ジョン・ウェインの西部劇


『暗黒の命令』(1940年/監督:ラオール・ウォルシュ)

南北戦争開始前のカンサス州ローレンスの町は、南・北どちらにつくかで揺れていた。テキサス男のボブ(ジョン・ウェイン)と歯医者のドク(ジョージ・ギャビー・ヘイズ)が、そんなローレンスの町にやってくる。ボブは町で会ったメアリー(クレア・トレバー)に一目惚れするが、権力志向の強い町の教師カントレル(ウォルター・ピジョン)もメアリーに恋していた。連邦保安官の募集があり、ボブとカントレルが立候補するが、カントレルは落選し、メアリーもジョンに奪われそうになったカントレルは、怒りくるって悪の道に入る。南北戦争が始まると、カントレルは私的ゲリラ部隊を組織し、略奪を始める。ボブはカントレルを追うが……

カントレルは実在の人物ですが、物語は100%フィクションです。ラストのローレンス町の襲撃も、ウェインの活躍でカントレルのゲリラ隊が負けてしまいます。現在なら客にバカにされるような内容なのですが、昔は娯楽映画として割り切っていたのでしょうね。

アクション演出に定評のあるラオール・ウォルシュは流石に手馴れたもので、馬車ごと川に飛び込むシーンなど迫力ある見せ場をいろいろ用意しています。ウェインが殴った相手を、歯医者のギャビー・ヘイズが商売繁盛といって治療する楽しいシーンもあるしね。シンギングクボーイになる前のロイ・ロジャースも出演しており、割り切って観れば楽しい作品で〜す。

 

『西部の顔役』(1942年/監督:ウィリアム・マクガン)

ボストンからカリフォルニアにやってきた薬剤師のトム(ジョン・ウェイン)は、サクラメントに行く船で酒場の歌姫レイシー(ビニー・バーンズ)をめぐって、サクラメントの顔役ブリット(アルバート・デッカー)とトラブルになり、川に放りこまれる。しかし、サクラメントにたどりついたトムは、レイシーを共同経営者にして、ブリットの酒場の隣で薬屋を開業する。ブリットによって違法な課税を取られている牧場主たちを組織したトムはブリットに対抗するが、ブリットが毒薬を薬に混ぜたために窮地に陥る。サクラメント川で金が発見され、町の住民は金の採掘に出かけるが、金鉱のキャンプで伝染病が発生し……

町の顔役アルバート・デッカーと正義の男ジョン・ウェインが対決する西部劇です。これに酒場の歌姫ビニー・バーンズが絡んでくるんですな。デッカーはビニーに惚れ、ビニーはウェインに好意を持っています。ウェインは令嬢ヘレン・パーリッシュと結婚したいと思っていたのですが、伝染病が発生した時に、ウェインは身勝手なヘレンに振られ、伝染病患者を介護するビニーに女の優しさを知ります。ビニーは典型的なグッドバッドガールですね。

ウェインはボストン出身の薬剤師という役で、健康に留意しているので、酒場で飲むのはミルクなんですよ。薬の効用に、コインを指で二つ折りにするデモンストレーションを見せるのですが、“空手バカ一代”の大山倍達はこの映画を観たのかな。変に凄まなくても強〜いウェインなのです。

映画の方は、悪役のデッカーがウェインと決闘することなく、女にのぼせている兄に愛想をつかした弟のディック・パーセルに殺されるという拍子抜けのクライマックスに、ご都合主義的展開で、何じゃ、こりゃ!

 

『硝煙の新天地』(1943年/監督:アルバート・S・ロージェル)

カンサスシティ行きの列車でケイシー(マーサ・スコット)は、石油採掘事業をしているジム(アルバート・デッカー)と牧童のダン(ジョン・ウェイン)と知りあう。最初はジムに惹かれたケイシーだったが、ジムの悪どい商売を知り、男らしいダンを愛するようになる。油田のあるインディアンの土地をだましとろうとするジムに対して、ダンは酋長と借地契約を結び、大統領から採掘の許可を得る。しかし、それには一定期限内に1万ガロンの石油をタルサの製油所に運ぶという条件があった。ジムが色々な妨害をしてくるが……

油田開発を扱った西部劇で、正しくは言うなら“油煙の新天地”でしょう。町を追い出された女(マーサ・スコット)と、列車を止めて乗り込んでくるカウボーイ(ジョン・ウェイン)の出会いは、『駅馬車』のイメージですね。射ちあいはなく、猛火などの障害を乗りこえて、目的地を目指す石油馬車隊の爆走がクライマックスになっています。この作品の唯一の見どころといえますかね。内容的には如何ってことのない作品ですが、ジョン・ウェインの魅力に溢れていま〜す。

 

 

『ダコタ高原』(1945年/監督:ジョゼフ・ケーン)

鉄道会社の社長の娘サンドラ(ベラ・ラルストン)とジョン(ジョン・ウェイン)は、駆落ちしてダコタに向かう。ダコタのファーゴの町まで鉄道が延長されるので土地を買うためだ。しかし、乗っている船で強盗に襲われ、所持金を奪われてしまう。奪ったのはファーゴの顔役ベンダー(ワード・ボンド)の手下たちだった。ベンダーも鉄道計画を知っており、開拓者たちの土地を狙っていた。ジョンはファーゴの町でベンダーと対決することになるが……

ワード・ボンドの仲間にマイク・マズルキがいるんですが、1956年5月に来日して力道山とも闘ったことのあるプロレスラーなんですよ。大男のウェインなので、マズルキと殴り合いをしても見劣りがしませんでした。

映画の方は散漫(シナリオが悪いのか)な演出で褒められたものではありません。名優ウォルター・ブレナンがコメディリリーフしているのですが、浮いていて持ち味が出ていませんね。ジョン・ウェインの魅力に頼っただけの作品で〜す。

 

 

 

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