ジェット・リーのアクション


アクションと一口に言っても、種類は広範囲にわたります。その両極端にあるのが、プロフェッショナル・アクションとメカニック・アクションといえますね。

メカニック・アクションというのは、CGや特撮技術、未来兵器の面白さに重点がおかれます。一般的には“SFアクション”と云っていますが、奇抜な兵器によるアクションが魅力なので、私はメカニック・アクションと呼びたいんです。

一方、自分の肉体を武器に、格闘技を駆使して我々に見せてくれる“格闘アクション”は、演じる役者が一流の武闘家でなくてはなりません。つまり、プロフェッショナルによるアクションがウリなんですよ。それで、私はそれをプロフェッショナル・アクションと呼んでいます。ジェット・リーは、プロフェッショナル・アクションができる数少ないスターのひとりです。

 

冒険王(1996年/監督:チン・シュウタン)

伝説の聖典を収めた箱をめぐって、カンフー達人の考古学者が活躍する冒険アクション。

SFXを駆使した炎の剣でのアクションは『スターウォーズ』のパクリだし、プロットは完全に『インディ・ジョーンズ』でした。それでも面白い作品に仕上がっているのは、リー・リンチェイ(ジェット・リー)のプロフェッショナル・アクションの素晴らしさですね。華麗でスピード豊かなアクションは、彼の独壇場!

金城武の鈍くさいアクションが、逆に目について気の毒でした。

 

ブラック・マスク(1996年/監督:ダニエル・リー)

肉体改造手術の実験失敗により抹殺されかかった特殊部隊の生き残りのひとりが、謎のブラック・マスクとなって、香港マフィアを殲滅して悪の帝国を築かんとする昔の仲間である特殊部隊と戦う物語。

リー・リンチェイ(ジェット・リー)のスピード感ある華麗なカンフー・テクニックは、さすが“本物の武術家”と納得させられるんですが、ダーク・ヒーローとしての凄みがありません。

ブルース・リーの出世作『グリーン・ホーネット』のミスター・カトーと同じ黒装束にしたのは、ブルース・リーと比較されてマイナスだったと思いますね。ブルース・リーには殺気が溢れていたからなァ。

 

D&D 完全黙秘(1995年/監督:コリー・ユン)

香港の麻薬組織を壊滅させるために、中国の公安刑事(ジェット・リー)が、本国に病気の妻と息子を残し、組織に潜入するが、妻が病死し、息子が父を捜しに香港へやってくる……

ジェット・リーのアクションはやっぱり凄い!

子どもを振り回して武器にするなんて、少しやり過ぎのところもありますがね。だけど、この子どもが強いんだなァ。加えて、泣かせる演技をするんですよ。私は涙がポロポロ。

CGばかりのアクション映画より、私はこんな映画が好きなのだ。

 

キス・オブ・ザ・ドラゴン(2001年/監督:クリス・ナオン)

麻薬捜査のため、中国からパリへやってきた捜査官(ジェット・リー)が、麻薬密売組織の黒幕であるパリ警察の警部(チェッキー・カリョ)の罠にはまる。コール・ガール(ブリジット・フォンダ)が事件を目撃していたが……

ストーリー展開が粗っぽいので、観ていてシラケてしまいます。アクションさえ良ければ、それでよしとする風潮は嫌だなァ。

ジェット・リーは肉体で表現できる数少ないスターだけど、ナオン監督の演出がヘタなせいか、今イチ冴えません。ジェット・リーの動きはフル・ショットで見せてくれなきゃ……

悪役のチェッキー・カリョはグッド。これまでの作品では目立たなかったけど、この作品ではバツグンの存在感をしめしています。反面、ブリジット・フォンダは印象が薄くて駄目だなァ。何かアピールするものが欠けているんですよ。

 

ブラック・ダイヤモンド(2003年/監督:アンジェイ・バートコウィアク)

プロの泥棒・フェイト(DMX)は、依頼を受けて宝石商の金庫から“ブラック・ダイヤモンド”を盗むことに成功するが依頼主が殺され、娘が何者かに誘拐される。誘拐犯の狙いは“ブラック・ダイヤモンド”だったが、“ブラック・ダイヤモンド”は暗黒街のボスによって奪われてしまう。

そんなフェイトの前に現れたのが台湾公安局のスー(ジェット・リー)で、“ブラック・ダイヤモンド”は台湾で作られた合成プルトニウムだった。二人は協力して“ブラック・ダイヤモンド”の行方を追うが……

CGを使わないスタントによるアクションは実体感があっていいですねェ。バギーがビルの屋上を飛び越えていくシーンなんか最高ですよ。

だけど、ラストのジェット・リーとマーク・ダカスコスの格闘シーンはダメ!ダカスコスは『ジェヴォーダンの獣』で素晴らしい格闘アクションを見せて存在感をしめしただけに、リーとの格闘アクションは細かくカットで割るのでなく、長回しのフルショットで見せて欲しかったですね。格闘専門家のアクションに凄みが出てないよォ。

 

 

 

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