを待っている。
10月18日@ 「通報されるくらいに」試聴
激しい風の日曜の朝。
シオンの新譜「通報されるくらいに」の一部が試聴できたので歌詞のコピーを。
♪同じ景色に けつまずいても またぶざまに こけたとしても 笑われても 相手にされなくても それがどうした ほら 通報されるくらいに ぶっとばすぜ 時間がまだあるからって そうゆっくりしてられないんだ
ここまで記したら、窓からが陽が射してきて、なんだかやたらうれしいぞ。
10月17日 水のないプール タコ!
たけしの映画「3−4×10月」で、ガダルカナル・タカが店の客で小生意気なブスを灰皿で殴りつけるシーンには興奮させられた。若松孝二の「水のないプール」では内田裕也が行きずりの通行人を次々にブン殴った。
武蔵野線。アオケイを読んでる中年の右隣の女の“携帯”が鳴った。構わずしゃべる女。中年男の舌打ち。
柏駅の階段。動かない浮浪者。その横を声高に携帯と移動する背の高い女。そのままスタジオか何かに、オハヨーゴザイマースと業界挨拶?
傘をステッキみたいに階段のコンクリに打ちながら昇る茶髪男とやたらスカートの短い女子高生のカップル。
タコ!
恩知らずの男とヘイチャラで寝返る女。
タコ!
グルーヴァーズの「ロゼッタの石」じゃないけど、♪兵隊みたいにトランシーバーで つながっている二人 なら、女の耳が携帯電話に変質してしまえばいいのに、だ。
平安隆の「かりゆし」の対訳。
東の空が白んでくると 至福のとき、島の西も東も 至福のとき、広く天までも 至福のとき、花は咲きほこり 至福のとき。
沖縄! 沖縄!
窓の外は激しい雨だ。
10月16日 かりゆしの月 夕暮れのバンク
半月ぐらい前、夕闇迫る取手バンク。黙々と、だけど楽しげに外競りで周回練習をする池沢義文を見た。何周も何周も。新ルールへの鬱憤晴らし、などと考えるのは、むろん、ぼくの歪曲した見方だ。
でも気持良さそうだったなあ。見ているぼくも心地良かった。
その池沢が明日から取手を走る。
平安隆の「かりゆしの月」を聴いた。「満月の夕」のウチナーグチ・バージョン。
沖縄行くぞ!
10月15日A 世の中が悪くなっていく 百円と一億円
九千円で三十枚の宝くじを買ってもしかしたら一億と騒ぐより、500円つくとこ二千万、の方がそりゃもう当然ギャンブル。
財布に二万円、銀行に二百万の若い女が、ひとレース百円ずつ買ってはしゃぐ車券と、なけなしの二千円を割って、酔いどれの老人が握りしめる百円券ではワケが違う。
昨日の午前5時、日雇い労働者が溢れる“泪橋”の交差点をきょろきょろ運転しながら、ふとそんなことを考えてた。
10月15日@ 熊本記念前節準決、吉岡敗退
芸のない? 七番手でまくり不発の吉岡稔真。ただ本人の、“芸”などなくとも、オレは“力”でこんな相手、という矜持はなんとなく伝わってくる。
10月14日 山麓を独り走る吉岡稔真
熊本記念前節初日。特選は金古将人が吉岡をまくって東出剛の差し。
七番手不発の吉岡は、しょうがねえなあ、だけど、逃げてまくられる吉岡を見るのは少しばかり悲しい。
何年前だったか、阿蘇だかどこかの山麓を吉岡が黙々と走るCMをなぜか想い出した。
10月13日 Sion comes 通報されるくらいに
CSで名古屋記念と船橋オート。どっちにも手を出すもんだから、しまいには激しい頭痛。ヤラレだけど収穫一つ。それは山陽の浜野淳という選手を見れたこと。奴はイイね。
シオンのシングルが21日に出る。タイトルの「通報されるくらいに」の字面だけで、ぼくなんか“くらっ”ときてしまう。一年以上ぶりのアルバムも出るしツアーもやってくれるらしい。
だからぼくもツアーを計画。
去年出たアルバム「フラ フラ フラ」に使われていたスナップ写真を検証する旅にでる。旅って言っても新宿なんだけど。シオンが立っている新宿の小さな公園、“淀橋町会”の掲示板、駐車場の金網。探しに行こう! カメラ持って。
