アクション映画いろいろ(邦画編)


『狼と豚と人間』(1964年東映/監督:深作欣ニ)

スラム街の生活を嫌って家を出た二人の兄は、ひとり(三國連太郎)はヤクザ組織の人間となり、ひとり(高倉健)は一匹狼の暴れん坊となる。そして、最後にひとり残った末弟(北大路欣也)は、母親の死を見取った後、チンピラ・グループを結成、次兄と一緒に長兄の組が扱っている麻薬と金を横取りする。しかし、次兄が自分たちを利用しただけと気付き、奪った麻薬と金を次兄に渡さず抵抗する。ヤクザ幹部の長兄は、強奪が弟たちの仕業と知って懐柔を謀るが、末弟は最後まで抵抗し、次兄もそれに同調する……

スラムで生まれた三兄弟(戦中、戦後、戦無派の三世代)の暴力的生き様を通して、人間不信をダイナミックに描いた深作監督初期の傑作。

万力で指をつぶすシーンに見られるような凄まじい暴力描写は、こちらにまで痛みが伝わってきます。モノクロ画像が逆に生々しかったですね。

 

『バトル・ロワイアル』(2000年・「バトル・ロワイアル」製作委員会/深作欣二)

はっきり言ってつまらない映画。どこかのバカ議員が大騒ぎしていたけど、宣伝に使われただけじゃないですかね。

BR法により、42人の中学生がひとつの島に集められ、最後のひとりになるまで殺し合いをするという設定は、完全にブラック・ユーモアの世界ですよ。まともに取り上げる方がおかしい。

問題にするなら、ブラック・ユーモアの世界をアメリカのB級アクションのノリで深作欣二が作ってしまったことですね。暴力描写が話題になりましたが、あの程度のものは米映画では見なれたものです。タケシだけが、この映画の本質を知っていてブラック・ユーモアの演技をしているものだから、一人だけ浮いちゃっています。

壊れた学校&青少年を真正面から描く青春映画などとバカな解説をしていた映画評論家がいましたが見当違いも甚だしい。深作欣二がこれまで一貫して描いてきたテーマは“人間不信”なんですよ。この姿勢はずっと変わっていません。

こんな出来の悪い作品を20世紀最後の傑作といってヨイショする評論家がプロとして通用するのだから、1億総評論家となる。私もその一人ですけど……(笑)

 

『太陽と血と砂』(1960年・新東宝/監督:小野田嘉幹)

川崎史郎(松原緑郎)は、姉の光子(池内淳子)が金持ちの不良に暴行されたことを苦に自殺したことから、不良たちへの復讐を誓う。海浜の仮設ダンスホールで、一夫・渡・健一の三人組を見つけた史郎は一夫に傷を負わせたものの警察に捕まり、少年院送りとなる。8ヶ月後、出所した史郎は家に帰らず、三人組に出会うチャンスを待つ。恋人(三ツ矢歌子)の兄が三人組の一人だったことがわかり、史郎は……

平凡な青春風俗アクションで、特筆すべきことはありません。この手の映画は、何か新しいものがないと陳腐なものになってしまいますね。映像にしても役者にしても驚きが全然ないんですよ。

 

『狼の王子』(1963年・日活/監督:舛田利雄)

昭和25年の若松。浮浪児だった武二(高橋英樹)は、そのすさまじい闘志を日下組の親分に見こまれて養子となる。しかし、5年後、新興ヤクザに養父が殺され、仇を射殺して少年刑務所へ入る。5年後、少年刑務所から出所した武二は、身に危険のある若松を離れ、60年安保の東京で新聞記者の葉子(浅丘ルリ子)と知り合う。武二は、葉子と愛し合うようになるが、心の充足はなかった。日下組の再興を願い、代紋を守ってきた老代貸が殺され、自分のイキザマを求めて武二は若松へ戻る……

この頃の高橋英樹って二枚目なんですよ。アラン・ドロンにどこか似た感じでね。作品もどこかフランス的で、ヌーベルバーグの匂いがします。ラストの処理も垢抜けていて気に入りました。意外な好編でした。

 

『怪盗X 首のない男』(1965年・日活/監督:小杉勇)

世界的な秘宝ばかり狙う怪盗X(宍戸錠)と、盗みの現場に居合わせたことから怪盗と対決する羽目になった青年(川地民雄)の物語。

怪盗の名前がブッラク・ジョーで、川地民雄がケイリー・グラントの屋敷で“猫”という世界的な怪盗を捕まえた名探偵というのは、シャレにならないよ。

盗みのテクニックが平凡すぎて工夫がないのも、作品をつまらなくしています。

ジョーさんがひとりで奮闘してますが、ジョーさんの変装は誰が見てもジョーさんだし、ファントマのような仮面をつけても、やっぱりジョーさん。(笑)

この手の泥棒映画は好きなのですが、褒めるところがないよォ。

デビュー間もない山本陽子が出演していましたが、イモ姐ちゃんでした。

 

『神火101・殺しの用心棒』(1966年・松竹/監督:石井輝男)

偽札で某国を経済混乱させて政府転覆を狙う組織と、某国の秘密警察・神火グループとの戦いに巻き込まれた冒険家(竹脇無我)が事件を解決する冒険アクション。

原作が香港の絵物語で、撮影を全て香港で行った無国籍スパイ・アクション。だけど、内容はオサムイ限りです。石井監督らしいイカガワシサとケレン味がないんですよ。

吉村実子、大木実、吉田輝雄、嵐寛寿郎、菅原文太、高松英郎、藤木孝と役者は揃えていても内容がともなわなければダメという見本。

怒りの大放屁、チャブ台返し!

 

『アジア秘密警察』(1966年・日活/監督:松尾昭典)

日本に大量の金を密輸入して日本経済を混乱させようとする国際的秘密組織に対して、アジア秘密警察官の佐伯流太郎(二谷英明)が活躍するスパイ・アクション。

英語によるタイトルで始まり、主人公が二谷英明で、秘密組織のボスが宍戸錠とくれば、『ろくでなし稼業』のようなオフザケ・アクションと思って期待したのですが、モロ真面目な作品でした。

香港のスター、王侠や方盈(どちらも私は全然知らない俳優)が重要な役で出演しているので、パロディでなく輸出向けで英語タイトルにしたようですね。宍戸錠を追って香港に行ってからの二谷はドジばかりで、王侠の方がカッコ良いのだァ。

それにしても、無国籍アクションを真面目に作られてもねェ……

 

 

 

トップへ   目次へ   次ページ