歴史劇


『無敵艦隊』(1937年/監督:ウィリアム・K・ハワード)

16世紀後半、スペインはイギリスの海賊行為に対して、捕えたイギリス軍人を異教徒として死刑にしていた。父親とともに捕えられたマイケル・インゴルビー(ローレンス・オリビエ)は、父の友人であったスペイン提督の好意により脱出に成功する。イギリスに戻ったマイケルは、スペインに内通している政府高官の名を調べるために再びスペインに向かうが……

エリザベス女王役のフローラ・ロブスンが圧倒的な存在感を持っていますね。内通者に対して、寛大さと辛辣さと術策とを見事に使い分け、怪物的女王を堂々とした貫禄で演じきっています。映画としては今イチでも彼女の演技を見るだけでも価値はあります。

それと、最高に美麗なヴィヴィアン・リーもね。マイケルの恋人役のヴィヴィアン・リーは、実生活でもオリビエとの恋に落ちている時で、生涯で最もキレイな時期だったと思いますよ。女は恋をすると美しくなるのだ。

 

『ソドムとゴモラ』(1961年/監督:ロバート・アルドリッチ)

ピア・アンジェリ

旧約聖書の有名なお話“ソドムとゴモラ”の滅亡を描いた作品。

ロト(スチュアート・グレンジャー)に率いられたヘブライの民が永住の地としてヨルダン川の辺りに住居造りを始める。ソドムとゴモラの女王ベラ(アヌーク・エメ)は弟アストロフ(スタンリー・ベーカー)の反対を押さえて、そこに住むことを許すが、アストロフが同盟を結んでいたヘラム族がヘブライの民を襲う。ロトの周到な作戦でヘラム族を破るが、住居を失い、ソドムの町で商人としてヘブライ人たちは暮しし始める。数年が過ぎ、ヘブライ人たちは豊かになり、享楽にふけるようになり……

火攻め、水攻めのスペクタクル・シーンや、ソドムとゴモラの町が神の怒りに触れて崩壊していくシーンなど、古き良き時代の史劇を満喫できますよ。

セルジオ・レオーネが第2班の監督をしており、アンソニー・ステファンやジャック・スチュアートといった後年マカロニウエスタンでお馴染みの顔も出ていました。

しかし、何と言っても見所は、ソドムの町に未練を残し、振り返ったばかりに石になってしまうロトの妻イルディスのピア・アンジェリや、ロトの娘ロッサナ・ポデスタといった太腿も露わに登場する美女たちです。特にピア・アンジェリは、イタリアに戻って、アメリカ時代の清純派の娘役とはうって変わって妖艶な女を感じさせてくれました。

 

『マルコ・ポーロの冒険』(1938年/監督:アーチー・メーヨ)

ベネチアの商人マルコ・ポーロ(ゲーリー・クーパー)が、通商と見聞を広げるために元の都にやってくる。フビライの娘クカチン姫(シグリット・ギュリ−)と愛し合うようになるが、宰相のアーメッド(バジル・ラズボーン)が、王座を狙っており、姦計をめぐらす……

ゴールドウィンが巨費を投じただけあって、セットや衣装は豪華絢爛。だけど、内容はウ〜ン。西洋人が東洋人のメーキャップをした、仮装パーティーのような映画ですね。

クーパーはモテモテ男で、ピンチになっても美女に救われま〜す。美女といえば、売出す前のラナ・ターナーが、匈奴の王様の召使役で出ていましたよ。

 

『明治天皇と日露大戦争』(1957年・新東宝/監督:渡辺邦男)

平和主義者で国民おもいの明治天皇をアラカンが威厳を持って演じています。明治天皇のリッパさと、精神主義が前面に出て、日露戦争における戦略・戦術面は描かれていません。そのため、二〇三高地の激戦も根性で勝ち取った感じになっています。児玉源太郎の出番がないんですよ。

日本海海戦も、それなりに迫力は出しているものの、軍艦の模型が少ないせいかアップばかりで全体の動きがよくわかりません。

それにしても、終戦から12年経過しているといっても、こんなナショナリズム丸出しの映画を作ったことに驚きを感じますね。当時の大多数の日本人が心の中で思っていても口に出して言えないことを、この映画が具現化したと云われています。映画は大ヒットし、傾きかけていた新東宝の経営を少し持ち直しました。

ところで、この作品は新東宝が開発したシネパノラミックス方式によるワイド映画の第一作目でしたが、配給先にはワイドスクリーンのない上映館があり、スタンダード・サイズでも撮影されていました。今回テレビ放映されたのはスタンダード版でした。

 

『成吉思汗』(1943年・大映/監督:牛原虚彦&松田定次)

母(浦辺粂子)と妻(最上米子)をメルキト族のスブテイ(石黒達也)に拉致されたテムジン(戸上城太郎)は、シルガンシラ(香川良介)の協力を得て、メルキト族を急襲する。スブテイを決闘で打ち負かしたテムジンは、メルキトを自分の部族に吸収し、モンゴル族は力を蓄えていく。テムジンの勢力が大きくなるのを恐れたジャムカ(北竜二)は陰謀をめぐらし、テムジンを討とうとするが破れ、蒙古はジンギスカンとなったテムジンによって統一される。

元朝秘史を元ネタにしています。母ホエルンが、山梨や山桜の実を拾い、草の根を掘って幼いテムジンたち4人の息子を養う話は元朝秘史そのままです。だけど、登場人物の名前が違っているので、よく分からなかったこともありますが、内容はかなり違っています。

テムジンは争い事が嫌いな平和主義者で、相手に仕掛けられてやむなく戦うという流れになっています。戦争中の時代背景がそうさせたのですかね。

満州ロケのような気がするスケール感ある風景は、従来の邦画では見られないものですが、肝心の戦闘シーンは騎馬軍団が走り回るだけで迫力ありません。ハリウッドのような馬を使ったスタントなんて、出来なかったのでしょうね。

 

 

 

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