今週の情報誌「ぴあ」に載っていた「通報されるくらいに」のリリース情報欄。“何かを始めようとする力強い意志を綴ったポジティブな歌詞も相俟って、躊躇せずに何かにトライする勇気と覚悟を与えてくれるようだ”の文章。こういうのを、鵜呑みにしてはいけないんだろうけど、ぼくは鵜呑みにする。
ポジティブ、トライ。いいじゃないか。
意識は飛ぶけど、あいつとあいつとあいつは記憶から抹殺せよ、だ。簡単、簡単。
10月12日 欠けた月が出ていた 京王閣記念後節最終日、妄想
結果だけ手元にあってレースは見ていない。
田村春海で流して、大橋秀人の2着で買って、沢田義和のアタマは固いし、最後はPC98と洒落てHG本線! 妄想は際限なくて、軽く三百万。この妄想の“間”はギャンブル中毒者の病気でしょう。 虚空をさまよう妄想時の“眼”は他人にどう映るのだろう。
ロマンだ、やれ昔気質の競輪だ、新ルールだと口を尖らせてばかりいるけれど、こんなもんです、ぼくの脳内なんて。
「どいつもこいつもクソ食らえだ」ダーティ・ハリーの捨てゼリフを呟いてみる。
暇なんで昔の「映画芸術」を再読してたら、内田栄一の「ディア・ハンター」論。タイトルは「プッシィから世界が見えた」だ。
ラストのデ・ニーロのアカペラが、まだぼくの鼓膜には貼り付いている。
池袋の東武ホテルのバーで橋岡さんと酒見さんの“デ・ニーロ談義”を茫として聞いていた夜から、いったい何年の月日が流れてしまったのか。
10月11日 身も心も 京王閣記念S級準決
準決勝3個レース。
関根幸夫の清々しさと阿部文雄の“地元の意地”以外語るべきことなし、だ。
関根の潔いレースっぷり、そして喜びの表現は、身も心も! という感じで心地良かった。
最終11レースは、三番手からインを突いた児玉広志の1着。落車後だし精一杯の“責任感”、との賛辞は多いだろうし、児玉の1着に異議はない。
ないけれども、だ。
番手が外したから一車内へ入る。そして先行者が外すのを待って更に内へ。こういう“形態”に虚しさや醜さに近い感情を抱いてしまうぼくは“異端”なのだろうか?
そうだ、一つ語り洩らした。
まくられてしまった馬場喜泰の引き揚げ際の敢闘門での“一礼”。そこだけ清涼な風が舞ったようでもあった。
隣の府中、東京競馬場は凄い賑わいだったらしい。
10月10日 どうしてこんなに悲しんだろう 京王閣記念後節初日
晴れの特異日。
9レース。4角で後ろを振り返りながら、梶原亜湖のハコ3着佐藤晃三に場内は烈しい罵声。いつの西武園だったか、“番手”で売り出し中の渡辺晴智を評して、「自分も同じことをやってきたし応援したい気持」と佐藤が発言したのをなぜかふと思い出した。
11レース。ある実験。
「満月の夕」をウォークマンで聴きながらの観戦、ジャンの音も実況も遮断して。妙な興奮、などなかった。ただの“変態”的な見物方法と知っただけ!
10月9日A 原色ギャンブル図鑑 松戸の3コーナー
松戸に着いたのは二時過ぎ、7レースが走っていた。8レースから準決。◎佐々木弘美の番手で○大川真護と小林潤二の競り。ハネ上げる小林と外で懸命にこらえる大川、二人の“うめき”が聞こえてきそうで、思わずからだが動いた、3コーナーの最前列で。
9レース。藤田篤をヤジり続けている中年がいた。周りに失笑が起った。そのヤジは33バンクと薄い青空に混じっていいハーモニーを醸し出していた。藤田はこなかった。
レース後、ガードマン二人の会話が耳に入った。「今度アイツ騒いだら本部に連絡して追い出してやる」耳を疑った。キツいヤジは排除する、という“お触れ”でもまわっているのかもしれなかった。不快が胃の下にせり上がった。二人とも“逮捕権”に憧れているような顔をしていた。ぼくはスニーカーの紐を結び直した。“蹴り”の準備?
