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『ガンマンの伝説』(早川書房) ロバート・B・パーカー:著(菊地光:訳) 2001年12月15日 初版発行 西部小説なので古本市場に出まわるのが待てず即ゲット。 読み終えて、「相変わらずワイアット・アープか」というのが正直な感想です。解釈の仕方が違っているので、それなりに楽しめましたけどね。 パーカーの小説を私は初めて読んだのですが、会話部分が何故か不自然な感じがしました。訳者の文体によるものらしいですが、馴染めそうにありません。 この訳者は、西部劇の銃については詳しくないようで、読んでいて意味不明なところが出てきます。ストーリーの展開には関係ないものの、西部劇ファンにとっては、些細なことでも気になるものです。 |
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『アパルーサの決闘』(早川書房) ロバート・B・パーカー:著(山本博:訳) 2007年6月15日 初版発行 アパルーサの町は大牧場主の一味が好き勝手なことをする無法の町だった。牧場主を逮捕に行った保安官は殺され、町の役員は名うてのガンマンを保安官として雇い、治安を任せる。保安官と相棒の助手は巧く牧場主を捕えるが、刑務所への移送中に牧場主が雇ったガンマンによって逃げられてしまう。二人は牧場主を追って…… 途中までは、息つく暇もないほど、サスペンスとスリルに満ち溢れているのですが、予想したクライマックッスがクライマックスになっておらず、ラストは腰くだけです。ラストまでの最後の40ペ−ジが、わけのわからない人間ドラマとなり、対決の盛り上がりに欠けるんですね。西部劇の定石なら、保安官+助手VS牧場主+ガンマン3兄弟の決闘でENDだと思いますよ。 |
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『レゾリューションの対決』(早川書房) ロバート・B・パーカー:著(山本博:訳) 2008年10月25日初版発行 コールとヒッチのガンマン・コンビが活躍する西部小説です。『アパルーサの決闘』の続編ね。レゾリューションの町にやってきたヒッチは鉱山のボスと対立する酒場のボスに雇われるんですな。町の支配を巡って二組は対立しており、互いに人手を集めています。コールも町にやってきてヒッチと合流し、酒場のボスの勝利となります。しかし、入植者に味方するコールとヒッチが邪魔になった酒場のボスは退役将校が率いる20人の無法者を雇います。鉱山のボスに雇われていた二人のプロガンマンがコールとヒッチの味方として加わり、4対20の対決となり…… 西部の風景や習慣といった叙情性を省いたアクション西部劇です。伝統的西部劇よりもマカロニウエスタンに近いノリですね。 前作『アパルーサの決闘』はエド・ハリス監督・主演(エド・ハリスがコールでヴィゴ・モーテンセンがヒッチ)で映画化されていますが、日本公開の予定はないようです。アメリカでは話題となったラッセル・クロウが主演した『決断の3時10分』も日本では未公開だし、配給会社にとって西部劇は鬼門なのかなァ。 |
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『ブリムストーンの激突』(早川書房) ロバート・B・パーカー:著(山本博:訳) 2009年10月15日初版発行 『アパルーサの決闘』→『レゾリューションの対決』から続く、凄腕ガンマンのコールとヒッチが活躍する西部小説です。娼婦となっていた昔の恋人アリーを捜し出したコールは、鉄道が開通して発展途上にあるテキサスのブリムストーンの町にヒッチと一緒にやってくるんですな。その町でコールとヒッチは郡保安官助手(デュピティ・シェリフ)となって働くことになります。町は酒場のオーナー一味と狂信的キリスト教団が力を誇示しており、町周辺には謎のインディアン戦士が出没しています。 前2作と比べると、登場人物の心理描写よりアクションに比重が大きくなっていて、銃撃戦の多い西部劇を観ている感じでした。スイスイと一気に読んでしまいましたよ。映画化してくれないかなァ。 映画化といえば、『アパルーサの決闘』は、エド・ハリス(監督兼務)とヴィゴ・モーテンセンで映画化されているのですが、DVD発売されたものの劇場公開はされませんでした。本国公開から2年も経って公開された『3時10分、決断の時』が西部劇にしては珍しくロングラン上映のヒット作となり、西部劇の面白さを知ったファンが増えたことを考えると、この映画が1年早く公開されたら、『アパルーサの決闘』も劇場公開されたんじゃないかと思え、残念で〜す。 |
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『ブラッド・メリディアン』(早川書房) コーマック・マッカーシー:著(黒原敏行:訳) 2009年12月25日初版発行 14歳で家出したテネシー生まれの少年がルイジアナ→テキサスと放浪し、顔見知りのホールデン判事(判事と呼ばれているだけで真の判事か疑問)に誘われて、グラントンが率いる悪党集団(実在していて、小説に描かれている登場人物もモデルがいるとのこと)に加わり、インディアン討伐(頭の皮を剥いで金を稼ぐ)の旅をする物語です。 時代は1949年の米墨戦争時代で、メキシコ領に侵入してメキシコ人を奴隷にしたりします。生き残るためには、先に銃を抜いて相手を倒すという行動哲学を肯定するような問題小説ともいえますね。 この本が書かれた1985年は、ベトナム戦争の後遺症的影響があった時代で、西部劇の世界でも正義のガンマンや騎兵隊が活躍するロマンあふれるものは影をひそめ、開拓時代の社会的矛盾やインディアン虐殺を直視する西部劇(これを修正主義西部劇というのを訳者あとがきで初めて知った)が中心となっていました。 映画化が決定しているようですが、『3時10分、決断の時』や『アパルーサの決闘』のような、西部劇としての面白さは期待できないでしょうね。ちなみに、マッカーシーの原作を映画化した作品には現代西部劇の『すべての美しい馬』と『ノーカントリー』があります。 |