サスペンス映画


『リプリー/暴かれた贋作』(2005年/監督:ロジャー・スポティスウッド)

画家として脚光を浴びはじめたダーウットが事故死し、リプリー(バリー・ペッパー)たち仲間は、彼の絵の価値を高めておくために生きているように見せかける。仲間のバーナードにダーウットの贋作を書かせて大金を稼いでいたが、画商のマチソン(ウィレム・デフォー)がその絵を怪しむ。リプリーは富豪の娘エロイーズ(ジャシンダ・バレット)と婚約し、彼女の邸に住んでいたが、仲間との連絡先をその邸にしていたため、マチソンが邸にやってきて……

殺人は突発的で、運の良さと手助けもあって、富豪の娘(ジャシンダ・バレット)と結婚してエンドとなる、何じゃこりゃ、というサスペンス映画です。

原作はパトリシア・ハイスミスの“リプリー”シリーズで、その第2作目にあたります。“リプリー”シリーズは5作あり、第1作が超有名な『太陽がいっぱい』ね。『太陽がいっぱい』(1960年/監督:ルネ・クレマン)のラストの素晴らしさが、つくづく思いおこされま〜す。

 

『天使と悪魔』(2009年/監督:ロン・ハワード)

『ダ・ヴィンチ・コード』に続く“ラングドン教授”シリーズの第2弾です。

ローマ教皇が急死(後で暗殺されたことがわかる)し、後継者選び(コンクラーベ)が行なわれる中、4人の教皇候補者が誘拐されるんですな。かつて教会によって弾圧されたイルミナティという組織から、4人の教皇候補者を1時間おきに殺害し、最後はヴァチカンを反物質によって破壊するという予告状が届きます。イルミナティについて研究していたラングドン(トム・ハンクス)と反物質学者のヴィットリア(アイェレット・ゾラー)がヴァチカンに呼ばれて捜査開始ね。

ガリレイの最後の書物に隠された暗号から、4人の教皇候補者が殺される場所を見つけていくんですが、ロン・ハワード監督は手堅い演出(間延びもせず、説明不足もなく)で、時間との戦いをスリルとサスペンス溢れるものにしています。派手なクライマックスの後に、ドンデン返し(予想はつきますけどね)が用意され、ヴァチカンやキリスト教に縁のない人でも楽しめま〜す。

 

『ヴィドック』(2001年/監督:ビトフ)

ヴィドック(ジェラール・ドバルデュー)が鏡の仮面をつけた謎の男と闘って殺されるシーンから始まり、ヴィドックの伝記を書く予定だったエチエンヌ(ギョーム・カネ)が、ヴィドックが捜査していた事件と仮面の男の正体を探っていく物語ね。

19世紀の汚いパリの情景がうまくCGで再現されており、テンポのよい物語展開で最後まで退屈しませんでした。

ヴィドックは実在したフランスの有名な探偵ということですが、内容はリアリティあるミステリーというより、ファンタジー・アクションに近かったですね。仮面の男の正体はオカルト的なものを予想していたのですが、意外や意外でした。

正体がわかって全体を振り返ると、辻褄のあわないところが多々あるのですが、映像だけは満足できるので是としましょう。

 

『泥棒成金』(1955年/監督:アルフレッド・ヒッチコック)

観たいと思いながら、何故か未見だった作品です。ヒッチコック研究書によると、ヒッチが常に心がけていた作品のテイストは、“エモーション”“ユーモア”“エレガンス”だったとのことで、この作品にもそれがよく表れています。

“エモーション”は、悠々自適の生活をしている猫と呼ばれた元泥棒の主人公(ケーリー・グラント)が、自分の手口を真似た宝石泥棒が出現したことから、ニセ猫退治に乗り出すキッカケね。ブリジット・オーベールがニセ猫となった動機も、主人公に対する“エモーション”といえます。

“ユーモア”は、金持ち夫人が煙草の火を目玉焼きで消すところや仮面舞踏会のダンスシーン、しゃれた会話の数々ね。そして、この映画の全てと言っていいのが“エレガンス”です。

風光明媚なリビエラを舞台に、美男のケーリー・グラントと美女のグレース・ケリーという顔合わせは最高ですよ。花火を背景にしたキス・シーンの見事さ。アクションやストーリーだけに興味を持っている人には物足らないかもしれませんが、優雅な気分に浸って観ると満足、満足です。

それに、グレース・ケリーのソフィスティケートされた美しさと、コメディタッチの演技は魅力満点でしたね。この作品に出た頃、女優を続けるか、結婚するか悩んでいたそうですが、女優を続けて欲しかったで〜す。

 

『国際諜報員ハリー・パーマー/三重取引』(1994年/監督:ダグ・ジャクソン)

ロシアでプルトニウムが盗まれ、モスクワで個人調査局を開くハリー・パーマー(マイケル・ケイン)に国際原子力機関から報酬25万ドルの捜索依頼がくる。ロシアマフィアが絡んでいることがわかり、ハリーはサンクトペテルブルグへ。一緒に仕事をしているニック(ジェイソン・コネリー)の恋人タチアナ(ターニャ・ジャクソン)もサンクトペテルブルグで誘拐され……

ハリー・パーマーを主人公にした映画は、スパイブームの60年代後半に3本作られており、ジェームズ・ボンドのようなスーパーヒーローでなく、生活感のにじみ出たスパイぶりは魅力的でした。それが、テレビムーヴィで復活したのね。主演のマイケル・ケインの年齢に合わせて、ソ連崩壊後のロシアが舞台になっています。

プルトニウムの売買仲介者がロシアマフィアからプルトニウムを買う資金として、美術館長の娘タチアナを誘拐して名画を盗むんですな。その名画を美術ブローカーに売って資金を得ようとするので、三重取引ね。レン・デイトンの原作にあるのかどうか知りませんが、サスペンスあふれる内容となっています。ただ、ハリーがダメ男からカッコよくなっているのと、生活感がないのが気に入りませ〜ん。

 

 

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