10レース。何も起らなかった。
無理して河井琢也−宮倉勇を買ったけど、宮倉が測ったように寸チョンで230円。
はき出される人、人。
北松戸駅、声を掛けられた。オレは三十年これだからね、と、ポケットのアオケイを見せられた。素直に感謝した。
東浦和駅。だらだら歩いた。ウォークマンで「満月の夕」を聴き続けた。悪い気分じゃなかった。悪くはなかったけど、歩く理由があるわけでもない。左手に“セブンイレブン”。セブンイレブンのアイスクリーム。欲しかったからだ、とこじつけた。ソフトクリームみたいな180円の“ジェラード・アイス”、買った。眼鏡を掛けた女の子が作ってくれた。手渡された、ていねいに。黙々と食べた。
明日は京王閣だ。
10月9日@ 申し訳ないが気分がいい 青空、青空
♪こんなに天気がいいからよ みっともないくらい はしゃぎてぇ 世間様に何と言わりょうと 今日は今日はパレードだ
は、シオン。
♪ぬけるような空が痛い 風がヒゲに遊んでゆく 申し訳ないが気分がいい 全ては此処につきるはず どうしてこんなに 当り前のことに 今まで気づかなかったのか
は、岡林信康。
窓から、青空、青空。何処へ行こう?
シカゴの「WHERE DO WE GO?」の邦題は確か「約束の地へ」だった。
♪SORRY BABY 誰かさんみたいに 俺に明日見えないから SORRY BABY 約束なんてとてもできたもんじゃないんだ こんな俺をうらむかね
は、シオンの初期の歌。
いかん、いかん、外は青空。ギャンブルしに行かなくちゃ。閉塞は難敵だ。
ボブ・ディランも歌っている、「窓から這い出せ」と。
10月8日 満月の夕 解き放て いのちで笑え
浦和競馬には行かなかった。
武蔵野線と常磐線各駅で松戸競輪。少し4階の記者席でぶらぶらして、6Rから下に降りた。2センターのコンクリート席。◎坂本毅の後ろに、なぜかイン切った×山上利明が大名になってしまって、二人でゴールした。差したのかどうかは判らなかった。久し振りに眼前で見る競輪はタイヤの摩擦と選手の心拍が伝わってくるような気がしたが、多分錯覚だろう。山上が差していて、車券は外れた。
なんだか気持よかったので、松戸はもうやめにした。
電車に乗った。京王閣記念の決勝に間に合うな、ふと考えた。新宿までは行った。でも京王線には乗り換えなかった。
「紀伊国屋」で本を探した。何も見つからなかった。帰りがけに2Fのレコード屋で何の気無しに目に入ったソウル・フラワーのCD。衝かれたように買った。シオンや佐野元春が「満月の夕」を絶賛しているのは知っていた。
♪ヤサホーヤ うたがきこえる 眠らずに朝まで踊る ヤサホーヤ 焚火を囲む 吐く息の白さが踊る 解き放て いのちで笑え 満月の夕(ゆうべ)
なんとも解説なぞできないけど、“勇気”めいたものを貰った。確かに貰った!
おい竹林、小せえ小せえ、そんなこと。去るものはシカト。過去は過去、愛しいのは“いま”だろ。
♪時を越え国境線から 幾千里のがれきの町に立つ この胸の振り子は鳴らす“今”を刻むため
新宿、明日晴れるか。
10月7日 WATTATA(河を渡った) マーリオ! マーリオ!
