歴史劇


『レッドクリフ PartT(2008年/監督:ジョン・ウー)

“三国志”の中でも有名な赤壁の戦いを描いた作品で、PartTはそのプロローグ的な位置づけです。民を連れて江陵へ逃亡する劉備軍の長坂での戦いから始まり、劉備と孫権の同盟、赤壁で長江を挟んで曹操軍と孫・劉連合軍が布陣したところで終りとなっています。合戦シーンがないと盛り上がりに欠けると考えたのか、緒戦の小競り合いが大々的な陸上戦になっていましたね。この孫・劉連合軍の八卦の陣による戦いは、映画館の大画面で楽しむものでしょうねェ。この戦いで周瑜(トニー・レオン)が矢傷を負うのですが、これは翌年の江陵での戦いの出来事ですよ。二部作にしたので、見せ場を作るために仕方ないかな。

周瑜は“美周郎”と呼ばれた三国志一の美男子で、トニー・レオンは私が持っている周瑜のイメージとは大きく異なりましたね。金城武の孔明も白皙の天才軍師という感じゃないなァ。中村獅童の甘興は架空の人物らしいのですが、歴史劇といってもフィクションが殆どなので、甘興でなく私のお気に入りの甘寧を登場させて欲しかったですね。獅童じゃ、甘寧のイメージと違うけど……

それにしても、題名の『レッドクリフ』も気に入らないなァ。赤壁は地名ですよ。源義経が平家を破った“屋島” の戦いを、ルーフアイランドというのと同じですからね。アメリカでは“上海”をアップシーと言っているのかな。

 

『レッドクリフ PartU(2009年/監督:ジョン・ウー)

曹操(チャン・フォンイー)が80万の大軍と2000隻の軍船を赤壁の対岸に布陣します。曹操軍では疫病が蔓延しており、死んだ兵士の死体を曹操は赤壁に陣取る劉・孫連合軍に流し、劉・孫連合軍にも疫病が発生するんですな。蔓延を恐れた劉備は自軍を撤退させるのですが、これは孔明(金城武)と周瑜(トニー・レオン)が計画した偽装工作ね。矢の不足を補うために孔明が藁人形を使って10万本の矢を手に入れたり、周瑜が蒋幹を利用して曹操軍の水軍を率いる祭瑁と張允を謀殺したりと計略が成功する中、曹操軍に忍び込んでいた孫権の妹・尚香(ビッキー・チャオ)が曹操軍の出陣を知らせてきます。孔明は雲の動きから風向きの変わる時刻を予報し、周瑜は火計の準備をします。火計を成功させるためには、曹操の出陣を遅らす必要があり、周瑜の妻・小喬(リン・チーリン)が曹操を訪ねます。曹操は小喬の美貌に惹かれていたんですな。曹操の出陣は遅れ、曹操の水軍は火計を受けて大敗します。陸地では、背後から劉備軍が奇襲し……

“三国志”を知る者としては不満の多い作品です。水上戦は迫力があって満足できるのですが、陸上戦はPartTと同じような戦法(盾で防いで反撃)で、もっと工夫が欲しかったですね。それに、80万対5万というのは、話を面白くするにしても兵力差がありすぎです。20万対5万でもよかったんじゃないですかね。

尚香の敵陣潜入もムチャな設定です。おまけに、お友だちができてピンチを救ってくれたりしてね。人情ドラマを入れて物語に厚みを加えたかったのでしょうが、逆に作品全体を薄っぺらなものにしてしまいました。どうせなら曹操と小喬の関係をもっと深いものにして、曹操の出陣を遅らすシーンに厚みをもたせた方が良かったと思いますよ。

ラストの処理も気に入りません。配下の武将に任せて、曹操は脱出する方が自然です。周瑜が曹操を逃がしてやるなんてシャレにもなりません。下手に話を作って、ダメにしましたねェ。

 

『三国志』(2008年/監督:ダニエル・リー)

劉備軍に志願した趙雲(アンディ・ラウ)は同じ常山出身の羅平安(サモ・ハン)と親友になる。長坂玻の戦いで劉備の子ども背負って戦う趙雲の勇猛ぶりを目撃した曹操の孫娘・曹嬰(マギー・Q)は、趙雲の姿を心に刻む。劉備の子どもを連れ帰った手柄で将軍となった趙雲に羅平安は嫉妬を覚え……

『三国志』といっても、趙雲を主人公にした物語で、架空の人物・羅平安を語り部として、フィクション中心の物語展開になっています。曹嬰は曹操がいつも傍においていた曹丕の嫡子・曹叡をモデルにしているのでしょうが、映画としての面白さを出すために女性にした感じですね。

アンディ・ラウのアクションがお楽しみの映画で、重厚さはありませんが、大仰な『レッドクリフ』より、このような小品の方が私は好きですね。小品といっても、合戦シーンは迫力あるものになっていますよ。

 

『ウォーロード・男たちの誓い(2008年/監督:ピーター・チャン)

清朝末期の太平天国の乱を舞台にした歴史戦争アクションドラマです。

太平天国軍に部隊を全滅させられた将軍チンユン(ジェット・リー)が、盗賊団のウーヤン(金城武)と知り合い、首領のアルフ(アンディ・ラウ)を紹介されて清朝正規軍に参入することを勧めます。官軍になれば、根城としている村の安全は保障され、俸禄も需給されるんです。三人は義兄弟の盟約を結び、太平天国軍相手に戦うことになるわけです。8百人対5千人の戦闘シーンは、『レッドクリフ』の戦闘シーンより迫力ありますよ。

チンユンが知らずに好きになった女リィエン(シュー・ジンレイ)がアルフの妻だったことや、蘇州城での捕虜の扱いを巡ってのチンユンとアルフの対立などから、三人の間に溝ができていくんですな。でもって、最終的には悲劇的な結末を迎えることになるんですが、骨太な作品で満足できます。

 

 

 

 

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