暗黒街(1927年/監督:ジョゼフ・フォン・スターンバーグ)
ジョージ・バンクロフト |
一匹狼のギャングであるブル・ウィード(ジョージ・バンクロフト)は、銀行強盗して出てきたところを酔っ払いに目撃される。ブルは酔っ払いの処分をするために家へ連れて帰るが、何故か気があいロールス・ロイス(クライブ・ブルック)を手許へおく。ロイスは英国で身お持ち崩した元弁護士で、アル中を直してブルの相談役になる。 ブルの情婦フェザース(イブリン・ブレント)は、ロイスに惹かれ、ロイスもフェザースに愛情を感じるようになる。ギャング仲間のパーティで、かねてからフェザースに横恋慕していたマリガン(フレッド・コーラ)が彼女を連れ出し思いを遂げようとしたところを、ブルに殺される。ブルは逮捕され死刑を宣告されるが、フェザースをロイスにとられたと勘違いして脱獄する。家に戻ったブルは警官隊に包囲され、ロイスは救出にかけつけるが…… 後年、ジェームズ・キャグニーが演たようなギャング映画の先駆けとなる作品で、男の友情と義理人情を描いた秀作。 主演のジョージ・バンクロフトは、サイレント時代はこの作品のような荒っぽい男を演じて人気を博しましたが、パラマウントと出演料を巡ってトラブルとなり干されたみたいですね。トーキーになってからは、『駅馬車』の保安官役で傍役としての存在感をしめした程度です。粗暴だが憎めないキャラクターは、ウォーレス・ビアリーのような存在になれたかもしれないのに残念! |
パルプ・フィクション(1994年/監督:クェンティン・タランティーノ)
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パルプ・フィクションというのは、1930〜40年代に流行ったパルプ・マガジンに掲載された大衆小説のことで、安手な犯罪小説が大量に生み出されていました。文学には縁のない、まさにタランティーノの世界です。 ロサンゼルスのレストランで若いアベックがいきなり強盗を始めるオープニングから、過去になったり未来なったりして、ラストは最初のレストランで帰結するという構成の面白さに脱帽。 下品だけど観ている者をノリノリさせる会話、タランティーノのシナリオの巧さに脱帽。 ツイストを踊るジョン・トラポルタ、殺しの前に聖書の一節をのたまうサミュエル・L・ジャクソン、日本刀を振りまわす野生のバカ男ムードのブルース・ウィルス、麻薬の吸いすぎでヒックリかえるイカレ女のユマ・サーマン、死体処理のプロのハーヴェイ・カイテル、金時計を尻の穴に隠したことを真面目に伝えるクリストファー・ウォーケンと、個性派スターがまともに考えたら可笑しいような設定を真面目な顔で演技したことに脱帽。 タランティーノが自分の趣味で作ったような映画で、好き嫌い&評価が分かれる作品ですが、私はこんな映画が好きなんで〜す。 |
殺しのテクニック(1966年/監督:フランク・シャノン)
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クリント・ハリス(ロバート・ウエバー)は狙った相手を外したことのない凄腕の殺し屋だった。警察に護られた組織の密告者を狙撃し、これを最後に足を洗うつもりだったが、組織は最後の仕事を依頼してくる。敵が先手をうってクリントを襲撃し、巻ぞえを食った兄が殺される。兄の復讐のために最後の仕事として引受けるが、組織のボスはトニー・ロベロ(フランコ・ネロ)という男をクリントの助手につける。狙う相手のセッキは整形手術をしていて、誰もその顔がわからない。ニューヨークからパリへ、二人はセッキを追って…… がさつなイタリア映画にしては珍しく丁寧に作られており、人物描写もきめ細かいです。長年ハリウッドの地味な傍役だったロバート・ウエバーが渋い殺し屋を演じており、これが巧いんだなァ。派手さはありませんが、年季の入ったプロの殺し屋そのものといった感じです。冒頭の狙撃シーンは殺し屋映画の中でも最高ランクのものといって過言ではありませんよ。 それからフランコ・ネロが良いんだなァ。眼鏡をかけた哲学青年風な知的な中に残忍性も持った殺し屋で、強烈な印象を残しています。B級映画の優れモノで〜す。 |
ニュートン・ボーイズ(1998年/監督:リチャード・リンクレイター)
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実在した兄弟ギャング団の物語を、ニューシネマ風のタッチでさわやかに描いています。映画の内容もそうですが、最初のタイトルデザインと、ラストのクレジットロール(老人となったホンモノのニュートン兄弟のテレビ・インタビュー・シーン)が洒落ています。 1970年代、私が注目していた役者のひとりにルーク・アスキューがいます。セリフに頼らず、眼で演技ができる個性派スターでした。彼が出演しているというので期待したのですが、老けて太って饒舌になっていました。ガッカリ! それはそうと、主演のマシュー・マコナヘイは、どことなくポール・ニューマンに似ていたなあ。それも『明日に向かって撃て!』、『スティング』の頃のニューマンにね。 |
ギャング・オブ・ニューヨーク(2001年/監督:マーティン・スコセッシ)
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19世紀半ばのニューヨーク。アメリカ生まれの住人によるギャング組織“ネイティブズ”のボス、ビル・ザ・ブッチャー(ダニエル・デイ・ルイス)に、アイルランド移民たちのリーダーであった父親を殺されたアムステルダム(レオナルド・ディカプリオ)が、父の復讐のためにビルの組織に加わるが…… ニューヨークにこだわり続けるスコセッシが、ギャングの世界を通してニューヨークの裏面史を描いた作品。 ダニエル・デイ・ルイスの存在感もさることながら、私はこの手の歴史物が好きなので、最後までグイグイ引き付けられました。 移民者を真っ先に戦場へ送り出して、国家への忠誠を問うやり方は現在でも変わっていませんね。貧乏人同士を戦わせればよいと言いきるブルジュアたち。現大統領のブッシュは、金を積んで徴兵を逃れたという噂があるけど、この体質も変わっていないんじゃないかな。 アメリカでは過小評価されていますが、9・11テロで国家一丸となろうとしている時に、アメリカの恥部を暴いたような作品が公開されてもコケるのは当り前です。スコセッシの力量は衰えていないと思いますよ。 |