テレビムーヴィ


『サンティー』(1972年/監督:ゲイリー・ネルソン)

愛息を無法者に殺されたサンティー(グレン・フォード)は、保安官を辞め非情な賞金稼ぎとなっていた。賞金のかかっているお尋ね者の一団を追いつめて皆殺しにするが、首領の息子で、母を亡くして、ならず者たちとたまたま合流していた若者だけは助ける。この若者に、殺された自分の息子の成長した面影を見たサンティーは、若者を牧場へ連れて帰る。若者と一緒に働く牧場での平和な日々は、サンティーの心を和ませ、復讐心は消えていった。息子を殺した無法者が現われたことを保安官が知らせにきても、サンティーは再び銃をとる気はなかった。しかし、若者が銃を持ってとびだし、サンティーも若者の後を追うが……

グレン・フォード最後の西部劇作品。西部男の風格が、そのたたずまいから感じられ、存在感があります。しかし、内容は1970年当初に流行したニューシネマの悪いところばかりを採りいれた感じで、陰鬱で重苦しい西部劇になっています。

それと思わせぶりな演出にもイライラします。親子の情愛に近い若者との友情を、もっと爽やかに描けば、楽しめる西部劇になったと思うんですけどねェ。

 

『シャドー・ライダー』(1982年/監督:アンドリュー・V・マクラグレン)

兄弟が敵味方に分かれて戦っていた南北戦争が終わり、故郷のテキサスに戻ってきたダル(サム・エリオット)とマック(トム・セレック)のトレイブン兄弟は、父親(ハリー・ケリー・ジュニア)から弟ジェシーと二人の妹、それにダルの恋人ケイト(キャサリン・ロス)が南軍の残党アシュベリー少佐(ジェフリー・ルイス)の一味に連れ去られたことを知らされる。隙をみて逃げ出したジェシーから、彼らが武器と交換に人身売買していることを聞き、取引現場へ急ぐ。ケイトは救出できたが、妹たちはメキシコへ行く船に乗せられた後だった。メキシコが不慣れな兄弟は、メキシコの地理に詳しいジャック叔父(ベン・ジョンスン)を刑務所から脱獄させ、武器商人の本拠地へと乗り込むが……

画面サイズがスタンダードなので調べたらテレビムーヴィでした。風景の拡がりが映画と比べると見劣りがしますが、内容は本格西部劇です。

アンドリュー・V・マクラグレンに往年の切れ味はなくなったものの、西部男の匂いのする役者を揃えているので安心して見ていられま〜す。

 

『レッド・ロック』(2001年/監督:ステファン・ギレンヒール)

ジョン・フリンダース(ジェームズ・カーン)が所長をしているレッド・ロック刑務所へ、彼の若い頃のアウトロー仲間だったマイク・サリバン(デビッド・キャラダイン)が入所してくる。終身刑のサリバンは、脱獄するために刑務所内で仲間を集めはじめ……

ジェームズ・カーンが情味ある初老の男を好演。死刑囚の頼みで遺品を妻子のもとに届け、その母娘に心惹かれて世話をするところは朴訥さが出ていて良かったですね。

脱獄するデビッド・キャラダインもアウトローの風格があって良し。脱獄をゲームだと言って刑務所へ戻ろうとする仲間の脱獄囚を情け容赦なく射殺したのは、彼が冷酷なのでなく、自由に生きぬくというアウトローの誇りが許さなかったのですね。

ベテランがガンバル西部劇で〜す。

 

『ブロークン・トレイル 遥かなる旅路』(2006年/監督:ウォルター・ヒル)

姉の遺産を分けるために甥のトム・ハート(トーマス・ヘイデン・チャーチ)を訪ねたプリント・リッター(ロバート・デュバル)は、遺産を元手に馬(ムスタング)を仕入れてオレゴンからワイオミングに運ぶ提案をする。ワイオミングの牧場主がイギリス軍に売る馬を求めていたからだ。生活必需品を買出しに行った町でトムは、酒場でバイオリンを弾いていたヘックを仲間に加える。500頭の馬を連ぶ旅がはじまり、途中で鉱山町の淫売屋で働かせる5人の中国娘を連れた人買いと一緒になる。人買いはプリントたちの金を盗んで逃げるが、トムが追いかけて捕まえ、人買いを吊るし首にする。安全な町まで中国娘を連れて行くことになるが、途中で一人が熱病で死ぬ。死の商人との対決、淫売屋の女主人との対立、そして凶悪な馬泥棒の襲撃……

前編・後編合せて3時間10分のミニ・シリーズで、ゴールデン・グローブ賞3部門にノミネートされたウエスタン・ロード・ムーヴィです。内容もさることながら、今までの西部劇には出てこなかったものが色々あって楽しめましたね。

中国娘の一人が死ぬ“ダニ熱”(日本の“つつが虫病”に似ている)とか、雑貨屋でトイレットペーパーを買うシーン(『ローハイド』では見たことがなかったです)とかね。

それにしても、ロバート・デュバルは渋い西部劇スターになりましたね。『勇気ある追跡』や『ミネソタ大強盗団』あたりでは西部劇に出ているだけの存在でしたが、『ロンサム・ダブ』以後、西部劇には欠かせぬ存在になってきましたよ。トーマス・ヘイデン・チャーチも武骨な西部男ぶりを見せてくれて、今後を期待したいで〜す。

 

『バンジョー・ハケット』(1976年/監督:アンドリュー・V・マクラグレン)

妹が死に養護施設に預けられた甥のジュバル(アイク・アイゼンマン)を連れ出した馬商人のハケット(ドン・メレディス)は、ジュバルにプレゼントした馬ディドが売られたと知り、ジュバルとディドを取り戻す旅に出る。ディドは貴種の種を宿しており、賞金稼ぎのサム(チャック・コナーズ)もディドを狙っていた……

行く先々で色々出来事に遭遇するウエスタン・ロード・ムーヴィです。ファミリー向けテレビ・ムーヴィなのでいきなり相手を射ち殺すような殺人シーンはありません。冷酷な賞金稼ぎ(チャック・コナーズ)ですら、どこか愛敬がありますからね。ペキンパ一家のスリム・ピケンズやL・Q・ジョーンズも好い人で、明るく健全な西部劇もいいもので〜す。

ところで、主人公の名がバンジョーというのは、楽器のバンジョーとは関係なく、ベンジャミン・ジェーコブを略したものでした。

 

 

 

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