リメイク映画


『インベージョン』(2007年/監督:オリバー・ヒルシュビーゲル)

墜落したスペースシャトルの破片に付着していた地球外生物が人体に侵入して睡眠中に遺伝子を変え、人間を支配しはじめる。彼らは感情を持っておらず、その異常に気づいた精神科医のキャロル(ニコール・キッドマン)は親友のベン(ダニエル・クレイグ)に相談する。政府は新種のインフルエンザとして秘密にしていたが、睡眠中に起こして死んだ男の皮膚に残っていた細胞から異星物だと判明する。彼らは仲間をどんどん増やしており、離婚して別れた元夫タッカー(ジェレミー・ノーサム)に異星物に変わっていた。キャロルの息子オリバー(ジャクソン・ボンド)はタッカーの家を訪問しており、異星物の侵入を受けたが睡眠しても遺伝子変化が起きていなかった。他にもオリバーのような免疫体質の人間がおり……

ジャック・フィニーのSF小説『盗まれた町』の4度目の映画化。破壊によらない異星人の地球侵略テーマとしてSFの古典となっています。

外見や記憶はそのままでも、どこか違う人間がウジャウジャ増えてくる恐怖は、破壊型恐怖と違ってビジュアル面では地味になると思ったのか、途中から映画トーンがまるで違ったものになっています。最後の方はゾンビ・アクションじゃありませんか。製作者の思惑で監督の意図しているものとは違った作品になったみたいですね。作り方次第では傑作になったかもしれないのに残念!

画像は、ニコール・キッドマンとダニエル・クレイグ。

 

『アイ・アム・レジェンド』(2007年/監督:フランシス・ローレンス)

ウイルスを使った新薬の副作用により人類は滅亡し、免疫のあったネビル(ウィル・スミス)だけが生き残る。人類は野獣の本能だけで行動する異形の生命体に変異し、夜か暗闇の世界でしか活動できなくなっている。動物実験から、効果のありそうなワクチンを発見し、異形人類を捕まえに出かけるが……

古典SFとなっているリチャード・マシスンの“地球最後の男”の3度目の映画化。1作目は未見なので比較できませんが、2作目の『オメガマン』と比較すると物語に厚みがありませんね。『オメガマン』だって、悪くない程度の作品で傑作には程遠いわけですから、この作品の出来が想像つくでしょう。

一番の問題は、リアルに見せて全然リアルじゃないことね。主人公(ウイル・スミス)や生き残っていた二人が免疫になった理由が不明だし、鹿が生き残っているのもおかしい(ゾンビ化した犬やネズミに食いつくされている筈)ですよ。発生源がニューヨークで、空気感染したらしのですが、冷温に弱いウイルスなら寒冷地には生存者がもっといそうなものです。

ラストで米国内にも生存者がおり、人類再生の道が開けてエンドとなるのですが、設定に矛盾が多いと感情移入できませ〜ん。

 

『スルース』(2007年/監督:ケネス・ブラナー)

ティンドル(ジュード・ロウ)は、不倫相手の夫ワイク(マイケル・ケイン)から、彼の屋敷に呼び出され、「妻と別れてもよいが、宝石を盗め」という相談を持ちかけられる。ティンドルにとっては彼女への宝石、ワイクにとっては保険金が入るので、ティンドルはワイクの提案に承知し、盗みに入るが……

『探偵スルース』(1972年/監督:ジョゼフ・L・マンキウィッツ)のリメイクです。『探偵スルース』は、ミステリマガジンが作家・評論家・翻訳家71人にアンケートしたミステリ映画ベスト10の1位になっている傑作で、初めて観た時は私もコロリと騙された映画でした。ロンドン郊外の邸宅を舞台に、ローレンス・オリビエとマイケル・ケインの会話(セリフの内容が濃く、グイグイ引き込まれる)だけで物語が進んで行き、アッというどんでん返しに堪能しましたね。

でもって、『スルース』ですが、前回オリビエの役をケインが演り、ケインの役をジュード・ロウが演る面白味はあるのですが、ネタバレしているので物語としての面白味が欠ける上、嫉妬と憎悪の渦巻く心理が前回と比べて直線的で全体的に陰気になったのが最大マイナス要因です。

前回のゴシック調美術からモダンアートに舞台変更したり、ストーリーを二部構成から三部構成にしたりと、違いを出そうと工夫していますが、それだけではね。

マイケル・ケインは巧い役者ですが、嫌味がそのまま出て、オリビエの持つ深さにはまだ到達していないなァ

 

『デス・レース』(2008年/監督:ポール・アンダーソン)

無実の妻殺しで刑務所に入れられた元レーサー(ジェーソン・ステーサム)が、刑務所で開催されている死のカー・レース出場することになるんですな。時代設定は2012年で、全刑務所が民営化されていて、その刑務所長は囚人たちの死のカー・レースをネット中継して儲けているんですよ。先の見える展開で、ドラマ的には面白くありません。カー・アクションが売りなんでしょうが、アッと驚くような眼を瞠るようなシーンはありません。

原案はロジャー・コーマンの傑作B級映画『デス・レース2000年』(1975年/監督:ポール・バーテル)ですが、ストーリーもキャラも異なる別映画と言っていいですね。

『デス・レース2000年』は、車で取りつけた武器で、殺人しながらアメリカ大陸横断カー・レースを行なうというバカバカしさの中に、風刺がピリリときいた快作に仕上がっていました。

主演はB級映画の帝王デビッド・キャラダインで、“ロッキー”で売出す前のシルベスター・スタローンも完璧な悪役としてマンシンガン・ジョー役で出演していました。

風刺もなく、キャラも中途半端な『デス・レース』より『デス・レース2000年』が懐かしいで〜す。

 

 

 

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