CDラックの奥から引っ張り出してきた忌野清志郎のソロ・デビュー盤。そのなかの一曲「河を渡った」の前半。
♪俺は河を渡った Oh 渡った 暗い夜の河を 渡った 河を渡った
ドロ水を飲んで おぼれそうになって 助けられたりして そう 俺は河を渡った
俺は考え方が変った Oh 変った いくつもの河を 渡った 俺は渡った
向う岸の奴らが またナンダカンダ言ってんだろ 「あいつは変っちまった」 そう 俺は河をまた渡った
なぜなの? 君と渡りたかった
河を渡ろうとするどころか、“河”の認識すらない“競輪関係者”へのアイロニーではありません、念の為。
明日は京王閣記念決勝に松戸初日。だけどぼくは浦和競馬かな。
「漂流街」(馳星周)のマーリオはどうなるのだろう。
10月6日 YOU LIGHT UP MY LIFE なんだか、やたら
選手は選手の都合で走る。自分によりよい条件を選ぶのは当然だ、プロだから。9着になるかもしれない危険や名誉より、“安全”な456を選択するのは責められない。
客は客の考えで車券を買う。もちろん的中が最優先だ。だけど、ただ買った数字が入ってくればいい、とも思っていない筈だ。買った車券には少なからず客の“ロマン”が棲みついていて。
選手の“都合”と客の“ロマン”には相容れないものがあって当たり前で、両者の間には暗黙の了解みたいなものが存続してきたし、それこそが競輪の“危うい魅力”を演出し包んできたのだとも言える。
だけど、このごろは“都合”と“ロマン”が乖離しているかのごときレースも頻発している。
なんだか、やたら悲しいぞ。
昨日の午前中は医者。
東浦和駅近くの高橋内科クリニック。医師の診断はストレスからの自律神経失調? ビタミン剤と睡眠誘発剤、寝る前に飲んだら8時間眠れた。
取手競輪場への途中、デビー・ブーンのCDを取手の駅ビルの「新星堂」で偶然見つけた。「タワー・レコード」でも探せなかったベスト盤だ。
ころっと、なんだか、やたらうれしいぞ。
10月5日 ピアノ・マン 十年前の阿佐ヶ谷のスナック
めげていた。十年前の記者なりたてのころのことだ。
それまで淫していた競輪と、それを仕事にしてしまったがためのギャップだったのか、“逃避”癖が鎌首をもたげてきてもいた。
立川の帰りだったと思う。先輩二人に誘われて酒場に行った。手狭なスナックだった、中央線阿佐ヶ谷駅近くの。マスターは先輩たちの競輪仲間らしく、キタちゃん、キタちゃんと親しまれていた。そこでどんな話をしたのか、ほとんどと言っていいほど欠け落ちているが、ぼくはただ黙っていたと思う。苦痛に近かったかもしれない、正直言うとだ。
そんなとき店の有線からビリー・ジョエルの「ピアノ・マン」が流れて。
ハーモニカの音、ピアノの旋律。まだまだ、まだまだと繰り返される昂揚のメロディ。
理由は説明できないけど、その「ピアノ・マン」を聴きながら“もう少し”と思い直して十年だ。
今日まで、そして明日から。
競輪に、そしてぼくらに、希望はあるか。
10月4日COME RAIN OR COME SHINE 降っても晴れても
山松ゆうきちが読みたい。「しりあす甚一」はもうぼろぼろだ。小川徹の文章がすきだったけど、もういない。「竜二」の金子正次は最高だったけど、ガンで逝ってしまった。金子と関係の濃かった内田栄一もすでに故人だ。
シオンの新譜を早く聴きたい。カラオケから流れてくるキロロの「未来へ」は避けたい。
マクドナルドは食べるけど、ケンタッキーは一年に一度でいい。
どんな理由があっても裏切りは裏切りだ。
役者になりたいけど、役者にはなれない。
雨が降っても、晴れても、ただただ競輪場がよいを続けていたあのころ。降っても晴れても、晴れても降っても、風の強い日も。
初心に帰れ、、ということか。
10月3日 カノン ギヤンブルレーサーと資本論と安吾全集
