テレビから映画へ


『赤いダイヤ』(1964年・東映/監督:小西通雄)

事業に失敗して死のうとした木塚慶太(藤田まこと)は、小豆相場師の森玄一郎(曾我廼家明蝶)に救われる。再出発資金として森玄から五千円を借りた慶太は、リンテンションカードで大儲けをし、クラブのママ・井戸美子(三田佳子)に借金を返し、美子と共同事業をすることになる。美子は慶太を利用することしか考えていなかったが、慶太は美子に想い焦がれていた。

二世ブローカーのジョージ高瀬(田中邦衛)が、美子を小豆取引に誘い、“売り”を煽ったことから、慶太は“買い”に回る。それは、“買い”で勝負している森玄への恩返しでもあった……

原作は梶原李之。本人役でカメオ出演していましたよ。

テレビでは1963年にTBS系列で放送され、主役の大辻伺郎の熱演と、野際陽子の美貌が評判になりました。テレビの人気を受けて映画化されたようで、私としては三田佳子より野際陽子の方へ魅力を感じます。

主題歌もテレビの方が良かったなァ。

 

“おトラさん”シリーズ

柳家金語楼のキャラクターが、主人公のおトラさんのイメージとピッタリ一致して大人気となったテレビドラマ(KR=現TBSで、1956年4月6日〜59年10月25日放送)の映画化です。原作は西川辰美の4コマ漫画ですが、金語楼が有崎勉のペンネームでドラマ化しました。

おトラさん(柳家金語楼)は、奥様の馬子(水之也晴美)が日野江家に嫁いだ時に一緒にやってきた女中で、身体の弱かった奥様に代わって何もかも一人で切り回し、今では日野江家の主のような存在です。子どものトリ江(川田孝子)やタツオ(日吉としやす)は実の親のように慕い、御主人の牛三(有島一郎)もおトラさんには頭があがりません。

お豆(小桜京子)やおヤエ(若水ヤエ子)たち近所の女中仲間や、焼き芋屋の長さん(柳沢真一)たち商店の御用聞き連中のリーダー格でもあります。カエルを見ると引き付けをおこす癖がありますが、いつも明るく元気で〜す。

アメリカの“ニューズウィーク”誌に和製メードドラマとして紹介され、話題になったこともあるんですよ。

映画の方は、東宝で1957年から58年にかけて小田基義監督で、全部で6本製作されていま〜す。

 

 

『おトラさん』(1957年・東宝/監督:小田基義)

おトラさんは、テレビ局に入社したトリ江のことが心配で、弁当を届ける口実でテレビ局を訪問し、大騒ぎ。しかし、“瓢箪から駒”で新番組が企画され、そこでもおトラさんは大活躍。それを見ていた小西得郎さんがおトラさんの縁談を持ってくる。周りの強い勧めもあって嫁ぐことを決意したおトラさんの留守中に、おトラさんの妹・こトラ(平凡太郎)なる女性が現れ……

トリ江のテレビ局勤務と、おトラさんの縁談というストーリーを4コマ漫画に近いショート・コントで繋いでいく構成になっています。回想シ−ンのおトラさんの初恋相手として天津敏が出演していましたね。

 

『おトラさんのホームラン』(1958年・東宝/監督:小田基義)

空き巣に入られて、しょげているおトラさんは、新聞配達の少年と知りあう。少年は病気の母親のために新聞配達をして働いていた。そのため、修学旅行に行くことができない少年のためにおトラさんが一肌脱ぐことになり……

物語構成は前作と同じで、シリーズ共通ですね。新聞少年の美談に懐かしさを感じました。

 

『花ざかりおトラさん』(1958年・東宝/監督:小田基義)

焼き芋屋の長さんの二階へ美人の小唄の師匠(坪内美永子)が引っ越してくる。彼女が牛三のお妾という噂が流れ……

昭和30年代前半までは、貸間が一般的だったんですね。物もなく、日本全体が貧しかったから、6畳一間でも生活できたんですね。プライバシー云々なんて言っていたら、生きていけなかった時代です。皆が助け合って生活するという、精神的豊かさを“おトラさん”は教えてくれま〜す。

 

『おトラさんのお化け騒動』(1958年・東宝/監督:小田基義)

郷里の潮来からおトラさんへ父親の33回忌の電報がくる。久しぶりに郷里に戻ったおトラさんは日本舞踊の先生に間違われ……

本作品からシネスコとなりました。住職になる左卜全の怪演と、脱線トリオ(由利徹・八波むと志・南利明)の三人が笑わせてくれます。

 

『おトラさんの公休日』(1958年・東宝/監督:小田基義)

働き過ぎを心配した牛三・馬子夫妻は、おトラさんに公休日を与える。おトラさんは、女中仲間と東京見物に行くが、途中で離ればなれとなり、自転車屋で働く孤児と知りあう。不景気で、自転車屋を辞めなきゃならないという少年のために、おトラさんが一肌脱ぐことになり……

はとバス観光シーンが出てくるのですが、昭和30年代前半の東京の風景に郷愁を覚えました。それと、前作に続いて東京見物にきた潮来の高校生役で脱線トリオが出演していて笑わせてくれます。これぞ、芸人!

 

『おトラさん大繁盛』(1958年・東宝/監督:小田基義)

トリ江が若い男(佐伯徹)と親しくしているのを心配したおトラさんは、コッソリ女中仲間と後をつける。その若い男はトリ江の友人・妙子(河内桃子)の恋人で、妙子の父親(小川虎之助)が結婚に反対しているので、相談にのっていたのだ。おトラさんは二人の結婚を認めさせようと、妙子の父親に会いに行くが……

シリーズ最終作。柳沢真一に代わって藤村有弘がホットドッグ屋で登場したのと、八波むと志に代わって渥美清が由利徹、南利明とトリオを形成しています。人気の出てきた八波むと志が単独で仕事することが多くなって、まだ売れていなかった渥美清がピンチヒッターとして出演した感じですね。

それから、天津敏が猪ノ原村の樵役で出演。第1作目とちがってセリフありました。ビッグネームになるまえの演技が見られて嬉しかったで〜す。

 

 

トップへ     目次へ    次ページ