ジョン・ウェインのB級西部劇


ジョン・ウェインは初主演作の大作西部劇『ビッグ・トレイル』(1930年/監督:ラオール・ウォルシュ)がコケた後、『駅馬車』(1939年/ジョン・フォード)で復活するまでの間、出演した作品の殆どが安手のB級西部劇でした。30本以上のB級西部劇に主演していますが、日本で劇場公開されたのは、戦後になって輸入された『ユタから来た男』と『荒野の激闘・モンタナの掟』の2本だけです。

テレビ創生期の1957年に、『ジョン・ウェイン西部劇』の邦題で、モノグラム時代の西部劇が13本放映されたことがありましたが、たいして話題になりませんでした。

内容的にトホホ作品ばかりで、B級映画の資料として観る以外には価値はなさそうです。

 

『ランディー一人旅』(1934年/監督:H・フレイザー)

エド・ロジャースから調査を依頼されて彼の店にやってきたランディ(ジョン・ウェイン)だったが、ロジャースは殺されており、ちょうど駆けつけてきた保安官に犯人に間違われ留置される。保安官に知らせたのは酒場を経営する唖のマット(ジョージ・ヘイズ)で、ロジャースの姪のサリー(アルベルタ・ボーン)に店を売るように要望する。サリーは犯人を目撃しており、真犯人を捕まえるためにランディーを助け出すが……

善良そうな唖の男の正体が凶悪犯マービン・ブラックという趣向や、悪漢たちの隠れ家が滝の後ろというのは、いかにもB級西部劇で面白いです。だけど、ブッラクの手配書の裏に書かれた文字が決めてとなって、最後で正体を暴くものと思いきや、早々に正体を露わし、何じゃこりゃ、でしたね。ところで、マービン・ブラックの手下役でヤキマ・カヌートが出演していました。

 

『遥かなる旅』(1934年/監督:ロバート・N・ブラッドベリ)

死んだ父の友人からジョン・ホールの娘マリーを捜してくれるように頼まれたロッド・ドルー(ジョン・ウェイン)は、列車の中で旧友のワビ(ノア・ビアリー・ジュニア)と遇うが、いかさま賭博の拳銃騒ぎに巻き込まれてワビと列車から逃げ出す。追手に追われてやってきた山小屋で偶然ジョン・ホールの白骨死体と金鉱の地図を発見する。ワビの知りあいの娘フェリス(ベルーナ・ヒリー)が働く交易所に地図を預けるが悪党ラロク一味に地図を奪われ……

ジョン・ウェインと愛馬デューク

馬ごと河にドブーンや、騎馬警官隊の悪党一味追撃のスタントシーンは使い回しですね。これまで、同じシーンを何度か見たことがあります。コンパートメント形式の列車が出てきたりして、時代考証もいいかげん。とにかく、製作費からギャラまで全部こみで1万1千ドルというのが理解できる内容で〜す。

 

『スター・パッカー』(1934年/監督:R・N・ブラッドベリ)

保安官殺しの捜査にやってきたトラビス(ジョン・ウェイン)は駅馬車強盗に遭遇し、父親の牧場を継いだ乗客のアニタを救出する。その地方はシャドウという強盗団が荒らしまわっており、トラビスの目の前で保安官が殺されトラビスが保安官になる。アニタの叔父マトロック(ジョージ・ヘイズ)は、ここに住むのは危ないからアニタに牧場を売れと要求するが……

主人公の相棒のインディアン役でヤキマ・カヌートが出演していました。J・ウェインが馬車に飛び移るシーンのスタントはカヌートだと思うのですが、最初失敗してやりなおしたのにカットせずにそのまま使うところは低予算西部劇。これまた時代考証がいいかげんで、西部劇に電話が出てきたのにはビックリで〜す。

 

『テキサスの恐怖』(1935年/監督:R・N・ブラッドベリ)

保安官のジョン(ジョン・ウェイン)は、駅馬車事務所を襲った強盗団を小屋に追いつめるが銃撃戦の結果、彼らに逃げられてしまう。小屋にはジョンの旧友ダンの射殺死体があった。自分の射った流れ弾に当ったと思い込んだジョンは保安官を辞め、金採掘者として山にこもる。ダンの娘・ベス(ルシル・ブラウニー)が東部の大学を卒業し、ダンが残した牧場に帰ってくる。ジョンは牧場再建のために、牧童頭としてベスに協力するが……

馬でなく自動車で牧場に帰ってくるヒロインは、西部劇の娘らしさがなく違和感を覚えました。あれは、1930年代のモガのスタイルですよ。

ヒロインは×でも、主人公に味方して悪党たちをやっつけるインディアンたち(本物のインデイアンが出演)は好感が持てますねェ。インディアンは友だちなのだァ。

 

『無法辺境地帯』(1935年/監督:R・N・ブラッドベリ)

牛泥棒のザンティー一味に牧場を襲われて父親を殺されたジョン(ジョン・ウェイン)は、仇を追う旅の途中でザンティー一味に追われているダスティ老人(ジョージ・ヘイズ)と孫娘のルビー(シーラ・テリー)を助け、町へ逃がす。ザンティー一味は町を襲撃するが、ジョンの活躍で彼らを撃退し、首領のザンティーを捕える。しかし、保安官はジョンをザンティー一味として疑っており……

上映時間50分の作品ですが、同じパターンの繰り返しで飽きてきます。それに、保安官がマヌケすぎてシラケますし、砂漠の泉の毒水を飲んで悪党が最期を遂げるのも盛り上がりに欠けますね。真冬並みの寒さを感じましたよォ。

 

『大山脈の西』(1934年/監督:R・N・ブラッドベリ)

ダスティ老人(ジョージ・ヘイズ)と旅をしているテッド(ジョン・ウェイン)は、子供の頃父を殺され、幼い弟と生き別れになっていた。彼の目的は、父の仇と弟を捜すこと。父の牧場がジェント・リーの所有になっていることを知ったテッドは、ダスティ老人とその牧場に向かう。途中でジェント・リーの手下の流れ弾に当って負傷した娘を救う。ジェント・リーは、娘と娘の牧場を狙っており……

お寒い作品の中にあって、これは少しマシな内容といえます。悪党もそれなりに頭を使っていますし、ムダなシーンも少ないですからね。だけど、ジョン・ウェインのアクションはワン・パターンで〜す。

 

 

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