パッヘルベルの「カノン」を聴き続けても気持が癒えない。後頭部の右側は石がせり上がったように固い。不快。
裏切り者や去って行った奴に限って、なぜか外では微笑を絶やさない。そして忘れたころに電話で緩衝誘導。
パッヘルベルの「カノン」をいくら聴いても許す気は湧いてこない。
競輪場行きの無料バスのなかは、ほとんど五十以上年配の人ばかりだ。その人たちが払った五百円がぼくの糧になっている。何が言いたいんだ、ぼくは。「カノン」をもう一度かけても、まとまりゃしない。
武蔵野線の車中で、陽の当たる透明のガラス窓に貼り付いた蛾が懸命に羽根をばたつかせているのを見た。蛾には遮られてる向こう側しか見えていない。蛾は真中にあるガラスの存在も、「カノン」の旋律も知らない。
ぼくの知人Bの書庫には、「資本論」と「坂口安吾全集」と「ギャンブルレーサー」全21巻が並んで置いてある、それもさりげなくだ。
10月2日 ずっと、ずっと、ずっと 役者やのう、中野渡博美さん
ドラマだった。しかも連続ドラマだ。
1日の取手5レース、中野渡博美(東京42期)は東京東京の逃げ屋、土屋広行(76期)の後ろを静岡の伊東高弘(60期)に競り込まれ競り負けた。翌日2日の4レース、伊東は◎林邦彦(千葉73期)の番手で中野渡は位置なし。やるんじゃないのう? 林=中野渡の@E買って見てました。気持いいぐらいやってくれました、昨日の“復讐”を。林には離れてしまったけど、伊東を道連れ? にした満足もあったのか、引き揚げてきた中野渡さんは颯爽としていた。
むろん、○伊東をやっちゃったわけだから罵声も飛んだけど、“昨日の事情”を知れば大概のファンは納得でしょう。
結果中野渡は6着失格。
競走ルール上は失格なんでしょう。だけど、ぼくの内では涙が出そうな“敢闘賞”です。
いいドラマ見せてくれた中野渡博美、あと一勝で通算二百勝。
10月1日 愚か者の涙 そこまでは考えられない
コメントも地乗りも三三三の3分戦。だけど意外な選手がS取らされちゃて下げられない。最近こういうケースによく出くわす。前取ってしまった当人は人気薄の“員数”だったとしても、展開は一変してしまう。
本来ならどこかの三番手をまわるべき人がそれをできないことによって、1対2対3対3のライン構成になってしまうのだ。予定外に二人のラインになってしまった方の仕掛け方は当然変わるし、他方三人で組めたラインも、一つのラインが短くなったのなら、“きれいな3分戦”とは異なるレース把握をするでしょう、プロだから。だけどこれって“読み”の範疇外なのでは。むろん、誰が前に入るのかは大事な推理だけど、推理の利かないS取りがけっこう多い。それもこれも考えなさい、と言うのならそれでいいけど、そうなると“酷”なゲームだよな、競輪は。
9月30日 甲州街道はもう秋なのさ 一宮オールスター閉幕
四日目の1レース、6車立てでも“番手”をやった俵信之に、誰かが、男らしーの声。その声に呼応して周りは爆笑。よって助演男優賞は俵信之。
主演男優賞は松山学。
初日の5レースで渡会宏和にジカ、高橋健二(愛知愛知だぜ)をキメて、半端にインで粘った香川雄介も許さないアシュラの如きマーク戦。さすがに直線では力尽きたが、松山は渡会の番手をやる、と読んで、信じて、渡会=松山の@Eを買っていたぼくは「いいもの見せてもらった」と誰にともなく。その呟きは渇いた風に乗ってバンクの上にも舞ったか。
9月22日 ひとりごと 明日から一宮
小学校の時の話。
校内で狩っていたピラニアの水槽に自分の家の金魚を放した。ピラニアに金魚が追い駆け回されるのを想像していたんだけど、すぐには何も起こらない。水槽を凝視していたのは三人。
緊張した、激しく。
ほどなく金魚は食われてしまうのだが、その残酷さより何も動かない緊張のほうが、いまだに皮膚のどこかの層に刷毛で塗り込まれているような気がする。
台風8号と台風7号と一緒に、一宮オールスターがやってきた。(車番はF=Gか?)
