映画は音楽から


『八月の濡れた砂』(1971年日活/監督:藤田敏八)

♪〜私の海を 真赤に染めて 夕陽が血潮を 流しているの

    あの夏の 光と影は どこへ行って しまったの

    悲しみさえも 焼きつくされた 私の夏は 明日も続く

 

石川セリの歌う主題歌をラジオの深夜放送で聴いて興味を持ち、二番館か三番館で観たのが、この映画でした。

若い世代の倦怠と虚無感、そしてしたり顔の大人の偽善に対する反抗が、70年代安保後の私の心情とマッチして共感をおぼえたものでした。

CATVで放映されていたので再見したのですが、何故か色あせていましたね。大人の世界にドップリつかった30年の歳月が青春の感性を失わせたのかもしれません。

主題歌が流れるラストシーンで、青春というものの脆さを実感し、当時は感動したのにね。

 

『夢は夜ひらく』(1967年・日活/監督:野口晴康)

8年前に家をとびだして、神戸でヤクザになったマリの兄が死に、弟分の岬(高橋英樹)が兄の遺産を持って、クラブで歌っているマリ(園まり)を訪ねてくる。その金は、兄を殺した工藤兄弟も狙っており……

ヒット歌謡曲をモチーフに製作した作品。昔は、この手の歌謡映画が結構あったんですよね。

主演は、園まり。人気歌手のファンを当てにした映画作りなので、内容は、う〜ん。

園まり以外にも、同じナベプロだった布施明と奥村チヨも出演して歌っています。コメディ・リリーフとしてドリフターズもね。

当時、「夢は夜ひらく」はレコード各社の競作となり、園まり、藤圭子、緑川アコが歌ったものがヒットしました。

藤圭子、緑川アコの歌は、どこかステバチ的な暗いものですが、園まりのは、シットリとしたラブソングでした。映画の方も純愛ものになっています。

♪〜雨が降るから逢えないの 来ないあなたは野暮な人

    ぬれてみたいわ二人なら 夢は夜ひらく

この頃の園まりはバツグンに良いです。歌手としてだけでなく、女優としても(テレビ時代劇“剣シリーズ”の「残雪」は良かった)魅力的でした。

 

だけど、緑川アコが歌った「夢は夜ひらく」が、私は一番好きなんですよォ。

 ♪〜いのち限りの恋をした たまんないほど好きなのに

    たった一言いえなくて 夢は夜ひらく

 

『ブーベの恋人』(1963年/監督:ルイジ・コメンチーニ)

第二次大戦末期の北イタリアを舞台に、レジスタンスの青年ブーベ(ジョージ・チャキリス)と村娘マーラ(クラウディア・カルディナーレ)の悲恋を描いたメロドラマ。

高校1年の時に、C・Cファンだった友人と観にいったんだよなァ。

私もC・Cは好みの女優だったけど、それよりもカルロ・ルスティケリの音楽に惹かれましてね。後年、名画座で観た『刑事』も、C・Cだけでなく、♪〜アモーレ、アモーレ、アモーレ〜の主題歌に魅せられました。

映画は観ていないが、テーマ曲だけは知っている作品って、1950〜60年代には数多くありましたね。テーマ曲が名曲なので、映画の方も名作だと思って観たら、凡作だったことも……

『ブーベの恋人』も物語が淡々と展開し、ルスティケリの音楽がないと退屈極まりない作品になっていたでしょうね。音楽によって、ムードが高まり、二人の心理描写にまで効果をあげています。

代表的なテーマ曲は、タイトル・バックに使われているトランペットとサックスをフィチュアさせた「ブーベのブルース」と、ギターによる主題曲「ブーベの恋人」です。メランコリックな甘い響きは、日本語歌詞をつけてザ・ピーナッツが歌っていましたね。

この2曲の他に、「ブーベよ、さようなら」と「愛のテーマ」が、マーラの心情を音楽で表現していました。

それにしても、この頃のC・Cって、高校の野郎連中に人気がありましたねェ。

 

『刑事』(1959年/監督:ピエトロ・ジェルミ)

ローマの上級アパートで盗難事件があり、階下のバンドウィッチ家の女中(クラウディア・カルディナーレ)の恋人(ニーノ・カステルヌォーボ)が容疑者にされるが、彼にはアリバイがあった。一週間後、バンドウィッチの妻・リリアーナ(エレオノーラ・ロッシ・ドラゴ)が殺され、警察は良人に目をつけるが……

警部役のピエトロ・ジェルミが渋くていいですね。日本でいえば『七人の刑事』の芦田伸介みたいな感じ。推理物としては警部のセリフにあるように重要証拠に気づくのが遅くてマヌケなんですが、市民生活をいろいろ描き出していて、それだけで楽しめます。

♪〜アモーレ、アモーレ、アモーレ、アモレ・ミーオ〜

アリダ・ケッリが歌う哀調おびた主題歌、そのメロディのやるせなさ。ラストでジェルミがカステルヌォーボを捕らえて車で連れ去るんですが、そこへカルディナーレが懸命に追いすがっていきます。しかし、無情にも彼女を置き去りにしたまま映画は終わるんです。絶望の愛に生きる悲しみを強く印象づけた主題歌にマッチするように、クラウディア・カルディナーレが泣かせる演技をして最高!

 

『フットルース』(1984年/監督:ハーバート・ロス)

一時期(といっても、数ヶ月の間なのですが)、ピクチャーレコードに惹かれたことがありまして、古レコード屋のエサ箱を漁って買いまくったことがありました。これも、その一枚でして、映画は観ていないのに、それだけでゲットしたものです。ケニー・ロギンスが歌う主題歌「フットルース」や、ボニー・タイラーが歌う挿入歌「ヒーロー」など聴かせてくれる曲が多々あって、CATVで放映された時に、音楽を楽しみに観ました。

ユタ州の片田舎ボーモントの高校に、シカゴからレン(ケビン・ベーコン)が転校してくる。レンはウィラード(クリストファー・ペン)と仲良くなり、彼からこの町ではロックとダンスが禁止されていることを知らされる。

ムーア牧師(ジョン・リスゴー)がダンス禁止条例の推進者で、高校生だった彼の息子が、5年前ダンスからの帰りに酒酔い運転事故で死んでいたからだ。ダンスが禁止されている若者たちの心は鬱屈しており、牧師の娘・エリエル(ロリ・シンガー)も、そんな一人だった。レンはダンス・パーティーの計画を立てるが……

単純な青春映画でしたが、ミュージカル映画を得意としているハーバート・ロス監督だけあって、エリエルがカセットラジオで音楽を流すと皆がダンスを始めるシーンなど、ウキウキさせてくれる演出を見せてくれて、満足、満足で〜す。

 

 

 

トップへ    目次へ   次ページ