ジョン・ウェインの西部劇


『ケンタッキー魂』(1949年/監督:ジョージ・ワグナー)

ナポレオン軍の残党がアラバマに入植して作った町にケンタッキー軍の一団が通りかかるんですな。一団の中にジョン・ウェインがいて、フランスの令嬢ヴェラ・ラルストンと「一目あったその日から、愛の花咲くこともある」てな調子で愛し合うようになります。彼女には資産家の婚約者がいるんですが、そいつは河の輸送を牛耳っている悪党と手を組んで、フランス人たちの土地を奪おうとしているんですよ。

モタモタした展開で、これまた内容的には褒められたものでありません。ウェインの相棒役で、ヤセとデブのお笑いコンビとして人気のあった“ローレル&ハーディ”のデブの方、オリバー・ハーディがコメディリリーフとして出演しているのが面白いくらいね。

ケンタッキー軍って民兵の組織なんでしょうが、どこに行って、誰と戦おうとしているのかよくわからないし、フランス人を追い出そうとするアメリカ人の集団もよくわかりません。悪党たちの手下にしては多すぎるしね。背景がよくわからない西部劇で〜す。

 

『100万ドルの血斗』(1971年/監督:ジョージ・シャーマン)

フェーン(リチャード・ブーン)を首領とする9人の無法者がマッキャンドルズ牧場を襲撃し、マーサ(モーリン・オハラ)の孫(ジョン・イーサン・ウェイン)を誘拐する。身代金は100万ドル。マーサは家を出て自由に暮している夫のジェイコブ(ジョン・ウェイン)を呼び戻す。ジェイコブはインディアンのサム(ブルース・キャボット)を相棒に、息子のジェームズ(パトリック・ウェイン)とマイケル(クリス・ミッチャム)を連れて、フェーン一味の追跡を開始する。

自動車やオートバイ、銃器もスコープ付ライフルや自動拳銃が出てくる20世紀ウエスタンです。自動車で追跡した保安官が、無法者たちにタイヤをブチ抜かれて文明の利器が役に立たないというのは皮肉ですね。ウェインは古いタイプの西部男で、キャボットを相棒に馬で追跡です。身代金が100万ドルで、それを狙って他の無法者が襲ってきたりと、アクションシーンは多いのですが、どれも緊迫感がありません。ウェインが強すぎるからかな。

ウェインの長男マイケルが製作にあたり、息子と孫の役で、次男のパットと末子のイーサンが出演しているだけでなく、ウェイン映画ではお馴染みの顔ぶれが揃っています。

妻役のモーリン・オハラは、ウェインの妻といったら、この人しか考えられないくらいの存在だし、リチャード・ブーンは、ウェインが監督した『アラモ』ではヒューストン役で、遺作となった『ラスト・シューティスト』では今回と同様に敵役でしたね。ブルース・キャボットも『ハタリ』他7本の作品でウェインと共演しているし、息子役で出演しているクリス・ミッチャムも『リオ・ロボ』に続いて登場です。他にもジョン・フォード作品で共演した、ハンク・ウォーデン、ハリー・ケリー・ジュニア、ジョン・エイガーも出演していま〜す。

 

『大列車強盗』(1973年/監督:バート・ケネヂィ)

息子のために夫マット・ロウが盗んだ金を鉄道会社に返したいというロウ未亡人(アン・マーグレット)の頼みでレーン(ジョン・ウェイン)は、旧知のジェシー(ベン・ジョンスン)とグレディ(ロッド・テーラー)を呼び寄せる。それに、ベン(ボビー・ビントン)、カルフーン(クリストファー・ジョージ)、サム(ジェリー・ガトリン)の三人が新入りとして加わって、メキシコの荒野に隠されている金塊を探す旅に出る。報酬は鉄道会社から出る懸賞金の5万ドル。

ロウの昔の仲間が隠された金塊を狙っていたが、彼らを片付けロウ未亡人に金を無事に渡す。しかし、鉄道に雇われた探偵(リカルド・モンタルバン)がレーンに真相を明かすと……

バート・ケネディらしい、ユーモアを散りばめた本格西部劇です。ロングショットを多用した映像が、西部劇らしい空間的拡がりを持っていて素晴らしいです。西部劇はロングの魅力ですよ。

この作品もマイケル・ウェインが製作しており、ウェイン映画の顔なじみが出ていますね。ベン・ジョンスンでしょ、クリストファー・ジョージでしょ。ボビー・ビントンは、「ミスター・ロンリー」のヒット曲で知られる歌手ですが、『100万ドルの血斗』に続いての出演です。『100万ドルの血斗』では、冒頭で無法者にアッサリ撃たれて負傷するウェインの息子役でしたが、今回はちゃんとしたセリフがありました。

それにしても、アン・マーグレットに騙されるウェインは、愉快、愉快。

 

『ビッグ・ケーヒル』(1973年/監督:アンドリュー・V・マクラグレン)

連邦保安官のケーヒル(ジョン・ウェイン)が悪党を捕まえて町に帰ってくると、銀行が襲撃されて保安官が殺されていた。犯人は捕まっておらず、ケーヒルは酒場でケンカして留置所に放りこまれていた息子のダニー(ゲーリー・グライムズ)を助手にして、コマンチのライトフット(ネビル・ブランド)を伴って追跡を開始する。あやしい4人組を捕まえるものの、ダニーの言動から真犯人はダニーと一緒に留置されていた無法者のフレーザー(ジョージ・ケネディ)でないかとケーヒルは推理する。ダニーはフレーザーと火事騒ぎのドサクサに留置所から抜け出し、銀行襲撃に加わっていたのだ。金はダニーの弟ビリーが隠していた。フレーザーはダニーとビリーを脅すが……

これまた、マイケル・ウェインが製作したウェイン西部劇です。ウェインは凄腕の連邦保安官ですが、家庭を顧みなかったので、息子たちに反抗されるんですな。それも無法者一味に加わって銀行襲撃。

マクラグレンの演出は、今イチ切れ味が良くないのですが、息子たちに試練をあたえて、ちゃんとバックアップするウェインの教育パパぶりに満足、満足です。

音楽はエルマー・バーンスタインで、ウェインが劇中で鼻歌を口ずさむのが珍しいです。シンギングカウボーイだった思い出が嫌で歌うことはなかったのですが、齢をとって大らかになったのですかね。

出演者では、ウェインに皮肉を言いながらも、よき理解者であるネビル・ブランドが儲け役ですね。ケネディに殺される保安官役のウォルター・バーンズやケネディの手下のダン・バディスはマカロニからの出戻り傍役。ウェイン映画では、お馴染みのハンク・ウォーデン、ハリー・ケリー・ジュニアも出演していま〜す。

 

 

 

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