誰が優勝かなんてさして興味はない、と発言すれば誤解されてしまいそうだけど、ぼくの関心はいつだって、誰が笑わせてくれるか、泣かせてくれるのか、誰が欺いてくれるか、ドラマを見せてくれるのかだけだ。むろん、そこに車券が中心として介在するのは言うまでもない、子供の運動会の応援じゃないからね。
“ピラニア事件”の時の“緊張”と同種のものに過去競輪で遭ったような気もするのだけど、はっきり断じられない。もちろん、そこまで競輪に求めていないけれど、だ。
生田敬太郎の「ひとりごと」から。
♪昨日の惰性で なんとなく 今日を過ごし 今日はずっと先を 考え夢みている そして明日は 今日の惰性で なんとなく向かえる でも けっこう 楽しいこともあるさ
今日の自分をきびしく反省して 明日の予定を こまかく立てながら
明日こそはと 夢を抱いて 明日だけを向かえていても けっこう ダメなこともあるさ わき目も ふらず 一つのことに 夢中になって 追いかけていると 壁にぶつかる
金はないけど、明日の夜は一宮だ。
9月20 祭ばやしが聞こえる ショーケンと競輪
柳ジョージを聴いていて、二十年前のテレビドラマ「祭ばやしが聞こえる」が懐かしくなった。ショーケンこと萩原健一と山崎努が競輪選手で、ケガを癒すために富士吉田でしばらく暮らす話なんだけど、あんな脚の細い競輪選手なんていやしない、とバイト先のおっさんに番組批評をもらったのを憶えている。
でもカッコよかった、ショーケンは。このテレビを見て競輪選手になった、なんて選手もいるんじゃないのかな、とふと思った。
毎回ラストに柳ジョージの同名曲が、ピスト・レーサーを携えて歩くショーケンとおばあちゃんがすれ違うシーンに重なって流れた筈だ。劇中「ヘイ・ダーリン」も流れていた。
話はもう少し戻るけど、同じショーケンの「傷だらけの天使」のラストで、ショーケンが水谷豊を“夢の島”に捨てるときにかかる井上孝之の「一人」も柳ジョージはカバーしてるんだけど ♪夢のような過去は 消えてゆく 一人だけでただ歩く もう誰も居ない
と、やられると、四十になっても大地なるものに根を降ろせずにいるぼくの“ぐらぐら”さが不安になる。
9月19日 眠れない夜 メラトニンと恵命我神散
胃の具合が悪くて、人から貰った“恵命我神散”という漢方薬を飲んでいる。不眠用にメラトニンも譲ってもらった。だけど選手はレースの前の晩眠れなければアウトだよな。どうしても、というときにはメラトニンとか飲むのかしら。
眠れないから読書、というわけではないけど、最近読んだ本は四冊。
馳星周の「夜光虫」は「不夜城」「鎮魂歌」と読んでいたし出てすぐに買った。
藤沢周の「ブエノスアイレス午前零時」「屋上」は、“身につまされる”小説として読み進んで行くと微妙に違う出口が用意されてるのか、ただおっぽり出してあるのか、不思議な読後だった。
花村萬月の「皆月」と「渋谷ルシファー」、両方ともぼくの心の襞に触ろうとするがごとき描写がふと出てきて、焦ったりした。「皆月」のなかの妻沙夜子が突然出奔するときの置手紙「みんな、月でした。がまんの限界です。さようなら沙夜子」の言葉は恐ろしく透明だ。
「渋谷ルシファー」の冒頭章「俺と悪魔の」は、本当に、凄い、の一言だ。
そうだ「捨てがたき人々」も読んだんだ。ジョージ秋山断固支持!
9月18日 苦い涙 
競輪選手の涙。もちろん競走以外の人生で流す涙の量のほうが圧倒的に多いに違いないなかろうが、そっちはぼくらには知る由もない。
千葉ダービーの滝沢正光の号泣は語り草になっているし、地元の特別の勝ち上がりで脱落し、負け戦の一着でファン・サービスの物投げのとき、こんなレースで手を揚げるために練習してきたんじゃない、と泣いてしまった高木隆弘には、「ヘイ・ジュード」を聴いたときに起きる、見えざる手に背筋をつかまれたような“ぞくっ”をもらった。
選手の涙が、客のなかの何かを浄化させたり燃やしたりすることはあるのだろう。
玄関で大泣きしたあいつ。ぼくの心の小さくもない瘤は、あいつの涙が溶かしてくれたんだ。
9月17日、夜 また空が暗くなる
話題の伊勢崎がA級緒戦の西武園でピンピンの優出。茨城の長塚はどこを走るのだろう。
青森の坂本勉がA級を九連勝しての初めてのS級戦は川崎だった。観に行った、八王子から横浜線と京浜東北を乗り継いで。完全優勝だったんだけど、決勝は番手の太田雅士と長い写真判定だったのをついきのうのことのように憶えている。
そんな二十九年前の「傷」を去年、『身も心も』という映画にした。その公開中に彼女はガンで死んだ。ついきのうのことのようだったあの時代が死んでしまったようで、俺は、新宿の酒場でただただ泣いた…で締める「新宿物語」は荒井晴彦が「ユリイカ」の北野武総特集に寄せたものだ。内容の詳述はしないが、さっき、たまたま読み返していたら、「ついきのうのことのようだったあの時代」がなんだか悲しくて、なかば強引に、ついきのうのことであってほしい川崎の坂本勉を想い返し記しただけだ。
♪おとなだろう 勇気をだせよ 泣いてばかりじゃ また空が暗くなる(CDが見当たらないので正確ではないかも)と清志郎は歌っている。
9月17日、朝 スライダース 完敗
対キャッスル、午前5時半プレイボールは一時間も経たないうちに十一点差のコールド零敗。内輪の話で恐縮、朝野球の話です。
9月16日 陽はまたのぼりくりかえす 朽ち果てるまで見届けるよ、競輪!
