西洋チャンバラ


仮面の男

 『仮面の男』(1998年/ランダル・ウォレス監督)は、これまでにも何度か映画化されたアレクサンドル・デュマ原作の『鉄火面』ですが、内容はディカプリオ用に大幅に改変していました。私は原作を知っていたので、違和感を感じました。

 それに、ガブリエル・バーンのダルタルニャンをはじめ、ジェレミー・アイアンズ、ジョン・マルコビッチ、ジェラール・ド・バルデューの三銃士は、重厚な歴史劇に似合う個性派俳優ですが、チャンバラ向きじゃないです。カミさんは、ガブリエル・バーンを気にいったみたいですが。

 デュマの物語が持つ、血湧き肉踊る冒険活劇の要素を切り捨て、人間ドラマにしたことは果たして成功だったのかなァ。

 カミさんが子どもの頃読んだ、江戸川乱歩が翻訳した『鉄火面』には、ダルタルニャンが登場しなかったと言っていましたが、それはボアゴベイの『鉄火面』ですね。鉄火面は実在しており、他にもボルテールやユーゴーが、それぞれの『鉄火面』を書いています。

 

 

マスク・オブ・ゾロ

 『マスク・オブ・ゾロ』(1999年/マーティン・キャンベル監督)は、盗賊だった若者が、初代ゾロの指導で二代目ゾロとなって活躍する、続編みたいな作品。

 これまでのゾロはジョンストン・マッカレーの原作に基づいていましたが、これは全くのオリジナル作品。アントニオ・バンデラス演じるアレハンドロは、実在の無法者ホアキン・ムリエタの弟という設定でした。さすがS・スピルバーグが製作指揮しただけあって、とんでもない人物を設定したものです。

 ホアキン・ムリエタは、“カリフォルニアのロビン・フッド”と称されたメキシコの盗賊で、戦前は『ロビン・フッドの復讐』で、戦後は『荒野の群盗』で映画に登場しています。特に『ロビン・フッドの復讐』は評判高い作品だったそうだから、スピルバーグはよく知っていたんじゃないでしょうか。

 ホアキン・ムリエタは、1853年にキャプテン・ラブによって射殺され、見世物にするため彼の首はアルコール漬けにされたそうです。史実とフィクションをうまくミックスして物語を展開するスタイルは、スピルバーグの持ち味ですね。

 粗野な無法者から、紳士に変身していくバンデラスはいいんですが、初代ゾロはアンソニー・ホプキンスでなくアラン・ドロンでやってほしかったなァ。ホプキンスは、演技はうまいんですが、スマートさがないんですよ。ドロンには演技ではない、身体から自然とにじみ出る貴族の優雅さがありましたからね。

 

 

黒騎士

『黒騎士』(1952年米/リチャード・ソープ監督)は、MGMが誇る美男美女である二人のテーラー(ロバートとエリザベス)主演の騎士道色彩絵巻。ジョーン・フォンテインも出演していますが、キレイさはリズと並ぶと影が薄いですね。

原作はサー・ウォルター・スコットの『アイヴァンホー』で、見せ場は豊富です。12世紀の英国、他国に囚われた獅子心王リチャード救出のため、サクソン人のアイヴァンホーが王の釈放の身代金調達のため、ジョン親王の妨害にも屈せず活動する物語。

ロビンフッドに似た人物が登場したり、大槍による騎馬試合があったりと、娯楽映画に徹した作品でそれなりに楽しめましたよ。

 

 

花咲ける騎士道

18世紀のフランス。募兵官の娘・アドリアーヌ(ジーナ・ロロブリジーダ)の「軍人になれば、将来は王女の婿」というインチキ占いを信じたファンファン(ジェラール・フィリップ)は、レエス戦争の兵士募集に応じる。偶然王女の危難を救ったことからファンファンは自分の将来に自信を持ってしまい……

『花咲ける騎士道』(1952年/監督:クリスチャン・ジャック)は、フランスのエスプリが溢れたお洒落なチャンバラ映画です。

ジェラール・フィリップが颯爽としたチャンバラ・アクションを見せてくれるだけでなく、セリフの一つ一つにユーモアや皮肉がふんだんにちりばめてあって、フランス映画の魅力を満喫できます。

それにしても、ジーナ・ロロブリジーダは良いなァ。セックス・シンボルとしての魅力にあふれていますよ。1950年代を代表する女優のひとりといって間違いありませ〜ん

 

 

パイレーツ・オブ・カリビアン

18世紀、カリブ海沿岸の植民地。自分の船・ブラックパール号を奪われた海賊スパロウ(ジョニー・デップ)は、イギリス海軍の船を奪おうとして逆に捕らえられる。しかし、ブラックパール号に乗った海賊バルボッサ(ジェフリー・ラッシュ)が植民地を襲い、総督の娘エリザベス(キーラ・ナイトレイ)を誘拐する。彼女に思いを寄せる鍛冶屋のウィル(オーランド・ブルーム)は、スパロウを助け出し、二人でブラックパール号を追跡するが……

『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003年/監督:ゴア・バービンスキー)は、ディズニーランドのアトラクション“カリブの海賊”をもとにした海賊映画です。ハリウッドならではの大見世物になっていますが、ワインを飲むと咽喉から流れてしまうようなガキ向けギャグに見られるように、基本的にはお子様映画です。チャンバラもダグラス・フェアバンクスやエロール・フリンと比較すると、かなり見劣りしするなァ。

そうはいっても、演技的にはジョニー・デップは悪くないし、キーラ・ナイトレイも中々の美形で魅力的です。海賊映画は船をはじめとして大道具・小道具に金がかかるので、投資回収のために続編が撮影(パート2と3を同時撮影)されているようですが、私の好きなジャンルだけに期待したいで〜す。

 

 

 

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