“犬”シリーズ


田宮二郎の“犬シリーズ”全9作品をCATVで観る。その中の最後の3本は、映画館でリアルタイムで観ていますので、2倍速でスピード鑑賞。未見だった6本はじっくりと……
 “犬シリーズ”は、女より拳銃が好きというトッポイ男・鴨井大介を主人公にしたコミカル・アクションです。藤本義一が原案ならびに脚本を手がけています。

 “悪名シリーズ”の清二に似たキャラクターで、田宮二郎が持つ陽の部分のイメージとマッチしていましたね。田宮二郎が大映を辞めなければ、大映が潰れるまで続いたシリーズだと思います。

カーク・ダグラスが『星のない男』で見せたガンスピン(『怒りの荒野』のタイトルに出てくるジュリアーノ・ジェンマのガンスピンといった方がわかりやすいかな)を、田宮二郎が見せてくれるますが、シリーズ当初はギコチなかったのが、後半ではサマになっていましたよ。

 

『宿無し犬』(1964年・大映/監督:田中徳三)

神戸のヤクザ(須賀不二男)と対立する大坂のヤクザの親分(佐々木孝丸)に腕を見込まれた鴨井は、ヤクザが経営するラブホテルの副支配人になる。しかし、保険金目当ての放火によりホテルは焼けてしまう。親分から保険金を奪って神戸のヤクザに寝返った専務(水島道太郎)を殺すように頼まれるが、鴨井はそれを断り、以前高松で出会って一目惚れした女(江波杏子)を捜しに神戸へやって来るが……
 坂本スミ子との掛合いや、ショボクレ刑事の天知茂のキャラが、この第1作目から確立しているんですね。まだシリーズ化は考えていなかったと思いますが……

田宮二郎は、この作品ではまだ曲射ちを見せていません。使っている拳銃が鴨井スペシャルでなく、一般的なスナッブノーズや小型のオートマチックだから仕方ないですか。それにバンバン悪党を射ち殺しています。だからラストでは刑務所行き。拳銃のライバルとなる水島道太郎が渋くていいですね。

 

『喧嘩犬』(1964年・大映/監督:村山三男)

前作の続きらしく、刑務所から物語は始まります。

刑務所にいても鴨井大介は天衣無縫。入所していたヤクザの親分(遠藤辰夫)に逆らってケンカまでする始末。やがて出所した鴨井は、刑務所で一緒だったヤクザの親分から度胸を買われて工事現場の監督になる。しかし、その飯場はタコ部屋で、労務者から不当に賃金を搾取していた。刑務所で弟分だった男(海野かつを)が、鴨井を敵対視する組の幹部(成田三樹夫)に殺されたことから……

天知茂に代わって新聞記者の山下旬一郎が登場しますが、キャラ的に面白くありません。収穫は面従腹背の成田三樹夫の存在。この手の役をさせると成田はバツグンに巧いんだなァ。

悪党に対して、傷つけても致命傷とならないガンプレイがこの作品から確立します。峰射ちだってさァ。拳銃もリボルバーになって、国本圭一氏の指導よろしく、田宮二郎は色々なガンスピンを見せてくれます。まだ上手くないですけどね。

 

『ごろつき犬』(1965年・大映/監督:村野鉄太郎)

南紀の温泉宿で鴨井大介は、金融会社を経営する未亡人(水谷良重)と知り合う。鴨井は彼女から、3人のヤクザ(根上淳、成田三樹夫、山下旬一郎)に殺された夫の敵討を頼まれるが、気乗りしないまま大坂へ戻る。大坂では、鴨井に組をつぶされた天地会と蒲生組の残党が鴨井を狙っており、彼らを抑えることを条件に、ショボクレ刑事から刑事殺害の捜査協力を頼まれる。 ショボクレ刑事が目星をつけていた犯人は、南紀で女から頼まれた人物と同じだった……

第1作に続いて田宮二郎と天知茂が絶妙な掛合いを見せてくれます。孫悟空がお釈迦さまの掌から逃れられないように、トッポイ田宮二郎が、本人がそうとは気づかないままに、ショボクレ刑事の天知茂に上手くノセられて事件を解決。天知茂が、このシリーズの陰の主役なんですよ。

 それと、大坂を舞台にしているので、大坂の芸人が出演するのが嬉しいですね。この作品では、中田ダイマル・ラケットが味のあるところを見せています。

 

『暴れ犬』(1965年・大映/監督:森一生)

一文無しで木賃宿から追い出されそうになった鴨井大介をみかねて、金に替えるように、と言って密売拳銃を鴨井に預けた男が殺される。恩義を感じた鴨井は彼の恋人(金井克子)の後ろ盾となり、彼女をつけねらう拳銃密売組織から守るため、彼女がダンサーをしている高級クラブの用心棒となる。そのクラブはヤクザ(拳銃密売組織)から狙われており、ママ(草笛光子)の弟はヤクザに殺されていた。鴨井は襲いかかるヤクザ相手に自慢の拳銃で……

ミヤコ蝶々、芦屋小雁との絡みは面白いのですが、刑事の大阪志郎との絡みが今イチ面白くありません。やっぱり、相手役は天知茂じゃなくちゃァ。

それと拳銃のライバルとなる高木二郎に魅力がないのが致命的。この手の映画は内容よりも、登場人物のキャラに面白さが左右されるので、キャスティングが重要なんですよねェ。

 

『鉄砲犬』(1965年・大映/監督:村野鉄太郎)

福岡でヤクザに追われている男(山下旬一郎)を助けた鴨井大介は、男から大阪にいる母親と妹にお金を届けてくれるように頼まれる。男は八百長競輪の秘密を握っていた為、大阪のヤクザ(安部徹)から狙われていたのだ。大阪に戻った鴨井は、ショボクレ刑事の尋問を受けている時に、拳銃の入ったバッグを置き引きされる。鴨井の拳銃で八百長競輪の関係者が射たれ……

 常連組(天知茂、坂本スミコ)との掛合いの面白さに加えて、小沢昭一がこれに加わり、可笑しさがパワーアップしています。安部徹の悪党ぶりもいい。この手のナンセンス・アクションには、ピッタリはまるんだよなァ。

それにしても、ゴジラだけでなく、田宮二郎までが“シェー”をするとは、当時の赤塚不二夫のマンガ「おそ松くん」の人気の凄さがわかりますね。

 

 

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