前の車が外帯線を外したからインを突いても構わない、もちろんルール。だけど小学校の徒競走でインを抜けたら反則はおろか卑怯者だ。むろん、両競技を一緒にはできないし別物だ。でも競輪を知らない人に“近道”の正当性を説くのは至難のことで。
ぼくは“昔気質の競輪”に淫しすぎだ。そんなことは分かっている。人の心は移る。社会党はなくなり、共産党も変わった。競輪の競技規則もそりゃ変るわなァ。
何が書きたいんだが、何処へ行き着きたいのか分からなくなった。少し病んでいるみたいだ、ぼくは。
♪陽はまたのぼり繰り返していく僕達の空をのみこんでいく 行き急ぐとしてもかまわない飛べるのに飛ばないよりはいい ドラゴン・アッシュでもウォークマンに容れて聴きながら、ファンしかいない2センターの上にあるコンクリートの高見の一般席。“あっち側”に戻りたい、などと京王閣の記者席でぼんやり考てた。
大仰な物言いだけど、ぼくは最後まで競輪を見届けるつもりだ。競輪が朽ちていくにしても、どうなるにしてもだ。だんだん、ぼくとのズレが広がっていっても、それでも見続ける覚悟だ。ぼくには少しだけ恩がある、むろん、競輪にだ。
9月14日 涙の影一つ 生田敬太郎
新宿のTUTAYAで「エレック・アンソロジー」というのを買った、そのなかの生田の「涙の影一つ」が聴きたくて。一日経てば(15日には)その「涙の影一つ」の入った3th
アルバムが再発するのは分かっていたけど、一刻も早く聴きたくて買った。大事に抱えて帰った、アルコール臭漂う埼京線で。
聴いた。泣きはしなかったけど、二十四年前と同じように鳥肌は立った。
ブランキー・ジェット・シティが「小さな恋のメロディ」で ♪小さな恋のメロディという映画を観たことがないなら早く観たほうがいいぜ 俺の血はそいつでできてる 12才の細胞に流れ込んだまま まだ抜けきれちゃいない と歌っているけど、ぼくの細胞には“生田”がずっと棲んでいるんだ。
♪悲しんでばかりもいられないよ。外へ出れば微笑もいる 誰にでもあることじゃないか はやく自分に役立ててほしい わかったような顔をするわけじゃないけど はやく自分に役立ててほしい
あれほどつらかったことでもステキな笑顔を見せたじゃないか 今の君の心はガラスばりのよう 涙の影一つでも見えてしまう むなしさの中でもこれからひとりで立派に燃えてほしい 悲しんでばかりもいられないよ 外へ出れば微笑みもいる わかったような顔をするわけじゃないけど 孤独な石のぬくもりも感じてくれ
そっそくギターで弾き語ってみる、キーはCだ。
9月12日 Mo'Funky やっぱり阿佐田哲也
近所の本屋で平積みになっていた「トライアル」真保裕一著を、「競馬・競輪・競艇・オートレース、それぞれの世界に賭けるプロフェッショナルの矜持」の帯につられて買った。競輪物の方のタイトルは「逆風」。読んだ。“競輪の活字”に飢えているぼくだから、まあ、それなりには、なんだけど、いつものように微妙な“不充足”がもたげてきて、結局読み返してしまうことになる、阿佐田哲也を。
何年か前ある雑誌に「ストーンズを嫌いな奴は信じない、阿佐田哲也の“ズボンで着陸”を読んでいないのは認めない」などと書いた。その“ズボンで着陸”に負けてないファンキーさを滲ませているのが同じ阿佐田哲也の“競輪円舞曲”、色川武大・阿佐田哲也全集・11収録だ。そのなかで主人公の梨木と作者が、これぞ必勝法とばかりに、◎−無印の車券を追って大宮競輪場に日参するのだが、タネも尽きかけたころに、やっと出た、と思ったら無印−◎になってしまうシーンがいかにも大宮らしく胸に残る。
9月6日 きらいじゃないよ 裏バッハプラザ?
