ランドルフ・スコットの西部劇


『十人のならず者』(1955年/監督:ブルース・ハンバーストン)

アリゾナのタクスン・シティ郊外で牧場を営むジョン・スチュアート(ランドルフ・スコット)は、兄と甥のハウィー(スキップ・ホメイヤー)を自分の牧場へ呼び寄せる。ハウィーはジョンの牧場で働きはじめ、兄はジョンの恋人コリンヌ(ジョスリン・ブランド)の家を借りて弁護士事務所を開く。しかし、ハウィーが町のボス・キャムベル(リチャード・ブーン)が惚れていたマリア(ドナ・マーテル)と愛しあうようになったことから、キャムベルはジョンを目の敵にする。ジョンを倒すためにキャムベルは殺し屋の一団を雇うが……

ポール・ソーテルの音楽はどこかマカロニ的で、ダイナマイトで敵を殲滅するといった内容もどこかマカロニ的です。だけど、大きな違いは風景ですね。随所に見られるサグロワ・サボテンを背景に馬が疾駆するシーンは、やっぱり本場西部劇の醍醐味ですよ。

この作品で一番存在感があるのはリチャード・ブーン。リチャード・ブーンの悪党ぶりは、完全にランドルフ・スコットを喰っていましたね。

題名は10人のならず者ですが、ならず者は10人以上います。その中の一人に、リー・ヴァン・クリーフもいるんだよォ。

 

『馬上の男』(1951年/監督:アンドレ・ド・トス)

大牧場主のアイシャム(アレクサンダー・ノックス)は、小牧場主のオーエン(ランドルフ・スコット)の恋人だったローリー(ジョーン・レスリー)と結婚するが、彼女がオーエンを忘れかねていることを知り、オーエンの牧場をつぶしにかかる。アイシャムの配下・ダッチャー(リチャード・ロバーツ)に襲われたオーエンは隣の牧場のナン(エレン・ドリュー)に助けられ……

土地を独占しようとする大牧場主に対して常識ある小牧場主が対抗するという、よくあるパターンの西部劇です。これに女性が絡むのですが、ジョーン・レスリーでは二人の男を惹きつけるほど魅力がないので作品的に弱いですね。

それと、エレン・ドリューに惚れているジョン・ラッセルの扱いも中途半端で、存在感が薄いのも気に入りません。グウィン・ウィリアムスも持ち味が出ていないし、全体的に消化不良の感じで〜す。

 

『サンタフェ』(1951年/監督:アービング・ピシェル)

南北戦争が終わり、ブリット・キャンフィールド(ランドルフ・スコット)は、弟3人と故郷を離れ、新天地を求めて西部にやって来る。旅の途中で、いざこざから北部の騎兵隊員を殺し、ブリットたちはお尋ね者になる。ブリットはサンタフェ鉄道の建設現場で働き始めるが、弟たちは移動酒場で働き始める。移動酒場の経営者は強盗団のボスで、弟たちはサンタフェ鉄道の給料を狙い……

鉄道建設に情熱を傾ける兄と、金儲けのために悪事に加担していく弟たちとの葛藤を描いた作品です。結局、弟たちは全員死に、主人公だけが生き残るというのは、後味のいいものではありませんね。

インディアンとの折衝、ライバル鉄道会社との競争も盛り込んでいますが、全体的に厚みがなく、アッサリしたものになっています。同じような格闘シーンばかり、アクションも今イチ。演出力の不足ですなァ。

『捨身の一撃』では悪役だったワーナー・アンダーソンは、今度は善役でしたが、またしても惚れた女性(ジャニス・カーター)をスコットにさらわれます。

 

『無法街の決斗』(1951年/監督:エドウィン・L・マリン)

ブリット(ランドルフ・スコット)は新聞社の支店を出すために相棒のベンとテキサスに向かう幌馬車隊と同行していた。そこへ牛の群れを率いた荒くれカウボーイのクレベンジャー(レイ・ティール)が通りかかる。クレベンジャーにとってブリットの新聞は気に障る存在だった。配下の一人がブリットに喧嘩を売り、拳銃が暴発し牛が暴走する。その暴走に巻き込まれて幌馬車隊の少年が死んだことから、ブリットは彼の故郷でもあり、クレベンジャーが根城にするフォートワースの町で新聞を発行する。

フォートワースは彼がいた頃に比べて、ひどく寂れていた。クレベンジャー一味の暴虐が、町から人々を追い出していたのだ。ブリットの親友ブレア(デビッド・ブライアン)は町一番の実力者になっており、幼馴染のフローラ(フェリス・サクスター)と婚約していた。ブレアはブリットに町のためにクレベンジャー一味を倒して鉄道を敷く計画を語るが、相棒のベンはそれが彼の個人的野心であることを見抜いていた。何故なら、クレベンジャー一味を恐れて逃げ出す人々から、ブレアはタダ同然の値段で土地を買い占めていたからだ……

単純な悪対正義という構図でなく、野心家の親友との対決も絡んだ三つ巴の様相が、この作品を面白くしています。

決闘シーンも色々工夫しており、嬉しくなりますね。相棒のベンが殺され、拳銃を握ったブリットがクレベンジャーの手下をやっつけるシーン、クレベンジャー一味に囲まれたブリットとブレアがトリック・ガンプレイで窮地を脱するシーン、銃声が2発したのに射った人間の拳銃からは一発しか射たれておらず敵がもう一人いることに気づくシーンなどです。

当り外れの多いスコット西部劇の中で、これは大当りで〜す。

 

『グレートロックの決闘』(1952年/監督:エドウィン・L・マリン)

南北戦争が終わり、新天地を求めてアリゾナにやってきた元南軍士官のジャクソン・レダン(ランドルフ・スコット)はラパスの町でミゲルと知りあいミゲルの商売を手伝う。町のレストランで酒場の歌手リヴァ(アデール・ジャーゲンス)を丁寧に扱ったことからレダンは、その場にいたジョーンズ(アーサー・ハニカット)たちにシュガーフットと呼ばれるようになる。レダンは仕入資金を無法者のスティント(レイモンド・マッセイ)に奪われるが、プレスコの町で悪徳商人のアーサー(ヒュー・サンダース)を出し抜いて競売品を安く仕入れることに成功する。ラパスの町に帰ったレダンは、奪われた金をスティントから取り返すが……

色々な挿話を折り込んでランドルフ・スコットとレイモンド・マッセイの正義と悪の対決を描いた作品。全体として盛り上がりに欠けるのですが、レイモンド・マッセイの悪の魅力(臭い演技なのですが)とアーサー・ハニカットのとぼけた味わいで、何とか観賞に耐えます。それと、アデール・ジャーゲンスの肉感的魅力もね。

原作はクラーレンス・B・ケランドで、主人公のシュガーフットのキャラクターはテレビ西部劇『アリゾナ・トム』(原題:シュガーフット)でも使われています。そういえば、この映画のテーマ曲をテレビ版でも使っていましたね。

 

 

 

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