歴史劇


『騎馬大王アッティラ/平原の支配者』(2001年/監督:ディック・ローリィ)

史劇といえば、『ベン・ハー』や『クレオパトラ』といった大作を思い浮かべるかもしれませんが、1960年代までは、『蒙古の嵐』や『カルタゴ』といったB級史劇がたくさんありました。最近はスクリーンで見かけなくなりましたが……
 そんなB級史劇の中に『異教徒の旗印』というのがありまして、私がアッティラ大王の名前を覚えた作品でした。史実を調べたら、これが全くのデタラメ。主演がジャック・パランスで、相手役がリタ・ガムだったからなァ。

『ドラキュリア』のジェラード・バトラーが主演したこの作品は、テレビ・ムーヴィですが上映時間180分の史実に即した堂々たる作品に仕上がっていました。

アッティラ大王というのは、フン族(中央アジアのステップ地帯に住んでいた遊牧騎馬民族で、中国史に出てくる“匈奴”の一派とされる。375年頃、その一部が黒海北岸を西進して東ゴート族を討ち、西ゴート族を破って、民族大移動の原因を作った)を統合して434年に王位につき、カスピ海からライン川に至る領域を支配し、ビザンチン帝国をも圧迫し従わせたんですよ。さらにガリアへ侵入しますが、アエチウスに率いられた西ローマ軍および西ゴート軍に、451年のカタラウヌムの戦いで敗北します。翌年、軍を立てなおして北イタリアに侵入し、ローマへ迫りますが急死します。

上記の作品以外にも、アンソニー・クインがアッティラを演じた作品もあるし、アメリカ人にとってアッティラ大王というのは結構知られた存在なんですかね。

 

明治大帝御一代記(1964年・大蔵/監督:大蔵貢)

大蔵貢が新東宝時代に製作した『明治天皇と日露戦争』(’57)、『天皇・皇后と日清戦争』(’58)、『明治大帝と乃木将軍』(’59)を再編集して1本の映画にしたもの。

現在の視点から観ると、デタラメな時代考証によるアナクロ歴史大作です。“木口小平は死んでもラッパを口から放しませんでした”のような戦争美談が中心ですが、映画的には見るべきところは色々あります。

アラカンの明治天皇は威厳があって最高。アラカンなくしてこの映画はありませんね。それと意外だったのが阿部九州男の伊藤博文。昔テレビで観た時は気づかなかったのですが、貫禄があって実にいい味を出しています。

それと、新東宝の特撮技術は捨てたもんじゃないですね。日本海海戦シーンは見応えがあります。大作らしくエキストラを大量に使った戦闘シーンも迫力満点。若山富三郎が単身敵の陣地に突撃して、シナ兵から奪った青龍刀で斬りまくるシーンには笑いましたけどね。

 

ソロモンとシバの女王(1959年/監督:キング・ヴィダー)

紀元前のイスラエル。エジプトとの戦いで勝利を収め、神のお告げによりソロモン(ユル・ブリンナー)が王位に就く。ソロモン治世のもとにイスラエルは繁栄し、エジプトと同盟関係にあるシバの女王マグダ(ジーナ・ロロブリジダ)は危機感を抱く。マグダは政略のためイスラエルを訪れ、ソロモンを色仕掛けで誘惑する。マグダの誘惑に負けたソロモンに神の怒りが下り、人心は離れ、エジプト軍が攻め込んでくる。ソロモンに本当の恋をしてしまったマグダは……

良き時代のハリウッドの大作史劇。大量のエキストラを使った合戦シーンはCGでは味わうことのできない見事なものですよ。

だけどハリウッド的宗教感に基づいた内容には、観ていてシラケました。結局は神の指示に従い、神を信じていれば奇跡をおこしてくれて、勝利に導いてくれるというものですからね。

それにしてもジーナ・ロロブリジタは悩ましいなあ。旬の魅力にはじけていました。ラゴンの祭りにおけるロロの妖艶さに満足、満足。ロロの前では、ブリンナーは影が薄かったですね。

 

タイタス(1999年/監督:ジュリー・テイモア)

シェークスピアの戯曲中、もっともショッキングといわれた「タイタス・アンドロニカス」の映画化とのことですが、私はこんな戯曲があることすら知りませんでした。

ローマの将軍タイタス(アンソニー・ホプキンス)は、ゴート族との戦いに勝利をおさめ、王女タモラ(ジェシカ・ラング)とその息子を人質にして凱旋した。おりしもローマは、亡き皇帝の二人の息子が激しい帝位争いをしていた。そして、タイタスが支援した長男のサターナイナスが皇帝となるが、それがタイタスの悲劇の始まりだった……

オーソドックスな史劇として製作すればいいのに、妙ちきりんな現代風史劇にしたのはコスト対策じゃないですかね。往年のハリウッドのパワーがなくなり、前衛的に処理するしか、この題材を映画化する方法がなかったような気がします。

舞台演出家出身の監督だけあって、その辺は巧いのですが、映画的迫力は感じませんでした。ただ、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』で素晴らしく官能的な悪女だったジェシカ・ラングが、そのまんま齢をとった感じの淫らな熟女になっていたのには、満足、満足です。

 

キング・アーサー(2004年/監督:アントワーン・フークア)

5世紀のブリテン(現在のイギリス)は、ローマ帝国が支配していたが先住民族のウォードと侵略者のサクソンの脅威にさらされていた。ローマはブリテンから撤退するにあたって、ウォードの地にいるローマ人一家の救出をアーサー(クライブ・オーエン)が率いるサルマート騎士団に命じる。一家が守備する砦には、サクソンの大軍が迫っていた。ローマ兵に捕らえられていたウォードの族長マーリンの娘グエナヴィア(キーラ・ナイトレイ)を解放し、アーサーはウォードから信頼を得るが……

有名なアーサー王伝説の真実(といってもフィクションですが)を描いた冒険アクション映画。面白い試みですが、アーサー王伝説支持者には評判が悪いようです。私は、昔(私の中学生時代)のイタリアB級史劇のような、名前を借用した歴史アクションとして楽しみました。

二刀流のランスロット(ヨアン・グリフィズ)、唐突に女戦士となるキーラ・ナイトレイはカッコよかったですよ。伝説の二人の関係を匂わせるシーンが全然ないのは不満ですけどね。最後の戦いにランスロットが参加するのはアーサーのためでなく、グエナヴィアへの愛のためぐらいの物語作りをしてほしかったよなァ。

 

 

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