西部劇マンガ


『少年漫画劇場・第8巻』(筑摩書房)

1970年頃に全集ブームがありまして、これは筑摩書房が出したマンガ全集の第8巻。西部劇マンガの『サボテン君』(手塚治虫)、『弾丸トミー』(杉浦茂)、『死神小僧キム』(白土三平)が掲載されています。

戦後アメリカ文化が日本に押し寄せた時、1950年から53年にかけて西部劇がブームになったことがありました。マンガの世界でも西部劇マンガが人気となり、『サボテン君』や『弾丸トミー』が発表されました。ミルクを飲むと、とたんに強くなるサボテン君や、西部の悪者をやっつける弾丸トミーは、画像からして、まさに子供向けマンガです。

『死神小僧キム』(白土三平)は、著者の『シートン動物記』に忍者モノを合体した異色西部劇マンガです。テレビ西部劇の人気から空前の西部劇ブームが起こり、ブームが去ろうとしていた1962年の10月から連載が始まったためか、63年の4月には未完のまま終了しています。

 

『平原児サブ』(1961年「少年画報」3月号付録)

 武内つなよし:著
 

「少年画報」の武内つなよしの人気マンガといえば『赤胴鈴之助』ですが、これは『赤胴鈴之助』の後に連載されたもの。テレビで西部劇が全盛の頃ですね。

『少年画報大全』によると、無法者ヒゲー(髭を生やしているのでヒゲーね)に父を殺され、母を連れ去られたサブが父の仇を討つため拳銃の腕を磨き、一人前のガンマンとして成長していく物語だってさァ。

 

『ガン・キング』(1960年「少年」9月号付録)

 堀江卓:著

 

『平原児サブ』がハリウッド西部劇としたら、これはマカロニ。堀江卓のマンガはもともとブッ飛んでいますからね。

映画の世界では西部劇は昭和20年代後半から30年代にかけて人気をはくし、35年頃はテレビ西部劇が全盛となり、40年代にはマカロニ・ウエスタンが人気を呼びました。

そのたびごとに、何人もの作家が西部劇マンガを発表しています。それがジャンルとして定着しなかったのは、結局ブームの産物にすぎなかったためでしょうね。

 

『荒野の天使ども(1巻)』(白泉社)

 ひかわきょうこ:著

 1983年12月21日 第1刷発行

 1988年 1月15日 第17刷発行

 

このマンガをモチーフにしたLPレコードも発売されており、私がゲットしたのが第17刷ですから、このマンガ、結構人気があったみたいですね。2巻〜3巻も簡単に見つかりそうだけど、読む気がしない。感覚があわないんですよ。齢のせいかなあ。

少女マンガ家が描くイイ男の顔って、“ベルバラ”のような、みんな似たような顔をしているんですよねェ。

 

『ベル☆スタア強盗団(全3巻)』(角川書店)

伊藤明弘:著

ベル・スターの名前だけを借りたマンガだと思っていたのですが、意外と史実に即した内容になっていました。銃器のイラストも正確だし、悪くありません。ただ、カット割と物語構成が今イチで、全体がどうなっているのか、よくわからないところがあるのが困りモノです。

ところで、ベル・スターは西部では有名な女賊なんですが、彼女を主人公にした西部劇って殆どないんですよ。私が知っているのは、ジーン・ティアニー主演の『Belle Starr』と、エルザ・マルティネリ主演のマカロニ・ウエスタン『The Belle Starr Story』だけです。どちらも日本未公開で、私は未見。

 

『手塚治虫西部劇傑作集』(ちくま文庫:2004年10月10日第1刷発行)

 

「荒野の弾痕」他12の西部劇マンガが収録されています。

副題に“二階堂黎人が選ぶ!”とあるのですが、巻末の解説で選定理由について触れていなかったのは残念です。とはいっても、収録作品はそれぞれ特徴があり、読めば何となく選定された理由がわかるんですけどね。

「凸凹牧場」は、『ワンワン保安官』や『早射ちマック』のような動物を擬人化したものだし、「光線銃ジャック」はSF西部劇。「グランドメサの決闘」はマカロニ・ウエスタン的情念の世界を描いていますし、「無法の街」は嵐タコの助が活躍するサムライ・ウエスタンですからね。手塚治虫の幅の広さに驚かされます。

 

 

 

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