穴田裕哉の眼はいい意味で危ない眼だ。
マーカーの眼とでも言おうか。もし新ルールというものがなかったのなら、その眼でS級の上の方を走っていたかもしれない、いまごろは。だけど人生に“もし”なんてない!
テレビは穴田裕哉−佐々木健、一点だけど、初日、結果二人で入ってきた穴田=小野竜一郎の61期車券も悪いけど買わせてもらいます。明日7日の西武園準決の話。
9月3日 運命のひとひねり “三番手”考
先行屋が逃げる。別線のまくりがくる。番手が張る。三番手は空いたインをシメる。
これがぼくが習った競輪だった。番手は番手の仕事、三番手は三番手の、だ。
だけど、なんだよ、このごろは。
番手が別線を“持って行く”と待ってましたとばかりに内をしゃくってしまう。むろん、番手と三番手の関係の濃さにもよるのだろうけど、コメントも顔見せもきちんと三人なら、三人のラインと見なすでしょう、車券買う方は。でもまあ、ルール上認められてのことらしいし、自分がその三番手を買ってれば、イン突いちゃえ! ぐらい叫んじゃうかもしれないけれど、だ。
沸いてしまう、なんだがズレた気持ちめいたものが。
当たり外れのあるギャンブルのことだから、後味の悪さ、というのとは少し違うけれど、そう、読後感の不充足みたいなものは確実に残る、ほくには。
8月5日 Summer Time Blues
福岡県は久留米市内の“金髪屋”だった、山田裕仁(岐阜・61期)が一流か否や、で激しくやり合ったのは。寒い一月のことだ。
バー“金髪屋”を久留米四泊目のぼくらはアジト気分で使っていて、C.C.Rの「ベスト」やストーンズの「ベガーズ・バンケット」のB面をリクエストしたりしていた。「スウィート・ヒッチハイカー」「ストレイ・キャット・ブルース」などが流れるなかでの“論争”だった。
盛り上がった。
「あのまくりが一流でないなら何が一流なの」「吉岡や神山をまくっちゃう男だよ」「特別の決勝でも◎が付くんだから一流」「その特別の準決で人気になる男がなんでツマラナイ敗け戦でころころ負けるの」「負けるのはいいよ。競輪だから。だけど負け方がなってない、いつも同じような単純なまくり不発じゃァ」「そこが山田のかわいいところで」「どこが」アルコール度数に比例して“一流”という言葉の意味がどんどんぼやけてしまい…。
店のテキーラは全部空になった。
結局その夜は、認める、認めない、嫌いか好きになってしまったけれど、山田裕仁のなかにある、ある種のアンチ・ヒーロー性とでもいうのか、そんなものを誰もが少なからず覚ってしまったのも事実だった。
明け方のホテルのベッドで、山田はヒールっぽい“役回り”がベストなのでは、などとぼくは考えたりした。プロレスでいう善玉に対する悪玉などという図式は、プロレスのなかでもとっくに風化してしまっているけど、競輪のなかでなら新鮮に映えるかもしれなかった。むろん山田ファンは怒るかもしれないけれど、だ。
その山田裕仁が、昨日の青森全日本選抜でタイヤ差中を割って特別ホルダーに。
7月27日 この暗い時期にも
どこの競輪場だったか、階段の踊り場でのことだから、取手か京王閣のどちらかだ。成島勇を静岡の松山正和(76期)と見間違ったことがあって、「ごめん」「いえ、似てますか?」言い返されたときの童顔をいまも忘れないでいる。
その成島勇がふいに逝ってしまった。
「弟のようにかわいがっていた」という永田年明(東京・62期)は訃報を伊東参加中に聞いたらしい。その永田が「彼の分まで」と走った26日の10レース決勝は、なぜか松山正和の優勝だった。“なぜか”はぼくの脳内だけのことだから、霊的偶然めいた解釈はしたくないけれど、だ。
ともかく合掌。
成島勇、競輪選手、旅立ったとき、二十二歳だった。 |