歴史劇


『300(スリーハンドレッド)』(2007年/監督:ザック・スナイダー)

ペルシャ戦争を題材にした歴史劇というより、戦闘シーンに特化した歴史アクションといえますね。ペルシャ戦争というのは、ペルシャ帝国の侵攻をギリシャの都市国家が撃退した戦争で、この映画の題材となったテルモピレーの戦いはペルシャの第3次侵攻にあたります。アテネがペルシャに勝ったマラトンの戦いがあったのは、第2次侵攻の時ね。

テルモピレーの戦いは、レオニダス王率いるスパルタ軍がペルシャの大軍の前に全滅したのですが、兵力を温存できたアテネ軍がサラミスの海戦でペルシャ軍に大打撃を与えて撤退させ、プラテーエの戦いでスパルタのパウサニアがギリシャ連合軍を率いて占領地に残っていたペルシャ軍を全滅させて、ペルシャ戦争の勝利を決定的なものにしました。西部劇でいえば“アラモ”のようなものですな。

300人が100万人を相手に獅子奮迅の戦いを繰り広げます。首が飛んだり、手足がもがれたりと、殺伐なシーンの連続なのですが、セピア単色の映像により殺伐さを消しています。CG合成もうまく処理されて迫力あるものとなっていましたね。ザック・スナイダーの評価(前作の『ドーン・オブ・ザ・デッド』はひどかった)を変えないといけないかな。

 

『蒼き狼・地果て海尽きるまで(2007年・松竹/監督:澤井信一郎)

テムジンは父と嫁捜しの旅に出て、オンギラト族の村でボルテに会い許嫁の約束をし、ジャダラン族のジャヤムカと親友の契りを結ぶ。父エスガイ(保坂尚希)をタタール族に殺され、テムジンは一族の長となりボルテ(菊川怜)を嫁に迎えるが、メルキト族に浚われる。かつてエスガイがテムジンの母であるホエルン(若村麻由美)をメルキト族から奪って結婚した復讐だった。半年後、テムジンはケレイト族のトオリルカン(松方弘樹)とジャムカに協力を要請してメルキト族を滅ぼし、ボルテを救出するがボルテは妊娠していた……

角川春樹製作なので期待していなかったのですが、思っていた通り凡作でした。

大量のエキストラを使ったロケは劇場の大画面で見ればそれなりに迫力があるでしょうが、肝心のドラマが盛り上がりに欠けます。ストーリー展開が平板で歴史の再現ドラマを見ている感じでしたよ。

戦闘シーンもワンパターンで、どちらが勝っているのかわかりません。役者(反町も菊川もモロ下手)の演技以前に、脚本が悪いです。

 

『モンゴル』(2007年/監督:セルゲイ・ボドロフ)

テムジン(浅野忠信)は、ボルテと結婚の約束をして帰る途中、父をタタール族に毒殺される。部下のタイチウドはテムジン一家から全てを奪っただけでなく、テムジンの命を狙う。テムジンは勇猛な少年ジャムカと知りあい、盟友の契りを交わす。ボルテを娶って一家を構えたテムジンだったが、ボルテはメルキト族に拉致される。テムジンはジャムカに頼んでメルキト族を襲撃し、ボルテを取り返す。しかし、馬を盗みにきたジャムカの弟を殺したことによりジャムカと不仲となる。テムジンの勢力拡大を喜ばぬタイチウドがジャムカと連合してテムジンを討つ。捕らえられたテムジンは奴隷にされて西夏に売られる。ボルテは隊商と西夏に行き、テムジンを救出する。モンゴルに戻ったテムジンは強力な軍団を組織し……

第80回アカデミー外国語映画賞ノミネート作品で、浅野忠信が主演したので話題になった作品です。他の出演者はモンゴル人と中国人で、全編モンゴル語で演じられています。でもって監督がロシア人なので、真に多国籍映画ですね。

テムジン=ジンギスカンの嫁選びからモンゴル統一までを夫婦愛を中心に描いています。戦いに敗れて西夏に奴隷として売られたテムジンを妻のボルテが救出に行くのは史実的に疑問なのですが、これまでのジンギスカン映画にない設定で面白かったですね。

知っている役者は浅野忠信だけ、女優も今イチ美麗でない、捕まっては奴隷にされる繰り返しなど、気に入らないところもあるのですが、圧倒的な迫力でせまってくるモンゴルの大自然や、合戦シーンにみるメリハリのきいた演出などで、私が観たジンギスカン映画の中では一番優れていると思いま〜す。

 

『クロムウェル』(1970年/監督:ケン・ヒューズ)

議会を無視するチャールズ1世(アレック・ギネス)に対して権利の請願が行なわれ、スコットランド反乱鎮圧の戦費調達のために開かれた12年ぶり議会から始まり、民主政治の基礎を築くために護国卿になるまでのクロムウェル(リチャード・ハリス)の活躍を描いた歴史劇です。清教徒革命によって、クロムウェルはチャールズ1世を死刑にするのですが、意志強固な鉄血宰相ぶりを見せるリチャード・ハリスと、誇り高く喰えない国王を見事に演じているアレック・ギネスの演技合戦はギネスの方が一枚上でしたね。

清教徒革命を勝利に導く、クロムウェル率いる3千の議会軍が7千の王党軍を破ったネーズビーの戦いは、大量エキストラを使って大がかりな王朝合戦シーンを再現しており、見応えがありましたよ。演技合戦もいいけど、歴史劇はやっぱり合戦シーンがないとね。

この作品のクロムウェルは、内部権力抗争ばかりを繰り返す議会にたまりかねて、軍事・行政の全権を掌握する護国卿に就任した英雄として描いていますが、歴史の一方の見解としては、軍事力によって国王を死刑にし、独断で事を進める独裁者という評価もあります。そのため、彼の死後、息子のリチャードが護国卿に就任しましたが、強権政治の反動から王政復古が起こり、失脚しました。英雄になるか悪人になるかは、歴史の解釈次第ですねェ。

 

『キングダム・オブ・ヘブン』(2005年/監督:リドリー・スコット)

12世紀のフランス、妻子を失った鍛冶屋のバリアン(オーランド・ブルーム)の前に父親のゴッドフリー(リーアム・ニーソン)が現れる。ゴッドフリーは十字軍の騎士としてエルサレムへ行く途中だった。司教を殺して追われる身となったバリアンは父と一緒にエルサレムに行くが、旅の途中の戦闘で傷ついた父はエルサレムを前に世を去る。バリアンは父の志を継ぎ……

リドリー・スコットらしいスケール感のある歴史劇です。エルサレム攻城戦は丁寧で具体的に描写されており、戦闘シーンの迫力はテレビ画面でなく劇場のスクリーンで観たかったですね。

キリスト教とイスラム教の戦いを正義対悪の戦いにしていないのが好感もてるし、主人公の人生観にも好感がもてるし、ラストの処理も爽やかで私としては満足です。

ヒロインのエバ・グリーンもエキゾチックで悪くありませ〜ん。

 

 

 

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