西部ロマンス小説


 リンダ・ハワードの西部ロマンス小説三部作(ヴィレッジブックス)を読みました。

 “男と女の恋物語”なんてバカにしていたのですが、意外や骨太な西部小説でハマりましたねェ。

 

『天使のせせらぎ』(林啓恵:訳―2002年4月20日 初版発行)

 父親が死んで大牧場を相続するために戻ってきた男と、豊かな水に恵まれた土地で農園を営む独立心の強い女の恋物語。

 映画のイメージなら、1970年代のジェームズ・カーンとジェーン・フォンダかな。

 この小説に、西部開拓当時の売春婦の避妊方法が出てくるのですが、それが酢あるいはレモン汁を染み込ませたスポンジを使うというもの。江戸時代の遊女が、和紙を丸めて膣内に詰め、事後、薄めた酢で洗浄したやり方と同じなんですね。

 

『レディ・ヴィクトリア』(加藤洋子:訳−2002年7月20日 初版発行)

 ニューメキシコの大牧場を舞台にした愛と復讐のロマン。

 両親を使用人に殺され、牧場を乗っ取られた男が、20年後に復讐のため戻ってくる。名前を変え、ガンマンとして仇の大牧場主に雇われ、牧場を取返すべく機会を待つ。政略結婚で牧場主の妻となったヴィクトリアが彼に惹かれはじめ……

 暴力シーンがかなり過激な描写で、マカロニ・タッチ。映画のイメージなら、レナード・マンとイブリン・スチュアートかな。

 リンダ・ハワードって、ほんとに女性作家なのだろうか。

 

『ふたりだけの荒野』(林啓恵:訳−2002年11月20日 初版発行) 

 無実の殺人罪で追われ、賞金稼ぎとの銃撃で傷を負った男が、治療のために女医をかどわかし、逃亡生活を続けるうちに二人の間に愛情がめばえる……
 1871年のアリゾナが舞台で、主人公は南軍のモスビー遊撃隊の出身。
 南部連邦の大統領だったジェファーソン・デービスや、銀行家のJ・P・モルガンといった歴史上実在した人物が登場するだけで嬉しくなりま〜す。

 

『夕暮れに抱擁を(上・下巻)』(集英社文庫)

サンドラ・ブラウン:著(秋月しのぶ:訳)

2005年6月25日 第1刷発行

 

ジャンルからいうとロマンス小説なのですが、舞台が西部開拓時代なので西部小説としても読めます。

主人公は、雨の荒野で産気づいた女性。彼女はテキサスへ向かう幌馬車隊に助けられますが、結局、死産します。幌馬車隊には、出産で死んだ母親の代わりに乳を欲しがる赤ん坊がいて、彼女が乳母の役目をします。そして、ロマンス小説ですから当然、赤ん坊の父親と愛し合うようになります。

主人公の過去、男の過去には謎があり、サスペンスあふれる展開となっています。主人公は、義兄から性的暴行を受けていたんですね。それで妊娠したのですが、義兄は殺人鬼で主人公を追って、次々と殺人をおかします。そして幌馬車隊にも犠牲者が……

男は、昔はジェシー・ジェームスの仲間で、手配書の回っているお尋ね者。死んだ妻の父親と、ピンカートン探偵局の捜査員が彼を追っています。

結構、西部劇らしい内容で、楽しめました。

 

『愛は荒野をめぐる』(ハーレクイン・ヒストリカル)

ヘザー・グレアム:著(駒月雅子:訳)

2006年12月6日 初版発行

 

1862年のカンザスとの州境に近いミズーリの村が舞台。

両親をカントレル・ゲリラの一味に殺され、自分も乱暴されそうになったヒロインを通りかかったテキサス男が助けます。男は妻を北軍ゲリラのレッド・レッグス一味に殺されており、犯人を追って旅をしていたんですな。ヒロインは男を用心棒として雇い、男も行きがかりじょう農場に滞在することになります。

ヒロインは南部を憎み、男は北部を憎んでいるのですが、男と女が一緒に暮らしはじめると、当然愛が芽生え、ハーレクインの世界となるわけです。ラストでは復讐を果たし、西部劇らしい決着となっています。

 

 

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